現実世界放浪記【拾】 (Pixiv Fanbox)
Content
ラッシャイ。俺は鯰田。げんこつ山のたぬきだ。俺は毎日Friendである異常成人共が作り上げるデカムチアバターとイチャコラしているが、誰にもその姿は見せるつもりはない。だが今日はフォロワーであるお前へ特別に、俺がリアルでデカ女と出会った時の話をしてやることにした。
当時19の俺は、ひょんなことから風俗を体験した。
そしてハマりかけた。色んな店がある。色んな女がいる。
まだ知らないことが山ほどある。
これはいけない。
男の好奇心は財布に直結する。
とはいえ、当時の俺はほとんど家と職場の往復。
金に余裕がないわけではない。貯金もしている。
何も考えず散財するわけにもいかない。
そもそも日々の暮らしに大きな不満があるわけでもない。
「ストレス発散だ!」と自分を正当化して突撃するほどの理由もない。
調べる。やめる。また調べる。これは違う。あれも違う。そんなことを繰り返しているうちに、時間だけが過ぎ、宙ぶらりんな状態のまま、休日に街を歩いていた。
特に目的はない。本当にただ歩いていた。
するとフリーペーパーのラックに、妙な小冊子がねじ込まれているのが見えた。
これでもかというほど写真補正された女が妖艶なドレス姿でこちらに微笑んでいる。
なんだアレ。
二度見する。幻ではない。そこにある。
俺は周囲を見渡した。誰も見ていない。
今だ。
こそこそと冊子を抜き取り、そのまま裏通りへ早歩きで逃げた。
何故逃げる。別に悪いことはしていない。
小冊子をまじまじと見る。これはいわゆる茶との提供と局所的な部位へマッサージを行うサービスを提供するアレな店舗を紹介するものである。発行日は最近のものらしい。そして、ページにはいくつか折り目がついていた。どうやら誰かが読んだ後のようだ。
つまり俺は、見知らぬ男が残した欲望の痕跡を拾ってしまった。
折り目を追っていく。
30代。
30代。
また30代。
どうやら持ち主は30代の女性が好みだったらしい。
なるほど。知らん男の性癖を冊子の折り目から推理する。
何をしているんだ俺は。
しかし、その中でも特にクセのついているページがあった。そこに載っていたのが「ホテルまでキャストとデートできる!」という謳い文句だった。
風俗って店の中だけじゃないのか。知らなかった。
面白そうだな。
俺はその冊子を持って帰ることにした。
……
さっそく冊子を机に広げてパソコンを立ち上げる。
検索する。
店のホームページと口コミ、そしてまとめサイト。本当にあるらしい。キャストと外で会って、そのままホテルまで行く。店舗型しか知らなかった俺には、それだけでも結構なカルチャーショックだった。
料金を見る。払えない額ではない。とはいえ、普段なら使わない金額ではある。
だが今まで経験したことがないことに金を払う。そういうことにしておこう。
俺は自分に言い訳をしながら、キャストのページを眺め始めた。
年齢。
身長。
プロフィール。
写真。
冊子で見たときより人数が多い。同じ店でも随分と雰囲気が違う。
そんな具合に眺めていると、ふと冊子の折り目を思い出した。
これを持っていたヤツは、この中から誰を選んだのだろう。
冊子を開き、目印のついたページを見ていく。
そして、その中に一人だけ妙なキャストがいた。
目印はついていない。
だがプロフィールの一行が強すぎる。
バスト3桁超え "I Cup"⁉
俺はその瞬間、同ページにいた他のキャストたちのことを忘れた。
何を基準に選ぼうとしていたのかも忘れた。
これだ。
圧倒的な特徴に目を奪われ、そのまま予約を入れる。
しかし人気のキャストらしく、直近の予約はほとんど埋まっていた。
俺の休みとも合わない。ならば仕方ない。有休を申請する。
そこまでして行く。男は単純である。
愚か。
……
予約当日。地図を見ながら店へ向かう。
平日の昼。
サラリーマンが行き交う大通りから横道へ入ると急に建物が古くなった。表通りではあれだけ綺麗なビルが並んでいたのに、裏へ回った途端に年季の入った建物ばかりになる。
地図を見ながら進むと、あった。薄汚れたビルに入ってエレベーターに乗ると、香水か、煙草か。妙な匂いがする。よくわからないが、風俗とかバーのエレベーターにはこういう匂いがある。
非日常。
インドア派の頭に、それだけを理解させるには十分な匂いだった。
目的の階。扉が開く。薄暗い。
だが綺麗だ。
黒い床、壁。
赤黒い絨毯。
観葉植物。
さっきまで見ていた建物とは別世界である。
俺なんか店間違えたか……?
踵を返そうとしたところで声がした。
「ご予約のお客様ですか?」
渋い声。受付との間には仕切りがあり、顔は見えない。
「あ、はい。〇時で予約を入れている鯰田です」
「お早い到着ですね。キャストの準備が出来次第、お声掛けします。あちらのソファでおかけになっていてください」
言われた通りソファに座る。
10分くらい早く着いてしまったらしい。
暇なので周りを見る。
窓にはカーテン。
金色の額縁に入った、よくわからない絵。
なんか高級感がすごい。
目の前にはツヤツヤした木材とガラス天板のテーブル。
その上には重そうなガラスの器。
中にはお茶請け。全然減っていない。
こういうものは食べるために置いてあるのではない。
「置いてある」という事実によって客を安心させるためのものだ。
たぶん。
しかし、その中に見覚えのある駄菓子が混ざっていた。ちょっと安心する。
だがさっきまでの高級感はどこへ行った。情緒が忙しい。
そんなことを考えながら注意事項を読んでいると、声がかかった。
「こんにちは。ご指名ありがとうございます」
落ち着いた声。よく通る。
「えっ……あっ、はい、こんにちは!」
デカい。
※画像は適当なイメージ。
何がデカいのか。胸だけではない。いや、胸もデカい。他もデカい。俺の身長は169cm。それより少し大きい。こういうものを恵体というのだろうか。
俺があからさまに狼狽えていると、彼女は慣れた様子でこちらへ来た。
「あまりこういうところは慣れていない感じかしら。今日はよろしくね」
「あ…はい!よろしくお願いします」
店からホテルまで歩くため、二人で外に出る。
女性に手を引かれる。手入れの行き届いたすべすべとした手だ。
「今日は、お仕事お休み?」
「ええ、ここに来るため有給取りました」
「まぁ。それで指名ってことは、私に会いに?」
「はい」
「そうなんだ。ありがとうね。でもあなたみたいに若い子ならもっと、同じ年代くらいの子のお店に行くものじゃないの?」
「その、実は…」
俺はここに来るまでの経緯を話すと、変なご縁があったのね、と笑って聞いてくれた。
「そっか、19歳かぁ。じゃあ私のほうが随分年上ね」
「ええっと、お綺麗ですよ。とても」
「あら。お世辞でも嬉しいわ」
「や、素直な言葉です」
店を出てから気づいたが、この人はよく喋る。
俺が答えに詰まっても気にせず、仕事や休日のことを聞いてくる。
気がつけば、普通に喋っていた。
そして彼女は当たり前のように俺の少し前を歩いていた。
こっちよ。そう言って角を曲がる。
その先には白い置き看板と、色褪せて若干消えかかっている料金表。
いかにもな古いラブホである。
中に入ると、彼女は受付に何か渡して、代わりに鍵を受け取った。
恐らく店と提携しているホテルなのだろう。
エレベーターに乗り、鍵についた番号の部屋へ向かう。
そしてこの鍵、紛失防止なのか知らんが、鍵よりデカいバカみたいなサイズのアクリルがついている。歩くたびにカチャカチャ鳴る。目立つ。何故こんなにデカい。
そんなことを考えながら部屋の前へ。
彼女が鍵を差し込んで扉を開ける。
「どうぞ」
「あ、はい。ありがとうございます」
部屋に入ると、思っていたより普通だった。
ベッド、ソファ、テレビ、そしてシャワーと風呂。
さっきまでいた店の妙な高級感もない。ただのホテルだ。
部屋に入って落ち着かない様子の俺を見て彼女が笑う。
「おいで」
言われるままソファの隣へ座る。
さっきまで店からホテルまで手を引かれて歩いていたせいか、隣に座っても不思議と嫌な緊張はなかった。会った時はデカさにビビったが、今はむしろ落ち着く。
いや、落ち着きすぎている。なんだこの感覚は。俺はIcupのデカいキャストに釣られて予約を入れてきたのに、今全然"そういう気分"ではない。はずだったが。
「緊張しなくても大丈夫よ」
気分とは裏腹に男は正直であった。
そこからは凄まじい勢いで物事が加速する。
外と同じように手を引かれ、シャワー、ベッドと流れ………
いや、強すぎる。
大人しい振る舞いに反して、とんでもないパワーで圧倒された。
恵体というのはこれほどまでに力が強いものなのか。
ベッドが軋む。
すごい軋む。
何だこれは。
………
一通り終わったあと、俺はベッドの上で妙にぼんやりしていた。
「なんか……すごいですね」
「ふふ、何が?」
「ええと、力強いなって…何かスポーツでもしてます?」
「趣味でジムによく行くのよ」
ダイエット目的じゃないのは明らかな肉体だった。
つまり身体のデカさは骨と筋肉ってこと?
それにしては柔らかかったが。もはや生物としての格が違う。
「反応良いからしっかり遊んじゃった。お客さんなのに、ごめんね」
「いえ、いえ!ぜんぜん。よかったです」
「仕事ではあるけど、楽しんでやってるから、ね」
「嫌々しているより、ずっと良いと思います」
「そう?ならよかった」
「このあと、どうするの?」
「普通に帰ります」
「そう。じゃあ、気をつけて帰ってね」
「はい」
最後まで彼女は落ち着いていた。
俺だけずっと落ち着いていなかった。
帰り道、さっきまでの出来事を思い返す。
デカかった。とにかくデカかった。
身長は高い。身体は健康的に太い。声もよく通る。歩くのも速い。力も強い。
そして何より、俺よりずっと堂々としている。
完全に上位存在に連れ回された一日だった。
性癖を焼き付けられるような体験を与える。世の中にはそんなデカい女が実在する。
そして俺は今、仮想世界でデカムチのアバターを眺めている。
すべての選択肢を誤って今、此処に居る。
さて、今回はここまでだ。
山での執筆活動のために、記事が気に入ったらフォローや支援をしてくれ。
こういった記事のほかに、現実ではないが、仮想世界のデカ女の作り方を俺は色々と書いている。よろしくな。