【小説】性格イジェクトボタンと性格カートリッジ (Pixiv Fanbox)
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「貴女たち! 何してるの!?」
声を張り上げる私こと島崎優子に対して、目の前の二人の女子生徒が面倒くさそうに顔を見合わせた。
「あーあ、見つかったっすよ? どうすんすか先輩」
「まーた会長か。しつこいねー」
二人の手にあるのは火のついたタバコ。
どうやらまた屋上でタバコを吸っていたようだ。
「貴女たちみたいな人を放っておくわけにはいきません。私はこの学校の生徒会長なんですから」
私は怯まずに一歩前に出る。
この二人はうちの学校でも要注意の問題児たちだ。
ピンクっぽいブラウンに染めたミディアムボブの髪型をしている小柄な方は、芹沢ゆかりさん。
まだ一年生ながら度々授業をサボっているようだ。
赤と黄の中間ぐらいのブラウンに染めたウェーブのかかったセミロングの髪型をしている少し背が高い方は、峯岸舞さん。
私と同じ二年生で、入学当初から目立つ行動が多く、私は何度も彼女に頭を抱えさせられた。
「いいじゃんちょっとくらいさー。前は見逃してくれたのに」
「前回は温情をかけて注意だけに留めておいただけです。今度ばかりは先生に報告させてもらいます」
私は二人にきっぱりと告げる。
前回タバコを持っているところ見たときは吸っているところを見たわけではなかったから厳重注意だけで誰にも告げ口したりはしなかった。
でも、今回は吸っている現行犯だ。
これは明確にアウトだと言えるだろう。
「まずいっすよ先輩。会長さん、本当にウチらのこと先生にチクっちゃいますよ」
「あー、教師にバレたらさすがに停学とかになっちゃうかもねー」
私の警告に対して、峯岸さんは口ではそう言いながらも何故か余裕のある態度を崩さなかった。
こんな状況だというのになんだか馬鹿にされているようで非常に不愉快だ。
「峯岸さん、貴女いい加減に……!」
「まーまー、会長。一旦落ち着いて」
詰め寄った私の肩を峯岸さんが軽く叩いてくる。
すると、峯岸さんは懐から何かを取り出した。
赤いスイッチに見えるそれを、峯岸さんは自慢げに見せびらかしている。
「先輩、なんすかそれ?」
「ふっふっふ、あたしの秘密兵器」
ただの機械の部品にしか見えないがあれがなんだというのか。
峯岸さんはそれを指で弄りながら語り始める。
「会長にタバコ吸ってたことチクられたらあたしらとしてもまずいワケじゃん? だからさ、あたしらは会長と仲良くなって、会長にあたしらのことチクりたくないと思ってもらえばいいワケよ」
「……?」
私が峯岸さんたちと仲良くなる?
こんな印象最悪な二人と今この状況で友情を育めるとは全く思わない。
この人はさっきから何を言っているのか。
「でも会長さん、さっきからウチらのこと睨んでますよ? 仲良くなんてなってくれるんすか?」
「だから、こーすんの」
突然、峯岸さんが私の頭の上に持っていた赤いスイッチをポンっと置いてきた。
そして、カチッそのスイッチを押す。
その瞬間、カシャッ、と音が鳴り私の額から何かが飛び出した。
それと同時に、私の中から感情が消失した。
「……………………」
「うわ、会長さんのおでこからなにか出てきたっすよ? これ、カセットっすか? というか、会長さん急に真顔で黙りこくっちゃったっすけど、どうなってんすかこれ?」
「すごいっしょ? このボタンはね、イジェクトボタンなの。スーファミとかにあるじゃん、押すとカセットがカシャッと飛び出すボタンが」
「いや、知らないっすけど。スーファミっていつの時代のゲーム機の話してんすか」
「え、ゆかり知らないの? まあいっか。とにかくそういうものがあって、これも中のカートリッジを出すことができるワケ。これを使って出せるのは、その人間の性格なのよ」
峯岸さんが説明を続ける。
その間、私は何も言わずにただその場に立ち尽くしていた。
何も思わない。
何も感じない。
ただその場に立ち尽くしているだけ。
「今会長のおでこから出てきたのは会長の性格が込められたカートリッジ。この性格カートリッジが抜け出た人間は性格がなくなっちゃうからこんな感じでなにも考えられなくなっちゃうの。一応意識はあるらしいけど」
「はえー、すごいっすね」
峯岸さんが私の頭を叩いたり、芹沢さんが私の肩を軽く小突いたりしてくる。
しかし、私はそれに対して何も反応しない。
何も感じないのだから当然だ。
「この性格カートリッジには会長の『口うるさくて堅物な生徒会長』としての性格が入ってるんだけど、これの代わりに別の性格カートリッジを会長に挿し込むと、会長の性格が別のものに変わっちゃうワケよ」
峯岸さんはそう言いながら私の額に挿さっていた青いカートリッジを完全に抜き取った。
そして、懐から何枚ものカートリッジを取り出す。
「それも性格カートリッジっすか? いっぱいあるっすね」
「この中からあたしらと相性よさそうな性格を選んで会長に挿したら、いい感じにあたしらと仲良くなってくれると思わない?」
「真面目だった会長さんをウチらみたいな性格にするんすね。なんか面白いっすね!」
二人は楽しそうに悪巧みをしている。
そんな話を聞いても私は何も感じない。
どんな酷いことをされそうになっているのだとしても、今の私には何も感じることはない。
「これとかどうよ? 『不良女子』のカートリッジ。元の会長とは正反対だけどあたしらと仲良くなってくれそうじゃん?」
「いいっすね! それやってみるっす!」
峯岸さんが一枚の赤いカートリッジ手にこちらへ歩み寄ってくる。
そして、私の額に挿し込んだ。
その瞬間、真っ白だった私の感情に一気に色がつき始めた。
「お、入ったっすね!」
「これでよしっと。さーて、会長。気分は──ふぎゃッ!?」
気づいたら私は峯岸さんを殴っていた。
沸きたった感情は強い怒りと苛立ち。
どうにもムシャクシャしてこの目の前の女をブン殴らねえと気がすまなかった。
今までこんな暴力的なことはしようと考えたことすらなかったけど、今はそうすることになんの抵抗もない。
「……てめえら気安く私に近づくんじゃねえよ。ぶっ殺すぞ?」
峯岸と芹沢を睨みつけると、二人は唖然としたままビクッと震え上がった。
なんだか強い言葉が自然と口から出てくる。
これはつまり、私の性格が変わったってことなのだろうか。
つーか、私って言い方、なんかお行儀良すぎて気色悪い。
これからはアタシでいいか。
「……せ、先輩っ! どうなってんすか!? なんか会長さんめっちゃ怖くなっちゃったんすけど!?」
「……不良って、こういう感じなのね……痛たー……」
二人はコソコソと話をしている。
さっきからコイツらを見ていると無性に腹が立つ。
性格が変わったと言っても今のアタシにとってはコイツらと仲良くなる理由はなさそうだ。
「チッ……付き合ってらんねえ……」
アタシは唾を吐き捨てながらその場から離れた。
それ見た峯岸が慌てて声をかけてくる。
「あ、会長! あたしらのこと、教師には……」
「うるせぇ。アタシに指図すんじゃねえよ、ボケ」
一睨み利かせて二人を黙らせながら、アタシは屋上から立ち去った。
さて、これからどうするか。
そういえばあの二人がタバコを吸ってるのを先公に報告しようとしてたんだったか。
「アホらし。学校の風紀とか死ぬ程どうでもいいわ」
なんでそんなくだらないことにこだわってだんだろうアタシは。
別にやりたい奴には好きにやらせりゃいいだろ。
アタシには関係ない。
つーか先公と話しに行くとかダルすぎ。
あいつら表面上はアタシのことチヤホヤしてるけど、どうせ内心ガキだと思って舐めてるに決まってる。
そんな奴らと話すなんて反吐が出る。
「あー、なんかもう全部ダルくなってきた。帰ろ」
まだ昼休みでこれから午後の授業があるけどそんなのもうどうでもいい。
アタシは教室に戻り、自分のカバンを手に取った。
そして、そのまま教室を後にする。
「あれ? 島崎さん? どこ行くの?」
クラスメイトの女子が話しかけてきたが、アタシは無視して教室を出た。
今はとにかくイライラしていて誰とも話したくない。
つーか、どこに行こうがアタシの勝手なんだからほっとけ。
昇降口に向かって廊下を歩いていると、まだ昼休みだからか生徒たちの喧騒が耳に入る。
かなり耳障りだ。
聞いてるだけでイライラしてくる。
どいつもこいつも悩みなんてなさそうにくっちゃべて、バカばっかりかよ。
「はぁ……ウザっ……」
アタシは足早に昇降口に向い、校舎から出た。
さて、どこに行くか。
そんなことを考えながら顔を上げると、ふと窓に映った自分の姿が目に入った。
「これが、アタシ……? ダサっ……」
野暮ったい黒い長髪。
堅苦しく第一ボタンまで止められたワイシャツ。
センス0の色合いをしている学校指定の紺色のベスト。
微妙に丈の長いスカート。
化粧もなにもしてない垢抜けない顔。
これが自分だということにアタシは眩暈がしそうだった。
「……まずは髪だな」
目的地が決まった。
アタシはスマホを取り出し、近くの美容室を調べる。
今からすぐに入れそうな場所はあるだろうか。
そんなことを考えながら校門を出る。
今日、アタシは初めて授業をサボった。
────────
翌日。
「お、おい……あれ……」
「嘘だろ……?」
「島崎……さん……?」
さっきからザワザワと教室が騒がしい。
奇異の目をこちらに向けてくる奴もいる。
まったく、ウザすぎる。
「なんだよ、なんか文句あんのか?」
「…………!」
こちらを見ている一人の男子に向かってガン飛ばすと、一気に全員黙り込んだ。
これぐらいでビビるなら一々こっち見てくんじゃねえよ。
「し、島崎さん!? なんですかその格好は!」
すると、静かになった教室に一人の声が響いた。
顔を上げると、担任の先公が驚いたような顔をしながらこちらに向かってきている。
「なんで真面目な貴女がそんな……どうしちゃったんですか!」
「別に。ダサい格好すんのが我慢できなくなっただけだけど」
先公はアタシの言葉を聞いて唖然としている。
まあ驚くのもわからないではない。
昨日までのダッサいアタシと比べれば、今のアタシは別人だ。
煌めくブロンドヘア。
肌を見せつけるように胸元の開いたワイシャツ。
腰に巻きつけたイエローのカーディガン。
太ももが見えるくらいまで上げられたミニスカート。
アイシャドウやマスカラによってこれでもかと言うほどに盛られたメイク。
これが今のアタシ。
なんか、やっと本当に自分になれたようなそんな気さえする。
「ちょっと、一旦職員室に来なさい」
「は? ウザっ……なんでアタシが」
「島崎さん! いいから先生の言うことを……」
「はぁー、ダルっ……付き合ってらんねえわ」
アタシは席から立ち上がり教室の外に出た。
後ろから慌てた担任が追いかけてくる。
「し、島崎さん! 待ちなさい! まだ話は終わってません!」
「うるせえ。アタシに指図すんな。先公だからって調子乗ってんじゃねえよボケが」
中指を立てながらそう吐き捨てると、担任は呆然としたまま立ち尽くしていた。
アタシは担任をそこに置き去りにし、屋上へと向かった。
まだ朝だからか廊下を行き交う生徒が多い。
たまにこっちを見てくる奴らがウザったいことこの上ない。
階段を登り屋上に出る。
ようやく一人になれて気分が落ち着いてきたが、胸の内ではまだムシャクシャしていた。
クラスメイトも、教師も、みんな見ているだけでイライラしてくる。
こんなときはどうすればいいんだろう。
そういえば昨日ここであのバカ二人組がタバコを吸っていた。
タバコを吸うと落ち着くなんて話を聞いたこともある。
「……アタシも吸ってみようかな」
そんな独り言を呟いたそのとき。
突然背後から頭になにかを置かれ、そこを強く押された。
瞬間、私の額から何かが飛び出し、私の中から感情が消失した。
「ふぅ、怖かったー。でも、なんとかカートリッジ取り出せたっぽい」
安心したような声音の峯岸さんが後ろから現れる。
隣には芹沢さんもいる。
「いやー、流石にやりすぎたっすね。ウチら以上のヤバいヤンキーになっちゃうなんて」
「ちょっと怖すぎたねー。まあ教師に中指立てる会長はちょっと面白かったけど」
峯岸さんが私からカートリッジを抜き取る。
ついさっきまで抱えていた苛立ちや不快感は完全に消え去り、私はまた何も感じない状態で立ち尽くしている。
「次はどうするんすか? よさそうな性格とかあるんすか?」
「うーん、そうだなー……これとかどうよ? 『ぶりっ子ギャル』の性格。さっきのよりはあたしらと仲良くしてくれそうじゃない?」
「お、いいんじゃないっすか?」
峯岸さんの手には新しいカートリッジが握られている。
ピンク色のカートリッジだ。
峯岸さんはそれを私の額に挿し込んだ。
再び、私の中に感情が芽生える。
「……んも〜! 峯ちゃんったら、変なことばっかりしないでよ〜! ゆう、怒っちゃうよ〜? ぷんぷんっ!」
私は……ゆうは、目の前の二人にぷんすか怒ってることを伝えた。
ゆうの言うことを聞いて、峯ちゃんと芹ちゃんは笑いながら顔を見あわせている。
「うわ、媚びっ媚びの声……これまたすごい性格になったっすね」
「あはっ、元の会長とのギャップでいったらさっき以上かも」
たしかに、ゆうはさっきまでとも前までともちがう性格になっちゃったみたい。
まあでもそんなことゆうにはどうでもいいけどね。
「会長、あたしらと仲良くなろうよー。一緒にタバコ吸っちゃおう?」
「ほら、ウチの一本分けてあげるっす」
芹沢さんがタバコをわたしてくる。
でも、ゆうはあんまりそれに興味がわかなかった。
「う〜ん、ごめんねぇ。ゆう、女の子と遊ぶより男の子と遊ぶ方が好きだから〜。じゃ、そゆことで〜。きゃはっ♡」
「え」
目が点になってる二人を置いて、ゆうは小走りで屋上から校舎の中に戻った。
女の子だけで遊んだってなーんも楽しくないもんね。
やっぱり女の子は男の人にかわいいって言われるのがいっちばん幸せなんだから。
と、ふと窓にゆうの姿がうつってるのが見えた。
まっキンキンの頭に目つきが悪く見えるメイク。
乱暴に腰に巻いたカーデに肌を露出させればいいと思ってるみたいなワイシャツとスカート。
「えぇ〜? これがゆう? 全然かわいくな〜い! センス0じゃん、やだぁ〜」
ゆうはなんだか自分の格好にイヤな気分しかしなくなってしまった。
一刻も早くこの格好をなんとかしたくて、階段を駆けおりてそのまま昇降口に向かった。
────────
「ありがとうございましたー」
「〜♪」
ゆうはご機嫌になりながら美容室を出た。
格好を一新してすごくいい気分だ。
近くのショーウィンドウをのぞき込む。
涙袋を強調してタレ目に見える愛されメイク。
ピンク基調のパステルなカーデ。
水色とピンクのストライプなニーソックスに膝丈のスカート。
ブロンドの上からブルーとピンクのメッシュを交えたゆるふわツインテール。
うん、バッチリ決まってる。
「ゆう、世界一かわいいかも〜。きゃはっ♡」
スキップをしながら街を進む。
まわりの人たちがみんなゆうのことを見ている気がする。
みんなゆうのかわいさに注目してるのかな。
「君可愛いね! 女子高生? こんなところでなにしてんの? 今暇? ていうかホント可愛いね!」
すると、いきなり横から知らないお兄さんが声をかけてきた。
茶髪でピアスをつけたチャラチャラした雰囲気のお兄さんだ。
ゆうはこういうお兄さん嫌いじゃない。
「えへへ〜ゆうかわいいでしょ〜。今ひまだよ〜。お兄さん、ゆうと遊びたいの?」
「遊びたい遊びたい! お兄さん、可愛いゆうちゃんと遊びたくてたまんないよ!」
お兄さんは何度もゆうのことをかわいいと言ってくれる。
これこれ。
この瞬間が幸せなの。
「何して遊ぶ? ラウワン行く? それともカラオケ? どっかで休んでもいいけど、ゆうちゃんはどこ行きたい?」
お兄さんが矢継ぎ早に提案してくる。
ゆうがなにしたいのか聞いてるように見えて下心があるのがバレバレだ。
「もぉ、ゆうそういう遠回しなの好きじゃないよ〜? もっと素直になろ?」
お兄さんの腕に抱きつくと、鼻の下が伸びていくのがわかった。
男の人って簡単だから好き。
「なんだ、ノリノリじゃん。そういうことならさっさと行こっか」
お兄さんはゆうの腕を引いて人気の少ない方へと進んでいく。
その先は、昼間は人通りが少ないアヤシイ通り。
豪華そうなのにどこかチープな変な建物が並んでいる。
もちろんゆうもこの建物がなんなのか知っている。
お兄さんはゆうを連れてそのうちの一件に入るとさっさと受付をすまして部屋の中へとゆうを連れ込んだ。
「へぇ〜、ラブホの中ってこんなふうになってるんだ〜」
全体的にピンクってぽい色合いと大きいベッド。
初めての景色に、ゆうは思わず感想をもらした。
今までも存在自体は知っていたけど、中を知ろうなんて考えたこともなかった。
「え? ゆうちゃん来たことないの? いやいや、流石に嘘でしょ」
「ホントだよ! ゆう、これでも学校ではおかたい生徒会長様で通ってるんだからね!」
「ぷっ、くっくっ……いや、ゆうちゃん冗談面白いね」
お兄さんが吹き出してしまった。
冗談なんかじゃないのに。
「んも〜、信じてよ〜! ホントにゆうは生徒会長なの!」
「いやいや、こんなホイホイラブホについてきちゃうビッチな生徒会長なんているわけないでしょ」
お兄さんはそのままゆうのことをベッドに押し倒してきた。
そして、顔を近づけてゆうの口の中に舌を突っ込んでくる。
「ん、んむっ……ちゅるっ、れろ……あむ……んっ……」
ゆうも負けじと舌を絡める。
お兄さんはゆうのことを全部吸い尽くそうとしてるみたいに舌にしゃぶりついてきた。
なんだかすっごく愛されて求められてるみたいで、おまんこがジュンッと熱くなってくる。
「……んっ……もぉ、お兄さんったら大胆なんだから〜」
「ゆうちゃん見てたら我慢できなくなっちゃった。ほらもっとしようよ、んちゅっ、れろ……」
「んっ、んんっ!?」
お兄さんは再び私の口に吸いついてきながら、服の上からのゆうのおっぱいとおまんこを触ってきた。
すごい、ゆう、男の人にすごい求められてる。
「うわ、ゆうちゃんもうビチョビチョだよ? どんだけ興奮してんの?」
「んっ、ふぅ……だってぇ……」
こんなの初めてなんだもん。
初めてなのに、身体がもっと愛されたいって、もっと欲しいって我慢できないんだもん。
「そんなにできあがってるなら、前戯はもういいか」
お兄さんはそう言うと、ズボンを下ろして股間にあるそれ、おちんちんを露出させた。
あれが、今からゆうのおまんこの中に入っちゃうんだ。
ゴムをおちんちんにつけた状態で、お兄さんはゆうのショーツを下げてそれをおまんこにあてがってきた。
「はじめてだから、優しくしてね?」
「だから、んなわけねーだろっ、て!」
ズンっ、とお兄さんのおちんちんがおまんこの中に入ってくる。
ついにやっちゃった。
ゆう、セックスしちゃってる。
「痛っ……! すごいっ、ホントに、入っちゃってる……んっ……」
「うお、キツっ……ビッチJKまんこにしてはキツキツじゃん」
お腹の中が圧迫されて苦しい。
デリケートな部分を無理やり突かれて、痛みもある。
でも、男の人に求められて繋がってるのが、すごく気持ちいい。
心の中が満たされる。
頭の中があっという間にジュワワ〜って熱くなって、なにも考えられなくなってきた。
「やべえわ、これすぐイッちまうかも……」
そう言いながらお兄さんが腰を動かしてくる。
興奮でおまんこがびちょびちょだからか、お兄さんがセックスが上手いからか、初めてなのに気持ちよくてたまらない。
「んっ、ああっ! すごいっ、セックス、きもちいいっ! これすきっ! ゆう、セックスすきぃっ!」
多分脳内麻薬がドバドバ出てる。
色んな感覚が麻痺して気持ちいいしかわからない。
セックスって、こんなに気持ちいいんだ。
なんで今までしてこなかったんだろう。
ゆうの今までの人生の中で今が最高の瞬間だと思う。
真面目に勉強とか、学校の風紀とか、全部どうでもいい。
バカみたい。
こうやって、男の人と繋がって腰振り合うのが一番いい。
「うっ、くっ……もうイクわっ……」
「ゆうもっ、イッちゃうっ! 初セックスでっ、イッちゃうっ!」
お兄さんがラストスパートをかけて腰を押しつけてくる。
ゆうは両手両足をお兄さんの背中に回してギューっと抱きしめた。
もうダメっ!
体の奥から、ゾワゾワが広がって……!
「んっ、あッ、ああッ! あああぁあぁッ!!!」
ビクンビクンッ、と体が大きく震える。
ゆうは無我夢中でお兄さんの体を抱きしめ続けた。
お兄さんもビクビクと体を震わせてゆうと体を密着させている。
肌が触れ合っているこの感覚。
なんだか落ち着く。
「……ああ、めっちゃ出たわ。ゆうちゃんの膣内すげえよかったよ」
「んっ、はぁ……ホント? ゆうも、すっごくきもちよかった〜……」
「マジ? 俺ら体の相性いいんじゃね?」
そんなことを言いながらお兄さんがおちんちんを抜く。
ゴムの表面には少し血がついていた。
そっか、ゆう、初めてってことはよく考えたら処女だったんだよね。
今のセックスで処女喪失しちゃったんだ。
「え、血ぃついてんだけど……。ゆうちゃんマジで処女だったの? 相手俺でよかったわけ?」
「う〜ん……まあ、気持ちよかったからオッケー! みたいな? きゃはっ♡」
「いや、後悔0かよ。マジのビッチじゃん。そんなんでよく生徒会長とかなれたな」
苦笑いしているお兄さんのおちんちんからゴムを外す。
中には白っぽいドロドロした液体が溜まっていた。
「これザーメン? どんな味するのかな?」
なんとなく気になったので舌でぺろっと舐めてみた。
いやらしい臭みと変な苦み、それにドロドロして喉に張りつく感じが気持ち悪い。
「うえ〜、まず〜い。なにこれ〜、やだぁ〜」
「うわ、ゴムに出した精子舐めるやつ初めて見たわ。……なんかいいじゃん、また興奮してきたわ」
ゆうがザーメンを舐めてるところを見たお兄さんは、またおちんちんを固くしているようだった。
「ゆうちゃん、まだヤレる?」
「んふ〜、もちろん♡」
「よっしゃ、二回戦だ……!」
そして、お兄さんは再び覆いかぶさってきた。
初めてのセックス、まだまだ楽しめそう……♡
────────
「お兄さん、じゃあね〜!」
手を振ってその場を離れる。
ホテルから出て、ゆうはそのままお兄さんと別れた。
結局セックスしかしなかったけど気持ちとしてはすごく満足だ。
「あ、そういえばあのお兄さんの名前聞いてなかった。まあいっか」
初体験の相手が名前も知らない人って、なんか笑っちゃう。
今まで大事にとっておいた処女が、今となってはゴミみたいだ。
「ん〜、これからどうしよっかな〜。……ん? うわっ!?」
すると、ゆうはいきなり誰かに腕を引っ張られ、路地裏に連れ込まれてしまった。
なんだろうと思いながら顔を上げると、そこにいたのは峯ちゃんと芹ちゃんだった。
「あれ〜? 峯ちゃん芹ちゃんじゃん。こんなところでどうしたの?」
「こんなところでって、こっちのセリフだよ会長。今ホテルから出てきたけど、まさか、ヤっちゃったの?」
「うん、すっごく気持ちよかったよ〜。セックスって最高だね〜」
二人は苦笑いで顔を見合わせている。
「ちなみに、あの男誰? 知り合い?」
「知らない人〜。街で声かけられたからついて行ったらセックスできたの。名前聞き忘れちゃったけど、体の相性はよかったから結果オーライって感じ? きゃはっ♡」
「あらら……」
峯ちゃんは呆れたような顔でこっちを見てくる。
う〜ん、やっぱり名前ぐらいは聞いといた方がよかったかな?
「これ、元の会長さんに聞かせたら発狂しそうっすね」
「あの会長がここまでとはねー。性格変わるってすごっ」
そう言いながら峯ちゃんはゆうの頭に手を置いてきた。
そして、その上を強く押す。
その瞬間、額からカシャッとカートリッジが飛び出し私の中から感情が喪失した。
「ついさっきまでキャピキャピしてた会長さんが急に無表情になると、なんか怖いっすね」
「あたしに言わせれば会長がこんな格好してる方が怖いけどね。ツインテールにメッシュとかもう誰よこれ」
峯岸さんはそう言いながら私の額に挿さっているピンクのカートリッジを抜き取る。
ついさっきまであった充足感や心地よさは霧散するように消え失せ、私の中は完全に無になっていた。
「なんか全然うちらと仲良くなってくれないっすね。次はどうすんすか?」
「なんかもう仲良くなるとかどうでもよくなってきたわ。どうせ堅物な性格じゃなければチクられなさそうだし。それより会長をらしくない性格にして遊ぶのが段々楽しくなってきたんだけど」
「あー、わかるっす。当たり前のように先生に反抗したり男に媚びたりする会長さん面白いっすよね」
峯岸さんはまた懐から何枚かのカートリッジを取り出す。
その中から一枚を選んで右手に持った。
彩度の低い深緑色のカートリッジだ。
「その地味な色のカートリッジはどんな性格なんすか?」
「これは『地味で卑屈なムッツリ女』の性格。いわゆる、喪女ってやつ」
「それはまた会長さんとはかけ離れた性格っすね。面白そうっす」
峯岸さんがカートリッジを私の額に挿し込む。
それと同時に、私の中に暗い感情が一気に差し込んできた。
「……ぅ……ぁ……あの……はな、れて……さぃ……」
私は足元を見ながら声を発した。
離れてください、と言おうとしたのに不安と恐怖に駆られて上手く声が出ない。
「え? なんて言ったの?」
「一気に声小さくなったっすね」
ガラの悪い二人組に囲まれて、今にも泣いてしまいそうだ。
どうしてこんな目に遭わなければいけないんだ。
私が一体何をしたと言うんだろう。
「先輩、会長さんめっちゃ怖がってるっすよ」
「すごいねー、昨日あたしのこと殴った人と同一人物とは思えないね」
あ、そういえば私峯岸さんのこと殴ったんだった。
ばりばりやらかしてた。
やばい、このままじゃ何をされるかわからない。
私はその場にひざまずいて頭を下げた。
「ご、ごめん……なさい……ゆ、ゆるして……ください……」
声を震わせながら私は謝り続ける。
とにかく今は許しを乞うしかない。
「ぷっ、すごっ。あの会長があたしらに土下座してるよ」
「これならチクられる心配もなさそうっすね」
二人は笑い合っている。
よかった、なんだか許してもらえそうな雰囲気だ。
「ほらほら、顔あげてよ会長。あたしは怒ってないからさー」
「は、はいっ……ありがとう、ございます……」
峯岸さんが私の肩を抱いてくる。
でもこの人が怖いことには変わりない。
できるならさっさと解放してほしい。
「ぁ、あの……私、もう、その……家に、帰りたい、っていうか、あの、その……」
私の言葉を峯岸さんはニヤニヤしながら聞いている。
峯岸さんのような陽キャからすれば、私のようなキモい陰キャは見下す対象なのだろう。
もちろん反抗する勇気なんかないので、ここは穏便に済ますためにもへり下り続けるのがベストだ。
「あたしらは別にいいけど、そんな目立つ格好で街歩いてたらまたナンパされんじゃない?」
「え……?」
言われて自分の体を見ると、私は驚愕した。
頭空っぽのバカ女しか着ないようなピンクのカーディガンや、承認欲求丸出しのメンヘラのようなドギツイ色の髪。
こんな姿で街を歩くなんて死んだ方がマシだとさえ思える。
「ど、どど、どうしよう……」
「大丈夫大丈夫! こんなこともあろうと黒のヘアスプレー用意してきたから」
峯岸さんはそう言って鞄からスプレー缶を取り出した。
え、もしかして今ここで染め直すつもり?
「ああ、それでなんか色々準備してたんすね」
「だって根暗になった会長にこの髪色は似合わないっしょ。どうせ自分で染め直すのもできなさそうだし」
それは確かにそうだけど……。
でもだからって、峯岸さんみたいな素人に髪を染められるのは抵抗がある。
「ん? なに、会長その顔。もしかして嫌なの?」
「え!? い、いや、そんなこと、ない、です。やってもらえるなら、ありがたい、です……」
私は波風を立てないように峯岸さんに従うフリをした。
というか、従うしかないんだけど。
「んじゃ、染め直してあげるから、会長はじっとしててねー」
「は、はい……よろしく、おねがい、します……」
最悪だ。
そう思いながらも、私は峯岸さんにされるがままだった。
────────
「いい感じになったじゃん、会長」
「あ、ありがとう……ござい、ました……」
私は自分の指をモジモジと弄りながら足元を見て返事をした。
峯岸さんの持っていた着替えを借りて、学校指定の紺色のベストと白いソックスを身に付け、スカートも元の丈に戻した。
顔の化粧も全部落としたし、髪も染め直して黒髪になっている。
染料のせいか元の色とは少し違うけれど……。
「あ、そうだ。これ学校に置き去りにしてたカバン。持ってきてあげたよ」
「ど、どうも……そ、それじゃあ……」
私はひったくるように鞄を受け取るとそのまま背を向け駆け足でその場を離れた。
「また明日、学校でねー」
峯岸さんは最後まで声をかけきていたけれど無視して私は走った。
人通りの多い駅前まで出たところで私はようやく足を止める。
ここまで逃げればもう大丈夫だろうか。
ふと顔を上げると大勢の人間が周りを歩いていた。
目の前を通る人と目が合いそうになり、私は思わず顔を伏せた。
ざわざわという街の喧騒が、私の落ち着きを乱す。
ダメだ。
ここは人が多すぎて人酔いしそう。
とにかく一旦どこか落ち着ける場所に行こう。
と、そのとき聞き覚えのある声が前から聞こえてきた。
「いや、マジなんだよ。ゆうちゃんっていうめっちゃ可愛いJKでさ、初対面なのにすぐヤらせてくれて」
「すげえ、クソビッチじゃん。今度俺にも紹介しろよ」
「それが連絡先聞く前にどっか行っちゃって……」
ゆっくりと顔を上げると、先程私とホテルに行った男が前から歩いてきていた。
隣には別の男がいる。
どうやら私のことを話しているみたいだ。
ど、どうしよう……。
「ん? 君、さっきからこっち見てるけどなんか用?」
顔を見すぎてしまっていたのか、男に声をかけられてしまった。
「え、あ、いや、その……ええっと、さっきは、あの……」
なんと返事すればいいかわからずしどろもどろになってしまう。
どうしようどうしよう……。
またホテルに連れ込まれでもしたら……。
「誰コイツ? 知り合い?」
「いや。知らねえけど」
「……え?」
男は私の方を一瞥した後、すぐに興味を失ってまた歩き始めた。
もしかして、私が誰だか気づかなかったのだろうか。
たしかに、さっきとは格好も雰囲気も全然違うけれど、でもだからってわからないなんてことがあるのか。
さっきはあんなに可愛い可愛い言ってたくせに、薄情な男だ。
まあ、気づかれなかったならよかった。
とりあえず早く家に帰ろう。
そう思って歩こうとしたところで、私は横にある建物に気を取られた。
「ここって……」
それは、アニメショップだった。
こんなところに入ったことはないけど、何故だか無性に惹きつけられるものを感じる。
私は誘われるようにその中へと入っていった。
────────
「ふ、ふひゅひゅ……あら〜、あらあら……」
自然と鼻息が荒くなって笑みがこぼれてしまう。
なんかすごくキモい笑い方をしてる気がするけど、そんなのはどうでもいい。
家に帰ってきて、私は先程アニメショップで買った漫画を読んでいた。
ジャンルは、BLだ。
漫画なんて今まで読んだことなかったけれど、これはかなりハマりそう。
イケメン同士の絡み合いは見てるだけで胸がドキドキして、興奮が冷めやらない。
「ヤバっ、そこまでしちゃうんだ。これはこれは、最高ですねぇ……キヒッ……」
攻めが受けに自分の竿を挿し込んでいる過激なシーンで、私はどんどん気持ちが昂っていくのを感じた。
我慢できなくなった私は自分のマンコに手を伸ばす。
興奮のせいか既にマンコはぐちょぐちょになっていた。
「お゛、おひょっ、これ、ヤバっ……」
漫画を血眼になって見つめながらマンコをほじくる。
あっという間に快感が最高潮まで高まり、私の体の中で大きく爆ぜた。
「お゛ッ、おお゛ッ! ヤバッ、イグッ、あ゛ぁ、あ゛あ゛あァッ!!!」
ビクッと体が震えるのと同時に股間から勢いよく液体が飛び散る。
あまりの快感に潮を吹いてしまったようだ。
私は体をのけ反らせながら余韻に浸る。
「……あ、あ……んっ、はぁ……オナニーってこんな気持ちよかったんだ……んヒヒっ……」
男同士のセックスをオカズにマンコをほじるオナニー。
昼間に男に抱かれたのよりよっぽど気持ちいい。
こんなことなら毎日でもやりたい。
というか、今までお堅い女を気取って全くオナニーしてこなかったこれまでの自分が馬鹿らしく思える。
「次はこれでも試そうかな……」
私は漫画と一緒に買った18禁のBLボイスドラマを聞くことにした。
イヤホンを耳に装着して音が漏れないようにして再生する。
「んひょっ!? これヤバぁっ!」
声優のイケボが両耳に囁かれるように聞こえてくる。
これが最先端のASMRか。
ホントにそこにいるみたいに耳に音が伝わり、背筋がゾクゾクとしてくる。
「こんなん耳が孕むって! おひょひょッ!」
私はまたマンコに指を突っ込む。
ああ、またすぐイケそうっ!
そう思って指を激しく動かしていたそのとき。
「……優子? ねえ、大丈夫?」
当然背後から聞こえた声に快感ではなく驚きでビクッと震えた。
慌てて音を止めてパンツを履き直し、後ろを睨み付ける。
「……もうっ、お母さんっ! ノックぐらいしてよっ!」
「ご、ごめんね……でも、本当にどうしちゃったの? 昨日は急に髪を染めちゃって、今日は戻したと思ったらずっと部屋に引きこもって……何か悩みがあるなら相談して……」
「なんでもないから! 放っといてってば!」
私はお母さんを部屋から追い出し、バタンッと大きな音を立てて扉を閉めた。
せっかく気持ちよくオナニーをしていたというのに、最悪だ。
そういえば他の人とはまともに話せないのに何故かお母さんに対してだけは強気になれる。
内弁慶というやつだろうか。
今まではお母さんに反抗したことすらなかったのに、変な感じだ。
まあ、そんなことはどうでもいいか。
「ふぅ……それじゃあ、オナニー再開しよっかな……キヒッ」
私は気を取り直してイヤホンを装着した。
結局、そのまま私は徹夜でオナニーをし続けていた。
────────
翌日。
「今度はどうしちゃったんだ……?」
「昨日よりはいいけど……でも……」
ザワザワと周りが騒がしい。
私は誰とも目を合わせないように俯きながら歩いていた。
まだ校門の前を通っただけなのに、私は注目の的だった。
そんな、こっちのこと見ないでよ……。
すると、いきなり背後から肩を叩かれた。
「ひっ!?」
バッと後ろを振り返ると、峯岸さんと芹沢さんがニヤニヤと笑いながらこちらを見ていた。
「おはよー会長。って、どうしたのそれ。髪はボサボサ、顔は脂ぎってるし、目のクマもひどいよ?」
「なんか一気に喪女っぽさが増したっすね」
私のことを小馬鹿にしているのはわかるけれど、強く言い返すことはできなかった。
私は足元を見ながら絞り出すように声を上げる。
「き、昨日……お風呂、入れ、なくて……か、髪……染め直した、ばかりだし……」
「とか言って、本当はずっとオナニーしてただけでしょ?」
「っ……!? え、えっ……!? な、なん、で……」
いきなり言い当てられて私は動揺してしまった。
なんでわかるの?
もしかして監視されてたの?
「いや、図星? ちょっとムッツリすぎでしょ」
「流石に風呂ぐらい入った方がいいっすよ」
「っ……」
どうやらカマをかけられたらしい。
最悪だ……。
「それより会長、ちょっとあたしらについてきてよ」
「え、ちょ……そんな……困り、ます……」
私は抵抗しようとしたけれど、そのまま二人に校舎裏まで連れられてしまった。
取り囲むように二人に阻まれ、私は逃げることもできない。
「はいっ、じゃあまた性格変えるよー」
「え、いや、ちょっ、まっ……………………」
私が言い終わる前に峯岸さんにボタンを押され、私はまた感情を失った。
「次はどんな性格にして遊ぶんすか?」
「ふふー、次はねえ、これ!」
峯岸さんは懐から黒いカートリッジを取り出した。
「これはね、『童貞男子』の性格」
「え、男の性格っすか? そんなこともできるんすね。面白そうっす!」
峯岸さんがカートリッジを私の額に挿し込む。
すると、私はクラクラとしそうなほどの強い感情に襲われた。
なんだ、これは。
今までと全然違う。
「クソ、頭が……俺、どうなっちまったんだ?」
「おお、会長さん俺って言ってるっすよ。本当に男みたいっす」
芹沢に言われて気づく。
俺は今自分を俺と呼んだ。
もちろんこんな口調で喋ったことはない。
しかし、今はこの口調で話すのが自然に思えた。
女みたいな口調で喋ろうとしても違和感しかない。
というか、違和感はそれだけじゃない。
今のこの、自分の姿そのものに強い違和感がある。
「なんで、俺、女なんだ……? いや、ずっと女だったが……でも、俺は……」
「女の体に違和感あるみたいだね。男の性格になるとそんな感じなんだ」
峯岸が面白そうに笑っている。
クソっ、コイツらにまた弄ばれてる。
俺は反抗の意思を示すために峯岸のことを睨もうとした。
が、その顔と目が合った瞬間、何故か俺は目を逸らしてしまった。
「あ、目逸らされた。どしたの、会長。こっち見なよ」
「う、うるせえ……こっち見んな……」
「どうしたんすか、会長さん。相手と話すときはちゃんと顔見ないとダメっすよ?」
芹沢が覗き込むように顔を見てくるが、そこからも目を逸らしてしまう。
同年代の女子の顔を真正面から見るなんて、なんか気恥ずかしくてつい目を逸らしてしまう。
というか、峯岸も芹沢も意外と顔は悪くないんだよな。
正直コイツらだったら全然ヤレる。
って、俺女なのに何考えてんだ!?
「っ、クソっ……」
頭を振って視線を下げる。
と、そこで俺は峯岸の胸元に視線を合わせてしまった。
うわ、コイツおっぱいデカっ。
「ちょっとー。会長、なにあたしの胸ガン見してんの?」
「え!? は!? み、見てねえし……」
「いや、バレバレだって。ウケるー」
峯岸がからかうように俺を見て笑っている。
俺はもう何も見ないように目を閉じた。
女子二人に囲まれているこの状況は目に毒すぎる。
「ほらほら会長。ちゃんと目開けて」
「別にいいんすよ、見ちゃっても」
そう言いながら峯岸と芹沢が体を寄せてきた。
二人とも俺の腕に自分の胸を押し当てている。
女の胸の柔らかい感触が腕に伝わり、えも言えない幸福感に俺は悶えそうだった。
いかんいかん、こんなのに振り回されるわけには……。
「会長、そんなにおっぱい気に入ったの? それなら……」
「ここにいいのがあるじゃないっすか」
峯岸と芹沢はそれぞれ俺の腕を手に取り、俺の手のひらを俺の胸に当てさせた。
ふにゅ、という柔らかい感触に俺の頭は混乱する。
「え、なんだ、これ? おっぱい? 俺の、胸に? なんで……」
「そんなの当たり前じゃん、会長は女の子なんだから」
「あ……」
そうか、俺は女だった。
だから俺の胸におっぱいがあるのは当たり前だ。
しかし、それでも俺は自分の胸の感触に激しい違和感があった。
こんな、柔らかくて触り心地のいい男の夢のような物体が俺の胸についていていいのか?
「ほら、せっかくだから揉んでみなよ」
「あ、あ……」
俺は最早抵抗する意思をなくして言われるがままに手を動かした。
服の上からでもわかる、弾力のある柔らかい物体。
これが、おっぱい。
俺、自分のおっぱいを揉んで……。
その瞬間、俺の鼻から温かい何かが垂れてきた。
「ちょ、ちょっと会長!」
「鼻血垂れてるっすよ! 鼻血!」
「……え?」
沸騰しそうなほどに熱くなった頭ではすぐに理解することができなかった。
ふと視線を下げると、服の上に赤い染みができていた。
……鼻血だ。
鼻血を出したのなんていつ以来だろう。
少なくとも、こんな風に興奮しすぎて鼻血を出したのは初めてだと思う。
「ちょっともー、やだー。興奮しすぎて鼻血出す人とか初めてみたんだけど。ほら、ティッシュ」
「鼻の頭抑えないと、血ぃ止まんないっすよ」
「あ、ああ……すまん……」
峯岸には鼻にティッシュを詰められ、芹沢には鼻の頭を抑えられ、されるがままだった。
俺は女子二人に介抱を任せ、ただぼーっととしていた。
こういうときって男は頼りないよな。
いや、俺は女だったか。
「はぁ、もういっか。とりあえず一旦性格出しちゃお」
俺が反応するより先に、峯岸は俺の頭に置いたボタンを押していた。
また、私の中の感情が消失する。
「これで興奮も収まるだろうし、血がちゃんと止まるまで放置しとこ」
「そっすね」
私は上を向かせられた姿勢で放置された。
鼻にティッシュを詰められ、ただ無表情で空を仰ぐ私を見たら普通の人はどう思うだろうか。
少なくとも、それに対して今の私が思うことは何もない。
────────
数十分後。
一限の始まりを告げるチャイムが校舎に鳴り響く。
「あー、授業始まったっぽいね」
「本当っすね。まあ別にいいっすけど。そろそろ会長さんの鼻血治ったっすかね?」
芹沢さんがゆっくりと私の鼻に詰められたティッシュを外す。
鼻血はもう止まっていた。
「よしよし。それじゃあ次のためにちょっと準備っと」
峯岸さんはそう言うとビニール紐を鞄から取り出し、私の手足を縛り始めた。
私は両手両足を縛られた状態でその場に寝かされる。
「次はなにするんすか?」
「そろそろ一旦会長を元の性格に戻してみようと思って」
峯岸さんはそう言って懐から一枚のカートリッジを取り出した。
元々私に挿さっていた青いカートリッジだ。
「え? 戻しちゃうんすか?」
「一旦ね。これまでの会長らしくない行動の数々に対して会長がどういう反応するのか見てみたくない?」
「なるほど、それはたしかに気になるっすね」
峯岸さんが地面に横たわる私の額にカートリッジを挿し込む。
すると、抑えられていた私の感情が徐々に蘇ってきた。
「……峯岸さん、貴女覚悟はできてるでしょうね?」
私はこちらを見下ろす峯岸さんをキッと睨みつけた。
けれど峯岸さんはどこ吹く風といった様子で飄々としている。
「そんな縛られた状態で強がったって無駄だって。それよりどう? 元に戻れた気分は」
元に戻れた。
そう、私は元に戻った。
産まれてから17年間積み重ねてきた自分の性格に戻ったのだ。
……それは同時に、ここ数日間の自分の奇行と向き合わざるを得ないことを意味していた。
「あ、あぁ、あ……」
私は、何をした?
感情のままに暴力を振るい、髪を染め、先生に反抗し、男に媚びて、初対面の相手と体を重ね、処女を失い、精液を舐め、家で自慰に耽り、家族に強くあたって、同級生の女子に欲情し、自分の胸を揉みながら興奮して鼻血を出した。
……これが、私?
違う違う違うこんなの私じゃない。
「私じゃない、あれは、私じゃ……」
「いやいや、全部会長だから。今までずっとノリノリだったじゃん」
……峯岸さんの言う通りだった。
誰かに強制されて何かをしたわけじゃない。
心の底からそうしたいと思い、自分の意思で行動していた。
全部、私だったんだ。
「うぅ、うぅ……」
「ありゃ、会長さん泣いちゃったっすよ?」
「うーん、ちょっとイジメすぎた?」
峯岸さんと芹沢さんが困ったような顔をして顔を見合わせている。
……許さない。
私をこんな目に遭わせて、絶対に許さない。
「うわ、会長さんめっちゃ怖い顔でこっち見てるっすよ?」
「おー怖い怖い。それじゃあさっさと次に行こっか」
そう言うと峯岸さんは懐から何かを取り出す。
それは、今まで私の性格を取り出すのに使ってきたものと全く同じ形をした赤いボタンだった。
二つ目の、ボタン?
「あれ? それ二つあったんすか?」
「ふふー。これ使って今から面白いことするよー」
そう言うと峯岸さんは二つのボタンを芹沢さんに手渡した。
そして、峯岸さんは私の前に屈み込み、コツンと額を私に合わせてきた。
「そのボタンをあたしと会長の頭に乗せて同時に押してー」
「え? それってどうなるんすか」
「あたしと会長の性格が同時に飛び出して、お互いの中に入っちゃうの。つまり、あたしと会長の性格が交換されるってワケ」
「っ!?」
私は血の気が引いていくのを感じた。
私と峯岸さんの性格が、交換される?
「あたし次のテストでいい点取らないとそろそろやばくてさー。でも勉強する気は全然起きないしー。だから、会長の性格借りようと思って」
「そ、そんなことに私を巻き込まないでください!」
私の抗議は、峯岸さんには全く響かなかった。
「不公平だよねー。真面目な性格に産まれれば努力する気が起きるんだから。あたしだって会長みたいな性格だったらもっとちゃんと勉強できたんだろうなー」
「何言ってるんですか! 貴女が怠惰なだけでしょう!? そんなの産まれのせいにしたって何の意味も……」
「あーはいはい。お説教はいいから。それじゃあゆかり、よろしくー」
「はいっす」
ボタンを両手に持った芹沢さんが近づいてくる。
嫌だ。
私を散々な目に遭わせてきたこの人に、こんな人の性格に私自身がなってしまうなんて。
私の性格が、この人に奪われてしまうなんて。
「や、やめてくださいっ! たすけっ……………………」
カチッと音が鳴り、私たちの何かが入れ替わった。
────────
一瞬頭がぼーっとした後、徐々に感情が戻ってくる。
でも、それはついさっきまで感じていたものとははっきりと違った。
「あー、やられちゃったかー。あたし、また性格変わっちゃったよ」
なんとなく今の気分を口に出して言ってみる。
つい数秒前までは絶望的な気持ちになってたのに、今となってはあまり気にならない。
なんだか、一気に楽観的になってしまった。
「ありがとうございます。私も無事、会長の性格になれました」
あたしの前に屈んでいた峯岸さんが立ち上がる。
見た目はいつも通りのチャラい格好なのに、雰囲気は真面目で清楚な人間のそれだった。
さっきまでとはまるで別人だ。
わーお、こりゃすごい。
他人の性格が変わるのを客観的に見るとこんな感じなのか。
「あ、ごめんなさい島崎さん。今紐を解きます」
「あ、どーも」
峯岸さんはすぐにあたしの手足を縛っていた紐を解いてくれた。
なんだか罪悪感でも覚えているかのような顔だ。
峯岸さんのこんな顔を見るのは初めてな気がする。
「本当に先輩なんすか? なんか、違和感やばいっすね」
あたしたちのことを見ていた芹沢ちゃんが苦笑いを浮かべている。
うん、あたしも全く同じこと思った。
「ええ、もちろん私は私、峯岸舞ですよ」
「うわ、敬語似合わなっ」
芹沢ちゃんは峯岸さんの言動に軽く引いていた。
髪を染めたギャルが清楚な振る舞いをしている様子はギャップがすごい。
「あっ、いけない! もう授業始まってるじゃない! ほら、貴女たちも早く行きますよ!」
「え、ちょ」
峯岸さんは有無を言わさずあたしと芹沢ちゃんの腕を掴むと昇降口に走り出した。
腕を引っ張られながら、あたしと芹沢ちゃんは顔を見合わせることしかできなかった。
────────
あれから数日後。
「……話は以上です。もう帰っていいですよ。……っと、最後に一つ。その髪、ちゃんと直しておくように」
「はーい。すいませんしたー」
あたしは適当に返事をしながら職員室を出た。
この数日間で一気に悪くなったあたしの素行に対してのお説教がようやく終わった。
ちなみに今のあたしは髪をモカブラウンに染めてウェーブをかけているが、戻す気はさらさらない。
「ふぁ〜ぁ……さーて、帰ろっかなー」
大あくびをしながら廊下を歩く。
峯岸さんと性格を入れ替えてから数日。
この性格にもすっかり慣れてしまった。
慣れてしまえば、この性格は肩も凝らないので楽でいい。
すると、前から見覚えのある顔がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「あれ、芹沢ちゃんじゃーん。最近見なかったけど元気してたー?」
「あ、会長さん……。ちっす。髪染めたんすね。似合ってるっすよ」
あたしが声をかけると、芹沢ちゃんはなんだか元気なさげに返事してきた。
心なしか少し暗い顔をしているように見える。
「なに? どったの? 元気ないじゃん」
「それが、聞いてくださいよ会長さん。先輩、峯岸先輩がすっかり変わっちゃって」
芹沢ちゃんは聞かれるのを待っていたみたいに語り始めた。
「最近ウチと全然遊んでくれなくなっちゃったんすよ。『授業はちゃんと出ないと駄目』とか『学生の本文は学業です』とか。ついには『私が教えてあげるから一緒に勉強しましょう』なんて言い出して。勘弁してほしいっすよ」
「うわ、クソ真面目ー。って元のあたしか。あはっ」
「笑い事じゃないっすよー。こんなことなら性格交換に協力しなけりゃよかったっす」
芹沢ちゃんがガックリと肩を落とす。
まあ、こうなるのは目に見えてたけどね。
これに関しては想像力の足りなかった芹沢ちゃんが悪い。
「会長さんはどうっすか? 元気っすか?」
「あたし? あたしはねー、生徒会長クビになっちゃった」
「へ?」
芹沢ちゃんは目が点になっている。
それもそうだろう。
生徒会長をクビになるなんて話、あたしだって聞いたことがない。
「なんか、あたしの素行があまりにも悪いってんで職員会議になったんだってさ。そんで他の生徒会メンバーと話し合った結果あたしの解任が決まったんだって。ウケるよねー」
「はえー、そんなことあるんすね」
芹沢ちゃんは自分にもその原因の一端があると言うのにまるで他人事のように聞いていた。
まあ、別にいいけど。
「というわけで、あたしはもう会長さんじゃないから、よろしくー」
「はあ、じゃあ島崎先輩って呼ぶっす」
芹沢ちゃんはあっさりと順応してくれた。
正直あたしとしても生徒会長の立場に未練はないから別に構わない。
「なんか、島崎先輩と話してると峯岸先輩と話してるみたいっす」
「当たり前じゃん、あたしは峯岸さんの性格なんだから」
当然のことを言い出す芹沢ちゃんにちょっと笑ってしまう。
しかし、こういうなんかバカっぽい会話をするのは、思ってたよりも楽しい。
今まであまり芹沢ちゃんとは話したことがなかったけど、まるでずっと友達だったみたいに馴染んでしまう。
「でも、あたしも芹沢ちゃんと話してるとなんか落ち着くんだよねー。ね、あたしら友達にならない? あたしと芹沢ちゃんなら前の峯岸さんと芹沢ちゃんみたいに仲良くなれると思うんだけど」
「いいんすか!? ウチも島崎先輩と仲良くしたいっす! よろしくっす!」
あたしの提案を芹沢ちゃんは受け入れてくれたようだ。
これからつまんない学校生活が少しは楽しくなりそう。
あたしらは肩を並べて雑談に花を咲かせながら廊下を歩いた。
────────
性格を交換してから更に一か月が経った。
テストもとうに終わったというのに、あたしは未だに峯岸さんの性格のままだった。
あちらはよっぽど元のあたしの性格が気に入ったらしい。
あたしもこの性格が気に入ってるし別にいいけど。
「しっかし、驚きっすよねー。まさかこうなるとは」
「ね、あたしもビックリしたわ」
あたしたちは屋上でタバコを吸いながらだべっていた。
こうするのも、今のあたしらにとってはもはや日常だ。
「あの峯岸先輩が、生徒会長になっちゃうなんて」
「いやー、すごい変りっぷりだよね。問題児から生徒会長なんて」
あたしが生徒会長をクビになった後、再び生徒会長選挙が行われることになった。
いったい誰があたしの後釜につくのかと気になっていたら、まさかの立候補したのは峯岸さんだった。
峯岸さんは問題児として学校中の評判になってるし流石に落選すると思ったんだけど、その更生ぶりと今のクソ真面目な堅物っぷりが評価されてまさかの当選となった。
今となってはあたしと峯岸さんの立場は完全に逆転してしまっている。
「なんか反動のせいかあたしより持ち上げられてるんだよねー。映画版ジャイアンかっての。流石にちょっとずるくない?」
「大丈夫っすよ。うちは先輩の方が本物の会長だってわかってるっすから」
「とか言ってー。そもそも会長から落ちぶれたのゆかりのせいなんだけどー?」
「あ、やべっ、まだ根に持ってる」
あたしがゆかりの脇を小突くと、ゆかりは心のこもってない様子で頭を下げてくる。
こういうじゃれ合いが楽しい。
なんだかんだ、あたしは今の生活を気に入っているのだ。
すると、いきなり出入口の扉が開き誰かが屋上に出てきた。
「貴女たち! 何してるの!?」
声の方を向くと、そこにいたのは真っ黒の髪をさらりと風に揺らせているいかにも優等生然とした女子生徒。
件の新生徒会長様、峯岸舞だった。
あたしは面倒なのが来てしまったと思いながらゆかりと顔を見合わせた。
「あーあ、噂をしてれば。どうすんすか先輩」
「相変わらずクソ真面目だねー、新会長」
会長はカツカツと足音を立てながらこちらに近づいてくる。
ピリピリとした様子で眉間に皺を寄せているけれど、いつもそんな顔していて疲れないのだろうか。
「貴女たちこそ、相変わらず不真面目にしているようですね。いい加減そんなものはやめなさい!」
呆れてしまうほど優等生らしい口調であたしたちを叱りつけてくる会長。
あたしも元はあんなだったと思うと、なんだか恥ずかしくなってくる。
「自分だって吸ってたくせに」
「ねー」
「っ……! 貴女たちは、本当に……」
会長は肩をワナワナと震わせている。
やば、怒らせすぎた?
というか、あたしらもここでタバコ吸ってたことチクられるとまずいんだけど、もう少し下手に出た方がよかっただろうか。
「……ふぅ。いえ、もういいです。今日は私の方にも考えがありますから」
すると、会長は深呼吸して自ら怒りを鎮めた。
ありゃ?
なんだかいつもと様子が違う。
すると、会長は懐からなにかを取り出した。
「貴女たちなら、これが何かわかりますよね?」
「んー? ……っ!? それって……!?」
会長の手に握られていたのは、黄色と白のカートリッジだった。
あれは、性格カートリッジ!?
「これはそれぞれ『勤勉で向上心の強い努力家』の性格と『純朴で誠実な淑女』の性格です。貴女たちには心を入れ替えて真面目な性格になってもらいますよ?」
会長の手には、カートリッジの他に二つのボタンも握られている。
いやいや、そんな、冗談でしょ?
「あのー、あたしは遠慮しとこうかなー、なんて……」
「ウチも、そのー、そういうのは性に合わないっていうか……」
苦笑いを浮かべながらあたしたちは顔を見合わせる。
次の瞬間にはあたしたちは飛び跳ねるようにその場から駆け出した。
しかし、会長の方も動きは素早く、すれ違いざまにあたしたちにボタンを乗せ、押した。
その瞬間、私はまたも感情を失った。
隣では、芹沢さんもまた無表情で立ち尽くしている。
頭からは薄ピンクのカートリッジが飛び出していた。
「大丈夫ですよ、貴女たちは生まれ変わるんです。この学校に相応しい、真面目な生徒に……」
会長が一歩ずつ近づいてくる。
私たちには、なす術がなかった。
────────
「峯岸さん、ありがとうございます……! 生まれ変わったような気分です……! わたし、今度こそ真面目な生徒になれるよう精一杯頑張りますね!」
「私も、峯岸先輩のような立派な生徒会長になれるよう勉学に励みます。あの、今までご迷惑をかけたお詫びに生徒会のお仕事をお手伝いしたいのですが、宜しいでしょうか?」
「ええ、もちろん。これから一緒にこの学校を良くしていきましょうね? 島崎さん、芹沢さん」