狂い咲きイフクール 前編 (Pixiv Fanbox)
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https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14583880 のIF続編!
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「あれから……三か月」
もう何年も経ってしまったような感覚に陥る。長い。途方もなく長いんだ。
あの姉妹にされるがままの、“奴隷”とも言える生活が始まってから。
1・
「サンバ! サンバ! さんばさんばばーー!」
明璃がはしゃぐ。あのサンバ衣装でタンバリンを叩き。
「いえーいっ! サンバいえーいっ! ぷりぷりふりりりーっ!」
明音が騒ぐ。同型の衣装で。尻にマラカスを挟んで振っている。
「サンマ! サンマ! サンマンコー! サンマがサンマがサンマンコ~~~!!」
私は狂う。あの明璃が作った紙製の全く手抜き雑な衣装を身に着け、訳の分からないことを言う。
「サンマ! サンマ! サンマンコ~~~!!」
両手には、作り物のゴム製サンマを握っている。くだらないダジャレだ。私は、この3人の仲で最も格下の扱いを受けているんだ。
まさかあの時の恥辱の様が、撮影されていたなんて。明音に呼び出され、写真を見せられた時は頭が真っ白になった。直前に「バックアップはしてあるからね」と念を押されていたので、体を動かす術は封じられていた。
そう、私はあの時、完全に縛り付けられてしまったんだ。
ああ。
「どーしたのー? サンマじゃなくってサンバだよー?」
ぐっ、明璃が足元を飛び跳ねる。以前は可愛らしく思ったが、今は鬱陶しいことこの上ない。彼女のすべての発言が、無様な芸の基となり新たに助長するものなのだから。
「なーにやってんのー、おっばかさんっ!」
それに明音。見事に助手役に徹している。尻を振り、挟んだマラカスで私の尻を打つんだ。しゃかっ、という軽快な音が私をより情けなく貶める。
それでも私は明るく振る舞わなければならない。今の私は……サンマとサンバの区別もつかず、本能とも思える愚かな頭脳に導かれるがままにその身を動かす、恥知らずなんだ。
「うっびょーーーーん! サンマでサンマで、サンマンコだよーーーん!」
両手を突き出し、びちびちとサンマを振る私。顔も本当にバカだ。口をなるべく両横に伸ばし、両端を限界まで広げることで歯茎を見せる。舌の先端を上唇より上に伸ばす(鼻の頭につけるまでが理想とは言われたが無理だった)。目を上向ければ、明璃が読んだギャグマンガの主人公の顔そっくりという変顔の出来上がりだ。
サンマを頭上に掲げ、さらに言う。
「わたしとあなたとあなたで~~~、サンマンコだよ~~~~~ん!!」
馬鹿だ。本当に馬鹿だ。
「きゃーっ! なにをいってるのーっ、変態っ!!」
明音が自らの股間を、開いた両手で押さえながら私を非難する。
「えー、サンマンコってなーにーー?」
明璃はきょとん顔で首をかしげる。本当に知らないで言っているのかは不明だが……いや、おそらく知らないのだろう。
私は腰を振りながら説明する。
「サンマだサンマだ、サンマンコぉお~~! いっちにーさんしー、サンマンコぉ~~~~!!」
ああ、その大振りの動きで、見える。ふんどしのように股間の前に垂れさがるひまわり形の紙製衣装が、大きく翻って“見えて”しまう。既に何度も“見せた”。今回の動きでも幾度となく“見えた”ことだろう。だが、だが、わざと“見せつける”動きはやはり格別の惨めさが……!
腰を振り、紙が翻り、丸見えになる度に私は言い放つ。
「これがイチマンコっ! ニマンコっ! サンマンコっ! ヨンマンコっ! ゴマンコぉおおっ!」
地獄のカウントだ。なにがサンマンコだ。止められない限り、いくらでも数字は増える。
そして、2人は私を止めようとはしなかった。
「あはははー! へんなのー!」ただ楽しんで笑う明璃。
「まったくもう、変態なんだからー」冷ややかな笑みを作る明音。
「ロクマンコ、ナナマンコ、ハチマンコ、キュウマンコ、ジュウマンコぉおーーー!!」
「あははははー!」
「本当、一人でテンション高いよねー」
「ぐう……!」
奴隷だ。完全に奴隷だ。こんな変なことに付き合わせて、私が一番の変態のように……。
2・
明璃がはじめにどんなことをしたいのか言う。十中八九、変態な内容だ。
これを明音が味付けする。十中八九と言ったが、時折変態ではない内容で済ませることができそうな時も、必ずそういう内容を追加する。
方向性が決まったならばさらに次々と設定が付加される。私はその設定に沿って動く。
例えば、かけっこがしたいと言ったら私は“ガス噴射オナラジェット女”として、屁をこく演技をした後猛ダッシュする。
テレビを観て、ヒーローやヒロインのごっこ遊びがしたいとなれば、私は怪人役。きわどいというか変態の格好になるようにお膳立てされる。両手に鎌だけ装備したり、首からぶら下げた巨大な葉っぱ二枚だけで体を覆ったり……それをあっさり明音にめくられて、ここが弱点と股間を攻撃されたこともあった。
「ぐうっ」
最近は、こうして不満の声を上げるのが日常になった。それが今のように、大学の構内であろうと。何故かと言えばふとしたことで思い出すからだ。例えばこの間のサンマだって、学食の壁に下げられた焼きサンマ定食の文字を見るだけで思い出してしまった。日替わり定食をチェックしようとしたらその二つ横に……ぐうっ。そういう日常に関わるものを使って私の心を苛んでくることも明音の思惑なのではと感じる日々が続いている。
「おーやどうしたのー、元気ないねー」
明音が後ろから声をかけてきた。
「講義はどうした……」と言ってやっても効果はなし。
「あー、あれなら急いで行けば平気かなー、それより親友が落ち込んでたら心配だって! ほーら、笑って笑ってー」
「ぐっ」
思わずまた呻き声を発してしまう私。これこそ最悪だ。大学内ですらこれがあるのだ。できることなら、このまま不機嫌さどころか怒りを爆発させ――――――はあ、ああ。追い払うことなどできない。
「どうしたのかなー? ほーら、笑ってよー」
心配した様子でぐいぐいと迫ってくる明音。しかし本音はまるわかりだ。人質をいたぶる前の怪人のように両手指をくねくねとさせて、今にも私の顔をいじくってきそうだ。だが、それはしない。むしろ、それをした時はもう私の画像が出回っている時だろう。私は、自ら……ちらほらではあるが人通りのあるこの場で、自らの顔を左右に引っ張り、口角を持ち上げることで笑顔を作り出した。
「あ、あはははー、えへへへへー」
ぐうっ。ぐうっ。心の中で何度も呻く私をよそに、明音は上機嫌になっている。
「やったねー! やっぱり笑顔に勝るストレス解消法はないよ! うんうん、さっすが私の親友だ~!」
腰に手を当て、ミュージカルの出演者が観客に語り掛けるように左右へ向き、声を張り上げて言う。うるさい、やめてくれ。他の誰かが見る。いない誰かが見に来る。私と言う存在を破壊する気なのか。ああ。
「それじゃあご一緒に~、ストレスストレス飛んでった~~!」
ぐっ、いないないばあの要領。両手で顔を覆い。左右に開いて笑顔を作る明音。私はこれに倣い……やる。
「ストレスストレス飛んでった~~~!!」
ただし、ただの笑顔とは違い、親指で唇をめくり上げ、人差し指で鼻を押し潰した変顔の笑顔だが……ああ、誰も見ていないだろうなあ。自分の手をなるべく閉ざしていることと、明音が目の前にいることで、注目されたとしてもなるべく見えないように出来ている筈だが……ああ、こんな工夫が身についた自分が情けない!!
「ぐう……っ!」
ああ、しまった。
不機嫌な声を出してしまった。
明音は、ちらりと私を見て、言う。また覗き込む。にんまりとした恐ろしさをはらむ笑顔……新たな命令を下すときに、時折して見せる笑顔なんだ。
「まだちょっとストレスかな~。ちょっと2人で遊びに行こっか!」
そうして、私の肩を掴み、引っ張ってくる。この様も何度も大学内で見せてきた。周囲はどう思っているだろう。暗い親友と、それを助ける明るい素敵女子として映っているのだろうか。笑顔強制で余計なストレスを生む馬鹿女として怒ってくれている人はいるだろうか。だが、もしも後者がいて、私達の前に現れたとしたら、これまでの私の無様な姿が……ああ、詰み、というのはこういうことなのか。ああ。
引っ張る前に、明音は私に囁いていた。
「まずはお尻見せてね」
ああ。
3・
あああー。龍子のお尻ぷりぷり音頭可愛かったー!
キャンパスの隅でさ、誰か来るかも、いいや来るわけないっしょーの押問答してさ、もう最っ高。だって絶対やってくれるからねえ。
うん、うん。しょぼくれてぬぎぬぎして、テンション高く歌って踊ってくれた時の喜ばしさったらない!
本当に明璃よくやってくれたよお、あの日から三か月、楽しすぎてあっという間!
ああ、はかどる。実にはかどる。舌のお口もくちゅくちゅって鳴って、今にもサンマンコーって叫び出しそう!
そのうち誘いちゃいたいなー。このベッドに……んっ。
4・
私は、この三か月で初めて自分から明音の部屋を訪れていた。
前もって、明璃がいるかの確認もしている。その時は流石に明音も驚いたようだった。
「二人で良くない?」とも言っていたが、明璃も必ずいてもらわなければ困ると伝えると、表情に陰りが見えていた。
それがいったいなぜなのかはわからないがな。明璃が初めに口火を切らずとも、何らかの命令を下すことはできるというのに……それ以上を考えることはないな。そんなことはどうでもいいからだ。
私は、明音の部屋で膝を突き合わせ、2人に言う。
「……もう、今までのようなことに付き合ってはいられない。画像や動画など、そういうものをすべて消したうえで、関係を断ちたいと思っているんだ」
明音は視線をやや下に落とし、ふうん、と息を吐いた。
明璃は、涙目だ。
「龍子ともう遊べない……?」
それだ。いつから呼び捨てになった。りゅうねえ、と呼んでいたはずだ。見下されている感覚に陥るその言い方からも脱したい。あまりこんな子供を泣かせたくはないが、ここは……覚悟を決めて伝えるべき時と私は思っている。思っているんだ。
「い……今のような遊びでなければ……」
しまった。
「私にもどんな遊びをするか、決められるようにしてほしい。嫌な役をやらされるのは、明璃ちゃんも嫌だろう」
ぐっ、お人よしめ。潤んだ目に負けて、つい。完全に付き合いを断ちたいと思っていたのに。しまった。
明音を見ると、ぐっ、案の定にんまりだ。付け入る隙を与えてしまったのか。このままずるずると元の……いいや、今まで以上の恥辱展開を味わわされることになるかもしれない。何しろ、奴隷が皇帝に反逆した……と、同然だと相手は感じている。かもしれないのだから。
「ふうん。へえー。そういう風に思ってたんだー」
「ぐっ」
巨人に片足で踏みつぶされるような感覚……“圧”だ。頭の高さは私の方が上だというのに、明音が見下ろしているようだ。
明音は、明璃の頭に手を下ろして、撫でながら言う。明璃は、言葉が理解しきれずにいたのだろうか、私を潤んだ目で見つめながら、事の次第を見定めようとしているようだった。そんな明璃に、明音は優しく語り掛けるんだ。
「仕方ないよ。龍子お姉ちゃんだって、好きな遊びがしたいんだもの。だから、これからは皆でどんな遊びをするか考えようねー」と。
ぐっ。ぐっ。だが、かなりの譲歩がなされたのではないか。明音も、私が本気であることが伝わり、これ以上は警察や弁護士沙汰になるリスクが生じると思い至ったのかもしれない。よし……そうだ、念押しだ。
「が、画像などのデータも消してもらえるのだろうな」
すると、明音は私をじっと見つめ、応えた。
「それはまあ、タダでってわけにはいかないかなあ~?」
「なんだって」
すごくねっとりとしたいやらしさのある言い方に、私はぞっとした。交換条件として、どんな地獄を味わわせるつもりだ。最後にとんでもない変態パフォーマンスを披露するよう言われたり、別の誰かに見せたり、外に飛び出させたり、金銭の要求……ううむ、最初のもの以外は流石にないといえるか? いいや、仮面をかぶって全裸でとすれば、正体のバレないまま私に屈辱だけは味わわせることができるかもしれない。いずれにせよ、警戒を緩めるな。私は、明音を見続ける。
明音は、私が一定時間見続けるのを待っていたかのように押し黙り、そして言った。
「勝負は、明璃との変顔対決だよ!」と。
「勝負……?」
「そっ、ああ、勝負って言うのは……これに勝ったら画像データを消すってこと!」
「成程。だが、消すのは画像データだけではなく、関連するすべての記録だと私が要求していることを忘れるな」
「わかってるってー、お堅いなー」
「堅いとかそういう話では……いや、とにかくその勝負は、乗った」
「……ふうん、意外。躊躇なく受けるなんてね」
「……」
耐性でもついていたのだろうか……はたまた、奴隷根性が染みついていたのか、私はその勝負に躊躇や動揺などすることなく、承諾していた。
細かいルールを把握せずに応じてしまったあたり、まだ明音の掌の上にいることは否めないが……な。
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https://d532abcv.fanbox.cc/posts/11092430 後編は2/25公開!
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