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1

部下のTと一緒に、公民館の玄関口に立った。

下駄箱は開かれた大きな木の棚で、すでに半分ほどは靴で埋まっている。

靴の数から、30人ほどの人が来ていることがわかる。

上がり框を踏む。

少し開けた玄関ホールに、簡易テーブルが置かれ、パイプ椅子にやわらかい表情のおばさんが座っていた。

「こんにちは、市役所からの参加で、SとTです。後からGという者も来るのですが」

名乗ると、おばさんはさらに顔を崩す。

「ああ、はいはい。すみませんねぇ、突然お願いしちゃって」

「いえ」

「じゃあこちらに、名前を書いてくださいね」

用紙に名前を書いていると、おばさんは3人分の褌を手渡す。

Tがそれを受け取る。

「ありがとうございます」

「じゃあこちらで着替えてくださいね」

おばさんのすぐ横の部屋を指す。

扉は開かれていて、中からは男たちのざわざわとした賑わいが聞こえてくる。

服を脱いでいる最中の者、全裸の者、すでに褌姿の者たちがいる。

おばさんの位置からは、すべてが丸見えになっていた。

中は宴会でもできそうなほど広い和室で、畳の上にはブルーシートが敷かれていた。

各々好きな場所に荷物を置いて、勝手に服を脱いでいるようだった。

俺たちは部屋の隅の適当な場所に、荷物を置いた。

部屋の中には裸の男たちがそれぞれ3~4人ずつ並んだ3つの列ができていた。

さまざまな年齢の男たち。

列はそれぞれ、褌を締めてくれるおじさんへと伸びていた。

全裸の者もいるが、ほとんどはパンツ一丁で列に並んでいた。

ちょうど順番が回ってきた20代前半くらいの男が、手に持っていた白い褌をおじさんに渡し、パンツを脱いでいく。

片手で隠しながら、もう片方の手で器用にボクサーパンツを脱いでいく。

つるりとした尻が見えた。

おじさんに手をどかされ現れたチンコは、色白で皮を先端まで被っていた。

そのチンコに褌が巻かれようとしていると

「はいSさんこれ」

部下のTから褌を渡される。

「ああ、ありがとう」

「結構薄いんですね」

Tが言う。

手にして俺もそう思った。

両手の上に褌を広げてみる。

かすかに手のひらの輪郭と肌色が透けて見える。

ほとんどティッシュペーパーのような薄さの頼りない褌。

(これで股間を隠せるのか……?)

「なんか緊張しますね」

そう言いながらTはジャンパーを脱ぐ。

「ああ、そうだな」

俺もアウターを脱ぐ。

トレーナーとウインドブレーカーのズボンも脱ぐと、肌着にトランクス、靴下だけの姿になった。

Tは上半身裸で、ジーンズも脱ぐ。

中からは紺色のボクサーパンツが出てくる。

靴下を脱いで、そのまま列に並ぶのかと思いきや、ボクサーパンツも脱いだ。

陰毛が茂り、その中から、皮の被ったチンコが現れた。

色白の体よりも少しだけ浅黒いチンコ。

7cmはないくらいのサイズ。

亀頭は見えず、先端はきゅっと皮がすぼまっていた。

部下の性格的に裸を見せるのは恥じらうと思っていた。

思わず見てしまっていた。

その視線にTも気がつく。

チンコを見られていると気がつくと、慌てて手で隠す。

列の方を見ると、「ああ、まだ脱がなくてもいいですね」と上擦った声で言う。

チンコがまた紺色のボクサーパンツに隠されていく。

Tは顔が赤くなっていた。

可愛いやつだなと、少し微笑む。

Tは列に並ぼうとするが、俺はその場から動かない。

「あれ?Sさん並ばないんですか?」

「あ、ああ、ちょっとな」

Tは訝しそうに見る。

「ちょっと、トイレに行ってくる。先並んでてくれ」

「……わかりました」

2

部屋にトイレはなかった。

受付のおばさんに聞くと、

「トイレはあっちだよ」

玄関口を挟んで向こう側を指す。

開け放たれた玄関の外には、すでに褌姿の男たちが数人いた。

まあ大丈夫か、とトランクス一丁のまま褌を手に、トイレへ向かう。

暖房のついた部屋から出ると、冷えた空気が体を包む。

トイレの中に入ると、一層寒い。

小便器が2つ並び、その奥に個室がある。

体を震わせながら、個室に入る。

和式トイレだった。

俺はトランクスを脱ぐと、扉に備え付けられていたフックに掛ける。

全裸になると褌を広げる。

その時、トイレに誰かが入ってくる。

息を呑む。

ぴたりと体の動きを止める。

衣擦れの後、じょぼぼと小便をする音が聞こえる。

しばらくすると、その男はトイレから出て行った。

「はぁ~」

ため息をつく。

見下ろした視界の端に、ちょこんと小さな突起が目に入る。

すっぽりと皮の被ったチンコだった。

さっき見たTのチンコよりも小さい。

寒さでいつも以上に縮こまり、先端で余った皮がとぐろを巻いたヘビのように折り重なっている。

チン毛は皮に巻き込まれてしまうので、日常的に短くカットしてある。

それでもなお意味をなさなくなるほど、縮こまっていた。

(いつもはもう少しあるんだけどな……)

寒さのほかに緊張もあった。

部下や同僚にこれを見られないまま、何とかして祭りを終えたかった。

市役所で働いている俺に、祭り参加の依頼が来たのは2週間前だった。

依頼とは言うものの、それは業務命令だった。

年々参加者が減り、今年は地区の消防団や学校などに数名ずつ参加者を募ったらしい。

市役所からは、生活課のS、同僚のG、部下のTの3人が参加することになった。

それからは気分が重かった。

祭りでは褌をつける。

褌をつけるためには当然、裸にならなければならない。

その裸を2人や他の参加者に見られるかもしれない。

見られる可能性が高いのは、着替えのときだろう。

手で隠しながら締めることはできるかもしれないが───さっきおじさんに手をどけさせられていた男性を思い出す。

おじさんは、股間を隠したい俺の都合になんて気を遣わない。

もちろん、おじさんに悪気はないのだろう。

目の前の男が巨根でも粗チンでも関係ない。

たくさんの男たちに褌を締めるためには、いちいち隠したい者に合わせている余裕はなく、流れ作業のように次々と締めていくしかない。

それは想定内だった。

それを見越して、俺はあらかじめ策を用意していた。

この2週間、褌の締め方を頭に叩き込んできた。

ネットで六尺褌の締め方を見ながら、薄手のタオルを結びつなげて簡易的な褌にして、締める練習をしてきた。

その甲斐あって、締め方は完璧に覚えてきた。

それを思い出しながら、畳まれた褌を伸ばしていく。

ひらり。

褌の中から、布切れが落ちる。

「なんだこれ」

拾うと30cm四方の四角い布だった。

生地は薄く、褌と同じものだと思われた。

褌の締め方のサイトでは特にそんな布は使っていなかった。

裁断した際の切れ端が混じってしまったのだろうと、ドアにかけられたトランクスの上にふわりと乗せる。

サイトを思い出しながら、褌を締めていく。

まずは胸元から垂らした布を、股下に通し尻の割れ目に沿って持ち上げる。

褌の生地は本当に薄かった。

布に締め付けられたチンコは、その色と形をほとんど隠してくれていない。

2週間練習した手順は、指に染みついていた。

股下から通し、腰に巻き、尻の割れ目に沿わせて折り返す。

(よし)

俺は褌を締め終える。

トランクスと四角い布を手に、ゆっくりと個室を出る。

薄暗い蛍光灯の下、手洗い場の鏡の前に立つ。

股間部分は生地が二重になったことでかろうじて透けずに済んでいるように見えた。

ただ、生地が薄いことで、中の形は少し浮き彫りになっている感は否めなかった。

これはまあ、仕方のないことなのかと割り切り、トイレから出る。

トランクスをなるべくぎゅっと握り込み、公民館を出入りする人に、トイレで着替えたとバレないように振る舞う。

受付のおばさんは「あら」という顔をする。

トランクスで出て行った人が、褌で帰ってきたのだ。

おばさんにはトイレで着替えたとバレても仕方ない。

まあ問題ないだろう。

俺は部屋に戻った。

3

「あれ、先輩いつ褌つけたんですか!?」

部屋に戻ると、褌を身につけたTが声をかけてきた。

「Tと別の列に並んだんだよ、そっちの方が早かったみたいだな」

「そう……ですか」

Tは細身の体に薄い褌をつけている。

ただ、股間部分はしっかりと白い生地に隠され、チンコの色も輪郭もわからなかった。

「S先輩、思ったより体がっしりしてるんですね」

「そ、そうか?」

「はい!なんか陸上選手みたいです」

少し気弱な部下のTは、仕事でも俺をよく慕ってくれているのがわかる。

Tに褒められて少しうれしい。

部屋の男たちが大方褌に着替え終えたころ、同僚のGが部屋に入ってきた。

「おう、おつかれ」

「お疲れさまです」

Tが答える。

「お~もう裸になってんじゃん」

そう言いながら、GはTの股間に軽くタッチする。

「ちょっとやめてください」

Tは苦笑いをしながら、腰を引く。

「ははは、お前チンコちっちゃくね?」

「いや、はは」

「Gやめろよ、Tにちょっかいかけるの」

「なんだよ、ちょっとふざけただけだろ」

Gは俺を見る。

「お!Sいい体してんな」

「もうお前以外みんな着替えてるんだから、早くしろよな」

「ふーん」

Gは部屋をぐるりと見回したあと、また俺を見る。

その視線が下がって、股間辺りで止まる。

褌をつけていても落ち着かず、俺は体を背ける。

Gはダウンジャケットを脱ぎ捨て、さっさと服を脱いでいく。

ジャージを脱ぐと、派手なボクサーパンツ姿になる。

その股間に大きな膨らみが見える。

全く恥じらいがないのか、Gはボクサーパンツも簡単に脱ぎ捨てる。

ボロンと巨大なチンコが現れる。

まるでチンコだけ別の生き物かのように、内腿に当たってはバウンドしている。

皮は剥けていて、成熟した亀頭が剥き出しになっている。

皮に不自然なダブりもなく、普段から剥けていることがうかがえる。

「これ、褌です」

TがGに褌を渡す。

Gはチンコをぶらぶらと振りながら、おじさんの元へと向かう。

周りですでに褌を締めた男たちが、その大きなチンコに目を見張る。

「もう祭りが始まる!着替えた者は、外へ出ておけ!」

おじさんが言うと、褌をつけた男たちはぞろぞろと部屋から出ていく。

4

「寒!」

Tと一緒に体を震わせる。

股間に薄い褌を身につけ、足元には草履を履いただけの、ほとんど全裸で真冬の外にいる。

体を手でさすりながら、足踏みをする。

吐く息は白い。

「あと1人だけ着替え中だ!」

公民館からおじさんの1人が出てくる。

Gは今、温かい部屋の中で褌を締めているのだろう。

俺はGが苦手だった。

人の嫌がることが好きで、デリカシーがなく、態度がでかい。

ああいう奴は、どうせでかいチンコを持っているんだろうとは思っていた。

が、実際にその巨根を見てしまうと、何も言い返せなくなる自分がいた。

こちらが何かで勝っていても、「でもお前のチンコちっちゃいじゃん」で片付いてしまう。

Gが公民館から出てくる。

大きな体に白い褌がよく似合っている。

褌でも隠しきれない股間の膨らみに目がいく。

「よーし!まずは禊じゃ!」

おじさんが大きな声を出すと、歩き出す。

それに続いて、褌姿の男たちもついて行く。

祭りの常連組らしい人は談笑しながら歩いている。

俺やTは少し緊張した面持ち。

Gも参加は初めてのはずなのに、全く緊張感がなく、側から見たら常連組のように余裕の表情だった。

まったく太々しい。

参加者たちは適当な列で歩く。

最後尾では係員のおじさんが太鼓を叩きながら掛け声を上げている。

ギャラリーは距離を置いて、スマホのカメラを向けたりしながらついて来ている。

川辺に着くと、おじさんが「これより禊を行う」と短い口上を述べて、別のおじさんが太鼓を叩く。

「そーれ!」

掛け声の後、常連組の参加者たちは草履を脱いで、川に入っていく。

一拍遅れて、俺たちもつられるように川に入る。

冷たい。

刺すような痛みを感じながら、深みへと歩いていく。

股間が水に浸かる。

小さなチンコがキュッと縮み上がっていく。

自分の意思ではとっくに逃げ出したくなっているが、ほとんど周りに突き動かされている。

胸まで浸かると、内臓が機能を停止したような感覚になる。

息が止まる。

肩まで浸かると、痛みが麻痺して感覚がなくなていく。

自分の体の輪郭が曖昧になる。

おじさんが掛け声を上げていたが、はるか遠くに聞こえる。

周りが水から上がっていく。

俺もそれに付いて上がっていく。

うまく足が動かない。

川の流れに足を掬われてよろめく。

近くにいたGの体にぶつかる。

「あ?おい大丈夫か?」

なんでこいつは平気なんだよ。

水から出ると、外気が温かく感じる錯覚が一瞬だけあったが、すぐに風が濡れた肌を刺す。

全身が震える。

体を前屈みにしながらなんとか耐える。

自然と視線が自分の股間に向く。

濡れた褌が、肌に張り付いている。

布と肌の間に隙間がなくなり、体のあらゆる凹凸をそのまま写し取っていた。

キュッと小さくなった金玉の丸み。

その上には限界まで縮こまったチンコ。

かろうじてあった竿は体の中に逃げ込んでいた。

余った皮だけがぎゅっと固まり、指の第一関節ほどの突起となって前に突き出していた。

他の肌より一段濃いチンコは縮こまったことでさらに黒くなっている。

俺は慌てて周りを見る。

近くのTが目に入る。

唇が青い。

同じく自分の体を抱き震えている。

その股間には、しかしチンコは透けていなかった。

他の男たちも。

チンコは白い褌に隠れて、その形も判然としなかった。

(俺が気にしすぎているだけか?)

寒すぎて冷静な判断ができない。

今この瞬間も吹いた風が、濡れた肌を刺す。

ぶるっと体をこわばらせる。

知らないおじさんが声を上げながら、肩を組んでくる。

おじさんも寒さに耐え忍んでいる顔をしている。

テンションでこの痛みを誤魔化すしかないのだ。

よく見ると、周りでもそれぞれテンションに頼って寒さに対抗していた。

俺も腕を回して、知らないおじさんたちと肩を組む。

同じ苦痛を味わった者どうし、不思議な連帯感が生まれていた。

股間を見ても誰も褌は透けていない。

(とりあえず透けてないんならいいか)

自分の股間ばかり見下ろしていると、それが視線誘導となって、周りの参加者やギャラリーからも股間を見られる気がした。

(胸を張らないと)

努めて顔を上げる。

少し前を行っていたTが目に入る。

振り返ると、Tは何かに気付いたのか慌てた様子で

「Sさん!ふ───!」

何かを言いかけたところで、Gに肩を組まれて連れ去られてしまう。

「おいおいおい!せっかく面白いんだからよ!」

Tはいったい何を言いかけたんだろう。

5

神輿は、公民館近くの神社の倉庫に納められていた。

小さな社殿が乗った台座の前後に2本の担ぎ棒が伸びている。

風に吹かれて、体の表面の水分はすでに乾いていた。

いくらかマシにはなったが、それでも寒い。

褌は未だ濡れたままで、体にぴったりと張り付いたままである。

係のおじさんは、1人ずつ参加者たちの背丈を見て、神輿を担ぐ序列を決めていく。

Tを見る。

「おい、お前唇真っ青だな、大丈夫か?休むか?」

「だ、大丈夫です!」

Gを見る。

「でけえな!兄ちゃんはここだな!1番パワーの要る位置だ!」

「おう、任せとけ」

俺を見る。

「兄ちゃんは、こっち……ってはは!気合い入ってんな!」

おじさんが俺の尻を叩く。

(なんだ……?)

気合いが入っているとは。

常連組はさっさと、例年の定位置らしき場所に陣取る。

「せーのっ!」

掛け声とともに神輿が持ち上がる。

「わっしょい!わっしょい!」

歩調に合わせて、リズムよく声を上げていく。

はじめは戸惑ったが、常連組に合わせて次第に声を張る。

俺は先頭から3番目の位置だった。

目立ちやすく、ギャラリーからもよく見えているだろう。

禊の時には気がつかなかったが、ギャラリーの中に業務用の大きなカメラを担いだ者がいる。

その隣には、カメラマンに何か指示を出している者。

テレビの撮影隊だろうか。

「わっしょい!わっしょい!」

ギャラリーは道の両端に寄って並んでいる。

神輿の2本の担ぎ棒の、俺がいるサイドに、撮影隊はいた。

俺も映っているだろう。

胸を張る。

テレビ以外にもギャラリーもスマホを向けている。

「わっしょい!わっしょい!」

ギャラリーの中にはこちらに指をさして笑っている者もいる。

何をさしている?

神輿か?

俺を指している気もする。

6

街の商店街まで練り歩くと、一度休憩となる。

神輿をゆっくりと下ろす。

各々体を伸ばしたり、座り込んだりしている。

体の表面は冷えているが、運動をしたせいだろうか、体の芯はじんわりと温かくなっている。

褌に触れると、まだ濡れている。

さりげなく、股間に触れてみる。

褌の上からでも冷たい突起が確認できる。

薄い褌はほとんど触覚を妨げることがなく、チンコも直に触られたようかのように感じる。

「あら~Sさん」

声の方を向くと、見知ったおばさんがいた。

生活課の窓口をしている俺は、よく市民と顔を合わせる。

周りを見回すと、おばさん以外にもみたことのある顔がちらほらと確認できる。

「ああ、どうも」

このおばさんは小さなことで良く相談に来る。

「いつもはビシッとスーツだから、新鮮ねえ~」

「はは、はあ」

おばさんは俺の体をじろりと見回す。

ひと通りなぞって、ある場所で止まった。

股間を見ている。

「まあ」

おばさんはニヤリと笑う。

褌を身につけているが、俺はなんとなく手で、股間に向く視線を遮る。

「寒いと思うけど頑張ってね」

そういうとおばさんは、少し離れたところにいた友達らしき他のおばさんたちの輪に加わっていく。

「やだ~もう」

おばさんが何かを話すと、他のおばさんたちから黄色い声が上がる。

俺はその場を離れると、Tが俺を見つけ近寄ってくる。

「Sさん、肩やばくないですか?」

「ほんと……あとどれくらいだろうな」

Gもやってくる。

「おお~おつかれ」

Gの隣に地域振興課のMさんがいた。

首からは一眼レフカメラがかけられている。

「おつかれさまです」

「Mさんも来てたんだ」

「うん、ごめんね、生活課に参加をお願いすることになっちゃって。うちの課で出せればよかったんだけど、男手が課長と係長しかいなくて……2人ともおじさんで、ほら、腰が、ねえ?」

「いいってことよ、Mちゃん、裸で外歩くのなんてなかなかできることじゃねえし、いい経験ってやつよ」

Gの返答にMさんが苦笑いをする。

「Mさんも大変でしょう、1人で撮影してるの?」

「ううん、もう1人撮影係がいるよ」

多分俺が担いでたのと反対側か、後ろから撮っていたんだろう。

どうりでMさんの存在に気が付かなかったわけだ。

Mさんが俺の体を見る。

落ち着かない。

Mさんに裸を見られているのが恥ずかしかった。

Mさんの顔が赤くなっている。

Mさんも俺の裸を見て恥ずかしいのか?

「そうだ、ちょうどいい、せっかくだし撮ってもらおうぜ!」

そう言うとGはTを無理やり俺のそばに寄せる。

俺を挟んで、GとTが両隣につく。

「え?で、でも……」

「いいから!ほらMさんカメラ構えて!」

Gは有無を言わさない。

俺の肩に手をまわし、「ほらお前らも!」と言って、俺たち3人は肩を組む。

背の高いGの肩に腕を伸ばす。

俺は慣れない褌姿に、萎縮していたのだろう。

両腕を広げると、胸が張られ、全身が伸びる。

恥じらいからか、気づかぬうちに、猫背になっていたのかもしれない。

キュッと尻が引き締められ、濡れた褌が、より一層股間に張り付く感覚がある。

Mさんがカメラを構えている。

俺は瞬きをしないように、そのレンズを見据える。

シャッター音が鳴る。

7

商店街から、神輿の練り歩きは再開された。

休憩を挟みつつ1時間ほどで元の神社にたどり着く。

途中、Mさんに教えてもらった、もう1人の撮影係が神輿を撮影しているのに気がついた。

たぶん、前半にも前から撮影していたのだろう。

なんとなく見たことがある、名前の知らない職員だった。

神輿を下ろすと、肩にのしかかっていた重りから解放され、体が軽くなる。

おじさんが締めの挨拶をしている。

要約すると「お疲れ様でした」だった。

祭りの内容はこれで終わった。

褌姿の男たちはぞろぞろと、まばらに公民館へと向かっている。

「疲れましたね」

Tが声をかけてくる。

「だな、おつかれ」

Gは少し前で、いつの間に仲良くなったのか、常連組のおじさんと盛り上がっている。

軽く褌に触れると、まだ湿っている。

禊で川に入ってから、神社へ行き、神輿の練り歩き、また公民館へ。

合計3時間ほど。

2月の寒さでは全く乾く気配がなかった。

公民館の部屋は、参加者でいっぱいになっている。

なんとか祭りを乗り切った。

だが、まだ最後の難関が残っていた。

着替えの時が一番チンコを見られる可能性が高い。

褌をつけた時のように、トイレに行ってこっそり着替えるか?

各自、褌を外し始めている。

この中で褌のまま部屋を出ていって、着替えて帰ってきたら、バレるだろう。

腰に巻けるように一応タオルもリュックの中に持ってきている。

だがタオルを使っている者は1人もいない。

───なんだお前、チンチン見られるのが恥ずかしいのか?

Gのニヤついた顔が思い浮かぶ。

仕方ない。

この場でタオルなしで着替えよう。

チンコに手を添えてさっさとトランクスを履いてしまおう。

たとえGに茶化されたとしても、手で隠すくらいならエチケットの範疇だろう。

そのGはさっさと、褌を外してしまい、巨大なチンコを曝け出している。

寒さで縮こまった気配が一切ない。

───ぱさり。

Gが脱いで床に放った褌の中から、折り畳まれた布切れが剥がれて落ちた。

Tが脱ぐのに手こずっていた褌も、Gが無理やり下ろしてしまう。

一瞬晒されたチンコをTは慌てて隠す。

下品に笑うGの声は、厚いガラスに隔てられたように曇って俺に届いた。

Tの褌も股間部分から布切れが落ちる。

他の参加者の褌も同様に。

俺の頭はある思考で埋め尽くされ、周りの声を聞き取る余裕がなかった。

トイレで褌から落ちた、布切れ。

裁断した際の切れ端だろうと俺は判断した。

今は、トランクスと一緒にリュックの中だ。

全身の毛が逆立つ。

下腹あたりがぽっかりと空白になるような感覚。

血の気が引いていく。

Gが全裸のまま、固まっている俺の肩にどかりと腕を回す。

体重がかかり、呪縛が解ける。

周りの喧騒がクリアに耳に入ってくる。

「てかさ」

Gを見る。

ニヤリと笑う。

「なんでお前、当て布つけてなかったの?」

Comments

若墨

大好きです❤️ GやTの視点から語られる物語を、もっと見られたら嬉しいです…!

しま

ありがとうございます S以外の視点も投稿を予定しています