おっぱいそのもの 前編 (Pixiv Fanbox)
Published:
2021-08-28 04:00:00
Imported:
2026-06
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「私、巨乳になりたい!」
「……はあ」
「そのために科学部に入ったのよ! あんた部長でしょう、何とかしてよ!」
クラスのギャルが突然、うちの部活に入ると言い出した。たしか、そうだ。野原さんだ。同じクラスになったばかりだというのに、なんでそんなに偉そうなんだ。これだからギャルは。
科学部。
オタクとはちょっと違うものの、どちらかと言えば控えめな、おとなし目な連中が入部するイメージのところだ。俺がこの部活を選んだ理由も、うるさい連中に絡まれるのが嫌だったからというのが大きい。
入部して、一年がたち、順当に部長になった今日。同級生がこのタイミングで入部を申し出てきたのだ。
さすがに怪しいと思って志望理由を問い詰めると、案の定、欲望に忠実な答えが返ってきた。
「あなたのうわさは聞いてるわよ。廃部寸前だった科学部、たった一年で部費を三倍にして、生徒会からも直接依頼を受けるようになった超新星」
「野原さん、超新星は死にかけの星だよ」
「どうでもいいわそんなこと! とにかく! できるの⁉ できないの⁉」
すごい剣幕。さすがはギャル風女子。
俺の個人的感覚からすれば、間違いなく美人の部類に入るし、胸だって少々小ぶりでも、そこまで気にすることはないと思うが……
「どうなの!」
「……できます」
できるかできないかで言われれば、できる。彼女の質問に答えるなら、イエスとしか言いようがない。
そんな回答に満足したのか、野原さんは満面の笑みを作り、そのまま入部届にサインをしたのだった。
……マジか。
「じゃ、この薬を飲んでください。そうすればあなたは巨乳になります。あ、細かい手順ですけどー
「よしっ! いっただっきまーす!」
……ええー?
俺の差し出した薬を何の躊躇もなく飲み干した野原さん。普通こういう場面でためらったりするのがよくあるパターンなのだけど、僕が話し終わる前に飲み干すとは思わなかった。
「え? 何、まずかった?」
「い、いや。別に問題はないんだけど、次からは最後まで聞いてから飲んでね」
「話があるなら終わった後に薬を渡せばいいじゃない。渡した後に注意事項とか手順おかしくない?」
……そういわれると確かにそうだ。うん。ごもっとも。科学部あるあるだけど。これに関しては野原さんが正しい。
「……で? これでほんとに巨乳になれるの?」
「なれるよ。一分くらいそのままじっとしててね」
ちょっと鏡でも用意しようか、と、僕は化学準備室まで引っ込んだ。
……やるといった以上、やるべきことはやらないと。依頼は完璧に仕上げて見せよう。
そしてまあ。
言われたことは完璧にこなして、あとはまあ、せっかくだから、いろいろと協力してもらおう。
一分後。
「お待たせ……っと、野原さん、どう?」
「け、けーたぁ……体熱いぃっ……でも、胸、おっきくなってるよぉー、これ、ほんとに、きいてるっぽいっ、ドンドンおっきくぅっ……」
「そう、それは良かった。はい、鏡」
「さ、サンキュー。ああ、ほんと、私、どんどん……」
いきなり下の名前で呼ばれたことに、いちいちつっこんでもいられない。
二分後。
「け、けーた、これ、何カップかなあ……」
「とりあえずGカップ。まだまだだね」
「い、いや、私ももう十分なんだけど……」
三分後。
「け。けーた! これ、変っ、な、なんだか怖くなってっ! もういいっ! もういいからっ!」
「ああ、これくらいの大きさが好みなの?」
「いや、さっきのGカップで十分……っ、って、わああっ、ま、また大きくっ! 何これっ! けーた、変っ、変だよぅっ!」
今頃になってようやく自身の異常事態に気づいたらしい野原さん。
「胸が大きくなってるけど、身体が小さくなってるっ、なにこれっ!」
鏡の向こうの自分と喧嘩しつつ、自身の異変に対し、ここで初めて恐怖を覚えたようで、
「……そろそろかな」
「な、何が……って、わああああっ!」
と、ここまで僕の『想定通り』に、野原さんの体は光り輝いた。
「ふむふむ、なんかこうしてみると植物みたいだなあ。胸だけが生えてるってのは、変な感じだ」
ビクンビクンと胸がふるえる。抗議の声でもあげているのだろうか。
野原さんの名誉のために言っておくと、まだ僕はこの胸に触れちゃいない。
「ほら、見てごらん野原さん。言われたとおり、完成。我ながら完璧な出来栄えだ。野原さん、君は確かに『巨乳』に、なった」
そう、大きな乳、そのものに。
「最近作ってみたんだよ。人を巨乳にする薬。利害が一致して何よりだ」
「~~~!」
(ち、ちがうっ! 私は胸そのものになりたいわけじゃないっ!)
「いやいや、巨乳になりたいって言ってたじゃん、えいっ」
試しに物差しでつついてみる。胸がビクンと震えた。顔があれば真っ赤になっているのかもしれない。
(や、やめて……もとに、戻して……)
「ふふ、なりたいって言ったり戻してって言ったり、ギャルはわがままだなあ。こんな優秀な実験材料、逃がすわけがないのに」
(そ、そんな……)
思考が筒抜けになるように野原さんの薬は調合済み。
よし、これでいい研究材料が手に入った。
はりもかたちも大きさも、すべてにおいて高水準、しかも本体に意思があると来た。
これを作れば新しい薬を作ることも簡単だ。
「じゃ、そんなわけで野原さん、今更科学部をやめるなんてできないよ? 君はこれから僕らの部員、いや、実験材料として永遠に巨乳であり続けるんだ。 よろしくね!」
(い、嫌あああああっ!)
巨乳の声なき声が科学部中に響き渡る。声にならないので聞こえやしないが。
こうして野原さんは一生巨乳として、その垂もしない理想の姿で、永遠に僕らの実験材料として暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
……と、マッドサイエンティストの雰囲気を醸し出して遊んだことを、今は死ぬほど後悔している。
(う、うわああああんっ! やだっ、やだようっ! びぇぇんっ、ううっ、おかーさんっ、ひっぐ、ひっくっ)
……やりすぎた。
「ごめんごめん! 冗談、冗談だから、ちゃんと戻れるから! ちょっとからかっただけだから、泣き止んで!」
(ぐずっ、ううっ、けーた、きらいっ、ぐずっ、わ、私、一生このままだと……ぐずっ、ひぐっ、う、うわあああああんっ!)
「悪かった、悪かったから! ちゃんと戻すから泣かないで、ね?」
(ひっぐ、う、うう……やだぁ……こんな胸だけのまま、やだぁ……)
……この日。僕は生まれて初めてギャルを泣かせた。