【無料サンプル 約20,800字】寄生キャンプ・峻嶺学園編① (Pixiv Fanbox)
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「──我が校、峻嶺学園は今年で創立120周年を迎えます。そのような節目の年に、新入生の皆さんを迎えるのは大変な喜びであると共に──」
私立峻嶺学園。明治に創立したこの学校は、都心から電車で数時間離れた山間部に位置している。最寄り駅から学校までは、さらにバスで30分。周囲を森と渓谷に囲まれた隔絶した環境で、全寮制の男子校として質の高い教育を行うだけでなく、スポーツにも力を入れている強豪校だ。野球、ラグビー、水泳、柔道、レスリング……いずれも大会の常連であり「一流の環境でスポーツしたいなら、まずは峻嶺が第一候補」というのが、運動部の生徒や親たちの間での評判だった。体育館に集まった新一年生たちも、体格のいい生徒が非常に多い。
──ゆえに”彼ら”に目を付けられたと言える。
(あ〜〜〜くそっ! どいつもこいつもガタイよくてたまんねえな! 早くこいつらの体で”殖え”てぇ!)
新一年生の列に並んでいる、坊主頭の逞しい男子生徒。熊谷浩樹。濃く凛々しい眉、意思の強さを感じさせる精悍な眼差し。身長も180cmを超えており、筋骨隆々とした体格をしている。体から成熟した「雄」としての風格を漂わせるこの生徒は、既に”彼ら”の手中に収められていた。その若武者を思わせる凛々しい瞳が、情欲で濁る。
──くちゅっ。
(んくっ!)
”彼ら”が熊谷の体内で蠢いた。”彼ら”はまだ人類には発見されていない。故に名前はない。”彼ら”は男性の肛門から侵入し、直腸内に寄生する。直腸内で宿主の糞便を食べて育ちつつ、男性ホルモンを分泌させ、宿主の性欲をさらに増し、筋骨逞しい肉体へと変えていく。殖えるために。より広がるために。熊谷浩樹もまた、三年ほど前に”彼ら”の宿主となったことで、徹底的に体と心を作り変えられた。華奢で内気だった少年は、性欲がギラギラと滾り、男を食い漁る雄へと変貌した。
(あ〜……旨そうな野郎ばっかじゃん。どいつから食ってくかな)
入学式が終わり、新一年生たちが整列して体育館から渡り廊下へと移動する。外の日差しを浴びて新入生たちの緊張が緩む中、熊谷は隣を歩いていた男子生徒から話しかけられた。
「なあなあ、熊谷だっけ? お前さ、入る部活決まってる?」
日焼けしていて鼻っ柱の太い、ゴツい男子生徒だった。おおよそ女性にはモテそうにない芋臭い顔つき。髪は熊谷と同じく坊主頭だ。だが、その性欲の強そうな顔とガタイに、熊谷は内心舌なめずりをした。
「ん? 俺はレスリング部。なんで?」
「そっちか〜! いや、お前も坊主だったから、野球部かなって思って」
「ああ……坊主なのは、単に手入れが楽だから」
実際には熊谷は中学で野球部だったのだが、高校では目的があってレスリング部に入ろうとしていた。だが”彼ら”の寄生を広げる都合にも関わるため、目の前の野球部員らしい生徒には黙っていることにした。
「そういうお前は、やっぱ野球部なわけ?」
「まあな。熊谷、すげえいいガタイしてるし、俺と一緒に野球やんねえか? あっと、そうだ。俺、茂木。よろしく!」
茂木ははにかんだように熊谷に笑いかけた。妙に顔が紅潮している……無理もない。熊谷の体は既に”彼ら”によって、雄を誘引する疑似餌のように作り変えられている。熊谷の汗に含まれるフェロモンを嗅ぐと、妙に熊谷に惹かれてしまう。大半の男はそれが性的な欲求だとは気づかない。気づいたとしても大抵は認めようとしないが。しかし茂木には覿面に効果が出ているらしく、股間が次第に固くなり始めているようだ。熊谷は、妙にもそもそと歩く茂木を見て察した。
「茂木。今日は入学式だけで午後は授業ないし、部活も明日からだろ? 昼飯を食堂で食ったら、俺と校内を見て回らないか? 峻嶺、結構広いからさ」
熊谷は精悍な顔に笑みを浮かべて、茂木を誘った。凛々しく魅力的な雄が、自分に好感を抱いてくれている──雄としての密やかな自尊心をくすぐられた茂木は、すぐさま了承した。熊谷はこの若い雄を性的に貪り、征服する様子を想像し、鼻息を荒くしていた。
※
「んっんっんっ……!」
茂木の肛門には熊谷の太いモノが出入りし、そのたびに茂木は切なげな鼻声を漏らしていた。
入学式が終わった午後。授業もなく在校生も部活がないため、校舎内には人の気配が希薄だった。あちこち茂木と学校内を見て回った熊谷は、おおよそ人の来なさそうな空き教室を見つけると、すかさず茂木へのアプローチを始めた。この辺りの「嗅覚」は、熊谷が何度も男たちを食い漁ったことで磨かれたものだ。熊谷の体内で分泌される濃厚なフェロモンが、密室内に放たれる。そして意図して行われる親密なスキンシップ。雑談の中に下ネタを混ぜつつ、熊谷は猥褻な雰囲気を醸し出していく。
「茂木も太腿パンパンだな。レスリングでも活躍できんじゃねえか?」
熊谷は茂木の太腿を意味深にゆっくりと撫でた。茂木はびくりと体を震わせつつも、抵抗はしない。彼の思考は既に熊谷のフェロモンで支配され、判断能力は著しく低下していた。理性では理解できない甘い香りが、茂木の脳を蕩かせ、快感中枢を刺激する。芋臭い野球部員、茂木哲史の脳は熊谷のフェロモンと猥褻な雰囲気に酔いしれて「熊谷浩樹に惚れた」と判断してしまう。
「く、熊谷……」
その結果、茂木は顔を上気させると、妙に熱っぽい視線を熊谷に注ぎ始めた。熊谷はさらに顔を近づけ、おもむろに茂木にキスをした。茂木の肩がビクリと震える。熊谷が舌を挿入してやると、戸惑いがちに、しかし次第に熱心に、茂木も舌を絡ませ始める。”彼ら”の分泌する化学物質によって、淫液と化した熊谷の唾液を摂取した茂木が、熱っぽい喘ぎ声を上げながら熊谷のチンポをねだり始めたのは、必然と言えた。熊谷はそれに快く応じてやったまでだ。
「あ〜〜〜やっべ。すっげえ締まるな、茂木ん中。もうたまんねえよ」
「なんでこんなっ……んんっ! ケツ! ケツだけでこんな……き、気持ちいいんだよッ!」
「体の相性がいいんじゃねえの? ほら、続けるぞ」
「待っ……んくうっ!」
机に手をついて突き出した茂木の尻に、熊谷は太ましいチンポをピストン運動のように出し入れする。野球部員特有の、筋肉と脂肪が程よく乗った肉体。熊谷はそれを堪能しつつ、良質な宿主がさっそく手に入る事実に、それだけで達してしまいそうなほどの興奮を感じていた。
「あっあっあっあっマジで! マジでヤバイって! なんだこれっ! んっ! ンあぁっ!? ングッ!!?」
雄叫びを上げそうになった茂木の口を、熊谷は左手で覆い隠す。そして熊谷の腰の動きが一層早くなると、熊谷は茂木の肛門内に射精した。数億もの精子が、一斉に茂木哲史の肛門内に注ぎ込まれた。
──”彼ら”によって改造されたそれを「精子」と呼ぶのが適切なのかは、甚だ疑問ではあったが。
「オッ! おぉぉゥ……!!!」
ヒクヒクと肛門が痙攣し、茂木は濃い眉根を寄せて、悩ましげに唇を突き出した。熊谷浩樹の精子は”彼ら”によって根底から機能をデザインし直されていた。熊谷浩樹の精子は、卵子ではなく──人間の粘膜組織に「受精」する。その結果、DNAレベルで細胞を作り換えて性感帯へと作り変えてしまう。まるでウイルスのように振る舞うそれは、茂木の肛門から直腸を性感帯へと変え、さらに”彼ら”が寄生する下準備を神経系に対して行っていく。植物の種を植える前に、土壌を改良するようなものだ。これがなくても寄生はできるが、馴染むのにやや時間がかかる。
「すっげ…………いい…………あうぅ……」
熊谷が男根を肛門から抜いてもなお、茂木は芋臭い顔に恍惚とした笑みを浮かべたままだった。熊谷はそんな茂木を横目に、空き教室の床にしゃがみ込むと、力んだ。
「ん……んぐっ……!!」
ずりゅり、と”彼ら”の幼体が産まれ落ちた。正確には産まれたのではなく、分裂だ。熊谷浩樹の男性器に酷似したそれは、竿から玉袋までの質感までもが、瓜二つだった。熊谷は、床に落ちた幼体を慈しむような手つきで拾い上げると、肩で息をしている茂木の肛門にあてがった。意図を勘違いした茂木は、振り返りながら口を開いた。
「ちょっ……さすがにもうちょっと……休ませてくれ。マジですごく……ンイッ!?!?」
幼体は、巨根に似た形状が嘘であるかのように器用に伸縮すると、粘着質な音を立てながら、茂木の肛門へと侵入した。
「イッ! アッ! んィッ!!……〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!?!?」
熊谷は叫びそうになった茂木の肩を掴んで振り向かせると、キスで唇を塞いだ。意図して催淫作用のある唾液を再び注ぎ込む。発情させられた脳と、肛門内に根づき始めた幼体によって、茂木の瞳の色は恐怖から情欲へと塗り替えられていく。
「んくッ!!!!」
数十秒後、茂木はビクンビクンと肩を大きく震わせた。寄生時の生理的反応だけで、茂木の男性器は手も触れずに射精を遂げていた。固く反り返った男根が萎え、亀頭が緩やかに皮に包まれていく。先端からは粘ついた白濁がとろとろと床に垂れていた。ハーッ、ハーッと肩で息をする茂木に、熊谷はほくそ笑みながら声を掛けた。
「茂木。気分はどうだ?」
「お、俺に……何したんだ……?」
茂木は芋臭い顔を歪めた。だが頬は妙に緩んでいる。茂木は首を傾げながら後頭部を触っていたが、徐々に荒い息を吐き始めた。
「なんか妙なやつ……俺に入れたよな? でも、すげえ……嬉しい。あ、あれっ?」
茂木の瞳から涙が垂れる。しかしその瞳には、喜悦の色が浮かび始めた。頭で理解している状況と、自分自身の感情が食い違っている。そのことを理解してもなお、茂木の脳には喜びが湧き出てしまう。若い雄の肉体と感情が”彼ら”に屈していく様子を、熊谷は冷徹な視線で観察していた。
「んっ……コイツ、俺の中で動いた……やべ、可愛いかも……」
茂木はうっとりとした表情で、割れた腹筋を撫でた。”彼ら”は宿主に対して、自分自身の体の一部であるかのように錯覚させる。それにより”彼ら”を駆除するという発想は宿主には浮かばない。それは大半の男性が、自身の男性器の去勢に嫌悪感を抱くのと同じように。それだけでなく、性感帯と化した肛門内で緩やかに”彼ら”が蠕動することは、宿主に甘やかな快感を与えていた。茂木の脳にオキトキシンを分泌させ、”彼ら”への愛着を高めていく。
「つうか俺の体……結構エロくね?」
茂木の芋臭い顔が、野球で鍛えた自身の肉体に好色な視線を向けた。”彼ら”に寄生された男は、他の宿主候補との接触機会を増やすため、熱烈な男好きへと変えられてしまう。”彼ら”は、茂木の認知機能にも影響を及ぼしていた。
「あ〜〜〜野球で鍛えててマジで良かった……俺がデブってたりしたら、コイツも恥ずかしいよな」
アイデンティティが、緩やかに変質していく兆候だった。「自分は茂木哲史という個人である」というごく当たり前の認識が「自分は”彼ら”を収めるための器である」「この『茂木哲史』という器は、彼らに奉仕するために存在している」という認識に、これから徐々に塗り替えられていく。記憶も人格もそのままに、アイデンティティの根底が”彼ら”に乗っ取られる。”彼ら”と自他の境界が曖昧になり、”彼ら”の繁殖欲求を、自身の性欲だと認識するようになる。茂木哲史という高校球児は、自身の肉体と精神が汚染され始めたことに気づかないまま、腹の中にやってきた「相棒」を喜んで迎え入れた。実際には「相棒」ではなく、この肉体の「主人」になるのだが。
「おい茂木。お前、自分の立場はわかってんだろうな?」
熊谷は先程までとは違い、そっけなく茂木を呼んだ。単に今までの態度は、茂木を堕とすために親密な友人を演じてやっていたに過ぎない。熊谷の本質は、男を支配することに興奮するサディストであった。しかし、茂木はそんな熊谷の態度にも驚くことなく、熊谷から高圧的に声を掛けられることが、ごく当たり前であるかのように頷いた。
「ああ、わかってるって。……いや、なんかよくわかんねーけど」
茂木の言葉は、いまだ状況を正確に理解できていないことを示していた。だが、彼の深層心理は、既に熊谷との間に形成された主従関係を受け入れていた。それは、個体間の本能的な階級付けがなされた証だった。熊谷の個体が放つ圧倒的な「格」の差が、茂木を無条件に服従させていた。
「俺、お前のモノになったんだろ? なんつうか、お前の方が格上? なんだよな?」
茂木と違い、熊谷浩樹の体内の個体は、長期間の寄生と熊谷浩樹自身の適性もあり、ある種の「上位個体」になっていた。既にその個体は熊谷の肉体と不可逆の融合を果たし、熊谷の肉体の一部になっている。それは進化の過程で、細胞内に取り込まれてしまった微生物のミトコンドリアとも似ていた。
上位個体──後に「髄主」と彼ら自身が名付けるそれは、特別な個体である。
髄主は、下位個体たちを統率する。
長く寄生すれば必ずそうなるというわけではなく、宿主との適性に左右される。髄主が現れたコミュニティは、個々の個体が散発的に寄生を広げるのとは比べ物にならないほどの、爆発的な寄生の拡大を引き起こす。熊谷は既に中学時代から髄主として目覚めている。髄主は分泌するフェロモンや、宿主の瞬きや視線、身振り手振りなどの言語外のコミュニケーション、そして下位個体の思考すら読み取る、ある種の超常的な共感覚能力によって、下位個体を従える。そして下位個体は髄主への奉仕を自然と受け入れる──下位個体の宿主も含めて。”彼ら”特有の本能は、宿主になったばかりである茂木哲史にも、深く刻み込まれていた。
熊谷は、茂木の角張った顎を軽く掴みながら口を開いた。
「そうだ。とりあえず、俺はこれからレスリング部で『仲間』を増やしていく。お前は俺がいいと言うまで、表向きは普通の学生生活をしていろ」
「ああ、わかった」
「だんだんお前の体からも、周りの男を発情させるフェロモンが出てくるはずだ。なるべく野球部の連中と親密なスキンシップを取れ。連中をお前の体に興奮する男好きに変えておくんだ。寄生の下準備だ」
「寄生? よくわかんねーけど、準備しとけばいいんだな。やっべ、殖えんのマジで楽しみだ! ん? 俺、さっきから何言ってるんだ?」
「まだ気にしなくていい。だんだん馴染んでくるから、違和感はなくなるはずだ」
「そうか? わかった。これからよろしくな! 俺、頑張ってお前の役に立つからさ! 高校で『仲間』、いっぱい殖やそうぜ! うお〜〜っ! マジで楽しみだ!!」
自身の脳と肉体が寄生生物に支配され、人類へ牙を向き始めたことを自覚していない茂木哲史は、芋臭い顔に無邪気な笑みを浮かべて喜んでいた。
※
翌日から熊谷の、峻嶺学園での学校生活が始まった。
「おーし、みんな揃ってるな。これから一年間、君たちの担任になる高田健太郎だ。よろしくな」
熊谷たちの一年一組の担任は、白いポロシャツに紺のジャージを穿いた、快活な雰囲気の34歳の体育教師だった。担任の高田は、朝の時間を使って簡単なオリエンテーションを始めた。
「事前に説明はあったと思うが、峻嶺はかなり部活動に力を入れている。みんなも昨日から寮生活をスタートしているが、一部の部活については、部の結束を高めるため、同じ部員同士での相部屋になる。いま入っている部屋からの移動もあり得るため、注意しておいてほしい」
高田は黒板に「野球部」「ラグビー部」「レスリング部」と書いた。
「実際に部屋を移動するのは、仮入部期間が終わってからになるが──」
(これだよこれ。”繁殖地”にするには、お誂え向きの場所じゃないか)
熊谷は窓際の席で、高田の話に聞き入っているふりをしながら、ほくそ笑んだ。この部活単位での相部屋制度を利用すれば、一つの部活を集中的に堕とすことが可能になる。他の部活は、その後で順番に堕としていけばいい。
(野球部でも構わないが、やはりコンタクトスポーツの方が何かと都合がいいしな)
熊谷は体内で練り上げたフェロモンを放つ様子を想像した。「野球部」「ラグビー部」「レスリング部」のどれを選んでも、一つの部で相部屋になる点は同じではある。だが部活動そのものも堕とす機会とみなすならば、野球部だと部活動中はそれぞれ部員同士で距離がある。となると部活動中にも部員同士の接触が多いのはラグビー部かレスリング部。否、より密着度が高いのはレスリング部だろう。
(それに今後のことも考えれば、俺自身が格闘技を修めていた方が、何かと”殖える”ときに役に立ちそうだ)
熊谷の性的な衝動は"彼ら"の繁殖本能と完全に同期しており、彼が部活動を選ぶ基準は、自身の嗜好ではなく、"彼ら"の拡散に役立つか否かだった。それゆえ、熊谷は入学前からレスリング部に目を付けていた。フェロモンだけでなく格闘技もまた、宿主候補を征服する手助けになるだろう。
「ちなみに俺が顧問をしているのはラグビー部だ。見学はいつでも歓迎しているからな。どんどん声を掛けてくれ! 初心者も大歓迎だからな!」
担任の高田が日に焼けた顔に笑顔を浮かべる。熊谷は舌をちろりと出して唇を舐めた。高田もまた、"彼ら"の宿主に相応しい雄ではある。すぐにでも取り込みたい気持ちもあるが……まずは着々と仲間を殖やし、充分に準備をしてから堕とすとしよう。最初に喰らうのは、レスリング部だ。
※
放課後。体育館に隣接するレスリング場には、他の新入生たちに紛れて熊谷の姿があった。ポリエチレン素材の弾力あるマットレスは、青地に赤と黄色の大きな円が描かれたシートで覆われている。既にストレッチを終えた上級生たちが、各々練習を開始している。練習着は動きやすさを重視したTシャツと短パンだ。
「一年! 集合!」
レスリング部の顧問である、猪狩征一郎が胴間声を上げた。黒いTシャツと短パンを穿いた彼の肉体は、46歳という年齢を感じさせない筋骨逞しいものだった。かつてオリンピックへの出場経験もあり、引退後は教員免許を取得し、後進の育成に熱意を注いでいる。そんな彼が数年前に峻嶺学園からのスカウトを受け、この学園に来たのは必然と言えた。猪狩の指導のもと、峻嶺学園は全国大会の常連校としての地位を確立した。新入生一人ひとりの顔を猪狩が厳しく見据えた。
「始めに言っておくが、ここは全国制覇を目指す場所だ。遊び半分で入るのはやめてもらいたい。勝ちに行く意思を持ち、勝つための努力を惜しまない者だけが入部するように。無論、真剣にレスリングに取り組むのであれば、初心者も受け入れている。レギュラーの中にも、高校からレスリングを始めた部員もいるからな。努力する者については、俺も、君たちの先輩も、惜しみなく指導しよう」
新入生を集め、低く響く声で話す猪狩。一通り心構えを話し終えると、猪狩は部長を呼んだ。
「小笠原。新入生の面倒を見てやれ」
「わかりました」
小笠原恭平──レスリング部部長の三年生が後を引き継いだ。髪は坊主頭で、やや堅物そうな印象の三年生だ。首周りが太く、胸板が厚い。ストイックにレスリングに打ち込んでいるであろう小笠原部長は、20人ほどいる新入部員たちの前に立つと言葉を発した。
「まず、中学までレスリングをしていた経験者組と、高校からの初心者組に分かれて指導を行っていく。経験者は挙手してくれ……まあまあいるな。それじゃあ、次は初心者組だが──」
※
熊谷浩樹が常々注意を払っているのは、獲物から警戒心を取り去ることである。獲物が無防備であれば狩りの成功率が上がる。それだけではなく、獲物の側から望んで熊谷に身を捧げることさえあり得る。入学式の日に”彼ら”を受け入れた茂木哲史のように。仮入部期間の熊谷は静かに息を潜め、学校生活や部活の練習メニューに体を慣らすことに専念していた。
仮入部期間の一週間の間に、熊谷は新入部員だけでなく、上級生や顧問からも一目置かれる存在となっていた。表向き、熊谷は中学では野球部に所属して主将になり、さらに生徒会長までも務めた、文武両道の模範的な男子生徒である。といっても、中学で野球部に所属したのは「一番部員の人数が多かったから」で、特に野球への関心はない。生徒会長になったのも「その方が周囲から信用されて、獲物を狩りやすいから」という理由でしかない。熊谷の尽力の甲斐あり、熊谷の出身中学は相当数の生徒と教師が寄生され、”彼ら”の繁殖地の一つとして確立した。熊谷が卒業した今でも、あの中学では生徒や教師が嬉々として寄生を広げていることだろう。そして寄生された生徒は帰宅後、父親や兄弟の肉体を”彼ら”に捧げ、さらに殖え続けているはずだ。
仮入部期間の最終日、金曜の夕方だった。顧問である猪狩は既に指導を終えて、レスリング場から去っている。だが小笠原部長と、妙にニヤニヤしている二年生、三年生たちが、一年生は残って部室に入るように告げた。小笠原部長は一年生が全員入ったのを確認すると、部室の扉を閉めた。そしていつもの厳しげな顔に赤みが差した様子で、部長は話し始めた。
「あ〜、まずは峻嶺レスリング部への正式入部、おめでとう。で、だ……この峻嶺レスリング部には、新入生を歓迎する伝統がある」
いよっ! 待ってました! と三年生がヤジを入れる。誰かが口笛を吹き、バカ! 猪狩が戻ってくるだろ! と突っ込まれていた。部長は赤らんだ顔で、話を先へと進めた。
「君たちには『自己紹介』してもらう。ただ、普通の自己紹介じゃない」
部長の後ろにいた、顎の角張った二年生が恭しい態度で前に出て、両手で丁重に何かを部長に差し出した。半透明のピンク色をしたそれは、どう見ても貫通式のオナホールだった。
「ウチの部に伝わっているオナホール『マユミさん』だ。……いまは5代目だったか?」
「いや、6代目っす」と顎の角張った二年生が答えた。部長は頷くと『マユミさん』を受け取って掲げた。
「一年生には『マユミさん』を丁重にもてなしつつ……全裸で、自己紹介をしてもらう。これが峻嶺レスリング部の『伝統』だ」
一年生たちの反応は様々だった。マジかよ……と頭を掻く者。露骨に鼻息が荒くなっている者。どうする? お前先行けよと順番を押し付けあっている者。そして熊谷はそんな一年生たちと、この卑猥なイベントを愉しんでいる様子の二年生、三年生たちの様子を静かに見据えていた。
(なるほどな。こういうイベントがあるのはありがたい。俺が”雄”として格上であることを、コイツらにアピールしておくか)
そして自己紹介が始まった。一年生たちは全裸になり、一人ずつ部室の中央に招かれた。
「じっ! 自分は一年三組の……池田淳平っす! 中学からッ……んっ! れ、レスリングやってたんで、マジで……ま、マジで峻嶺に憧れててッ! んっ! アッアッアッ!」
峻嶺レスリング部への憧れを語りながら、鼻息を荒くし、性的興奮と緊張のままにオナホールを忙しなく動かす一年生がいた。
「ムリムリムリっすよ! 俺こんなのっ! ひうっ! あ、お、俺は一年二組の……田崎圭吾でッ……! オッ! アッ! ちょっ! 手! 止めてくださ! イッ!? オッオッ!? オおぉぉおおっ!!?」
恥ずかしがって自分からオナニーしなかったために、二年生たちにガッチリと体を抑えられて、強引にオナホでチンポを扱かれながら自己紹介する一年生もいた。
部室の中は、一年生たちの嬌声と、それを見てニヤつく上級生たちの熱気で満たされていた。あの堅物そうな部長でさえ、この「伝統」を乗り越えてきた身として、落ち着かない面持ちで一年生の破廉恥な光景をチラチラと見ている。そうしているうちに、熊谷の番が巡ってきた。
「一年一組、熊谷浩樹っす」
フーッ、と深い息を吐きつつ、熊谷は自己紹介を始めた。他の一年生の精液とローションでヌルついた「マユミさん」を、反り返ったチンポに宛てがう。高校生とは思えない、雁首の張り出した雄々しい男根が、ゆっくりと挿入されていく。他の一年生だけでなく、二年生や三年生の中にも、熱のこもった眼差しを向ける者が数多くいるのを、熊谷は肌で感じ取っていた。貫通式のオナホの反対側から、熊谷の亀頭がぬるっと出てきた。明らかに平均以上の太さがある。「マユミさん」が受け入れられるギリギリのサイズのようだった。
「んっ……自分は……レスリングは初心者ですが……ッ……峻嶺レスリング部の先輩方の……んぅっ……圧倒的な強さに憧れを抱き、未経験ながらも……この部で自分を鍛え上げたいと強く思い、入部を決めました」
鼻息荒く峻嶺レスリング部への憧れを口にしながらも、熊谷は淡々と自己紹介を進めていく。並の男子高校生が持つ性的な衝動に支配されることなく、その言葉からは己を厳しく律する精神力が明確に伝わってきた。しかしその毅然とした態度とは裏腹に、グチュグチュと音を立ててリズミカルにオナホールを扱いている。
「ンッ……ぅ」
熊谷が濃い眉根を歪めた。一年生とは思えない、快感に酔う男の色香に、上級生や他の新入生たちの鼻息がわずかに荒くなる。熊谷が野球で鍛えた腹筋は割れており、胸板も厚い。男としても惚れ惚れするような筋肉質な肢体であった。自分たち以上に”雄”としての格上の肉体と精神力を、この場にいる者に示していた。
だが、それだけではない。熊谷は分泌するフェロモンを調整して、さらに彼らの興奮を煽っていく。熊谷がオナニーする光景を性的な興奮と結びつけ、彼らの無意識下に刷り込んでいく。男の逞しい筋肉、怒張した男根。熊谷の雄々しい姿と漲る性的魅力が、彼らの心の奥底に染み込み、自然な衝動として根付いていく。これからの繁殖に向けた”仕込み”を、熊谷は怠っていなかった。
「──以上です。先輩方の……ご指導、ご鞭撻を! よろしくお願い致しますッ! 押忍ッ!!!」
硬派な宣誓と共に、熊谷浩樹は射精した。貫通式オナホの「マユミさん」から、ブシュッと濃厚な精液が噴き上がる。その堂々たる振る舞いに、部室中にどよめきが起こった。
「……すげえ」
「かっけえな……」
「やべえ、すげえよ熊谷」
フーッ、と荒い息を吐くと、熊谷は次の一年生に「マユミさん」を手渡した。「マユミさん」を受け取った新入生も、周囲の上級生も、まるで時間が止まったかのように静まり返っていた。その場の全員が、熊谷の放つ男の色香に絡め取られ、股間がじわりと熱を帯びていくのを感じていた。
※
「それにしても熊谷……お前、すごかったな」
「なにがっすか?」
翌日は土曜日だった。仮入部期間が終わったことで、寮の部屋割りが再編成され、熊谷はレスリング部が占有する棟へと引っ越してきていた。峻嶺学園の学生寮は三人部屋で、下段が学習机になっているロフトベッドが三つある。そして一年生、二年生、三年生が一名ずつ同じ部屋で生活する。同じ部屋の二年生である岩村琢也が、荷物を運び終えた熊谷の肩を叩いてきた。
「昨日の『自己紹介』だよ! あんなに堂々とやったやつはそういないぞ? 昨日から俺らの間じゃ、熊谷は部長候補だって持ちきりなんだ」
「うす。ありがとうございます」
「自己紹介だけじゃない。お前、本当にレスリング初心者なんだよな? とても初心者とは思えん飲み込みの速さだ」
岩村の称賛の言葉に熊谷は澄ました笑みを浮かべつつ、内心ほくそ笑んでいた。実際、熊谷はかなりのレスリングの素質を仮入部期間の間に見せつけていた。教えれば教えた分だけ、砂が水を吸い込むように吸収していく熊谷は、受け身や基本動作ドリルを繰り返す初心者組の練習を脱し、より実戦的な投げやスタンド技術を磨いていく経験者組の練習と合流していた。
「ここだけの話だが、お前が部長と俺との相部屋になったのも、お前を見込んでの話だ」
角張った顎を擦りつつ、岩村が唸るような声で言った。すっかり熊谷を気に入っているらしい。実際、熊谷は意図的に体内で分泌したフェロモンを垂れ流し、周囲に「魅力的な人物である」という印象を与えている。熊谷の肉体は"彼ら"の介入により徹底的に改造されており、男性の生理現象を操る化学物質を体内で生成可能だった。熊谷は「そう言えば、部長は?」と岩村に尋ねた。
「ああ、走り込みに行ってるぞ。夕方には戻るんじゃないか?」
今日は寮の部屋割りの再編成があるため、どこの部活もある程度午後の部は早めに切り上げている。部長はその分、ランニングに出かけたらしい。熊谷は薄く笑みを浮かべ、獲物を狩るための準備に取り掛かった。そうとも知らずに岩村は、タオルやドリンクの容器を準備しつつ、話を続けた。
「俺はちょっとトレーニングルームに行こうと思っていてな。お前もどうだ? 峻嶺はトレーニングの設備も揃っていて、なかなかのものだぞ。俺もプロテインの新しい味を仕入れたから、試そうと思っていてな──」
そう言いかけた岩村が、妙に熱っぽい目で熊谷を見つめた。立派な獅子鼻の鼻の穴が、ゆっくりと開いたり窄んだりしている。熊谷が分泌し始めた濃厚なフェロモンによって、彼の理性が揺らぎ始めた証だった。
「岩村先輩、すげえ鍛えてますよね。体も分厚いし、かっけえ……」
「よ、よせよ……照れるだろ」
ボリボリと鼻を掻く岩村。そこに熊谷はゆっくりと距離を詰めていく。獰猛な肉食獣が、しなやかな動きで忍び寄るように。
「俺、岩村先輩みたいにカッコいい先輩と同室になれて、マジで嬉しいっす……」
熊谷はそう言って、岩村の厚い胸板を、部屋着にしているTシャツの上から指でなぞった。岩村がゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえた。
「筋肉にすげえいいプロテインがあるんすけど……ちょっと試してみませんか?」
※
くちゅくちゅくちゅ……ジュポッ……ヌチュッ、ヌチュッ……。
岩村は「精液はタンパク質やアミノ酸が豊富で、筋肉の成長に最適である」と熊谷にそそのかされ──さらに、屈強な新入生である熊谷が、自分に並々ならぬ敬意と好意を寄せているという事実に、岩村の男としての矜持は大いに刺激された。その恍惚とした感覚の中、彼はすでに熊谷の太く硬い男根を咥えていた。
(あぁ……いい……熊谷の……こんなに立派で……)
岩村はゴツゴツした男臭い顔を悩ましげに歪めると、懸命に舌を男根に絡ませ、奉仕した。既に熊谷の体臭に含まれる化学物質で、岩村は生理的に発情状態になっている。ただただ目の前のチンポをしゃぶり、精液を飲みたいと切実に願う淫乱なレスリング部員への転向が始まりつつあった。
ブシッ! ブシュゥッ!!
熱く、濃厚な子種が岩村の口腔内に放たれる。男臭いその種汁を、岩村は旨そうに舌を絡ませて飲み込んでいく。改造された熊谷の精子は、岩村の口腔内の粘膜組織に侵入し、性感帯へと作り変えていく。さらに岩村の舌にある味蕾は、精液の味に快感を覚えるように細胞ごと作り変えられ、男の精液を求めてやまない淫乱な器官へと変態を遂げていく。仮にこのあと”彼ら”が岩村に寄生しなかったとしても、岩村は純粋に男の精液を愛する、生粋の変態レスリング部員であり続けることになる。そんなことも知らない岩村は、舌を熊谷のチンポの尿道にねじり込むように動かし、一滴でも多くの精液を味わおうと必死になっていた。
──クチュッ。
ビクン!と岩村のゴツい肉体が震えた。岩村が夢中でチンポをしゃぶっている間に用意していた”彼ら”が、岩村のハーフパンツの中に入り込み、さらに肛門の入口に辿り着いたのだった。”彼ら”は岩村の肛門をつつくように刺激し、肛門内に入り込もうとしている。岩村は眉根を顰めたが、しかし熊谷のチンポが再び勃ち始めたのを感じると、自身のハーフパンツの中に入り込んだ何かのことなど、どうでもよくなっていた。早くあの種汁を味わいたい。濃厚で、男臭い汁をたっぷりと俺の口に注いで欲しい……そんな欲求で脳みそが染め上げられて、警戒心が薄れていく。精力旺盛な熊谷のチンポが、岩村の口腔内で再び怒張していく。岩村はゴツい顔に恍惚な表情を浮かべ、肉厚な舌で熊谷のデカマラへの奉仕を続けた。
──ブシュッ! ブビュゥッ!!
──ビクンビクン! ビクビクビクン!!
熊谷が二度目の射精を岩村の口腔内に行うのと、”彼ら”が岩村の肛門内に侵入を終えるのは、ほとんど同時だった。岩村は強烈な快感に身悶えしながらも、精液を一滴もこぼすものかと夢中でチンポに吸い付いた。
「んくっ……あぁ……!! あぁぁああああ!!!」
強烈な快感に身悶えた岩村の唇が、じゅるりと糸を引いて熊谷のチンポから離れた。岩村の肛門への寄生準備は今回はしていなかったので、多少は記憶や価値観が整理されるのに時間が掛かるだろう。だが、岩村の恍惚とした表情を見る限り、その心配は杞憂に終わるだろうと熊谷は確信した。
※
「んあ? あれ……?」
しばらくして岩村は目覚めた。部屋には岩村以外に誰もいない。寮の自分の部屋で、宿題をしようと問題集とノートを机に広げたまま、眠ってしまったらしい。白いノートの上には涎が垂れていた。実際には、脳内で記憶と価値観の整合性が図られ、その結果として意識が飛んでいたのだが。
「おっと、いけね」
岩村はおもむろに椅子から立ち上がり──下着ごとハーフパンツをずりおろした。机の上にあったスマホを手に取り、陰毛の中に埋もれる太短いチンポを取り出す。皮を剥いて亀頭を露出させると、スマホで写真を撮って熊谷へと送信した。
(ん? なんで俺……こんなことしてんだ?)
岩村は疑問に思ったが、ふとその答えに気づいた。
(そっか。俺の体──熊谷のモノになったんじゃねえか)
もう自分の肉体は、自分の所有物ではないのだと。”彼ら”のものだ。そして”彼ら”に統率個体として認められた、熊谷の所有物でもあるのだと──そんな当たり前のことを忘れていたことに気づいた岩村は、思わず苦笑いした。
(そうだよ。俺の体、俺のじゃなくて熊谷のモノなんだから、別に熊谷に写真送っても変じゃねえ……よな? うん)
岩村は自分の自由意志を放棄した証明として、熊谷に写真の送信を終えたことを確認すると、肛門の中で蠢く”彼ら”──に、固い尻を撫でて話しかけた。
「おうおう。元気いいじゃねえか。待ってろよ。たっぷりチンポしゃぶりまくって、栄養たっぷりのザーメン飲ませてやっからな……」
※
山に囲まれた峻嶺学園は広大な敷地を持ち、その外周を走るランニングコースは体育会系の生徒たちから重宝されていた。熊谷もその存在を知っており、部長がランニングに出たと聞くと、様子を見に行くことにした。私物のランニングバッグに水とスマホを入れて寮を出る。
(まあ、岩村も俺が戻る頃には”仕上がる”だろうし、部長を堕とすのはそれからでもいいんだが──)
しかし、熊谷が懸念しているのは、部長の堅物そうな態度であった。レスリング部の部員たちは、熊谷のフェロモンにあてられて、それなりに熊谷の肉体への興味を示している。だが部長には今のところ、そういった様子がなかった。部長が性的に潔癖な性格だと”彼ら”の支配が不完全な形に陥る可能性もある。そのため、熊谷としてもランニングをして汗を掻いておくことで、分泌するフェロモンをより濃厚にして、小笠原を堕とす後押しとする心づもりであった。そのような思惑を抱えたまま、熊谷は峻嶺学園の外周を走り始めた。
体育館や柔道場、合宿所、アーチェリー場、テニスコート、プールを通り過ぎて、グラウンドに差し掛かる。ラグビー、サッカー、野球はそれぞれグラウンド内で充分なスペースを取って競技スペースが確保されているため、グラウンドは広大であった。野球部のエリアに差し掛かると、見覚えのある背格好の人物が、グラウンドの外周を走っているのが見えた。レスリング部部長の、小笠原恭平だった。熊谷は意図してペースを上げて、部長との距離をじわじわと詰めていった。真後ろからじりじりと追いつき、部長の横に並んだところで声を掛けた。
「うっす。小笠原部長、お疲れっす」
「おう。熊谷か。まさか、お前も走っていたとはな」
「うっす。峻嶺のランニングコース、結構いいっすね」
難なく小笠原に追いついた熊谷は、殊勝な後輩の皮を被りながら淡々と話した。元よりそれなりのペースで走っているので、長い会話を続けるような雰囲気ではない。それは部長も熊谷も互いに承知しており、ときおり短い言葉を交わす程度であった。しばらくすると部長が水分を補給するのを見て、熊谷は一計を案じた。
「そういや部長。このランニングコースって、トイレあるのはどの辺りっすか?」
「ん? あー、野球部の部室横か……あとはサッカー部とラグビー部の部室の間ぐらいにもあるな。他は体育館か柔道場。それか南門の方にもあるな」
「南門近くのトイレって、どの辺っすか?」
「そうだな。俺も寄りたいし、一緒に行くか」
ダメ元でトイレの話題を出した熊谷だが、すんなりと部長も一緒に着いてくる流れになったことで、部長がどの程度熊谷のフェロモンに抗えるのか、軽く探りを入れてみるのもいいかもしれないと熊谷は考えていた。南門の近くにある屋外トイレに、歩調を緩めて二人で入っていく。
「あ〜……ここだったんすね」
「おう。生徒はあんまり使わないけどな。出入りの業者さんが使うことが多いみたいだ」
二人で小便器の前で並び、ジョロロ……と小便を放ち始める。熊谷は意図してフェロモンの濃度を濃くし、小笠原部長の様子を横目で窺う──
小笠原恭平は、露骨にジロジロと熊谷のチンポを盗み見ていた。
(なんだよ。ムッツリスケベなだけじゃねえか)
熊谷は心配しすぎたかと苦笑して、デカマラを揺すって小便を切った。熊谷が横を向くと、部長が慌てて正面を向いて自身のチンポを揺らしていた。
「つーか部長、バレバレっすよ?」
「な、何がだ?」
小笠原部長はぎょっとした様子で短パンを履き直している。熊谷はわざとらしく溜め息を吐くと、ずんずんと部長に近づいた。部長は後退りして、トイレの壁に背を付けた。熊谷は意地の悪い笑みを浮かべ、囁いた。
「チンポっすよチンポ。俺のチンポ、見てたっしょ」
「み、見てるわけないだろ!?……ほら、ランニングに戻るぞ」
「あー、話、まだ終わってないんすよ。つーかチンポ盗み見するムッツリスケベが部長とか、ゲンメツっすよゲンメツ」
「何を馬鹿なことを! いい加減にしろ!!」
小笠原部長は顔を紅潮させて怒気を発したが、熊谷は追い討ちをかけるようにひときわ濃厚なフェロモンを放った。
「んっ……ンクッ❤」
堅物そうな小笠原部長の顔が、妙に緩んだ。部長は熊谷への説教を続けているが、部長の鼻は熊谷のフェロモンをより多く吸い込もうと、ひくひくと動いていた。その様子を見て取った熊谷は、部長の肩を掴み、有無を言わさず個室へと押し込んだ。個室の扉が閉じられ、カチャリと鍵が掛かる音に、部長は目を見開いて口を無意味に動かした。
「く、熊谷お前……どういうつも──ンむぅっ!?」
小笠原部長の唇が熊谷の唇で塞がれた。熊谷の舌がねろりと軟体動物のように侵入し、性的興奮を誘発する唾液が、部長の脳髄を直接的に揺さぶる。抗おうとする理性が急速に摩耗していく。熊谷の唇が離れると、部長の口からは甘く乱れた喘ぎが漏れ出た。
「あぁ…………」
熊谷から失礼な言葉を浴びせられたことが、どうでもよくなっていた。こんなにも魅力的な男が自分に好意を向けているのに、わざわざ拒む必要などあるだろうか。ランニングで汗をたっぷり掻いた男臭い二人のレスリング部員が、男子トイレの個室で何度も唇を重ね、舌を絡ませあった。股間はすでに興奮の極みに達し、部長の短パンは硬く盛り上がった性器の形をくっきりと浮き上がらせていた。部長は鼻腔を大きく広げて荒い息を吸い込みながら、その熱を持った塊を熊谷の股間に押し付けた。熊谷は部長の興奮を感じ取り、ニヤリと口の端を上げた。
「つーか部長、チンポギンギンじゃないっすか。部長、ホモだったんすか?」
「い、いや……そういうわけじゃないんだが……うおっ!?」
熊谷がいやらしい手つきで小笠原部長の短パンの股間を掴んだ。そうして、勃起したチンポと金玉を、まるで玩具のようにまさぐり揉みしだいた。
「ふーん。ま、別にいいんすけどね。俺も結構、そっち系なんで」
熊谷の言葉に、小笠原部長は驚きと──続いて、安堵の表情を浮かべた。
「そ、そうか……なら、話が早い」
部長は前のめりになり、熊谷の首筋に顔を埋めた。汗とフェロモンの混じった匂いを深く吸い込み、うっとりとした表情を浮かべる。獲物がまんまと食いついたことに、熊谷の唇は歪んだ笑みを刻んだ。しかし汗ばむ首筋にうっとりと顔を埋めている部長は、その変化に気づかない。
「お前の匂い、たまらねえな……もっと嗅がせてくれ……」
部長は熊谷の背中に手を回し、その引き締まった肉体をまさぐった。熊谷はそんな部長の短パンを下着ごとずり降ろす。そして熊谷自身の短パンも下着と共に降ろすと、互いの勃起した肉棒をぐりぐりと押し付けあった。
「んくぅっ……!」
「うおっ……部長のチンポ、俺よりだいぶ小さいっすね」
「んあっ、み、見ないでくれ……!」
巨根である熊谷に対し、部長は比較的短いチンポだった。太さは十分にあるため、決して小さいという印象はない。むしろ平均的なサイズをわずかに下回る程度で、通常であれば見劣りすることはまずないのだが、比較対象である熊谷のチンポと並べてしまうと、どちらが”雄”として格上なのかは明らかであった。
(なのになんで……こんな興奮しちまうんだ!?)
部長は顔を火照らせ、肩を震わせて荒い息を吐いていた。熊谷がゴツい手のひらで部長と熊谷自身のチンポを扱き始めると、ビクリと発達した広背筋を震わせてしまう。熊谷は自身と部長の男根をまとめて掴み、快楽の波を意図的に作り出すかのように、ゆっくりと、しかし確実に扱いていった。そのときだった。
ジャリッと外の土を踏みしめる音がした。そしてコツコツとタイルの上を歩く音がする。誰かが男子トイレに入ってきたようだった。
「ふ〜〜〜〜っ……」
入ってきた男は、深い溜め息を吐きながら、じょろろ……と音を立てて放尿し始めた。声質が成人男性のように見受けられた。自販機などの業者だろうか? 小笠原部長はビクッと肩を震わせて警戒したが、しかし熊谷はチンポを扱く手つきを緩めない。部長は目で訴えたが、熊谷はニンマリと笑みを浮かべるばかりだった。むしろ、どんどん扱く速度が速くなってくる。放尿を終えた音がした辺りで、小笠原は限界に達した。
「ッ! 〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!」
小笠原部長の背骨を突き抜けるような快感が走り、二本の男根と四つの金玉は、同時に男の歓びを解き放った。トイレに来た男は、個室の中で二人のレスリング部員が絶頂に達したことに気づかなかったようで、流し台で手を洗ったあと、立ち去っていく足音がした。小笠原部長は射精の余韻に浸りながら、バレなかったことに安堵の息を吐いた。熊谷はというと、自身と小笠原部長の亀頭から溢れた精液を人差し指で拭い、それを小笠原の肛門へと挿入していった。
「おっ、おい熊谷……はうっ!?」
第一関節……第二関節……と指が深く肛門に挿入されると、小笠原が切なげな声を漏らした。肛門の内側が熱く、ヒクヒクと物欲しげに痙攣している。肛門の粘膜組織が、熊谷の精子によって細胞レベルで性感帯へと作り変えられていく過程であった。小笠原部長はレスリングで鍛えた屈強な体で身悶えし、熊谷の肉体に抱きついた。先程射精したばかりだと言うのに、エロティックな欲望が再び小笠原の股間を熱くしていた。小笠原は熊谷の指に絡みつくように腰を揺らし、もっと深く挿入されることを無意識に求めている。彼の目はうつろに潤み、理性は快感の波に飲まれて押し流されていく。もはや、熊谷に逆らうことなど不可能だった。そんな小笠原の様子を見て、熊谷が囁いた。
「部長。ケツ疼いてるっしょ。すげーヒクヒクしてて、マジでエロいっすよ」
「あ、ああ……その……熊谷」
「なんすか?」
「ち、チンポ……挿れてくれないか?」
小笠原は蕩けた表情で唇を突き出し、最早限界とばかりに熊谷の首筋に擦り寄り、その濃厚なフェロモンを貪るように吸い込んだ。
「さ、さっきからおかしいんだ。俺……男に興味なかったはずなのに、お前だけは……」
「へへっ。なら部長、俺のモノになってくださいよ」
「え? あ、ああ! なる! お前のモノになる! だから、早く……あぁっ! もう、我慢できないッ……!!」
熊谷は部長を個室の壁に手をつかせ、背後に回った。そして部長の引き締まった臀部を後ろに突き出すよう促した。その間に熊谷は、ずりゅりと”彼ら”を熊谷の肛門から排泄した。飢えた獣のようにヒクヒクと脈打つ小笠原の穴に、熊谷は”彼ら”の濡れた先端を合わせる。途端、吸い込まれるようにずるりと”彼ら”は小笠原の奥へと滑り込み、粘膜を擦りながら奥深くへと進んでいった。
「うおっ!? あっ、あぁ……熊谷……いい、いいぞ……! 熊谷が、俺の中に……!! ングッ!?」
叫びそうになった小笠原の口を、後ろから熊谷が手で塞ぐ。
「ン゛ッ! ンン゛ッ!? ンン゛〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!」
小笠原のチンポが勃起し、生理的な反射として断続的に射精を繰り返す。トイレの個室の扉に、勢い余って小笠原の額が打ち付けられ、彼の呼吸は不規則な喘ぎへと変わっていった。発達した僧帽筋が、広背筋が、ビクンビクンと何度も痙攣する。小笠原恭平というレスリング部員が、自らの肉体と精神を”彼ら”に明け渡し、新たな宿主として生まれ変わる、劇的な変貌の瞬間であった。
やがて断続的な射精が終わり、小笠原の亀頭からはとろとろとした粘液が床に垂れ流された。
「気分はどうだ? 小笠原」
熊谷は部長への敬意など微塵もない、冷徹な声音で尋ねた。あくまでも、自分の所有物の状態を確かめるように。しかし一年生に不遜な態度を取られているにも関わらず、小笠原部長はとろりと蕩けたような笑みを浮かべていた。
「ハァッ……ハァッ……はあぁぁっ……さっ、最高だ」
小笠原は、レスリングで鍛え抜いた自身の肉体が、これまでとはまったく異なる卑猥な意味合いを帯びたことに興奮し、喘ぎながらその肢体をまさぐった。アスリートとして、否、男として万全のコンディションになった──そんな万能感が体中に満ち満ちていた。自身の鍛え上げられた肉体が、これほどまでに情欲を掻き立てるものであることに気づくと、その朴訥な顔に、今まで見せたことのない好色な眼差しが浮かんだ。
「あーくそっ。俺こんなエロい体でレスリングしてたのかよ……なんで早く気づかなかったんだ?」
そして小笠原は、肛門内に寄生した”彼ら”の蠢動に甘い声を漏らしながら、愛おしそうに自身の固い尻を揉んだ。
「ああ……可愛いな……俺の、二本目のチンポ……」
そうしてジュルリと涎を垂らしながら、熊谷に言った。
「なあ熊谷、これ、早くみんなにも教えてやらないと、もったいないよな?」
「もちろんだ。そのためにお前を仲間にしたんだからな、小笠原」
「あぁ……そうだな。俺のことは手足だと思って、存分に使ってくれ。もう俺の体も心も、お前のモノだ……ん? 今の、俺が言ったのか……?」
小笠原の顔に一瞬、驚愕の色が浮かぶ。自らの言葉の不自然さに戸惑った。だが、即座に“彼ら”の分泌物がその違和感を洗い流していく。
「いや……別におかしくないよな? お前が群れのリーダーみたいなモンだし。群れ……? まあ、別にいいか」
「そうだ。それでいい」
「フーッ……熊谷……」
小笠原は彼のフェロモンをこれ以上ないほど深く吸い込み、完全に陶酔した表情で、自身の額を熊谷の肩にぐりぐりと押し付けた。その様子は、まるで子猫が親猫に甘えるかのようだった。熊谷は、逞しい肉体を持つ部長が完全に己の掌中に収まったことに、静かに喜びが湧き上がるのを感じていた。
「ん? そろそろだったか」
熊谷のランニングバッグに入れていたスマホが振動する。熊谷が画面のロックを解除すると、寮に残してきた岩村から男根の写真が届いていた。それは、岩村の意識が熊谷の支配下に落ちた証拠に他ならなかった。熊谷は男子トイレの天井を仰ぎ見た。熊谷の眼差しは遠く、学園のあらゆる場所へと向けられていた。全ての男性が、彼の男根の先にある“楽園”へと誘われるべき存在だった。
※
熊谷浩樹という異物は、緩やかながらも着実に、峻嶺学園レスリング部の健全さを汚染していった。外見こそ筋骨逞しく、身長も180cm近くある坊主頭の精悍な青年である。それでいて文武両道の優等生であり、一見すると先輩や教師を立てて敬う誠実な人物にも見える。だが実際には、他の人間を「”彼ら”の宿主として価値があるかどうか」でしか判断しておらず、他人への敬意など少しも持ち合わせていない。さらに「髄主」として完全に覚醒した彼にとって、下位個体やその宿主は、己の意のままに操るべき手駒に過ぎなかった。
(だいぶレスリング部も、勃起する奴が増えてきたな)
部活中に組み合ったときに、股間を固くする部員が増えていた。熊谷と岩村、そして部長の小笠原の体から垂れ流されるフェロモンによって、否応なく男性の肉体──それも逞しいレスリング部員の肉体と、性的な興奮が結びついてきているためである。顧問の猪狩もその変化には気づいたらしく、部員たちの間で勃起が起こる頻度が増えていることに、眉をひそめていた。彼は「最近のやつらは活発だな」とぼやきながらも、その異常な興奮の源を理解できずにいた。その猪狩の短パンも、部員とのスパーリングの後は固く盛り上がっており、猪狩はどこかバツが悪そうにモソモソとチンポジを直していた。レスリング部員と顧問の性的指向を徐々に男好きへと染め上げていく。まさに熊谷が狙っていた状況だった。
寮の大浴場もまた、熊谷の思惑通りに変質を始めていた。
(続く)
このサンプルでは、寄生キャンプ・峻嶺学園編①約33,100字のうち、約20,800字を無料公開しています。ちなみに峻嶺学園編①と②の合計文字数は約60,000字です。
この続きは300円プランで公開中です。下のリンクから読めます。
寄生キャンプ・峻嶺学園編①(入学式〜レスリング部での集団繁殖まで)

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