捕虜となった勇者 1話 (Pixiv Fanbox)
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禍々しい装飾が施された惨憺たる雰囲気の玉座の間に、勇者と魔王が繰り広げる激しい剣戟の音が小一時間は続いていた。
『ふっ!!』
ゼクスが振り被った特大剣を、魔王がいなす。
『いいぞ!いいぞ勇者よ。もっと我をたのしませるのだ!』
『黙れ…!』
ゼクスは疲れを知らぬ体をバネのようにしならせながら、自分と同じ体重はあろうかという特大剣を、不敵な笑みを浮かべる魔王に向けて風切り音と共に振り回し続ける。
まるで、ただの大剣を扱うかのように大きな得物を自在に操る勇者の体は、バランスのいい隆々とした筋肉に覆われていることが服越しからも一目瞭然であり、全身を使って武器を振るう度、その逞しい盛り上がりを更に際立たせていた。
『だが惜しい、実に惜しいぞ勇者よ…。その肉体、その身から溢れ出るオーラ、人間にしては実に見事である。惜しむらくは、貴様の仲間があまりにも貧弱過ぎた事であろう…。お前も思う所があるのではないか?』
『そんな事はない!』
勇者には2人の仲間がいた。
自称20歳の僧侶のミラと、若き秀才の魔法使いのルイス。
2人は決して弱いわけではなく、実際彼らの後方支援なくしてここまで到達する事は不可能だったろう。
だが、道中に立ちはだかり続けた、雑魚敵と呼ぶには憚る魔王の手下達との戦闘に加え、長引いているこの決戦にとうとうマナを使い果たし、2人は魔法を使うことが出来なくなってしっていた。
ルイスは今、ゼクスと魔王の一騎打ちを後方から見守る事しか出来ず、ミラに至っては命を削ってまで回復魔法を行使し続けた結果意識を失い、ルイスに介抱されている。
『おお、おお、なんと無様な…。マナを使い果たした術使いなど只人も同然。卑しくも、魔法という高位種族にのみ許された御業を、人間風情があやかろうとした結果の見事な見本であろう、フハハハ』
『黙れ!』
ゼクスは魔王の駄口を黙らせんと、その喉向けて特大剣を振るうが後ろに躱される。
『それに比べ、お前は…』
後ろに躱しながら、勇者の体を品定めするように目を細めた時、魔王は致命的なミスをしてしまう。
ドサっ!
『っ、ぬかった!』
魔王は、玉座の辺りの1段高くなった段差に躓き、そのまま尻餅をつくように倒れてしまった。
『お前は人類を見くびりすぎている。…これで終わりだ』
好機を逃さずにゼクスは特大剣を構え、体勢を崩した魔王に向けて会心の一撃を放とうとした。
だがその瞬間、魔王の腕は後方に控えているルイスとミラの方へ向けられる。
『そう見えるか?我の人間に対する評価は正しい、極めて的を射ている…。その証拠を今から見せてやろう』
言いながら魔王は掌に魔力を集中させると、特大の火の玉を後方の2人に向けて発射した。
『なっ!』
ゼクスは今まさに振り下ろさんとしていた重い特大剣をその場に手離し、仲間の元へ走り出した。
バーン!!
爆発音と爆風が暗い玉座の間を振動させる。
ルイスが目を開けると、仲間を庇うため炎魔法をその身に直撃させた、こちらを背にするゼクスの姿があった。
『ルイス、無事か?』
ゼクスは魔王を見据えたまま仲間の安否を尋ねる。
『ゼクス、それはこっちのセリフだよ。それにせっかくのチャンスを…』
爆発で装備が少し破損しているゼクスはダメージをもろに受けてはいたが、まだまだ余裕はありそうである。
彼は魔法に対する耐性が低くはなかった。
『フハハハ、なんと愚かしく、そして嘆かわしいことよ。我の言った通りだ勇者よ、それが貴様ら人間の愚かで脆弱な習性である。…のう、今なら分かるのではないか?ようやく掴みかけた世界平和よりも役立たずの命を優先させてしまう、非合理で且つ身を滅ぼす作用しか持たないその不可解な行動パターンを』
立ち上がった魔王は御託を並べながら、仲間を背に不動の姿勢を見せるゼクスの方へ歩み寄り、距離を開けて対峙した。
『…お前には死んでも分からないだろう。仲間を想い助け合う事の強さと尊さを』
『つまらぬ、くだらぬ、反吐が出るわ。我ら誇り高き魔族には到底理解出来ぬ戯言よ。それが人類を高みへと導く強さだと言うのなら…、今ここで証明してみせよ、勇者ゼクスよ』
そう言うと、魔王は再び腕を前に出し、掌に魔力を集中させ、矢継ぎ早に最上位の攻撃魔法を発動し始めた。
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差分
2話
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