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 いま思えば、異変は日曜日の時点から始まっていたのだと思う。


「しかし、どういう風の吹き回しなんだ? 穂香がパパと一緒に買い物行きたいだなんて」


「え~? なんとなくだよ。別にいーじゃん。あ、パパ! あのお店寄りたい!」


 日曜日の午後、俺は高校生の娘の穂香と共に、郊外のショッピングモールに来ていた。珍しく、妻は家で留守番だ。穂香は反抗期で、最近は俺とろくに口をきいていなかったのだが、今日はやけに俺にべったりとくっついてくる。まるで恋人のように腕を組もうとしてきたので、俺の方からやんわりと断ったくらいだ。


(ついこの間まで「汗臭いからパパと一緒に洗濯しないで」って言ってたのに……急にどうしたんだ? ん? そう言えば……)


 ふと違和感を覚えた。今日の午前中、俺はジムに行ってトレーニングをしてきたのだ。そのこと自体はおかしくないのだが……いつもはジムでシャワーを浴びるのだが、今日はその記憶がない。代わりにタオルでざっくりと汗を拭い、着替えた記憶はある。


(シャワーを浴び忘れたのか? いや、あんな汗臭い体のまま着替えるだけなんて、なんで俺はそんなことを……?)


 着替えた白いポロシャツの襟を持ち上げ、内側の匂いを嗅ぐ。四十路男の汗臭い匂いが、ムワッと匂ってくる。


(んっ……よりにもよって、シャワーを浴び忘れた日に、なんで穂香は買い物に誘ってきたんだ? こんなの、汗臭くて普段なら嫌がりそうじゃないか……んっ……?)


 いつの間にか俺は、自分の体臭を嗅ぐのに夢中になっていた。改めて嗅いでみても、普段と同じ匂いのはずなのだが……まるで芳醇な酒の匂いのように、嗅いだだけでもわずかに陶酔感を覚えてしまう。


「パパ~! 置いてくよ~」


「あ、ああ。いま行く」


 それはショッピングモールの通路で中年男がするには不審な行為であり、娘に呼ばれて我に返った俺は、気恥ずかしさを感じながら小走りに娘の元に向かった。そのため、その時点では気づいていなかった。他の男たちも、自分の体臭を嗅いでは、陶然とした表情を浮かべていたことに……。


※


「あぁ……もう朝か」


 月曜の朝。気怠さが体の芯に残ったまま目覚めた。既に妻は朝の支度をしているようだ。昨夜は晩飯の後、妻の方から体を求められ、シャワーも浴びずに一晩中セックスに耽っていた。寝不足であったが、しかたない。まずはムンムンに汗臭さを放つ体を、どうにかしなければ。ベッドから降りると、朝勃ちしたチンポがぶるんと揺れた。裸のまま風呂場まで行こうかとも思ったが、廊下で娘と出くわすとまずい。俺は脱ぎ散らかしていた寝間着を着て、風呂場へと向かった。


(真由美が、あんなに激しく俺を求めてくるなんて、ずいぶん久しぶりじゃないか?)


 昨夜の妻との情交を思い出すと、出勤前だというのにムラついてしまう。妻の方から「シャワーを浴びないで欲しい」とリクエストを受け、午前中のジムと午後のショッピングモールで汗を掻いた体のまま、妻を抱いたのだ。まるで媚薬でも嗅がされたかのように、妻は俺を激しく求め、何度もアクメに達していた。夫婦なので人並みにセックスはするが、あそこまで積極的にセックスに溺れる妻の姿は久しく見ていなかった。


(まあ、セックスレスよりはよほど良いよな)


 さすがに毎晩こうだと体が持たないが、たまにはいいだろう。俺は苦笑しながら脱衣所で寝間着を脱ぎ終え、風呂場へと入った。熱い湯を洗面器に入れ、タオルを浸す。湯から出して、引き絞ったタオルで、体を拭いていく。熱々のタオルで体を拭ううちに、自分の行為に違和感を覚えた。


「ん?」


 なんで俺は……シャワーを浴びようとしないんだ? 昨日の午前中はジムでトレーニングをし、午後は娘とショッピングモールを歩き回り、夜は妻とのセックスで汗を掻いている。ここはひとつ、シャワーを浴びて汗を流すべきじゃないか?


(それはそうなんだが……朝からシャワーを浴びることに、やけに抵抗があるというか……)


 シャワーに伸びかけた右腕が、迷った末に下ろされる。これから出勤するというのに、なぜかシャワーを浴びる気になれない。いや、むしろ……【これから出勤するのに、なぜシャワーを浴びなければならないんだ?】というあべこべな考えさえ浮かんでくる。俺は自問自答したが、どうにもシャワーを浴びる気がしなくて、そのまま体を拭いて済ませた。体臭はだいぶ抑えられたが、それでもまだ汗臭さが肌に焼き付いているようだった。


「あ、パパ。おはよー」


「ああ、おはよう」


 俺がスーツに着替えてダイニングに行くと、制服姿の穂香がすれ違いざまに俺の身体に顔を近づけた。そして、不満そうな声を出した。


「え~? パパ、シャワー浴びちゃったの? 信じらんない。せっかく汗臭かったのに」


「おいおい。【パパが朝からシャワーを浴びるわけない】だろう。タオルで拭いただけだ。もっとしっかり嗅いでみろ」


 俺は【朝からシャワーを浴びる非常識な男】扱いされたことにムッとすると、腰に手を当てて、ワイシャツを着た胸板をぐっと反らせた。学生時代にラグビーで鍛えた厚い胸板に、穂香が顔を埋めて匂いを嗅ぐ。


「あ、ホントだ~! しっかり汗臭いね。やるじゃん、パパ」


「ああ。【社会人は、汗臭さと清潔さを両立させることが大切】だからな」


(……いったい何を言ってるんだ? 俺は)


 穂香と話しながら、俺はめまいを覚えていた。何もかもがおかしい……俺がシャワーを浴びたと勘違いして非難する穂香も、それに反論する俺も。そして嬉々として俺の汗臭い胸板に顔を埋める穂香も……何がおかしいのか考えていくうちに、俺がなぜシャワーを浴びたがらないのかに思い至った。


 【汗臭い男ほど魅力的である】ため【男が汗臭さをアピールするのは、常識的な振る舞いである】という思考が、いつの間にか俺の行動の根っこにあるようだった。そのことを自覚してもなお、抗いがたい衝動であった。


(俺は、変態にでもなっちまったのか? いや、俺だけじゃない。穂香と真由美の様子がおかしいのも、俺と同じで……?)


 こんな汗臭い体で出勤して、職場でどう思われるのか気が気じゃなかったが、しかし一向に、出勤前にシャワーを浴びようという気持ちにはなれないのだった。俺は味のしないトーストとスクランブルエッグをコーヒーで流し込むように食べると、慌ただしく出勤しようとした。


「あなた。ちょっと待って」


「なんだ? うおっ!」


「あぁ……本当に汗臭いわ……なんて素敵なの……」


 妻が出勤前の俺を抱きしめ、うっとりと俺の胸板に顔を埋めると、俺の体臭を嗅ぎ始めた。俺は妻の奇行に戸惑いながらも、【汗臭い男として扱われた誇らしさ】で、鼻息が荒くなるのを感じていた。


 俺の心配は杞憂に終わった。満員電車は、男の汗の匂いで満ち満ちていた。


「あぁ……」


「いい……」


 明らかに、普段よりも男たちは汗臭かった。俺と同様、昨日は風呂やシャワーを浴びていないのだろう。そして、普段なら不快に感じるはずの男の汗の匂いが、妙に魅力的に思えてしまう。太った男の酸味のある汗の匂いも、中年男の香ばしい加齢臭も、若者の濃い草いきれのような汗の匂いも……それぞれ香りに癖のある酒の香りを鼻腔で堪能するように、このまま嗅いでいたいとさえ思ってしまうのだ。俺は自分の嗜好の変化に困惑しながらも、車内に満ちた男の汗の匂いを鼻腔で味わった。


 そして他の乗客たちも、俺同様に男の汗の匂いを堪能していた。


 好色そうな目つきをした50代の角刈りのサラリーマンが、前のつり革を掴んでいる40代の太ったサラリーマンの首筋に顔を近づけ、鼻息荒く汗の匂いを味わっている。その脂ぎったオヤジ顔はとろけ、唇の端から涎が垂れていた。40代のサラリーマンは嫌がっているそぶりをしていたが【汗臭い男として扱われる】のがまんざらでもないのか、太った顔の表情が緩んでいた。


 その隣にいる30代の浅黒いサラリーマンと20代の細マッチョなサラリーマンが、互いに戸惑ったように顔を赤らめながら、向かい合ってさりげなく体臭を嗅ぎ合っていた。電車の揺れに合わせて、不自然に体を揺らしながら、互いの体が近づいた瞬間に鼻の穴を広げ、男同士の汗臭さを嗅ぎ合っているのだ。バレないようにしているつもりだろうが、何度も不自然に体が近づいており、あまりにもあからさまだった。


「んっ」


 そして俺の汗臭い肉体も、目の前にいる若い男を興奮させていた。俺の目の前の吊り革を掴んでいるのは、近くの大学の柔道部のエナメルバッグを持った、坊主頭の大学生だった。その厳つい顔は紅潮し、昨日シャワーを浴びず、ただタオルで拭いただけの俺の肌に残った汗臭さを丹念に味わおうと、目をつむって小鼻の穴を広げ、スンスンと鼻息く俺の首筋に顔を近づけてきていた。大学生のジャージの股間は明らかに固くなり、俺のスラックスに当たっている。


(ちょっと、君……その……当たってるんだが……)


 俺は大学生の耳元で、小さな声で抗議した。柔道の摩擦で餃子のようになった耳が、ピクピクと動く。大学生は目を開いた。その両目は、とろんと潤んでいた。


(っす。すいません。オジサン、すげー汗臭かったんで、おれ、興奮しちゃって)


(おっ、俺が汗臭い、だって……!?)


 んひ。俺の鼻息が荒くなり、表情筋が緩んだ。【汗臭いは褒め言葉】だ。妻や娘だけでなく、初対面の男子大学生からもそう言われることに、俺は妙な照れくささと……男としての誇らしさを感じてしまっていた。


(いや、わかってくれればいいんだ。ただ、俺は妻もいるし、男同士でどうこうする趣味はなくてな)


(おれも彼女いるし、そうっすよ。けど、なんか昨日くらいから? 汗臭い男がすげーかっこ良くなったじゃないっすか。おれ、男に興味はないんすけど、汗臭い男にはチンポ勃っちまうんすよ)


(んあぁ……そ、そんな褒めないでくれ。年上をからかうもんじゃないぞ)


(マジっすよ。オジサン、すげー汗臭いし、加齢臭も良い感じに混じってて、すげーエロいっす!)


 彼女持ちの男子大学生のチンポを勃たせてしまうほど、俺は【汗臭くて魅力的】なのか。俺は大学生からそう言われた興奮で、ハアハアと肩で息をしていた。俺の股間もギンギンに勃起している。さすがに男同士で勃起チンポを擦りつけ合うような変態趣味はないので、大学生に目配せし、互いの股間が当たらないように体をずらし、汗臭さを堪能し合った。


(んおっ! 君の坊主頭も、なかなか汗臭いな……湿ったタオルみたいな匂いだ)


(あざっす! もっと嗅いでいいっすよ!)


(あぁ……たまらん……!)


 柔道部の男子大学生が俺のワイシャツの胸板に顔を埋め、俺はその男子大学生の坊主頭に顔を埋めた。若い体育会系の男の、青臭く濃い匂いが鼻腔を刺激する。汗臭い頭皮の匂いに陶酔感を覚えながら、俺と柔道部員の男子大学生は、汗臭い電車に揺られ続けた。


 満員電車でさえそんな調子だったのだから、オフィスに着いたらどうなるのかも目に見えていた。


「おはようございます! 課長」


「ん? おはよう……うおっ! な、なんだ!?」


 俺に挨拶してきた20代の新入社員・中島が、そのまま俺の脇に顔を近づけて匂いを嗅いできたのだ。そしてうっとりとした顔をすると、俺のことを見つめた。戸惑っている俺の後頭部に、ガツンと殴られたかのような衝撃が走った。


(……んあっ!? ああ、そうか。俺も嗅がないと、失礼だよな)


【男同士で体臭を嗅ぎ合うのは、挨拶としてごく自然な振る舞いである】──なぜこんな基本的な礼儀作法を忘れていたのだろう。汗臭い男が魅力的に見えるという異常事態があったせいだろうか。俺も中島の脇の匂いを嗅いで、笑みを浮かべた。癖がなく爽やかであるが、今朝の通勤電車の柔道部員と比べてしまうと、物足りなさを感じた。


「なかなかいい匂いじゃないか。ただ、まだ薄いな。【体臭で自分を覚えてもらう】のは社会人の挨拶の基本だからな。もっと体臭を濃くしていくんだぞ」


「はい! 岩崎課長のように汗臭くなれるよう、頑張ります!」


 お世辞も入っているのだろうが【汗臭い男】呼ばわりされた嬉しさで、頬が緩んでしまった。朝から気分良く仕事を進められそうだ。


 始業時間が始まると、来客した他社の社員とうちの社員が握手をし、互いに体臭を嗅ぎ合ってうっとりとしながら、応接ブースへと向かっていった。中には体臭を嗅いでいるうちに勃起してしまったのか、真っ赤な顔で謝罪しているうちの社員もいる。


(さすがに【体臭の嗅ぎ合い中に勃起する】のは【挨拶中に勃起する】のと同じで、大変な失礼に当たるからな。昨日から男の汗が妙に心地よく感じるようになったせいで、こういう弊害が出ているのか……俺も気をつけないといけないな)


 そのまま業務を進めていると、部下の松井が、せかせかとした足取りでやってきた。30代前半で、ツーブロックの髪型に日焼けした肌をした、精悍な風貌の男性社員だ。


「……岩崎課長。お時間よろしいでしょうか。折り入って相談したいことが……」


「いいぞ。場所を変えた方がいいか?」


「お願いします」


 小会議室のプレートを「使用中」にすると、俺と松井は小会議室に入った。やはり松井も汗臭いが、他の社員たちよりもやや控えめであるように感じた。仕事のできる松井にしては珍しいな、と思いながら席につく。松井は、慎重な口ぶりで話し始めた。


「課長。昨日から今日にかけて、何かおかしいと思いませんか?」


「……何かというのは、例えば?」


「やけにその……男性の汗の匂いが、いい匂いに思えてきませんか?」


 松井もまた、異変に気づいていたのだ。松井によると、俺の汗臭さが控えめであったこと──これは今朝タオルで拭いたせいだろう──と、新入社員と脇の嗅ぎ合いに戸惑っていたことで、声を掛けたのだと言う。


「ちょっと待て。確かに昨日から男の汗が心地よく感じるのは……『異常』だと思うんだが、【男同士で汗の匂いを嗅ぎ合うこと】自体は【挨拶として普通】じゃないか?」


「……課長、それも変です。思い出してください。いままで私たちは、そんなことを職場でしていましたか?」


「当たり前……ん? そう言えば、していない……? ああっ!?」


 頭の中に掛かっていたもやが、急に晴れていくようだった。ついさっきまで、俺は【男同士で汗を嗅ぎ合うのは、普通の挨拶である】と思い込んでいたのだ。


「いったいなんなんだ……? 俺はなんでこんな変なことを、当たり前だと思ってたんだ?」


「何が原因かはわかりません。しかし、個人差はあるようです。何人かに聞いてみましたが、全く異常を認識していない人もいれば、違和感を覚えている人もいました。ただ、私や課長ほどはっきり異常を認識している人は、今のところいませんでした」


「ううむ……どうしたものかな」


「ひとまず、互いに変になっていないか、監視し合いませんか? 私もいつの間にか変になっていたら、課長から教えて欲しいんです」


「確かにそれがよさそうだな。俺もまた変になるかもしれん。その時はよろしく頼むぞ。他にまともな奴がいないか、俺も探してみよう」


「そうですね。私も引き続き探してみます」


※


 翌日、火曜日。しかし、なかなかこの「異変」に気づいている人間は見つからなかった。


「汗臭さ? うーん。いつからでしたっけ? でも、なんとなく汗臭いほうが格好いい感じがしますよね? それにしても……岩崎課長って、本当に汗臭いっすよね。仕事ができる男! って感じで……カッコいいっす」


「そ、そうか……? ありがとう」


 若い部下の中西にさりげなく雑談を振ってみたが【汗臭い男ほど魅力的である】ということが異常だとは、まるで気づいていないようだった。中西は角張った顔にとろんとした笑みを浮かべ、俺にガッチリと抱きついて首筋の汗の匂いを嗅いでいる──42歳の課長に27歳の若手社員が抱きつき、汗臭さを嗅ぐ変態的な構図だが……火曜の朝になると「異変」がより悪化し【男同士で汗臭さを嗅ぎ合うときは、抱きつくのがマナー】であることになってしまったのだ。俺の太腿に当たっている中西の股間が、ぐっと固さを増す。中西が顔を赤らめ、慌てて体を離した。


「っ、す、すいません……興奮して、変な気分になっちゃって……」


「いや……別にいいんだ」


 男同士で抱き合って汗臭さを嗅ぎ合うことには違和感を覚えていないのに、勃起するのがNGなのは以前と変わっていないのだ。俺は中西との会話を終えると、周りの様子をそっと見た。


「はーっ……」


「あぁ……」


 まるでコーヒーで一服するかのように【男同士で抱き合い、汗臭さを嗅ぎ合ってコミュニケーションをとる】光景が、そこかしこで見られていた。男たちは勃起しそうになるとサッと体を離し、何事もなかったかのように会話を続けている。単に顔を近づけて体臭を嗅ぎ合っていた昨日よりも変態的な光景だが、俺と松井以外は異常性に気づいていないようだった。


(まさか、この調子でじわじわ「異変」が進行していくんじゃないよな……?)


※


 水曜の朝になると、その答えは明らかになった。


「おはよう、岩崎くん。ちょっといいかね?」


「おはようございます。島田部長……うおっ!?」


 せかせかと忙しげに歩いてきた島田部長は、あいさつと共に両腕を広げて俺に抱きつくと、ぐりぐりと勃起したスラックスの股間を擦り付けてきた。若い頃は柔道で国体にも出たという、部長の固太った肉の厚みと、加齢臭の混じった汗臭い体臭、そして首筋には島田部長の荒い鼻息を感じる。俺はというと、部長の汗臭さに同じく鼻息を荒げながら、意に反して股間が固くなるのを感じていた。


「フヒッ!……い、岩崎くん。仙台支社の営業部からの報告書には、目を通したかね?」


「ええ。昨日のうちに読みました。前期に比べて──んっ!」


「どうした? 続けたまえ」


 【男同士での勃起は、相手に魅力を感じていることを示す】【勃起しても抱きついたまま会話を続けてよい】──ことに、今朝からなってしまった。俺の脳裏にも「部長への好意を示すため、勃起チンポをもっと擦り付けるべきだ」という衝動が疼いており、自分から腰を動かして勃起チンポを部長の股間に擦り付けてしまう。島田部長は満足げな声を漏らすと、中年男同士での股間の擦り付け合いを続けた。


「はーっ♡ あっ、いっ、いい……いいぞ、岩崎くん……」


「んっ……ぶ、部長っ♡」


 互いのチンポがヒクヒク痙攣し始めたところで、ようやく体を離した。勃起チンポを擦り付け合うのはマナーだが、射精はNGなのだ……今のところは。俺は部長から体を離して、荒くなった呼吸を整えた。そのまま午前中の仕事を進め、昼休みになったので社食へと向かった。廊下で松井と顔を合わせたので、互いに例の「異常」について話し合う。島田部長と勃起した股間を擦り付け合った話をすると、松井も午前中に取引先の男性社員と勃起した股間を擦り付け合った話をしてくれた。


「しかしこの調子だと、明日にはどうなっているかわからないよな」


「そうですね……あ、課長。あれ見てください」


 社食で食券を買う列に並んでいると、松井がテレビを指し示した。昼のバラエティ番組にゲストとして出た40代の男前な俳優が、司会している30代の太めのお笑い芸人に抱きついて、股間を擦り付け合って汗の匂いを嗅いでいた。互いにでれっとした笑みを浮かべており、性的に興奮しているのは誰の目にも明らかだった。


「世間的にもこういう感じになってるんですね……」


「松井が教えてくれなかったら、俺もああなってたんだよな……本当にありがとう」


「いえ……俺と課長の仲じゃないですか」


 その言葉に嬉しくなった俺は、松井の肉厚な肉体を抱き寄せ、チュッと音を立てて唇にキスをした。松井の汗臭い体臭が俺の鼻腔を刺激し、不意に勃起してしまう。【キスは男同士の親密さを表すスキンシップであり】、【ビジネスシーンでの男同士でのキスは、相手への信頼と親愛を示す行為】だというのは【ごく一般的なビジネスマナー】だ。特に不自然じゃない。だが松井は何を思ったのか、俺が体を離すと、顔を真っ赤にして荒い息を吐いていた。


「か、課長。い、いまのは……?」


「ん? なにって……キスしただけだろう。おいおい。まさか、これも『異常』なわけないよな?」


 俺が苦笑すると、松井は妙にドギマギした様子で目を逸らしてから、口を開いた。


「いえ、その……だんだん『異常』より前のこと、よく思い出せなくなってきてるんです。なので、さっきの課長とのキスも……『普通』なのか『異常』なのか、とっさにわからなくて」


「そういえば……」


 言われてみれば、思い当たる節は俺にもあった。もちろん、記憶喪失になったわけではない。日々の業務の内容や休日にどこに行った……という個々の出来事は思い出せるのだが、オフィスや家での日常会話の記憶──それが、妙にぼんやりとしている。誰とどんな話をして、どのように振る舞ったのか。いままさに『異常』によって塗り替えられようとしている箇所の記憶が──曖昧になっている。


「まあ、なんとかなるだろう。お、今日の日替わり、ガーリックチキンステーキなんだな。どうするかなぁ」


「課長は駄目ですよ。今日の午後も人と会う約束があったでしょう」


「あ〜、そうなんだよなー。ハハハ」


 俺と松井は互いに取り留めもない会話をして笑った。いつ俺達も『異常』に飲み込まれて、変態の仲間入りをするかもしれない不安を、胸のうちに抱えながら……。


※


 翌日、木曜日。オフィスの中は、淫猥さで満ち満ちていた。


「フーッ……フーッ……! そっ! そうですね! その件につきましては……!」


 朝から汗臭さを全身からムンムンに放ちながら電話で話している、20代の体格の良い男性社員。彼はスラックスを膝下までずり降ろして椅子に座り、露出した陰茎を扱き立てていた。喘ぎ声が相手に聞こえるのもお構いなしに、先走りで濡れる亀頭をクチュクチュと扱いている。


「あっあっ♡ 明日にはッ! んあっ♡ 発送できるかとッ! ンッ! ん゛あ゛あ゛〜ッ♡」


 やがて彼はビクンビクンと肩を震わせ、絶頂に達した。亀頭から盛大に精液を吐き出し、受話器を取り落として机に突っ伏する。電話の先方もオルガスムスに達したのか、受話器からも濁った男の喘ぎ声が聞こえていた。


「たっ♡ 大変にっ♡ 有意義な……はひっ♡ 時間でしたっ♡ ンあぁ……♡」


「こっ、こちらこそっ……♡ あひッ♡」


 30代くらいの他社の厳つい営業マンと、うちの30代の男性社員が、フラフラになりながら小会議室から出てきた。激しい運動をした直後のように全身が汗みずくになり、ネクタイは乱れ、ワイシャツには濃い染みができている。朝イチで【セックスミーティング】を行ったらしく、二人の男性社員の顔は上気し、情事に及んだ男の顔になっていた。他社の厳つい営業マンは腰を使いすぎたのか、そのまま応接ブースのソファに腰を落とすと、だらんと体を弛緩させて快楽の余韻に浸り始めた。その色黒に日焼けした精悍な顔は、とろんと蕩けたメスの顔になっている。うちの社員も恍惚とした様子で隣に座ると、チュッと音を立てて他社の営業の頬にキスした。そしてまるで恋人同士のように耳元で囁くと、今度は唇を重ね、舌を絡ませ合う濃厚なディープキスを始めた。射精した直後だというのに、他社の営業マンのスラックスの股間は固くなり、汗臭い男同士で再び盛り始めた。


「ま、松井……」


「課長」


 さすがに、俺でもこれは「異常」だというのはわかった。松井を呼び出し、喘ぎ声が響く営業課から廊下に出る。松井の体からは、整髪料と汗が混じった、働く男のエロティックな香りが漂ってくる。俺はヒクヒクと小鼻の穴を開いて、その蠱惑的な匂いを貪るように吸いながら、松井とオフィスの光景について話し合った。


「いくらなんでも、これはないんじゃないか?」


「ちょっと頭が痛いですね。どうやら今朝から【人前で射精するのは問題ない】ことに、なってるみたいです。こう……鼻水をかんだり、くしゃみするような感じの扱いで。あの……課長、その前に……」


「ああ。今朝はまだだったよな? 俺も気になってたところだ」


 松井がスラックスのチャックを降ろし、チンポを露出させた。色黒でカリも張っている、デカめのチンポだ。俺もスラックスからチンポを露出させた。太短いがぐっと重厚感がある自慢のチンポだ。長さで松井に負けている分、チラリと俺の心に劣等感がよぎったが……こっちは短くとも、太いんだ! 堂々と腰を突き出し、チンポを近づけていく。


「んひっ♡」


「あぁっ♡」


 コツンと三十路男と四十路男の亀頭が重なる。それと同時に、俺と松井の喘ぎ声も重なった。【チンポ同士を重ね合わせる『おちんぽキス』】は【職場でのメンタルヘルスとして最近注目を浴びている】というのは周知の事実であり、俺も松井も最近はこれを実践していた。松井とこれをやらないと、どうにも調子が狂うほどだ。朝から職場の廊下で、汗臭い上司と部下が腰を突き出し、チャックから露出したチンポを重ね合う。通りがかった他の社員たちが、俺たちを羨ましそうに横目で見ながらオフィスに入っていった。


「んっ♡ やっぱ朝のルーティンとして、松井とおちんぽキスをしないと、どうにも落ち着かなくてな」


「俺もですよ。課長の汗臭いチンポ大好きなんで、嬉しいです……♡」


「おいおい♡ お世辞はよせよ♡ さ、今日も頼んだぞ」


 こういったときは部下の側が奉仕するものなので、俺は松井にチンポを扱くのを任せた。松井が汗臭い男の二本のチンポを、日に焼けた色黒な手で、リズミカルに扱きはじめた。だんだんに互いの亀頭から我慢汁が出てきて、チンポがヌトヌトになっていく。互いの金玉がぐりぐりと蠕動し、射精が間近になってきたところで、松井が手を離した。名残惜し気に我慢汁の糸が、とろっと俺たちの亀頭同士をつなぐ。


「んひひ♡ もっと続けたいが……人前で射精する変態どもの仲間入りはしたくないからな♡ ん? おちんぽキスは別に……大丈夫だよな?」


「ええっと……♡ 人前で射精してないから……何も問題ないと思います♡」


 色黒でツーブロックの松井の精悍な顔に、性的に興奮した男の色香が浮かぶ。俺と松井は、変態どもに囲まれた会社の中で、これからも互いに正気を保っていくことを誓いあった。


「うむ。これからも頼んだぞ、松井ッ♡」


「うっす♡ 課長の心も体も、俺が守りますッ♡」


 俺と松井は勃起し、我慢汁を垂れ流すチンポをぶらぶらと揺らしながら、互いの背中に手を回して抱き合い、互いの汗臭い体臭を嗅ぎ合った。


※


 金曜日。


「おはようございます、課長。さ、今朝もやりましょう」


「おはよう……んくっ♡」


 俺と松井はルーティンになっている【朝のおちんぽキス】を射精寸前まですると、今度は互いに唇を重ね、舌を絡ませあった。もちろん【ディープキス】は【健全なビジネスマン同士の付き合いの範疇】であり、公然と人前で射精する変態たちとは違う。射精直前までの【おちんぽキス】と、舌を絡ませ合う濃厚な【ディープキス】を楽しんでから体を離す。それが俺たちの朝のルーティーンだ。昨日も……あれ? 昨日はおちんぽキスしかしなかった気がするが……気のせいか? ん? それよりも今朝はなんだか……


「松井、ちょっと胸板が厚くなってないか? ワイシャツがパツパツだぞ」


松井は元々ガタイが良い方だったが、いまや乳首の形が浮いて、胸板の輪郭もわかるようになっている。


「そういう課長こそ、ワイシャツがキツそうですよ」


「そうなんだよな。なんか朝起きたら、やけにこう……」


「何が変わったのか、俺もよくわからなかったんですけど、たぶんこれなんじゃないかと」


 松井がスマホを取り出して、ニュースサイトを画面に出した。


>汗臭く淫乱なマッチョになるために! サウナ特集!

>男性は汗を掻くほど肉体は逞しく、性格はスケベになっていきます。

>ビジネスシーンでは性欲旺盛な男性ほど、信頼に値するとみなされるのは周知の事実であり──


「な、なんだこりゃ!?」


 俺は驚いてその記事を読んだ。どうやら【男は汗を掻くと、肉体が逞しくなる】【精力も増進する】【性格は下品でスケベになる】【それは男として理想的な姿である】というのが、さも当たり前であるように記されていた。松井は他のサイトを──人間の生理現象について記載されている医学系のサイトを出してくれたが、そこにも同じように書かれていた。


「とりあえず、汗を掻かないようにするしかないですね」


「う、ううむ……しかし……」


 しかし、俺も松井も【汗臭い男ほど魅力的である】という「異常」に巻き込まれているのは事実だった。それが「異常」だと認識こそしているが、それでもなお、汗を掻きたいという欲求は性欲のようにムラムラと湧き上がってきてしまうのだ。事実、オフィスでも仕事中の息抜きとして、職場で腕立て伏せをしたり、スクワットをして汗を掻く社員がそこそこいた。汗臭いワイシャツとスラックスで筋トレをする男たちの姿は、あまりにも性的で、他の社員もチラチラと見ていたし、最初の頃は俺も鼻息を荒くして盗み見てしまっていた。そのうち、どうしても我慢できなくなり、俺も松井も一日に何度かは、筋トレで汗を掻くようになってしまっていた。濃い汗染みのある自分のワイシャツの匂いを嗅いで、陶然とした状態で仕事をする快楽は、何者にも代えがたいものだった。それをやめるというのは……どうしたものかと思案していたが、これ以上汗を掻くと、俺たちの人格ごと変化しかねない。


「心苦しいが、どうにか我慢するしかないだろうな……」


「そうですね……それと、課長。シャワーは浴びた方がいいと思います。俺も抵抗はありますが……ボディソープを使わないでお湯だけなら、どうにか耐えることができたので」


「ん? そんなに汗臭いか?」


「ええ、汗臭いです」


「ふひっ♡ そ、そんな褒めるなよ……♡」


 俺はデレっと表情筋を緩めながら、松井の言葉に照れて頭を掻いた。もちろん、松井も褒めるつもりで言ったのではないと頭では理解しているのだが、どうにも「異常」によって刷り込まれた常識でつい反応してしまう。松井はそんな姿を見て複雑な表情をしていたが、何も言わないでいてくれた。


※


「いやあ、岩崎さんは本当に汗臭いですね……隣にいるとすごく匂ってきますよ。俺、憧れちゃうなあ。さ、どんどん飲んでください。今日は俺の奢りなので」


「ンッ♡ あ、ありがとうございます……」


 金曜日の夜。俺はY企画の柴田さんと飲みに行く約束をしていたので、予約していた焼き鳥屋に来ていた。以前の商談で俺が柴田さんのフォローをしたことがあり、ぜひお礼として今度一緒に飲みに行きませんかと誘われていたのだ。


(しかし、まさか飲みに行く約束したときは……「こうなる」とは思ってなかったんだよな……)


 柴田さんは俺より年下の39歳で、フェードカットの髪型に口髭を生やした厳つめの風貌をしている──飲みながら話を聞くと、元ヤンなので硬派だがビジネスシーンに合う髪型が好きなのだという──問題は「異変」によって、柴田さんも【汗臭い男が好き】で【人前での射精は問題ない】と思っていることだ。


「岩崎さん、どうしました?」


「い、いえ、その……」


 焼き鳥屋のカウンター席で、柴田さんとサシ飲みを始めたのだが、柴田さんはカウンター席の椅子をわざわざ動かして俺に密着させ、汗臭い体を擦り付けるようにべたべたと俺の体に触り始めた。柴田さんは俺の左側に座っているのだが、グラスや箸を持つとき以外は、ゴツゴツした柴田さんの右手は俺の太腿に置かれ、性感帯を愛撫するような動きを繰り返している。柴田さんの左手は、露出した己のチンポをクチュクチュと音を立てて弄っている──厳つい印象に反してチンポは、短小包茎であった。酒臭い息を吐きながら、柴田さんは唇を尖らせた。


「岩崎さん、結構お固い人なんですね……全然俺に触ってくれないし、チンポも仕舞ったまんまだし。もっとこう、チンポ見せていきましょうよ。俺、見ての通りの粗チンなんですけど、気を遣ったりとか、全然しなくていいんで」


「えっ、ちょっ!? 柴田さん!」


 柴田さんはジジッ……と音を立てて俺のスラックスのチャックを降ろすと、中から強引に俺のチンポを引っ張りだした。一日の仕事を終えた汗臭い柴田さんの体臭を嗅いで、半勃ちになった太短いチンポがブルンと揺れる。柴田さんは赤らんだ顔に笑みを浮かべた。


「はぁぁ……岩崎さんのチンポ、太いですね……俺のよりずっと大きい……このまま手でしていいですか?」


「あのっ、柴田さん。今日はちょっと、それ以上は……」


 俺がやんわりと柴田さんの手を取って太腿に戻すと、柴田さんはショックを受けた表情をしていた。


「……俺、岩崎さんとサシ飲みに行くの、ずっと楽しみにしてたんすよ?」


 普段よりもくだけた口調で、柴田さんが悲しげな声を漏らす。口髭を蓄えた厳つい風貌の、元ヤンの39歳のサラリーマンが、拗ねたように唇を尖らせる。


「……こないだの件も俺のこと助けてくれたし、汗臭くて男らしいし……実は内心、兄貴みたいに慕ってたんす」


「そ、そうだったのか」


「あの……二人きりのときは、兄貴って呼んでもいいっすか?」


 元ヤンで眉毛がくっきりした顔立ちの柴田さんが、潤んだ目で俺を見つめ、汗臭く筋肉質な体を密着させてくる。俺は生唾を飲み込み、頷いた。


「あ、ああ……別に……構わないですよ」


「やった! あの、できれば兄貴も……俺のことはもっとこう……弟みたいに、ぞんざいに扱ってくれていいんで。そんで……将也って呼んで欲しいっす」


「わ、わかった……将也。実はその……恥ずかしい話なんだが、俺は昔から、人前で射精するのが苦手なんだ」


「えっ、兄貴が!? 全然知らなかったっす……」


 他のカウンター席で飲んでいるサラリーマンたちも、チンポを露出してゆるゆると扱きながら、顔を赤らめて酒を飲んでいる。お座敷で宴会していたサラリーマンたちの中には、四つん這いになって後背位でセックスを始める連中もおり「ウオッ!ウオッ!」という野太い男の嬌声が、焼き鳥屋の喧騒に混じっていた。この世界では【人前で射精することは恥ずかしくない】のだ。俺が言っているのは「人と話すのが苦手」レベルの、コミュ障っぽい発言だろうとなんとなく想像できたが……顔見知りの柴田さんに、焼き鳥やで手コキでイカされるのは、ちょっと避けたいところだった。


「仕事上やむを得ず射精することはあるが……プライベートではちょっと避けたいんだ。わかってくれるか?」


「そういうことなら……しかたないっすね」


 柴田さんは不満そうだったが、おとなしく引き下がってくれた。柴田さんは砂肝の串を取って食べると、ビールジョッキに残っていたビールを飲み干してから、口を開いた。


「どのみち……今夜は岩崎さんと一晩中ヤるつもりで来たんで、ちゃんとこの辺のホテルは調べてあるんすよ。人前じゃなくて、そこなら大丈夫っすよね?」


※


 松井は「異常」前のことをある程度覚えていたが、俺はというと、ほとんど「異常」前のことは思い出せなくなっていた。なので、仕事で付き合いがある男と【ホテルで男同士でセックスして親睦を深める】のが「異常」なのかは判断しかねた。


(う、う〜ん? 【人前で射精する】のがアウトだというのは、さすがにわかるんだが……ホテルのように人目につかない場所で【男同士でセックスする】だけなら……普通の【仕事のつきあい】なんじゃないか? 一緒に飲みに行くのと同じようなもんだよな?)


 イマイチ自信はないが、たぶん大丈夫だろう。焼き鳥屋を出た後、俺と柴田さんは手を繋いでラブホ街を歩いていた。俺とセックスできるからなのか、柴田さんはやけに上機嫌だ。ラブホ街には、俺たちのように酔いが回ったサラリーマンたちが、恋人同士のように手を繋いだり、あるいは体を密着させてイチャついたりしながら、ラブホテルの中に消えていく光景があった。


 柴田さんが選んだラブホにチェックインし、部屋へと向かう。結婚してからはラブホなんて使ったことはないが、内装にはラグジュアリー感があって、そこそこ高そうな価格帯のラブホだ。ここも柴田さんの奢りなのだという。トイレを済ませた俺がキョロキョロしていると、後からトイレを済ませた柴田さんが俺のスーツの上着を預かって、ハンガーに掛けてくれた。


「兄貴……今夜は俺を、男にして欲しいっす……」


「あ、あぁ……将也」


 柴田さんが目をつむって唇を突き出す。フェードカットで口髭を生やした、元ヤンで39歳の汗臭いサラリーマンが、俺に甘えるようにキスをせがんでくる。俺は先週なら想像もしていなかったような現実にめまいを覚えながら、柴田さんと唇を重ねた。汗臭さと酒臭さが混じり合った匂いが、ムワッと立ち上って鼻腔を刺激する。互いの伸びた無精髭がジョリジョリと擦れる。舌を絡ませ合うと、酒臭い唾液が一気に俺の口腔内に入ってきて、俺は目を白黒させた。柴田さんは丹念に俺の舌をまさぐり、ナメクジの交尾のように俺の舌を求めてくる。ようやく唇を離すと、柴田さんは肩で息をしながら喘いだ。


「んちゅ……兄貴、キス上手っすね……」


「あぁ……将也も。なかなか良かったぞ」


 柴田さんが望んだように、兄貴分ぽく振る舞い、弟分にするように頭を撫でてやる。柴田さんのフェードカットの刈り上げた部分が手のひらに当たって心地よい。強面な柴田さんの顔が、とろんと蕩けるように緩んだ。


「あぁ〜……やっぱり、兄貴は俺が見込んだ通りの兄貴っす」


「なんだよ、それ」


 俺は苦笑しながら、柴田さんをベッドに押し倒した。柴田さんはハアハアと酒臭い息を吐きながら、スラックスの股間をおっ勃てている。俺は柴田さんのワイシャツからネクタイを外し、ワイシャツのボタンをひとつひとつ外しながら、自分がこのセックスを愉しみ始めていることを感じていた。ボタンを外すごとに、汗臭い柴田さんの体臭がムンムンに匂ってくる。地肌に鼻を近づけて直接嗅ぐと、汗臭さの奥の方にややスパイシーな風味があり、ちょっとキツめの体臭だ。


「本当に汗臭いな、将也は」


「あっ♡ う、嬉しいっす。兄貴にそう言ってもらえて……♡」


 柴田さんは、俺に汗臭いと言われたのが何よりも嬉しかったのか、泣き笑いのような表情になっていた。ワイシャツを脱がせ終えると、白いタンクトップをめくった。筋肉質で、汗臭い胸板にチュッとキスをする。汗臭い男の肌を直に味わったことで、俺の背筋にぞくりと快感が走った。しょっぱさと、スパイシーな柴田さんの汗の香りが混ざっていて、このまま舐め尽くしたくなる。


「あぁっ♡ 兄貴ぃっ♡」


「将也……っ♡」


 俺は将也の汗臭い肌にキスをし、ときに舌を這わせながら、じわじわと服を脱がせていく。汗ばんだ肌にチュッと音を立ててキスをし、乳首を甘噛みし、腹筋を舐め、敏感そうな太腿や尻を愛撫する。そのたびに将也は、元ヤンの厳つい外見に反した、かわいらしい声を漏らした。将也を脱がし終わると、今度は俺も服を脱いでいった。裸になった、汗臭く逞しい39歳と42歳の雄同士が、ラブホテルのベッドで抱き合う。もちろん俺も将也も【サラリーマンのエチケットとして浣腸道具は持ち歩いている】ので、部屋に着いてトイレに行ったときに、二人とも浣腸は済ませてあった。


「あっ、兄貴っ……俺……まだアナルは初めてなんすよ。初めては、兄貴がよくて……職場では大勢と寝ましたけど、アナルだけは、まだ誰にも使わせてないんす」


「かわいいとこあるじゃないか、将也」


「あざっす……♡ ああっ! ついに兄貴と……!」


 感極まった将也は感動の涙さえ目尻に浮かべながら、太く逞しい両足を自分の腕で持ち上げ、ちんぐり返しの体勢になった。俺は、ケツ毛の濃い将也の肛門にローションを付けた指を突っ込んで、ぐりぐりと慣らしながら、突然できたこの汗臭い弟分をめいっぱい楽しませてやろうと、やる気を出し始めていた。将也は俺が指の関節を動かすたびに「あっ♡」「んあっ♡」「兄貴っ♡」と喘いで、肛門の準備が整うのを、今か今かと待ちかねていた。


「はやくっ♡ はやく欲しいっす♡ 兄貴の汗臭くて、ぶっといチンポっ♡」


「ああ。そろそろ良さそうだな。ほら、将也。楽にしてろ」


「うっす♡ ひあっ!? ああぁぁぁぁ〜〜っ♡♡♡」


 指を抜いた俺は、ギンギンに怒張した太短いチンポを、将也のケツ毛を巻き込まないようにしながら、肛門に挿入し始めた。俺のチンポが深く入っていくほどに、将也は大きなよがり声を漏らし、汗臭く筋肉質な肉体が、ビクン、ビクンと揺れた。俺のチンポがようやくほとんどが入り、ゆっくりと腰を動かし始めると、将也は「あっ、あっ、あっ」と小刻みに喘いでいた。汗臭い男同士でくんずほぐれずまぐわい合う、至福の時間だ。俺の肌もセックスで掻いた汗でじっとりと湿り、より汗臭くなっていった。そのままじっくりと将也の肛門にピストン運動を続けていると、将也が感激した声を上げた。


「ま、マジでうれしいっす♡ んあっ♡ 兄貴の汗臭いチンポがっ♡ 俺ん中にッ♡」


「フーッ♡ フーッ♡ 将也! そろそろ……出すぞっ♡ ウオッ♡♡ ウオッ♡♡♡ ン゛オオオっ♡♡♡」


「うっす♡ んあっ♡ ん゛ぁ゛ぁぁぁあああ〜〜〜♡♡♡♡」


 どぷっ♡ どぷどぷどぷどぷどぷっ♡♡♡♡♡


 俺の背筋に鋭い快感が走る。次の瞬間、俺のチンポは将也の肛門内に、大量に精液を吐き出していた。将也もケツだけでイッてしまったらしく、腹筋に粘っこい汁を撒き散らしながら、ヒクヒクと痙攣して涎を垂らしていた。俺はゆっくりとチンポを将也の体から引き抜くと、汗臭くかわいい弟分の横に寝そべり、チュッとキスをした。


「よかったぞ、将也……」


「俺もっす。兄貴……」


 俺も将也も、一回やっただけで体が汗ばんでいた。ふと俺は、何か大切なことを忘れているような気がした。


(そういえば、今日の昼間、松井が何か言っていたような……)


「ね、兄貴。この部屋、サウナもついてるんすよ」


「サウナ?」


「つっても2人用のやつですけどね。俺がここ選んだのも、サウナがあったからっす。汗だくになりながら、兄貴とセックスしたくて……」


「ありがとうな、将也。もうちょいアルコール抜けたら、一緒に入ろうぜ」


「うっす♡」


 俺と将也は一息つくと、今度は将也が俺を押し倒し、汗ばんだ体を舐め始めた。俺は何か忘れているような、もやもやした気持ちを抱えながら、将也の愛撫を受けていた。


「今度は、俺が兄貴に入れてみたいっす♡」


「おう、いいぞ」


 俺は両足を抱え、ちんぐり返しの体勢で将也を待ち受けた。


※


 日曜日の朝。家に帰った俺は、穂香から怒られていた。


「も〜っ! パパったら信じらんない! 土曜日は映画行こうって約束してたじゃん!」


「スマンスマン。金曜の夜に取引先の人と飲んだら、そのままホテルに行くことになってな。結局そのまま【土曜日は一日中、ホテルでセックスとサウナを繰り返して】追加でもう一泊することになっちゃったんだよ」


「んっもう……まあ、仕事の付き合いならしょうがないけどさぁ……」


 穂香は不満そうだが、理解してくれたようだ。妻には連絡してあるが、朝帰りどころか土曜日はホテルに籠りっぱなしでさらに一泊したため、俺が家に帰るのは日曜の朝になってしまったのだ。


「ていうかパパ……【すっごく汗臭くてムキムキで、いかにもエロオヤジ】って感じで帰ってきたから……別人かと思って、ちょっとびっくりしちゃった」


「まあな。取引先の人が、サウナ付き個室のラブホを見つけてくれてな、そこでがっつり【男同士で裸の付き合い】をしてきたんだ」


【何度もサウナに入って汗だくになった】俺の肉体は、別人のように筋肉が増して、暑苦しいガタイになっていた。【汗を掻くほど肉体が逞しくなる】のだから当然だ。まるで格闘家のような筋骨隆々の肉体になったので、会社に着て行ったワイシャツは帰りには着られず、肌着の白いTシャツとスラックスだけで帰ってきた。Tシャツの胸元からは濃い胸毛が生い茂っているのが見えるし、俺の声も低く深い響きになっている。顔立ちもゴリラのように彫りが深くなり、眉毛もぼうぼうに生い茂り、髭の剃り跡も青々しい。いかにも性欲が強そうな顔になっている。穂香は俺の顔をチラチラ見ながら口を開いた。


「ま、まあ? 今のパパって【見た目だけはエロオヤジって感じで】【格好いいし】……今回は許してあげる」


「許してくれるのはありがたいが……ずいぶんな言い草だな。【パパは頭の中身もエロいことばっかり考えている】【れっきとしたエロオヤジ】だぞ」


 俺はスラックスのチャックからニョッキリと露出したデカマラを扱く手を止めずに、苦笑いした。金曜と土曜でだいぶ汗を掻いたのもあって、俺の精力も性欲も桁違いに増していた。俺のチンポも亀頭がエロい紫色に淫水焼けし、竿の太さも長さも一回りデカくなっていた。ただ元々太短かったのもあって、竿の長さよりも太さの方が目立つ感じはあるが……。


「ぬ゛おっ♡ い、イクぅッ♡♡」


 ムフーッ♡とスケベな鼻息を漏らして、俺はリビングにあったゴミ箱を抱えて、その中に射精した。

 

 どぷっどぷっどぷっどぷっどぷっ♡♡♡

 どぷっどぷっどぷっどぷっどぷっ♡♡♡


 カスタードクリームのように濃厚な黄ばんだ精液が、ゴミ箱を孕ませそうなほど大量に注ぎ込まれていく。そんな俺の振る舞いに、娘もとうとう納得したようだ。


「まあ、確かに今のパパ……頭の中身もスケベかもね」


「ふーっ♡ だろ? で、どうする? 映画はこれから行くか?」


「うーん、それもいいんだけど……ね、パパ。パパの体もでっかくなったし、今日はパパの私服を一緒に買いにいかない? 映画もそのついでに見てこようよ」


「おう、いいぞ。ちょっと待ってくれ。一旦着替えてくるからな」


 俺はチンポをブルンブルンとゴミ箱の上で揺らすと、右手で亀頭を優しく握って、尿道から溢れ続ける特濃精液を最後まで出し切ってから立ち上がった。身支度を整え、俺と穂香は先週も行ったショッピングモールに向かった。


「よし、こんな感じじゃない? すごい似合ってるよ、パパ」


「ちょっと派手すぎないか?」


「いーのいーの。パパみたいな年頃のオジサンは【肌の露出を多くして】【男漁りが大好きなエロオヤジ】っぽさを出す方が【男らしくて格好いい】んだし」


 日曜の正午前。ショッピングモールでは、俺の私服を中心に買い物をしていた。穂香に言わせれば、俺の私服は露出が少なすぎるらしく、その場で買った服に着替えさせられた。今の俺は、派手なピンク色のタンクトップを着て、極端に丈の短い白いショートパンツで、サンダルを履いた格好だ。密生した濃い胸毛がピンク色のタンクトップの胸元から見えるし、丈の短い白いショートパンツは毛深く逞しい太腿が剥き出しになっている。タンクトップの胸元にも買ったばかりのサングラスを引っ掛けてある。男臭い肉体の魅力をムンムンに出した【セックスアピールの激しいエロオヤジ】コーデだった。実際、娘が俺から離れて一人でいると、俺にナンパしてきたやつもいたほどだった。


「あのー、オジサン一人ですか? よかったら俺たちと一緒に昼飯食って、午後一緒に遊びません?」


 大学生ぐらいの若い男のグループが、顔を赤らめて俺に声を掛けてきた。娘と買い物中だからと断ってその場で別れたが、大学生たちが「今のオヤジ、すげー汗臭くてカッコよかったよな……」「ああ……すげー精液濃そうだし……」と会話しているのが聞こえてきて、内心嬉しかったのは言うまでもない。


「やるじゃん、パパ」


「まあな。で、次はどこ行くんだ?」


「こっちこっち!」


 娘に連れて来られたのは、アクセサリー店だった。全体的には女性向けのラインナップが多いが、男性向けも取り扱っているらしい。


「おいおい。俺に何を付けさせる気だ?」


「パパ、ちょっとタンクトップめくって。胸板見せて」


「こうか?」


 俺がピンクのタンクトップをめくると、ムワッと汗臭く男臭い胸板が、ショッピングモールで露わになった。分厚い胸板にはジャングルのように胸毛が密生し、乳首も肥大化してぷっくりとデカい。


「やっぱりパパ、乳首もデカいんだね」


「当たり前だろ? 【乳首もデカい方が、ワイシャツに映えて印象が良くなる】からな」


【性欲旺盛で淫乱な男である】ことを示すのは【本能のままビジネスに取り組む】という姿勢の現れであり、相手に与える印象も良くなる。穂香は、俺の乳首をしげしげと眺めていたが、やがて店員を呼んで何事か相談し始めた。


「承知いたしました。それでは、お父様と娘さんはこちらにどうぞ」


「なんだなんだ?」


 店員と娘に引き連れられ、俺はショーウィンドーの一角にやってきた。


「今回は、お父様がお召しになる【乳首ピアス】をお探しとのことでしたね」


「はい。そうなんです。私も【ちくピ】はあんまり詳しくないので、相談したくて」


「おいおいおい、待ってくれ待ってくれ。俺が乳首ピアスだって?」


「だってパパ、そんな立派な乳首してるのに、もったいないじゃん!」


 俺は腕組みをして唸った。サラリーマンが乳首ピアスだなんて……ん? 社内の服装規定で禁止されているのは、耳に付けるピアスだけで、乳首ピアスは別に禁止されていないような……俺が迷っていると、店員がカタログを取り出した。ガタイのいい男たちがベッドに横たわり、乳首ピアスを付けた厚い胸板を晒している。


「最近では、ビジネスシーンで【淫乱さをよりアピールするために】乳首ピアスをお召しになる男性も多いんですよ。きっちりとスーツを着たビジネスマンが【セックスミーティングの際に乳首ピアスを相手に見せる姿】は普段とのギャップもあって大変にエロティックだとか」


「……ほう」


 興味が出てきた俺は、カタログを捲った。店員は「店内にある現品はこちらになります」と言って、いくつかショーウィンドーを見せてくれた。色々と迷ったが、最終的には娘の「このハートのちくピ、超かわいくない!?」「パパみたいな筋肉ムキムキのエロオヤジが、これしてたら【すごい変態っぽくていい】と思う!」というひと押しが決め手になり、購入してその場で施術して貰った。


「う〜ん、ちょっとかわいすぎないか?」


「えーっ! それがいいんじゃん!」


 穂香は俺が【性欲旺盛でドスケベな淫乱エロオヤジ】っぽくなったのがそうとう嬉しいようで、汗臭く毛深い俺の腕に自分の腕を絡ませ、ショッピングモールを歩いていた。


「じゃ、お昼食べたら映画見に行こ!」


「ああ」


 今週は色々あったが……なんだ【いつもどおりの週末】じゃないか。確かに松井が言う通り【男の汗が魅力的に感じる】というのは異常な出来事だったが【それ以外は特になにも起きなかった】よな? 俺は娘と買い物をするありふれた休日の悦びを噛み締めながら、汗臭い淫乱エロオヤジになったマッチョな体を揺らして、ショッピングモールを歩いていった。


※


 月曜日の朝。俺は強烈な夢精の快感と共に目を覚ました。


「んくぅ〜〜〜っ♡♡ んひっ♡♡ け、今朝も盛大に……出たなっ♡ はひっ♡♡」


 大量に夢精し、敏感になった亀頭を、枕元にあったティッシュを何枚も出して拭う。自分の身体やシーツに大量に飛び散った、黄ばんだ濃厚な精液の塊も拭っていく。昨晩も妻とガツガツ盛りあったが、妻は俺よりも先に起きて、朝の支度を始めたようだ。妻の体力が持つように、昼間のうちにある程度オナニーで性処理しておいて正解だったようだ。俺は陰毛から臍へと繋がるギャランドゥと、臍から胸毛へと繋がる剛毛の茂みを見て、満足げな気持ちになった。男性ホルモンがムンムンに充満した、男臭くエロい肉体だ。


「うしっ♡ 今週も頑張るとするか」


 チンポをブラブラと揺らし、汗臭く精液臭い体のまま洗面所に向かう。【スケベな男ほど格好いい】のだから、娘に俺の毛むくじゃらな裸体を見られても問題はない。髭を剃り終えると、青々しい髭の剃り跡をした、性欲の強そうな中年男の顔が鏡に映っていた。ぶるんと盛り上がった毛むくじゃらの雄っぱいには、娘に選んでもらったハート型の乳首ピアスが付いている。


「確かに、結構いいかもな……」


 俺はピアスの付いた乳首をコリコリと愛撫し「んくっ♡」「ひあっ♡」とエロい声を上げながら、ダイニングへと向かった。


「あ、パパおはよー。うわっ、昨日より雄っぱい大きくなったんじゃない?」


「ああ。昨日ママと頑張ったからな。パパみたいなオジサンは【汗を掻くとすぐ雄っぱいがデカくなる】から、服が合わなくなって困るよ。でもほら、お前に選んでもらった乳首ピアス、いい感じだぞ♡」


「でしょー! それにしてもパパ……ほんっと【性欲が強すぎるゴリマッチョエロオヤジ】って感じで【ちょー格好いい】じゃん」


「おいおい。そんなに褒めても、小遣いは値上げしないぞ♡」


 俺はクチュクチュとデカマラを扱きながらリビングの椅子に座り、テレビを付けた。男性アナウンサーもやたら筋肉質で逞しく、しかも露出度が高い。半袖のワイシャツとショートパンツを穿いて、マッチョなガタイを視聴者に見せつけている。朝食を食べ終えた俺は、いつものように出勤前に妻をガツガツと発情期の犬のように抱き、ヒクヒクと体を震わせる妻をソファに横たえると、部屋に戻って身支度に取り掛かった。


 俺は【上半身は裸のまま、ネクタイを締めて】【下半身は競泳水着を穿き】【靴下を履いた】。サラリーマンの服装の規定は、会社によってある程度差異はあるが【男の色香をアピールできる】なら【とりあえずネクタイを着用していればOK】というのが社会的な常識である。俺のようなゴリマッチョなエロオヤジだと、サイズの合うスーツを作るのも一苦労なので【地肌ネクタイと水着】は俺にとってかなり楽な服装なのだ。赤いネクタイが黒々と茂る胸毛に映えているし、ハート型で銀色の乳首ピアスが、雄臭い肉体に可愛さを添える。


「よし♡ かなりエロい感じでいいんじゃないか♡」


 俺は自分の雄臭く、汗臭い肉体に惚れ惚れすると、カバンを持ち革靴を履いて出勤した。満員電車の中は今朝も汗臭く、そしてマッチョな男たちで満ちていた。中でも胸毛やギャランドゥが密生した俺の体は、その中でもかなり目立つらしく、たびたび鼻息を荒くした汗臭い男の手が俺の体に伸びてきて、会社のある駅に着くまで、休む間もなく男同士の裸の交流を楽しむことができた。精液まみれになりながら電車を降りて、バスで会社に向かった。


「おう♡ おはようっ!」


「岩崎課長、おはようございます! ウオッ♡ すげえ汗臭ぇっす♡」


「わぁ〜! 岩崎課長、ちくピなんてするんですね」


「ああ、週末に娘が選んでくれてな。いいだろ?」


「そのちくピ、可愛いですね〜。岩崎課長の男らしさを引き立ててると思います」


「ていうか岩崎課長、地肌にネクタイも似合いますね。胸毛もすごいイケてるし!」


「そうそう! 水着のもっこりも男らしいし……私の彼氏も見習って欲しいわ」


 オフィスに出勤した俺は、次々に男性社員たちと抱き合って、汗臭い匂いを嗅ぎ合いながら、自分の席に向かった。娘が選んでくれた乳首ピアスは女性社員たちに好評で、初めての地肌ネクタイと水着の出勤も【いかにも性欲旺盛なエロオヤジっぽい】と好評だった。俺の他の男性社員たちの服装はまちまちだが、上半身だけ地肌ネクタイだったり、あるいは白いタンクトップやTシャツにネクタイを着用しているのが多かった。下半身はスラックスを穿いている奴が多いが、俺のように水着を穿いていたり、ブリーフで出勤している奴もいる。ワイシャツとスーツににパツパツの筋肉質な肉体を押し込んでいるのは、松井だけだった。


「……おはようございます、岩崎課長。課長も『そっち側』になっちゃったんですね」


「ん? 何の話だ? それはそうと、ほら! 今朝も『おちんぽキス』だ! 特濃の精液を二人で出すぞっ♡」


「ふひっ♡ か、課長っ♡」


 毛深くゴリマッチョな俺の肉体の放つ濃厚な汗臭さに、松井が悦びの混じった声を上げる。俺がいつものとおり【おちんぽキス】をして【がっつりと射精】しようと誘うと、松井は荒い息を吐きながらそれを制して、口を開いた。


「いっ岩崎課長……先週、俺が言ったこと、まだ覚えてます?」


「うん? ああ【男の汗臭さが心地よく感じる】って話だろ? 確かに異常ではあるが……そう悪くないんじゃないか? 【それ以外は何も変わらなかった】んだし」


 松井は何か言いたげだったが、こわばった顔つきで唇を噛み締め、自分の席に戻っていった。ううむ、月曜の朝からあんなに元気がないのは心配だな。他の男性社員と比べると、松井は汗臭さも控えめだし……俺はスマホを取り出すと、将也に電話を掛けた。


「ああ、俺だ。おう、先週は楽しかったな……うん、そうそう、実は部下に一人、ちょっと元気がない奴がいてな。ああ、どうにか元気づけてやりたいんだ。俺と将也とそいつとで、この間のホテルで【サウナで汗だくセックス】するのはどうかと思ってな。そいつも汗をたくさん掻いて、俺や将也みたいな【性欲旺盛なゴリマッチョ】になれば元気も出ると思うからさ。松井っていうんだが……歳? 将也よりは年下だな。お前には弟分みたいに可愛がってやって欲しいんだ。ああ、出来るだけ早く……うん、またちゃんと決まったら連絡する。ひとまず、今夜の予定は空けておいてくれ」


 松井が日焼けしたゴリマッチョな体躯に、派手な蛍光色の黄色のマンキニ水着を着用し、地肌ネクタイで意気揚々と出勤したのは、翌朝のことだった。


(終)

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Comments

黒竜Leo

雄臭プンプンして来た! 世界の常識がどんどん変えられて、正常と異常を分ける一線も曖昧になります! 汗掻いただけマッチョになれる世界、いいな~

くろねこ@9605

感想ありがとうございます! 僕も汗掻いただけでマッチョになる世界に行きたいですね……!

ハッスィー

徐々に男たちがムキムキになり、エロくなり、どこでセックスしても全く問題ない世界に変わっていく過程がとても興奮します!正直こんな世界になってほしいです

くろねこ@9605

感想ありがとうございます! 一日にどれぐらい変化させるか、あれこれ悩みながら書いたので、気に入っていただけて嬉しいです。 こういう世界になって欲しいですね……!