現実世界放浪記【外伝】 (Pixiv Fanbox)
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ラッシャイ。俺は鯰田。げんこつ山のたぬきだ。俺は毎日仮想世界でFriendsの様々な話を聞いているが、その中でこの話は書いても良いと言われたものがある。今日はフォロワーであるお前へ特別に、そいつの人生の一部を切り取って、ぼかし、混ぜて語ってやることにした。
だからこれは筆者である俺の物語ではない。他人の人生の一部だ。
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夏。一面のクソ緑。
労働。労働。労働。
人間を人間たらしめる余白が削り取られ、気づけば呼吸と仕事だけで一日が終わる季節。
そんな中で、奇跡的にねじ伏せた休日出勤。
今週、たった一日の休み。
逃げ場として選ばれたのがドライブだった。観光でもグルメでもない。金と時間と執念を注ぎ込んで育てた自分の車。数百万。趣味というより業。
今どきの車にあるプッシュスタートなんかじゃない。鍵を刺し回す。かすかな振動とともに心地の良いエキゾーストの音が聞こえてくる。俺にとってハンドルを握って走ること、それが唯一の精神安定剤だった。
火曜日。
道路は空いている。人も少ない。
だからといって調子には乗らない。速度は控えめ、安全運転。
向かう先は少し離れたスーパー。目的は崇高でも切実でもない。
──菓子だ。
昼夜酷使された脳がついにバグり、「大人買い」という名の幼少期リベンジに手を染めた結果、気づけば菓子を買い漁ることが癖になっていた。
量はわきまえている。一度に食い切るほど馬鹿じゃない。だが、選び、手に取り、持ち帰るという行為そのものが楽しい。それだけで、少しだけ救われる。
店内は冷房が効きすぎていて、ここに住めそうだと思う。
だが今日は起きるのが遅れた。まだ何も食っていない。
適当な弁当をカゴに放り込み、本命の菓子コーナーへ。
この時間帯は平和だ。
大人が菓子を吟味していても、誰にも咎められない。
目に飛び込んでくる――化石発掘チョコ。
分かっている。分かりすぎている。
これは正義だ。カッコよくて、型が取れて、成功すると気持ちいい。
その隣にある知育菓子コーナーには、未知との遭遇が並んでいる。
DXねるねる。
縦長の紫。自己主張が激しい。
たのしいアイスやさん。
混ぜるだけ。練るだけ。なのにアイス。
文明はここまで来た。
たのしいピザやさん。
粉と水でチーズピザ。
お前は一体何を目指しているんだ。
そして、たのしいおすしやさん。
粉と水で寿司。
シャリはソーダ、マグロはグレープ、卵はリンゴ。
味覚と視覚に対するテロ。
もし普通の家庭に生まれていたら。
こういうものを、誰かと一緒に笑って作れたのかもしれない。
だから今、金がある今、過去を買い戻す。
だが全部は買わない。
俺はユーチューバーじゃない。
選ばれたのは、恐竜発掘チョコ。
おすしやさん。
そしてチョコビ。
チョコビを侮るな。
アニメの付録だと思ったら痛い目を見る。
これはちゃんと「うまい」菓子だ。
未経験なら一度食え。人生が少しだけ補完される。
忘れてはいけない。
夏の切り札――ガリガリくん(ソーダ)。
俺はこれが好きだ。
これを食い、コーラで締める。それが完成形。
浮かれた足取りでレジへ。セルフじゃない。
優しそうなおばちゃんが、潰れないよう袋に詰めてくれる。
こういう瞬間に、人類への信頼が1ミリだけ回復する。
店を出る。
ざわつき。
事故か?
外に出る。
赤い光が揺れている。
真夏の幻覚かと思った。
近づく。
熱い。異常に。
セミが鳴いている。
世界を無視する音量で。
そして燃え盛る俺の車。
あ?
意味が分からない。
熱気を無視して駆け寄る。
外装は死んでいる。
中は、ギリギリ。
なぜか俺は、助手席のちい〇わのぬいぐるみを掴んでいた。
理由は分からない。
多分、俺の中の何かが壊れていた。
事情を聞く。大の大人が泣きながら。
犯人は、タバコをポイ捨てしていた。
警備員が捕まえた。
火は、引火。業火。その後は地獄だ。
警察。保険。書類。時間。
相手はホームレス。
補償は遅い。額も足りない。
残ったのは、
満足できない金と、
焦げたちい〇わ。
車はもう戻らない。
珍しい車種だった。パーツももう手に入らない。
金がどうでもよくなった。
泡だ。
俺は競馬場へ行き、
ほとんどを溶かした。
あの馬の名前は、もう思い出せない。
………
目の前が真っ暗になり、狂い、今は仮想世界に来た。
サイバーでクレイジーな淫女としてクネクネするなど、活動は多岐にわたる。
すべての選択肢を誤って、此処に居る。
悪くはない。救いもない。だが生きている。焦げたち〇かわと共に。
やたら高くて重いサイバーアイマスクを被って。
俺は一生忘れない。あの蝉の声を。
膝から崩れ落ちた俺を嘲笑う陽炎を。そして憎いあの夏を。
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