現実世界放浪記【漆】 (Pixiv Fanbox)
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ラッシャイ。俺は鯰田。げんこつ山のたぬきだ。そしてナマモノだ。腐る。減る。死ぬ。順番は前後する。関係ない。結果は同じだ。で、ここは現実世界とかいう荒野だ。ニューメキシコだ。水はない。慈悲もない。お前は配置された。装備なし。チュートリアルなし。説明もない。
いいか、死ぬぞ。
ナマモノは放置すると死ぬ。これは比喩じゃない。腐敗だ。発酵ではない。腐敗だ。
だから食う。食わねばならぬ。義務だ。ノルマだ。サボると死ぬ。
だから俺はスーパーとかいう補給所で物資を回収し、ホットクックと銘打たれた機械の鍋に全部ぶち込む。判断はしない。全部だ。これはメシではない。エサだ。燃料だ。俺を一日延命させるための契約だ。
だが今日は俺が「メシ」を食った日の話をフォロワーであるお前へ特別に教えてやることにした。今日は何を食うか考えながら読め。
時は遡る。学生時代。
俺は貧しかった。いや、貧しいという言葉では足りない。
「ない」だ。全てがない。金がない。メシがない。明日もない。
給食。あれが生命線だ。
あれが止まると砂嵐。フェードアウト。
スタッフロールは流れない。
そんな俺に声をかける奴がいた。
「メシを作る」と。
何を言っている?と思うだろう。俺も思った。
だが腹は理解していた。神だ。いや人間だ。だが関係ない。供給源だ。
俺は飛びついた。理性?知らん。そんなものは砂に埋めた。
後日、そいつの家に行く。
一件家。すごいな。
料理はカレー。家庭科でやったやつだ。
教科書どおり。挑戦、実践。健全な生徒の手本。
だが疑問がある。
なぜ俺だ。
親に出せばいい。普通はそうする。
だがそいつは言う。親は仕事。遅い。帰らない日もある。
……空席だ。
テーブルに誰もいない。風だけが通る。塵が積もる。
だが当時の俺には関係ない。
メシがある。それがすべてだ。それ以外はノイズだ。
「ゲームでもしてて」と言われる。
いいだろう。待機する。いつでも食えるようにだ。
音がする。包丁。
遅い。重い。ぎこちない。
待機時間。
何をするか。長期戦は不可だ。RPGなんて論外。
いつ呼ばれても即応できる状態が好ましい。
だから対戦だ。短期決戦。殺すか、殺されるか。
ふと部屋を見回す。裕福だ。
あらゆる場所に選択肢が並んでいる。棚に未来が詰まっている。
視点を戻し俺はスマブラを選ぶ。理由は一つ。触ったことがある。
未知?やるな。お前はまず生き残れ。
キャラが全部いる。埋まっている。
やり込みとは時間。余裕。全てがある家だ。
対して俺はない。
だから弱い。当たり前だ。環境が違う。
CPUで慣らす。意味は薄いがゼロよりマシだ。
ゼロは死だ。覚えておけ。
だがCPUはナマ優しい。
これをやる友人共は優しくない。
地下から雷を連打する電気鼠。
持ち上げて飛び降り、自分だけ復帰する巨大猿。
狡猾だ。人間だ。牙だ。
対戦とは悪意の最適化だ。
「お、スマブラやる?今煮込みだからちょっとだけ手が空いてさ」
来たな。ボス。
だが勝てないのは知っている。
俺は逃げない。かかってこい。
あっさり負ける。笑われる。
だがこれも生存戦略だ。覚えて帰れ。
ほどなくして、匂いが来る。
香辛料。だが弱い。
甘い。甘いな。おかしい。何かいる。
腹が鳴る。裏切るなよと思うが鳴る。
身体は正直だ。クソ。
そして来た。見たことがない皿に盛られて。
給食じゃ全部の食器が銀色だった。まるで刑務所だ。
今やるとPTAとかそこらへんが黙っちゃいないヤツ。
いいかお前。
貧しさは経験値を奪う。知らないことが増える。
スプーンも形状が違う。文化だ。
だが食えるならいい。
それだけでいい。それが全てだ。
一口。
……。
甘い。
そして酸味。
違う。これは違う。
カレーじゃない。
カレーの顔をした裏切り者だ。
リンゴだ。前に出すぎている。主役面だ。
香辛料が死んでいる。埋葬された。
脳が止まる。
理解が拒否する。エラーだ。どうした。再起動しろ。
「どう?」と聞かれる。
待て。まだ判断するな。もう一口だ。
甘い。やはり甘い。
リンゴ軍が制圧している。占領完了だ。
🍎「俺だ俺だ俺だ俺だ俺だァ!!!!」
うるさい。黙れ。
原因を聞く。
バーモントカレー。つまりCMだ。
ハチミツ。さらにリンゴ"ジュース"を少々、入れた。
何故ここにきて液体なんだ。
いいかお前。
隠し味は隠れていなければならない。
前に出た瞬間、それは敵だ。
だがな。ここで笑うな。
こいつは試した。やった。手を動かした。
失敗を恐れて砂の中で震えていない勇敢な戦士だ。
結局、全部食った。
甘い。酸味。アバレ散らかすリンゴ。
それでも食った。理由は一つ。メシだからだ。
メシは正義だ。完成度じゃない。存在だ。
今でも思い出す。味じゃない。
席だ。空気だ。あの時間だ。
あれは確かに人の手による暖かな食卓だった。
荒野の中に一瞬だけ現れたオアシスだ。
で、お前はどうだ。
毎日食っているそれは何だ。
メシか?それともただの延命剤か?
選べ。
だがナマモノは腐る。これは変わらない。
俺は今日も機械の鍋に全部ぶち込む。
理由は一つ。生きるためだ。
お前も食え。
食わないやつから死ぬ。
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ここは荒野だ。水はタダじゃない。