告白して、入れ替わって 前編 (Pixiv Fanbox)
Published:
2022-11-12 04:30:00
Imported:
2026-06
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中原律子は、とにかく美しい大学生だ。高根の花タイプといってもいい。
茶髪のロングにすっきりとした色のスカートをはき、真っ赤なバッグを身にまとうその姿は、上品な令嬢そのもの。
そんな彼女に惚れる輩がいるのは、決しておかしいことではない。
しかし、美しい女性といえば、反面、倍率も半端じゃない。普通の人間ならば、そこで部をわきまえる、悪く言えばあきらめてしまうのだ。
しかし、どんな人間にも例外はいるもので、そういったことを考慮せず、釣り合う釣り合わないを考えずに、無謀にも告白を狙ってしまう男は、いる。
そして、そういう人間に対して、彼女がどういう手段を用いるかといえば……
「じゃじゃーんっ! 体を入れ替えるマフラーだよ!」
「……は?」
……思いっきり、自分の素を見せること。これしかない。
福原柚希という少年が告白を決行して、三時間後。彼はなぜか、彼女と入れ替わることになった。
「あっあっああっ……」
「どう? 指を出し入れしてるだけで、気持ちいいでしょう?」
路地裏にて、一組の男女がいやらしい行為を行っていた。二人一組で、マフラーを巻いていることから、それなりの仲ではあるのだろう。本番とまでは言わないが、ガラスに映る自分たちの痴態を見ながら、男のほうは楽しそうに笑っている。
そして、女性のほうは、訳が分からないといわんばかりに、うろたえながらも、顔を真っ赤にして喘ぎ続ける。
「あっ、ま、まって、中原さん、待って、それ、待って・・・・・・何か、何かきちゃう……んあっ!」
直後、電撃でも走ったかのような強い快楽が柚希を襲う。
びくびくと両足がけいれんして、そのまましゃがみ込んでしまいそうになるも、それを背後からがっしりとつかむ姿があって。
「大丈夫?」
ふらふらとしたままの柚希は、あっけなく抱き留められた。
まだ状況を理解できていないように、
「んあっ、あっはあっ……俺、俺に抱きかかえられて……」
「だから、福原君になってるけど、私よ? 中原律子。ね? ほら、こっちの窓ガラス見て」
「……ううっ」
その事実に、顔を赤くすることしかできず、うつむくのみ。
人通りの少ない夜道。窓ガラスに映った男女は、確かになかなか絵になる。男性のほうはにこにことしていて、隣の美人な女性は、顔を真っ赤にしたままうつむくばかり。
そして、柚希が恐る恐るウインクを仕掛けると、ガラスに映る中原が、かわいらしいウインクを見せて。
「……どうしてこんなことに、俺はただ、中原さんに告白をしただけなのに……」
「あら、それはそれで大した勇気だと思うけど?」
その勇気を誉めたてるように、下半身に手を突っ込む律子。ガラスに映る赤い顔は、驚愕と困惑とためらいに塗りつぶされる。
「っ、中原さんっ、そんなにしたら、みんなに見られちゃいますよ……っ」
「大丈夫大丈夫。こういうの得意だから」
まるで、自分の体の隠し方も心得ているかのように、ゆっくりと体を抱き寄せて。
「……続きは私の部屋で、ね?」
男のイケボを使いこなして、そんなことを言った。
中原律子はいい女だ。外見も中身も、十分人間として尊敬すべき部類にある。それは間違いない。
……ただ、こういう噂もある。
彼女は確かに優しい性格『も』しているが、親しい友人、それ以上の関係に対しては、結構意地悪なところがあるらしい。と。
それも、倫理はおろか、論理すら飛び越える、とんでもないことをやらかすこともある、と。
「だからって……っ、あひいっ⁈ か、体を入れ替えるだなんてっ、んあっやっあっ、胸、触らないでっああっ」
「私がこんな初々しい顔して喘いでる……ありだね!」
試しに買ってみて正解だったと、通販の段ボールにほおずりする。
「人格を入れ替えるマフラー。二人で巻いたらほんとに入れ替わるんだもの、これはすごいよ、すごい!」
男の体に興奮しているのか、様々なポーズをとりながら、中原ははしゃいでいて。
「あとで洋服も買いに行くとして……えいっ」
「あっ……きゃあああっ!」
かわいらしい悲鳴を上げる柚希に、
「まずは、君の告白に対する、答えからしないとねー」
へらへらとした口調でありながら、おのれのなすべきことはわかっているかのように。
人格が入れ替わっていようが、告白された側の使命を全うするかのように。
「……ごめんね。たぶん私と付き合っても、幸せになれる人はいないから」
「……」
これが証拠だよ、と、説明するかのように、部屋の鏡に映る二人を指さして、言った。