マゾカトラズ 9 (Pixiv Fanbox)
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「へぇ~、ここが研修施設なのね」
社宅から電車でバスで十分。
大学の研究棟を思わせる白い三階建ての建物の前に皆美は来ていた。
「………………」
皆美の足元には首輪にリードをはめられ、両手、膝には犬の手袋、サポーターをつけられたケイがいた。
そこにいるのは、人間ではなく家畜の姿だが、異常な光景ではない。
マンションでは、出るときに他の女性も当たり前の様に牡奴隷を四つん這いで歩かせていたし、バスでは座席代わりに牡奴隷を椅子として背中に座らせている女性も多かったからだ。
むしろ、牡奴隷であるケイを人間のように歩かせている方が不自然に思われるだろう。
勿論、皆美もケイが二足歩行で歩くことは基本許可なく歩かせないし、そんなことをすれば――。
(これで躾るんだけどね……)
皆美は鞄に常備するように言われている乗馬鞭を眺めながら嗜虐的に笑った。
まだ使ったことはないけど、動画や漫画でのシーンは実に楽しそうで心が踊った。
私もやりたいな――。
そんな思いを持ちながら、皆美はケイを引きずるように研修棟へと入っていく。
コツ、コツ、コツ、コツ。
チャリ、チャリ、チャリ。
皆美のパンプスの歩みに合わす様にケイの首輪に繋がれた鎖が涼やかな音を立てた。
勿論、皆美の軽快な歩みと四つん這いのケイでは歩く速度は違う。
リードが首に食い込み、半ば引きずられる形で必死についてくるのを皆美はわざと気づかないフリをして歩いていた。
パンストにパンプス。
今までは蒸れるし、臭くなるし、仕事中は汗でヌルつくし悪いことだらけだったが、最後にこれが快感と優越感に変わると思うとむしろ気分がいい。
苦しい後の楽しさほど倍の喜びに変わるのだから。
勿論、ケイには苦しみしかない。
「ここね……」
皆美は書類にある研修室――405号室に入るのだった。
第一印象は学校の教室。
ただ、机は二つだけで、後方はかなりのスペースが確保されていた。
しかも、様々な器具があり、多目的ホールみたいな印象を受ける。
「お! おっはよ~! あなたも新人?」
すでに研修室に来ていたスーツの女性が気さくに挨拶してきた。
髪こそ黒いがギャルっぽい雰囲気の新人ですでに席についていたのだが――。
ギシィ……。
「お、おはようございます?」
皆美は驚いて挨拶に疑問系をつけてしまった。
何せ、女性が研修室で座っていたのは牡奴隷だったのだ。
「あれ? もしかして、まだそんなに慣れてないの? 昨日奴隷貰ったから色々試したけど、結構楽しいよ? 人間家具♪ あ、アタシは阿比留瑠美って言うんだ~よろしくね!」
「私は古川皆美です。よろしくお願いします」
「古川さんね。うん、一緒に研修頑張ろうね!」
瑠美は明るくカラカラと笑いながら身体を揺らすと、それに伴って尻の下に引かれている牡奴隷の身体が苦しげに揺れる。
顔にはゴム制のマスクが被され、額にはケイと同じ奴隷の証である番号が刻まれている。
ただし、ケイとは違い愛玩用ではないらしく、浅黒く日焼けした肌と逞しい体つきは労働やストレス解消のための奴隷だろう。
治癒能力も高くないのか、股や尻には赤い線状の傷が残っていた。
「阿比留さんは愛玩奴隷じゃないんですね」
「ん? あ~……私って結構ペットとか苛めちゃうしね。仕事のストレス発散にも使いたいからやっぱサンドバッグにもなれないと困るじゃん?」
サンドバッグ、と言われた辺りで尻の下の牡奴隷がビクリ、と身を震わせた。
そこにあるのは、圧倒的な恐怖だろう。
昨日一日でどれほど激しく調教されたのだろう?
(ケイにもこれくらい激しく躾たほうがいいのかな?)
皆美がなんとなく視線を下に向けると、怯えた色で瞳を潤ませるケイが目にはいる。
そんな泣きそうな瞳を向けられるた嗜虐心がくすぐられるが、皆美としては無意味に牡奴隷をいたぶる性癖はなかった。
「私はサンドバッグにするつもりはないですよ? まぁ、躾の一貫ならありえますけどね」
案に従わなければサンドバッグにするとケイに告げながら皆美は席についた。
椅子も用意されているのでそれに座り、ケイのリードは机の足に引っ掻ける。
「待て、って言えばいいのか?」
皆美が試しにやってみると、ケイは従順に犬のポーズで待機した。
(あら、さっそく脅しの効果がでたのかしら?)
皆美はケイの態度に満足しつつ鞄から書類などを取り出した。
そうしてる間に予鈴が鳴り、教官が姿を見せる。
◆
扉が開き姿を見せた女性に皆美と阿比留は眼が釘付けになる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
荒い呼吸ともに見せたのはボディビルダーの様な筋骨隆々の男で、顔にはSMで見るような黒いゴムマスクを被らされていた。
額が見えないから番号が見えないが、これも牡奴隷に間違いない。
ブーメランパンツの様な下着と金属の物体はたぶん貞操帯だろう。
だが、驚くのはそこではない。
牡奴隷の背中には馬の鞍がつけられ、鐙もしっかりとついている。口には猿轡。そこから延びているのは手綱であり、一人の女性が乗っていたのだ。
女性は教壇まで当たり前のように奴隷に乗ってくると、スッと背中からおりてこちらを見下ろした。
「おはようございます。古川さん、阿比留さん」
目尻のきりっとしたカッコいい女性。
言い方を変えれば性格のきつそうな女性だ。
ただ、所長と同じ君臨することに慣れた支配者的な雰囲気が滲み出ていた。
「「おはようございます」」
皆美と阿比留は若干気圧されながらも挨拶した。
「フフ、二人ともちゃんと奴隷を連れてきているわね。今日は私の奴隷とあなた達の奴隷を使って飼育とはどういうものか、奴隷をより有用な存在にすか、奴隷にとって主とは絶対的な存在であることを教えてもらいます」
奴隷を生き物ではなく道具として扱う上司の言葉にケイと阿比留の奴隷はビクリ、と身を震わせた。
鎖をカチカチとわずかに揺らすケイの震えがこれからの行為にどれほど怯えているのかをはっきりと示している。
牡奴隷にとって行われる行為はどれも喜ばしいものではない。
昨日はまだ皆美にお試しされていただけ。
本格的な地獄がこれから始まるのだと知っているからだ――。
(Fanbox)
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