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とある銭湯「〇〇湯」。

そこで行われている画期的な宣伝方法が話題となっていた。

「〇〇湯」の公式サイトを覗くと、浴室内の映像がライブ配信されているのである。

視聴者数は同接1000人ほどになっている。

裸の男たちが画面内を行き来する。

だが、その顔と股間を確認することはできなかった。

ライブ映像であるにもかかわらず、そこには黒くモザイク処理が施されている。

浴室に設置されたカメラにはAIが搭載されており、顔と股間、尻を認識すると、自動でモザイク処理が行われるようになっている。

仕組み自体は、それほど特別なものではない。

スマホのカメラが、人の顔を見つけてピントを合わせるように、このカメラは人の顔と股間を見つけて、そこだけを黒く塗り潰す。

それを休みなく繰り返している、というものだった。

今日もモザイクの施された男たちで「〇〇湯」は賑わっていた。

とはいえ、開業当初から順風満帆だったわけではない。

見慣れないものへの不信感は当然あった。

「いくらモザイクがあるとはいえ、全裸を放送されるのは不安」

「モザイクは問題なく確実にかかるのか」

「撮影データが流出するんじゃないか」

と、客足は遠のいた。

それでも、通う客はゼロにはならなかった。

数人の客はいつも通りに湯に浸かった。

彼らは撮られていることを、まるで気にしていないようだった。

配信のコメント欄は、当初は否定的なものばかりだった。

───これ大丈夫なの?

───奇を衒っただけのバカでしょ

───ぜんぜん信用できんわ

だが、画面に映る浴室と、そこでくつろぐ客たちを見ていると次第に風向きが変わってくる。

綺麗に掃除された浴室。

気持ちよさそうに肩まで浸かり、くつろぐ客たち。

モザイクのかかった顔に表情は見えなくても、心底気持ちよさそうなことは伝わってきた。

───けっこう気持ちよさそう

───仕事帰りに行ってみるかな

───浴室内はだいぶキレイだな

コメント欄の空気は、少しずつ変わっていった。

モザイクの精度も、時間とともに信頼を積み上げていった。

何百時間と配信が続いても、顔や股間が映り込んでしまう事故は一度も起きなかった。

歩いても、屈んでも、湯船から勢いよく上がっても、モザイクは狂いなく追従した。

客足は、じわじわと戻りはじめた。

戻っただけではなく、増えはじめた。

「配信に映りに行く」という新しい目的を持った客も現れはじめた。

若い客がカメラに向かってポーズを決める。

ボディビルのポージングをする者、友人同士で湯船の縁に並んで座り揃って親指を立てる者たち。

顔も股間も見えないからか、安心してふざけているようだった。

その画像はSNSでも拡散され、さらに「〇〇湯」の知名度は上がっていく。

週末には行列ができ始めた。

同接は平日夜でも1000人を超えるようになっていた。

また、思わぬ効果もあった。

浴室内の迷惑行為が、カメラの存在によってほぼ根絶された。

「常時1000人以上に監視されている浴室」は治安のいい場所にもなった。

「〇〇湯」は、今や最も有名な銭湯とまで言われるようになっていた。

この仕組みを作った男は、奇抜な銭湯を成功させた男として、さまざまな取材に引っ張りだこになった。

その男の名前はTという。

2

会食を終え、Tはマネージャーとタクシーに乗っていた。

スマホをタップする。

Tの名前を検索すると、一番上に「〇〇湯」公式サイト、経営者についてのページ。

その下にはいくつものインタビューページ、ニュースページ。

検索欄のサジェストでは、「イケメン」「銭湯」「年齢」「経歴」「年収」「結婚」「大学」という言葉が並んでいる。

その下には「嫌い」「キモい」などの言葉も並ぶ。

成功者にはアンチが付き物だ。

Tは銭湯の公式サイトの下の、つい最近公開されたインタビューサイトをタップする。

Tの顔写真とともに簡単なプロフィール。

32歳。

実業家。

アイコンとなる写真には、いかにも自信ありといった表情の男が写っている。

刈り上げられた短髪。

深い紺色のジャケット。

インナーにはワイシャツではなく、白いカットソー。

清潔感を感じさせる印象。

その下にはインタビューが続いていた。

記者:開業当初は、かなり厳しかったと聞いています

T:厳しかったですね。一日の客数が片手で数えられる日もありました。正直、もうダメかと思いました。……それでも、うちの銭湯を気に入って通い続けてくれたお客様がいたから、継続できました。次第に他のお客様も通ってくれるようになって……。今でも感謝しきれません。

インタビューを眺めながら、Tは頭では別のことを考えていた。

下手に、下手に。

打算的な計画の通りではなく、偶然が重なった、という建前の方が世間は好む。

記者:Tさんのお人柄に、みなさんは感銘を受けたんですね。

T:いえいえ、そんな(笑)

少し抜けている部分を垣間見せる、できるだけ自然に。

すべてが計画通りだった。

客足が遠のいたとき、それでも通っていたのは、サクラだった。

安くない金を握らせて客のフリをしてもらった。

否定的なコメントがほとんどの中、数少なくあった好意的なコメントも、もちろんサクラだった。

記者:配信は、大手の動画サイトではなく、自社のサイトでされていますよね。

T:ええ。モザイクがあるとはいえ、全裸の配信は、バンされてしまいますので(笑)。でも、それなら「自社でプラットフォームを作ってしまえばいい」と、配信システムからすべて自社で組みました。

記者:普通であれば諦めてしまうような状況でも、Tさんの根気とこだわりが今の成功を実現させたのですね。

徐々にサクラではない客が銭湯を訪れた。

徐々にサクラではない好意的なコメントが現れた。

世間は自分の意思で「〇〇湯」に好意的な印象を持ったのだと思い込む。

目の前に少しの餌を撒かれれば、世間は簡単に食いつく。

世論を操るのは簡単だ。

と心で思っていても、おくびにも出さない。

画面内には、柔らかな笑顔のTがインタビューに答える写真が映し出されている。

「あ!」

隣のマネージャーが声を漏らす。

「どうした?」

マネージャーがスマホを見て、慌てて、こちらに画面を見せる。

そこには「〇〇湯」のライブ配信が映っている。

いつも通りだ。

そう思った次の瞬間。

画面内を通る30代くらいの男性。

その股間には皮の剥けたチンコがそのまま映っていた。

3

───モザイクなくね?

───ん?

───え

───ほんまや

───やばくね

───チンコ見えちゃってるじゃん

───やっば

───うわ

───見えてる見えてる

───モザイク死んでる

───顔とチンコ丸見えw

───粗チンで草

───毛生えてないのかわいい

───今の人でっか

───ヤンチャっぽい奴らがいつもみたいにポーズとってるけど

───いや丸見えw

───包茎見えてるの気づいてないwww

───やばくね

───ドリチンと顔映っちゃってるけど

───包茎ばっかり

───あ

───見えなくなった

───気づいたか

───配信終わり?

───あーあ

───終わったな

すぐに配信を停止したが、約10分間モザイクなしの映像が流れてしまっていた。

SNSには、すでにモザイクなしの転載動画が投稿されていた。

さらには、ニュースアカウントもすぐにこの事件を取り上げた。

それをリポストする一般アカウント。

潜在的に「〇〇湯」やTのことをよく思っていなかったであろうアカウントたちのバッシングが始まる。

世論が傾き始める。

目の前に少しの餌を撒かれれば、世間は簡単に食いつく。

それは、自分にとって都合のいいことだけではなかった。

瞬く間に「〇〇湯」は炎上した。

4

───お

───はじまった

───きたー

───同接えぐ

───脱衣配信

───がち?

───おおお

───はよ

───脱げー

「〇〇湯」の配信サイト。

配信が始まるとコメント欄が賑やかになる。

しばらくすると、配信画面にTが現れる。

いつも通りジャケットを着て、インナーにはいつものカットソーではなく、ワイシャツにきっちりとネクタイを締めていた。

───きたきた!

───おおお

───脱ぐの?

「このたびは、弊社〇〇湯の配信システムの不具合により、お客様の尊厳を傷つける事態を招いてしまいました。映ってしまったお客様には、直接お会いして、お詫びをしております。今一度この場で、心よりお詫び申し上げます。大変、申し訳ございませんでした。」

Tは深く頭を下げる。

───さすがに普通に謝罪

───まあ、チンコ映っちゃってたし

───今日は黒スーツなんか

Tは頭を上げる。

視線の先には、銭湯に取り付けられたカメラ。

自分の目の前のノートPCには、今まさにライブ配信の画面が映し出されている。

今は営業していない乾いた浴室内。

Tはスーツを着てそこに立っていた。

「この2週間、〇〇湯は営業を止めていました。楽しみに通ってくださっていたお客様、ご不便とご心配をおかけしました。すみませんでした。」

───もう通わないだろ

───心配してねえよ

───はよ脱げ

「システムの修理は完了しています。検証も社内で繰り返しました。モザイクの漏れもありません。システムは、完全に直っています。今回は顔のモザイクのみオフにしております」

───ほんとかよ

───てかカメラ外して営業すればいいだけじゃね?

───たしかに?

「先日お知らせしたとおり、本日、私が証明します。モザイクが機能しているかどうか、皆さんの目で、お確かめください。」

Tは再度お辞儀をすると、ジャケットを脱ぎ始める。

───おお!

───きたー

───ネクタイ外した

───ワイシャツ脱いでる

───おおお

───タンクトップ

───結構いい身体してんな

───鍛えてんの?

───丁寧に畳むんだ

───ベルト外してる

───脱ぐか?

───パンツだー

───ボクサーかよ

───大体みんなそうだろ

───もうパンツ脱ぐの?

───いや靴下が先か

───じらすな

───おおお

───いよいよ

───パンツに手かけた!

───きたきた!

5

Tは銭湯の浴室で、カメラの前で全裸になった。

目の前には配信内容を確認するためのノートPCが置かれている。

画面内の自分はまだボクサーパンツを履いていた。

カメラが撮った映像が配信に反映されるまでに10秒ほどの遅延がある。

10秒が異様に長い。

画面内の自分がスローモーションに見える。

焦ったく自分がパンツを脱ぐのを待つ。

脈拍は自然と上がっていた。

画面内の自分はパンツのゴムに手をかけて、今にも下げようとしている。

少し逡巡して、手が止まる。

───はよ脱げ

───おーい

───結局脱がないパターン

───今さらやめるの?

───お

───チン毛見えた

画面内のTは勢いよくボクサーパンツを足元に下げた。

───脱いだ!

───ガチじゃん

───おおお!

その股間にモザイクはなかった。

───モザイクないじゃん

───けっきょくwww

───うわー

───てかすごいな

───デカくね?

───まじ?

───すご

───でっか

───デカすぎ

───ふとい

───カリでか

───まあ、イメージ通りではある

───意外と粗チンパターンじゃないのか

───巨根

───俺の2倍はある

───勃ったらどうなんの

───剥けてる

───すげー

───正直うらやましい

───これは漢

───もう謝罪どうでもよくなったwwww

───巨根

───炎上とかどうでもよくなるデカさ

───やはり巨根は全てを解決する

───重そう

───なんセンチなんだ

6

モザイクが機能していない時点でTの頭には次の計画が進んでいた。

カメラの前でパンツを脱いでから10秒後、自分の股間にモザイクがないことをようやく知った。

とっさに隠そうと手が股間に伸びるが、すんでのところで止まる。

股間にはチンコが晒されたまま、配信は続いていた。

───隠すな

───隠さなかった

───漢だ

───てか手で隠れるの?

───隠さないの男らしい

モザイクが機能していることが最善ではあった。

客の裸を晒してしまった失態を挽回する方法を考えた。

ただ謝罪するだけ、ただカメラの修理を報告するだけ、ただカメラ自体を撤去するだけ、それだけで客足が戻るとは思えなかった。

自らを実験台として謝罪配信をすること。

それが、考えうる最も誠実な行動でありつつ、視聴数も稼ぐ内容。

ただ、モザイクが失敗したとなれば、もうこの銭湯は本当におしまいだ。

この事業は捨てるほかない。

ただ瞬時に、次への展開を考えていた。

現状だけでも、すでに誠実な姿は見せられたはず。

そこにチンコが放送されてしまうという事故。

もはや謝罪や、人の裸を晒してしまったことなど忘れてしまうほどのインパクト。

さらにその股間についたチンコは目を見張るもの。

誠実を見せて挽回する作戦から、敬服でさらに信者を掴む、次善の策に切り替わっていた。

信者さえいればTはいくらでも返り咲ける自信があった。

「またしてもモザイクが機能せず、見苦しいものをお見せして申し訳ございません。ですが、ここを隠す資格は、私にはありません。お客様の尊厳を傷つける事態を招いてしまいました事実、重ねて謝罪いたします。この度は申し訳ございませんでした。」

Tはまた深く頭を下げる。

今度は全裸の状態で。

───見苦しくないぞ

───かっこいいぞ!

───でかいぞ

───チンコでかすぎ!

───男らしいぞ

───よ!チンコでか男!

頭を上げるとコメント欄が目に入る。

すでに視聴者たちの懐柔ができている。

口角が上がりそうになるのをTは必死に耐える。

目の前に少しの餌を撒かれれば、世間は簡単に食いつく。

すでにTの失敗談は新たな成功譚へと切り替わっている。

Tが頭を上げた10秒後───

───え?

───は?

───何これ

───wwwww

───ちっちゃ

───は?

───ん?

───えちっちゃ

───粗チン

───すっぽりじゃん

───さっきまでのはなんだったの

───何これマジック?

───ドリチンじゃん

───なんだよ

───俺のより小さい

───マジックは草

───wwwwwwww

───あー

───解散解散

───惚れ込んだのバカみたい

───なんなんこいつ

───モザイクと同じで巨根フィルター貼ってたってこと?

───そういうことか

───こいつ粗チン隠すために巨根に見えるように細工してたんだ

───だっさ

───チンコも小さけりゃ器も小さい

───かす

───てか小さすぎ

───前向いてんじゃん

───勃起してるわけではないんだよね?

───軽すぎて垂れないんだろ

───うわー

───こんな成功者でもこんなしょうもない見栄張るんだ

───ドリチン

───粗チンで謝罪が1番誠実では?

───ほんとに大人か?

突然湧き上がったコメント欄に何が起こったのかわからず、配信画面に目をやる。

Tの股間には小さなチンコがついていた。

さっきまでの巨根ではなく、垂れ下がることのない、すっぽりと皮の被ったチンコ。

Tが毎日見慣れているチンコだった。

とっさにTは股間を両手で隠す。

───今さらwwww

───もう遅いから

───スクショ撮った

───うわー

───恥ずかしー

───両手いらんだろ

───片手で隠せるだろ

───指一本で隠せるだろww

───いつもみたいに胸張れよ

───ちっちゃすぎて配信載せても問題ないんじゃね

───あ逃げた

───だせー

───みじめ

───裸で出てったwwww

───ケツだけモザイクついてて草

7

Tは裸のまま脱衣所にいた。

うまく呼吸ができない。

手は硬く股間を握っていた。

その中でチンコがいつも以上に縮こまっているのがわかる。

心臓がバクバクとうるさく脈打っている。

客のチンコが配信に乗ってしまった時も、炎上した時も、配信で謝罪した時も感じていなかった絶望が体を侵食していく。

ほとんど皮だけの、くしゃくしゃになったチンコが手のひらの中にある。

今この建物には自分以外誰もいなかった。

社員たちにはここにこないようにと伝えていた。

裸を見られないためだった。

まだ配信は続いている。

無人の浴室が映っているだろう。

配信を切るためにはまた、浴室のノートPCをいじらなければならない。

タオルで股間を隠しながら行くか?

いや。

Tは全裸のまま、事務所に向かいカメラのスイッチをオフにする。

そのあとで、おそるおそる、浴室に入る。

手は股間を握ったまま。

ノートPCを見る。

そこには浴室内が映っていた。

一瞬、まだカメラがついていると思ったが、よく見るとオフにした時点での映像でフリーズしているようだった。

一応カメラに映ることは防げたらしい。

配信自体はフリーズした画面のまま継続されている。

───どこいった?

───粗チン逃げた

───固まってる?

───もう帰ってこないだろ

───短小

───あ

───切れた

───終わったか

───終わりだね

───いろんな意味で

『配信は終了しました』

Tは配信を切った。

カメラはオフにしてあるが、なんとなく撮られている気がして、片手は股間を隠したままだった。

そのまま、床に置かれた衣類を持って脱衣所に戻る。

急いでとりあえず、ボクサーパンツを履く。

ようやくチンコを隠し、浴室からノートPCなどを回収する。

スマホにはSNSと、会社のコンタクトフォームからの連絡の通知が止まなかった。

不特定多数の面白がった野次馬からのものだろう。

対して近しい人間や、社内チャットの連絡通知は静かなものだった。

気を使われているのかもしれない。

Tはパンツ一丁で脱衣所の床に座り込む。

カメラの修理はエンジニアに頼んでいた。

モザイク処理のテストは社員たちのチンコで試していた。

その際は問題なく機能していた。

ただ、Tのチンコでは試していない。

第二の策として、モザイクが機能しなかった場合に、巨根のダミーが股間に映し出されるように頼んでいた。

それはエンジニアとTだけが知っていることだった。

もうどうでもいいことだ。

Tは小さくため息をつく。

スマホの通知はまだ止む気配がなかった。

8

──────

差出人:開発部 K

宛先:代表取締役 T

件名:【社外秘】先日の謝罪配信における検出不具合の調査結果について

T社長

お疲れ様です。

開発部のKです。

先日の配信での不具合の件、調査が完了しましたので結果をご報告いたします。

■ 調査結果について

システムに故障はありませんでした。

検出エンジン、補正エンジン、モザイク描画、すべて正常に動作していたことを、ログ上で確認いたしました。

■ 当日の挙動の詳細

当日、映像内の被写体(Tさん)について、顔部・臀部は信頼度0.97以上で検出されており、モザイクの対象内でした(当日は謝罪配信のため、顔のモザイク機能は切っておりました)

一方、局部の検出信頼度は、0.28〜0.34の間で推移していました。

本システムの適用閾値は、モザイク適用が0.65以上です。

局部はモザイク閾値に到達せず、保険として準備していた補正画像適用の閾値の前後を変動していました。

映像上で補正画像表示と非表示が発生していたのはこのためです。

20時23分ごろ、Tさんの姿勢変化に伴い信頼度は0.30を下回って安定し、以降、補正画像の適用されない状態が継続しました。

■ 局部の信頼度が低下した原因

検出モデルの学習データ分布を精査しました。

現行モデルは学習データ(約3万件)における局部のデータと照らし合わせて、判断を行っています。

局部の特徴分布を確認したところ、Tさんの局部が持つ特徴の組み合わせが、学習データ内に該当例がほぼ存在しない領域に位置していました。

個別の特徴(陰茎サイズ、陰毛の有無、体格との比率など)はいずれも学習範囲内ですが、その組み合わせが分布の空白域にあたります。

サイズの近い局部の学習の検出はログでも確認できましたが、いずれも陰毛のないデータであったため、判断に迷ったものと思われます。

モデルは学習で見たことのない組み合わせに対して信頼度を出力できませんでした。

■ なぜ事前検証で検出されなかったか

休業期間中の検証では、社内テスト協力者12名の登録データおよび検証用データセットに対して実施し、検出率100%を確認していました。

Tさんの局部データは、テスト協力者データベースに登録がありませんでした。

検証は「登録された全協力者」に対しては完全でしたが、Tさんのデータはその中に含まれていなかったため、事前に本事象を検出することができませんでした。

Tさんの局部のデータ登録が行われなかった経緯については、開発部では把握できておりません。

Tさんの方では何かご存知でしょうか。

■ 再発防止策

(1) 学習データの分布空白域の網羅的な洗い出し

(2) 信頼度が中間帯で持続する対象を検知した場合、自動的に全画面待機画像へ切り替えるフェイルセーフの追加

以上です。

本報告書の取り扱いにはご注意ください。

何かご不明点があれば、お手数ですがお声がけください。

開発部 K

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