音声作品『ひと夏のアバンチュール・ソフィ編』先行ノベライズ版 (Pixiv Fanbox)
Content
挿絵 JAM様 DATE THE ROAR様 きんぎょにく様
出会い編
「あっつい…」
部屋の外では蝉の声が響き渡り、僕は縁側の扇風機の前でため息をつく。
夏休みは田舎のおばあちゃんの家で過ごすのがいつものことだったが、現代っ子の僕にはこの何もない田舎というのは暇を持て余す場所でしかなかった。
おばあちゃんは僕のお昼を用意して畑仕事に出掛けてしまい、家には僕一人…
戸締りの習慣のない田舎なこともあり、好きに遊びに行けとは言われていたが、川遊びや山遊びも一週間もすれば飽きてしまう。
「こうしても仕方ないし、川にでも行こうかなぁ…」
暑さで参ってしまう前に川に涼みに行こう…そう思った僕は重い腰を上げてのんびりと出掛けていく。
家を出て坂を下っていけば、すぐにせせらぎがゆっくりと流れる小さな川があった。
「あれ…人がいる…」
この集落の中でもおばあちゃんの家は少し離れたところにあるため、近所で人と会うことは今まで一回もなかったと記憶している。
川の中に入って水面を見つめているその人…それは白いワンピースを着た美しいお姉さんだった。
「あ…」
僕の存在に気づいた女性は微笑みながら顔を上げる。
「こんにちは!」
可愛らしい声がお姉さんから発せられ、僕は少しドギマギしてしまった。
「こ…こんにちは…」
照れて挨拶する僕の元に歩いてくるお姉さん。
「この川、水が冷たくて気持ちいいのね…この辺に住んでいるの?」
「ううん…夏休みの間だけ…おばあちゃんが近くなんだ…」
お姉さんの質問にちょっと恥ずかしげに答える僕…
「そう…この辺に温泉があるって聞いてきたんだけど、キミはなにか知っているかしら?」
最近この山の奥に秘湯ができたという話はおばあちゃんから聞いていたけれど、かなり険しい山の奥にあるとのことだった。
「山奥らしいけど…お姉さんみたいな可愛い格好だと登山は難しいと思うよ。」
お姉さんは着ているものもワンピースで、川辺にはサンダルが置いてある。
明らかに山に入るための格好ではなかった。
「ふふっ、心配してくれてありがとう…ちょっと行ってみて無理そうなら引き返すから大丈夫よ。」
そういうとお姉さんは川をあがってサンダルを履き始める。
僕は顔のほてりを感じていたけれど、それは夏の暑さだけが原因ではなかった。
「それじゃあ行ってみるわ…さようなら!」
山間を駆け抜ける風のようなさわやかな空気を残し、お姉さんは山への道をゆっくり上がっていくのだった…
ヒロインピンチ編
「そろそろいいかしら…」
先ほど地元の少年と別れてから10分ほど…私は山道を進んでいきます。
もう周りに人気もなく、舗装されていない道もだんだん獣道の様相を見せ始めていました。
山中に入るには相応しくない恰好をしてきてしまったことを反省しつつ、私は目をつぶって意識を集中していきます。
光の中で、私は本来の姿『アルティマソフィ』へと姿を変えていました。
あの少年は知らないようでしたが、最近この山に入った登山者が行方不明になる事件が頻発しているのです。
「やはりこの山…邪気のようなものを感じるわ。…あら…早速お出ましのようね。」
私の侵入に呼応したのか、山中に充満していた邪気が一本の木に集まっていきます。
巨大な植物怪獣へと変化した大木が、威嚇するような音を立てて私の前に迫ってきました。
「人里まで行かせるわけにはいかないわ!ここで大人しくなってもらいます!」
私は意識を集中し、その身体を怪獣に対抗できる大きさまで巨大化させます。
「いくわよっ!せいっ!やぁっ!」
怪獣に徒手空拳で挑むものの、その強靭な体に私のこぶしは跳ね返されてしまいました。
「くっ…この大きさ…やはり打撃では無理ね…」
相手が植物素体なことを考えれば、火炎系の攻撃で焼き払うのが得策と思いましたが、それでは周りの森に被害が出てしまいます…
そう考えた私は、邪気の浄化を図ろうと意識を集中しました。
「これならどう…ヒーリングライ…ああああっ?!」
力を集めようと目をつぶった一瞬を怪獣は逃さず、私の身体はその太いツタで拘束されてしまいます。
「放しなさい…あぅ…なんて力なの…」
怪獣は品定めするように動けない私を観察すると、あたりにピンクのガスを撒き始めました。
「うう…これは…やぁん…身体が…反応しちゃうっ…」
おそらく私がメスなことに気付き、発情させるような成分のガスが私を苦しめます。
「ああんっ…こんな…身体が…あつ…い…」
私を拘束するツタが体の上を這いずり回るたびに、身体がビクンビクンと跳ね上がってしまいました。
ピコンピコンピコン…
エナジータイマーは甲高くピンクに点滅し、エネルギー不足ではなく私の身体の発情を周りへと報せています。
「くっ…いい加減にっ…はぅ…くっ…ああっ!」
ブビュ…プシュッ…
ついには乳首からエネルギーを母乳状に放出してしまう私…母乳は怪獣の身体全体にかかってしまう。
「はぁはぁ…このままじゃ…」
絶望しかかる私の瞳に、母乳でデコレーションされた怪獣の姿が映りました。
「こうなったら…ハンド…ショット!」
手から発射する光線を足元の触手へ放つ私…
すると怪獣にかかった私の母乳に引火し、怪獣の身体が燃え上がっていきました。
「あなたにかかったのは、私のエネルギーが液状になったもの…発火させればよく燃えるのよ…」
拘束を解かれ自由になった私は、断末魔を上げながら焼け落ちる怪獣の周りをバリアで囲い、周囲への被害を防ぎます。
これで一件落着…そう思った私の読みは、思いもかけない形で外れることになるのでした…
続く…