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週明けの月曜。


土日の土砂降りの雨と打って変わって、満天の快晴。

昨日まで雨が降ってたなんて信じられないぐらい、雲の一つも無い。


「おはよー」

「おはよ」

私は、登校途中で明子とたまたま一緒になった。


「何、暗いじゃん」

「あー、うん・・・」

晴れ間しかない空と違い、私は思い切り沈んでいた。


「あー、“そう”なっちゃったか・・・」

明子は、私を見て状況を理解した。

というか、明子だけじゃない。すれ違う人、誰もが私を振り返る。


この週末で、私は晴れて『身長2m』の大台に乗った。載ってしまった。

『身長2m』の大柄な女の子、ってだけでも目立つのに。


いわゆる、長身痩躯でノッポな体型ではなく。

159kgという重量級な体重がそのまま筋肉として搭載されたかのような、マッスルボディ。


丈夫で分厚い制服の生地が、ピチッとボディスーツのように私の上半身を覆っていた。

首回りの僧帽筋、肩の三角筋に腕の二頭筋。背中の広背筋。筋肉に浮き上がる血管が、制服越しに見えそうだ。


「ってか、“それ”ブラしてるの?」

「うん、一応・・・」

上半身で一番酷いのが、胸元だった。

明子の身長より大きい153cmの胸回りは当の昔に『6XL』の制服の限界は超えていた。


広背筋のせいで増した背中プラス、大胸筋で分厚くなった胸元には更に大きくなったメロン大の爆乳が載っている。

胸元の生地がその爆乳にピッチピチに張り付いて、胸の形が服の上からでもアリアリとわかってしまう。


今は、制服のポテンシャルで何とか持ち堪えている状態。力を籠めるどころか、くしゃみしただけで“バンッ”てやっちゃいそう。


先週までは何とか、大き目な制服のダブ味、というかゆったり感で誤魔化せていた。

しかし、“ここまで”来るともう、誤魔化しようというか、隠しようが無い。


「これ、どう説明しようね・・・」

「ま、イザとなったら私が助け舟出してあげるよ」

明子はそんな、本気なのか気休めなのか良くわからない回答をした。


しかし、教室に入った私を気に留めるクラスメイトは居なかった。

いや、正確には“それどころじゃなく”、私の姿に反応してる余裕がない感じだった。


「何か、あったのかな」

「さぁ、何だろうね」

私と明子は一先ずは安堵して、お互いの席に付いた。


「さぁ、ホームルーム始めるぞ。みんな、席に付けー」

明らかに“私以外”の話題でざわつくクラスメイトを担任教師が諫める。


「ほらぁ、静かにしろー」

担任が教卓に付いても、クラスメイト達は未だに収まる気配がない。


「一部?の者は知ってるかも知れんが、昨日・・・」

何だろ。勿体ぶった言い回し。不謹慎かもだけど、主文後回し、みたいな・・・。


「隣のクラスでバレー部の晴井命子さんが亡くなりました」

それまでの投げ槍な態度と違い、落ち着いたトーンで教師は唐突に告げた。


「え、うそ」

「ホント・・・?」

知っていた者。知らなかった者。多種多様。

だけど、人気者で目立っていた晴井さんの突然の死の報告は、クラス中を更にざわつかせた。


事件などではなく、“事故”で亡くなったとのことだった。


「やっぱり、ホントだったんだ・・・」

「確か、“落雷に遭った”って噂だよね」

近くの席の子たちの噂話してる声が聞こえて来た。


「落雷・・・」

確かに、土日はずっと大雨だった。雷の音も何度も聞いた。


・・・雷。らいげき。


ハレイ・・・メイコ。


「・・・・・・・」

はは、まさか。私は、脳裏に過(よ)ぎった“馬鹿な考え”を自分自身で否定した。


「事故ということなので事件性は無いが・・・」

校内の人気者の訃報ということもあり、今日は特別に午後休校ということになった。


「午後、時間空いちゃったね。どうしよっか、仁美」

「あー、うん・・・」

私も明子も、晴井さんとは隣クラスということもあり、合同体育以外での面識は無い。

陽キャと陰キャ。運動部員と帰宅部員。

心情的に遠い存在なのもあってか、“お気の毒”程度の感情しか無いというのが正直なところだった。


私に全く関係しないところで亡くなったのであれば、だけど・・・。


「そうだ。私、図書室に用が・・・」

私は明子に付き添って貰いながら、図書室に向かった。


何も、図書室の本を読んで空いた時間を潰そう、なんてつもりは無い。目的は、新聞。


「仁美が言ってたのって、これじゃない?」

「ありがと、それかも」

明子に手伝って貰いながら探したのは、“数週間前”の新聞。

一面記事なら直ぐに見付かったんだろうけど、小さな事件なので見付けるのに苦労した。


『通り魔事件』。


○月×日、未明。

△県◇市の路上で、鈴木俊夫さん(38歳)が通り魔の襲われ、死亡。


犯人については目撃証言が無く、記事の中で捕まったという記述は無い。

勿論、その後捕まった可能性はあるが、イチ地方都市の事件で報道に乗るかどうかは微妙だ。


俊夫、通り魔の襲われ死亡。

命子、落雷で死亡。


トシオ、序盤エリアで雑魚敵との戦闘で死亡。

メイコ、かみなりまじん(大陸ボス)のらいげきで死亡。


現実に起きた事件と、ゲーム内での只の出来事。

現実と虚構の区別が付く、普通の感覚なら。分別のある人間なら関連性なんて疑わない。


だけど。


「ねぇ、明子。私の“今のこの身体”、普通じゃないよね?」

「うん。まあ、ねぇ」

土曜の私の家で散々、筋肉ポーズやら怪力ショーやら。明子には色々見て貰ったというか、見せたというか。


トシオが死んだ時の私は、150cm45kg。

メイコが死んだ後の私は、203cm159kg。


たった数週間の内に身長が50cm以上伸びて、体重は60kg以上増加。

病院で診て貰って、身体的な異常が無かったのがむしろ異常なぐらい、急激な変化。


ゲーム内のパラメータが現実に反映される、という仮説がもし正しいなら。

ゲーム内のキャラの死亡が、現実の人間にフィードバックされてもおかしくはない。


・・・いや、おかしいことはおかしいんだけど。仮説としては有り得なくはない、という話。


「え、じゃあ・・・。晴井さんは『メイコ』ってキャラが死んだから、それに合わせる形で事故に遭った、ってこと?」

「確証は無いし、確かめようも無い・・・けど」

現実問題、ゲーム内の出来事と現実での事象が符合しているだけで、只の偶然と言ってしまえばそれまでなのだ。


隣クラスの顔見知り程度の生徒が亡くなった、だけなら普通に家に帰って『DQ』の続きでもやったかも。

だけどもし、私のゲーム内での行動が間接的に晴井さんを殺してしまった、のだとしたら・・・。


「それがもし本当だとしてさ。それ、めっちゃ怖くない?」

「ゲーム内で死んだら現実でも死ぬ、なんて・・・」


「いや、それはそうんだけど。そうじゃなくて、さ」

「・・・?」

明子は何が言いたいんだろう。


「『フレンド』として仁美のキャラを連れて行った誰か他のプレーヤーがボスに負けたりしたら・・・」

「・・・・・っ!?」

私はようやく、明子の言わんとしていることが理解出来た。


『DQ』は基本的に、スタンドアロンのRPG。


プレーヤー同士が競ったりすることもなく、またPVP(プレーヤー同士の殺し合い)も無い。

無茶なボス戦に挑んだりしなければ、自キャラが死ぬことは早々ない。

もし本当に“完全なスタンドアロン”なのであれば、プレイせずに放置すれば死ぬことは無い。


しかし、『DQ』にはソシャゲよろしくな『フレンド』システムがある。


私自身がプレイしなくても、他のプレーヤーに借り出された結果、『ヒトミ』が死んだとしたら。

現実の私は一体、どうなるんだろうか。


鈴木俊夫の件も、晴井命子の件も。どちらも偶然で片付けることは出来る。

でも、“偶然だという確証”は何処にも無いのだ。


直接手を下した訳でも、ましてや殺そうとして殺した訳じゃない。

なので、晴井さんが死んだことは未だに実感が沸かない。


でも、大陸ボスを倒したんだし、ゲームはもうクリアなんじゃ・・・。


・・・いや、もしラスボスなら『大陸ボス』なんて言い方はしない。

まだ、“続き”があるってことで。


『ヒトミ』がもし、ラスボスを倒すのにレベルがまだ足りないのだとして。

他のプレーヤーがラスボス戦に借り出して行って、負けたとしたら・・・。


安心する為には少なくとも、ラスボスと戦っても余裕があるぐらいまで育てないといけないってこと・・・?

現実世界で身長2mを超える程度じゃ足りない、ってこと・・・?


このゲーム、いつになったら終わることが出来るの・・・・・?

Comments

名無しです

更新お疲れ様です! いよいよ逃げられない状況だとわかって来ましたね どこまで強くなってしまうのか気になります

okita

更新お疲れ様です。 これからは自身の身の為に更に積極的にレベルアップを図るのでしょか… 続きも楽しみにしてます。 お身体お大事になさってください。

デアカルテ

感想ありがとうございます。 体調についてはご心配頂いてすみません。本調子ではないですが、ボチボチやって行きたいです。

デアカルテ

感想ありがとうございます。 やりたくなくてもやらざるを得ないシチュが好きなので、上手く続きを展開させて行ければ良いなと思っています。