マゾカトラズ4 (Pixiv Fanbox)
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「ようこそ……牡奴隷収容所へ」
「あ、はい。よろしくお願いいたします」
エレベーターを降りた先はまるで映画などの実験動物がいる場所の様だった。
大型動物を入れる様な鋼鉄のケージが通路の左右に並び、檻の柱に繋がれた鎖は奴隷にはめた首輪へと伸びている。
囚人なんてことばは生温い――まさに家畜だった。
「フフ、ここの奴隷は練習用の奴隷ですからお気軽に使い潰して構いませんよ」
ルージュの口紅ときつめのアイシャドーを決め、露出努の高いボンテージに身を包んだ女性――伊集院麗美は残忍な言葉を当たり前のように言い放つ。
それもそのはず。
鈴も同様に彼女達に牡奴隷への慈悲など存在しないのだ。
二人も新人配属時に配布された奴隷はとっくに壊してしまっていたのだから――。
特権階級とも言える彼女達は絶対的な優越感を持っているのだ。
「じゃ、檻にいる奴隷は好きなのを選んで構わないから、決まったら教えてね」
(そう言われても基準とかあるのかしら?)
「て言われても、一匹目だと選ぶのも難しいわよね。一応、プレートに説明があるからそれを参考にするといいわよ。例えば――」
麗美はカツカツとブーツを鳴らしながら、側の檻へと近づくと、牡奴隷を一匹檻から出した。
手枷、足枷をつけられた牡奴隷は首輪に繋がれた鎖を引かれ、苦しげに檻から引きずり出される。
弛んだ肉は浅黒く不健康そうな奴隷だった。
ブルドッグの様な顔つきと刈り上げられた頭の頭頂部にはタバコを押し付けられたのか焦げて黒紫色の点がいくつもあった。
少なくとも皆美の食指は動かない。
プレートには奴隷の額には刻まれた牡奴隷の番号に加え、
回復力――。
耐久性――。
身体機能――。
さらに牡奴隷として使用向き用途がかかれていた。
麗美が出した奴隷は『無限ザンドバッグ』推奨と書かれている。
「こいつは回復力★5だから――」
麗美は腰に差した乗馬鞭を抜くと、躊躇いなく牡奴隷の背中へと降り下ろした。
バッチィィィィィィィィィィィィィ!
「ぶぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
見た目通り豚の様な鳴き声が地下に響いた。
「うわっ……痛そうなわりに豚みたいな声で鳴くんですね。普通ならそんな余裕ないと思うのに……」
「フフ、醜い声でしょ? 豚みたいに鳴くように躾たら本当に悲鳴まで豚の鳴き真似しちゃう様になったのよね。ほら、もっと鳴け!」
バッシィィィ!
ビシィィィィ!
バチィィィン!
「ぶぎぃ! ぶきょ! ぶひぃぃぃぃ!」
手加減なしの鞭打ちに牡奴隷は狂ったような悲鳴をあげる。
正常な精神の持ち主なら悲鳴をきき、慈悲の心で手を止めたかもしれない。
それでも麗美は手を止めなかった。
むしろ、頬を赤らめ、舌舐めずりし、高笑いしながら牡奴隷を打ち据える。
「ははっ! 惨めね! ほら、新人の女王様にお前達、牡奴隷の気持ち悪さを見せるのよ! ほほほ!」
バチィィィン! バチィィィン! バチィィィン!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「何逃げようとしてるのかしら? この豚! 牡奴隷の分際で私から逃げようとしてるの? ん? 逃げられると思ってるの? あは! ほらっ! そんな豚はこうしてやる!」
ミシミシミシ……。
崩れ落ちる牡奴隷の顔を踏みおさえ逃げられなくした皆美が振るう鞭は獲物を捉える蛇の如く的確に牡奴隷の身体をめった打ちにする。
肌に刻まれるのは真っ赤なミミズ腫れの様な線状の傷だけではない。
鞭本来の性能――。
肌を切り裂く拷問具としての威力を存分に発揮し、牡奴隷肌はどんどん裂けた様な傷が刻まれ、血を流していく。
「フフ、古川さん、見ててね。ここからがこいつら牡奴隷の面白いところよ?」
鞭の嵐を止めた麗美は興奮冷めやらぬ表情で痙攣する牡奴隷の身体を鞭先でなぞる。
「嘘……」
鞭がなぞった場所を見ていた皆美は驚いて目を見張った。
先ほどまであった裂傷が白い煙をあげながら徐々に塞がっているのだ。
「クス……これが回復力よ?」
「これ……なんなんですか?」
牡奴隷――どころか皆美はこの生き物が見た目の気持ち悪さも相まって別のおぞましい生き物に感じられた。
「ほら、牡奴隷ってすぐに壊れちゃうでしょ? そこで新しく治験された治癒活性薬を投与されたのがザンドバッグ系の奴隷なの。こいつらは骨が折れようが肌が裂けようがすぐに回復するの。さすがに、手足をもがれたり、即死したら無理だけど多少の深手なら問題ないのよね」
それはもはやゾンビに近いのではないのだろうか?
それにそんなものを側に置くのは気が引ける。
もし反乱でも起きても止められないのでは?
「フフ、でも副作用でね。こいつらは回復力が高ければ高いほど力が弱いのよ。だから、こうして踏みつけるだけで逃げられないし、労働奴隷としては使えない。だから、ザンドバッグ用として側に置いてやってるのよ。あ、勿論、自殺防止薬は全奴隷同様に投与してあるわ」
痙攣する牡奴隷の傷はみるみる癒え、すでに鞭で打たれた場所は赤い線が薄く残るだけになったいる。
物理的な抵抗力は奪われ、ただザンドバッグとしてしか生きられない。
死刑と同じ牡奴隷の刑罰としては相応しい末路だが、皆美はあまり好きではなかった。
勿論、弱者である男を苛めるのは楽しいが、拷問が趣味と言うわけでもない。
「耐久性は打たれ強さ。痛覚や感覚の鈍さを表してるわ。まぁ、見たまで選んでもいいし、試しにいじめてもいいわ。興味ある奴隷がいたら教えて頂戴……」
麗美は鞭をしまうと、ドッカリと椅子に座り――。
「お前の頭を踏んでブーツが汚れたわ。綺麗にしな」
「ぶひ……」
鼻を踏みにじられて見た目通りの豚鼻にされた牡奴隷は痛みで顔を歪めながらピチャピチャと麗美のブーツの底を舐め始める。
圧倒的な理不尽に逆らえない立場こそ、牡奴隷の身分だった。
それがはっきりとわかる光景に皆美は自分もその支配者層に立てた喜びを感じながら歩き出した。
ウインドウショッピングするかのように檻の中を覗きこみ、じっくりと牡奴隷達の姿を眺めていく。
怯えた表情を浮かべる者、必死に檻の隅に隠れようとする者、恐怖に顔をひきつらせる者、絶望で何も考えられるず虚ろな表情を浮かべる者、不馴れな環境で戸惑う者など様々だ。
プレートにも労働用、ザンドバッグ用、性処理用、愛玩用、家畜用、用途未調教など様々な種類の奴隷がいた。
彼らは全員が服を身に付けることを許されておらず、共通して鋼鉄の首輪を嵌められ、額に奴隷としての焼き印が刻まれている。
そんな男だったモノが左右に商品のごとく並べられている様はある種圧巻だった。
ただ、彼らの浮かべる表情も用途も様々だが、運命は変わらない。
女性にひれ伏し、好きに扱われて生きていく。
意思も尊厳も自由もない絶望の日々しか残されていないのだ。
そして、愛玩用と書かれたプレートの前で皆美はふと足を止めた。
一匹の牡奴隷。
まだ若い。
自分よりも年下と言うか、見た目は中学生くらいの少年だった。
だが、実年齢は違う。
愛玩奴隷は表面不老薬と呼ばれる薬が打たれており、薬が打たれた時より歳が変わらないのだ。しかし、寿命が3分の1にまで低下する恐ろしい副作用も存在した。
なので、この牡奴隷も見た目は少年でも中身は違うはずだ。
彼は15才くらいの時に薬を打たれただろうからそこから5年。
薬の影響で通常の三倍の歳をとるから――。
肉体年齢は30歳だろう。
なぜ、そんな詳しいのかと言えば皆美はこの奴隷を知っていた。
奴隷番号1218と刻まれた牡奴隷は皆美がかつて幼なじみだった少年――土垣慶徒だったからだ。
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