悪魔の尻尾(7)酔っ払いからウェストを吸収する (Pixiv Fanbox)
Published:
2023-05-06 02:41:05
Imported:
2026-06
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いちおう12話で区切るつもりではありますので、すっかり後半戦に入りました。
もうちょっとお付き合いいただければありがたいです。
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さて、女としての気持ちよさをハッキリと知ったので、俺はこれから先、女の体を得るために行動することをためらう必要は無くなった。
女としての肉体を得ていく。そのために素材になる女性から要素を吸収していこう。
次はウェストと腕だろうか。とはいえ、どこで誰から吸収していくべきか、になる。
どうするべきだろうか。
「何考えてるの、隆正?」
「いや…、次はどうしようかなと思ってな…」
仕事の休み。人の姿をしたミリィと喫茶店でデートをしながら、俺はぼんやりと考えていた。
「そうねぇ。半分を過ぎてきたから、次はどうするか、確かに悩むわね」
「それを誤魔化す方法もどうするか…、もだな」
「確かにねぇ。…いっそ魔界に来ちゃう?」
くすくすと笑いながら、ミリィは俺の脚に自分の脚を絡めてくる。
確かにそれをすれば、人間社会の軛に捕らわれず自由に動けるだろうが、一つの疑問がある。
「だけど、それで俺は悪魔に目をつけられることはないか? あと、魔界で俺みたいな人間が普通に住めるのか?」
「隆正はそこが気になるか。…まぁ確かに、悪魔を陥れて一人殺したというのなら、大なり小なり注目はされるでしょうね。人間のまま魔界に行くことも難しいとは言わせてもらうわ」
「そうなるか。…また一人悪魔を喚んで、『魔界で生きられる体質』の要素を吸収する必要があるかな…」
「…ふふ」
ぼんやりと考えていると、ミリィが小さく笑った。
「なんだよ」
「いえ、隆正、普通に『他人を陥れること』に躊躇がないなと思ってね。普通の人間なら、そこを躊躇うはずなのに」
「…それを躊躇して、俺の目的がかなうのか?」
「無いわね。手術じゃ普通に女性には成れないもの。悪魔みたいね、隆正は」
本物の悪魔に悪魔みたいと言われて、不思議と悪い気はしない。俺が悪魔の尻尾を手に入れた時、すでにそこへ足を踏み入れていたのだろう。
だったら悪魔らしく行動して、他人を素材にして女の体になってやろうじゃないか。
「じゃあ一つ助言ね。隆正が契約で得た尻尾だけど、吸収できるのは物理的なものに関わらないわ。あなたが望めば、どんなものでも吸収できる。私はそう感じているわ」
「どんなものでも、ね…」
ズボンの中、脚に絡みつけている尻尾を少しだけ動かす。
確かに俺の尻尾は「記憶」という物理的でないものさえ吸収できた。俺が望めば、「要素」を何でも吸収できるのだろう。
では何を吸収するべきか。
「これ以上女性化してしまうと、どうしても違和感が発生してしまうからね。そこも考えて要素を吸収していった方が良いんじゃない?」
「そうさせてもらうよ。ありがとう、ミリィ」
「お礼なんて良いのよ。私は隆正から精をもらってるし、隆正は私の助言を受け止めてくれる。それでイーブンじゃないかしら」
そう言いながらミリィはコーヒーに口をつける。確かに、その通りだろう。俺達は契約ではない関係で結ばれた共犯者なのだ。
俺もコーヒーを口にし、ゆっくりと飲み干していく。
…そうだな、そろそろ躊躇を無くしていこう。俺が目的を達成するために、必要なことを行っていかないといけない。
それに当たって、まず出来るかどうか、ということを確かめよう。
俺が「女」になれるか、やってみるのだ。
* * *
そのままミリィと一緒にデートをして、時刻は深夜。
ちらほら明かりの消え始める飲み屋街を通っていると、運良く、あるいは相手にとっては運悪く、飲み潰れている女性を見つけることが出来た。
スーツを着た美人の女性だが、胸も尻もスタイルは少しばかり残念といった様子の女性だ。体型的には子供っぽいと言えるような感じだ。
「……」
「……」
俺とミリィは顔を見合わせ、小さく一つうなずくと、二人で女性を抱えて、路地裏へと連れ込んでいった。
「いやぁ、隆正ってこういう時ツイてると思うわね。こんな感じで酔い潰れてる女の子と出会えるんだもの」
「その辺は俺もありがたいと思ってる。悪運が味方してくれてるのかな」
「それも含めて天運って奴よ。素直に喜んでおけばいいんじゃない?」
くすくすと笑いながら、ミリィは酔い潰れた女性の荷物を漁り、保険証などを手際よく見つけ出していた。
「ふぅん。木崎ゆかりさん、ね」
「別に名前を知っておく必要はないんじゃないか?」
「意外と大事よ? 誰が自分の礎になったのか、ということを確認すると、それはそれで興奮するんだから」
「かといって、俺の体の礎になった女性の大半は、名前も知らない相手なんだけどな」
女性器を吸収した悪魔も含めて、という話になるが。まぁそれはいいだろう。
俺はミリィからゆかりの保険証を受け取り、彼女が女性だという事を確認する。
ミリィは嬉しそうにゆかりの上着をめくりあげて、綺麗にくびれたウェストを見せつけてくる。
まずはここから吸収していこう。
俺は尻尾をまろび出させると、すっかり慣れた動きで紫の腹部に突き刺す。
吸収するのだ、と意識を持っていくと、俺の尻尾がゆかりからウェストの辺りを吸収する動作を始めていく。
それと同時に、俺の肉体にも変化が起き始めていく。男としてのウェストから、女性としてのくびれが腰にできていく。身に着けている服の中に隙間が出来ていくのが分かった。
さらにへその位置も変わっていく感覚がした。男としての高い位置から、女性としてくびれより低い位置に動いていった。
それに呼応するように、吸収されたゆかりのウェストは、まるでその存在が無くなったかのようにしぼみ、萎れていく。
腰がこのような状態になれば、立てるのかも怪しく思えてしまうが、それは俺が気にする事ではないだろう。
「隆正、見せて見せて?」
ミリィがウキウキとした表情で俺の服をめくり、女性としてのウェストになったのを確認していく。さわりと撫でられると、くすぐったく、そして今まで触られたのと感触が違うのがよくわかった。
「うん、いい感じ。隆正の男の部分、もう殆ど無いわね。おへそも可愛くなっちゃって」
「それが俺の目的だからな。後は胸と腕だが…、それは彼女から吸収するのは止めておこう」
「あら、いいの? 折角のチャンスなのに」
「残った部位は、どうせならしっかりと相手を見定めて吸収しようかと思ってね」
必要ならば他の部位もそうするつもりだし、改めて『要素』の吸収し直しをしてもいいと思った。
だがまずは、俺が「これ以上女性限定の場所に侵入しても、何も咎められないようにする」必要があった。だから俺は、もう一度尻尾をゆかりの胸に突き刺す。
呼吸をゆっくりとして心音を整える。そうして俺は、ゆかりから「女性という周囲の認識」を吸収する事にした。
どくん、どくんと、今度は物理的ではないものが吸収されていく感覚がする。記憶の吸収と似ているが、また異なる感覚だ。
その度に世界が歪むような感覚がして、俺は少しばかり立つのも辛くなるが、そこは意地を以て立ち続ける。
吸収していく尻尾の力強さが、どんどん弱くなっていくごとに、立ち眩みの感覚も弱くなる。
やがて「これ以上吸収しきるものが無い」という判断に至ると、俺は尻尾をゆかりから抜き取った。
改めてミリィを見ると、楽しそうに俺を見ているのがよくわかる。俺はミリィに尋ねる。
「…なぁミリィ。お前から見て俺は、どう見える?」
「どうって、隆正のままよ。ただ…」
「ただ?」
「男のままなんだけど、女性でもあるっていう感じかな。どっちでもあってどっちでもない、という不思議な感覚がしてるわ」
「ふぅん?」
「ま、その辺は追々探っていけばいいんじゃない? 女性としての場所に入って、どう思われるか、とかね」
「なるほどね…。それもそうだ、ゆっくり探らせてもらうとするか」
まだ男性として見られてしまうのならば、その都度女性から「女性という周囲の認識」を吸収していけばいい。無形のものさえ吸収できるのならば、俺を止められるものは存在しない。
俺とミリィは、もはや女性でなくなったゆかりを放置して、路地裏から出ていった。
見つけてもらえればいいな。と、そんな事を思いながら。