マゾカトラズ10 (Pixiv Fanbox)
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「それでは、愛玩奴隷にとっては重要なのは絶対的な従順さです。飼い主に噛みつくような奴隷はすぐに廃棄処分になりますが、私達の商品価値、イメージダウンにもなりかねませんからね」
研修の初めは奴隷の調教についてからだった。
教官である間藤玲子は牡奴隷を椅子にホワイトボードとテキストを使い、皆美と瑠美に講義を行っていた。
勿論、ケイと瑠美と牡奴隷に安息はない。
瑠美の牡奴隷はもとより、今はケインもまた飼い主である皆美の尻には引かれ、椅子にされていた。
玲子の指示で椅子は撤去され、ケイを椅子にするように言われたからだった。
フー、フー。
タオル越しにケイの体温が上がっているのがわかる。
皆美にとってはただ座るという、当たり前のように行為がケイにとっては自らを蝕む拷問になっていた。
クス……。
小刻みに揺れるケイの後頭部を時折撫でながら皆美は笑いを漏らした。
(ケイったら苦しそうね。そりゃそうよね。身体の成長が中学校から停まってるから、その体格で年上になってる私の身体を支えないといけないんだからね♪ フフフ、なんか凄く自分が偉くなったみたいね。まぁ、実際ケイと比べたら天と地ほど差があるんだけどね♪)
皆美の尻の下でケイは荒い呼吸で辛うじて支えていたが、皆美は敢えて気づかないフリをして身体を揺すったり、足を組み替えたりして体重をかけつづけていた。
だってこうやって奴隷が主の椅子として支えるのは本来なら当たり前。
横にいる瑠美も奴隷がどれだけ苦しげに呼吸していても見向きもしない。
だって――。
(道具に気をつかう必要なんかないじゃない?)
「ゆえに奴隷は、特に愛玩奴隷は飼い主からの行為の全てに感謝を持つようにする必要があります。命があることすら、私達への感謝として、生かして貰ってると思わせることが大切です。まぁ、手っ取り早いのがマゾ奴隷として開発することですね」
「先生、マゾ奴隷と言うのはM男的なのですか?」
瑠美の質問にニッコリと玲子は笑い、
「そうです。飼い主からの痛みも罰も屈辱も与えられる全てに感謝し、敬服する変態性癖の男です。例えば――」
コツ、とヒールをならして奴隷の背中から降りるとベルトに差していた鞭を素早く抜き――。
ヒュン! バチィィィィィィン!
空気を素早く裂く音と、耳に響く炸裂音が教室へ響き渡り、音に反応したケイと瑠美の牡奴隷が二人の尻の下でビクリと身を震わせた。
だが、皆美や瑠美が鞭で打たれたわけではなかった。
実際に打たれたのは玲子の連れてきた牡奴隷だ。
本来なら痛みに絶叫するはずの玲子の牡奴隷は大きく身を震わせた。
当然だろう。
躊躇なく放たれたことを物語る背中に刻まれた真っ赤な鞭痕はみみず腫はかなりの痛みだったはずだ。
だが、牡奴隷が身を震わせたのは痛みのせいではなかった。
「あぁ! 玲子さま! 私のような奴隷に鞭を恵んで下さり誠にありがとうございますぅ!」
ゴンッ!
額を床に打ち付けるほどの土下座をし、歓喜の声をあげていた。
そう歓喜。
玲子の牡奴隷は身を裂きかねない鞭に対し、感謝を心から示していたのだ。
その域はもはや狂信的に感じる。
土下座する頭を玲子は平然と踏みつけているが、その行為すら牡奴隷は喜びに身を震わせているのだった。
「フフフ、こいつは私に対してどんな行為も喜びになるの。私の命令なら他の行為も喜んでするわ。あなた達、床に唾を吐いてみて?」
唾を吐く。
奴隷に吐いたことはあるが、指示を受けてなんかない。
人としての常識が一瞬、皆美を引き留めたが、すぐにこの後どうなるのかと言う好奇心に変わった。
「じゃ、私からいくね。ぺっ!」
瑠美もまた皆美と同じく好奇心が勝ち、唾を床に吐きかけた。
「そ、それでは……ぷっ!」
それぞれの唾が床に落とされ、落下の衝撃で円形に広がったそれは小さな泡を無数に含み、粘土のあるそれは見ていると自分が吐いたものとはいえ、生理的な嫌悪を感じた。
「ほら、床を舐めなさい。お前のために唾を恵んでくれた二人に感謝しながらね」
玲子はそれが普通と言わんばかりの口調で土下座している牡奴隷の頭をヒールを履いた足で小突き、命令した。
「は、はい! 玲子様。ご命令ありがとうございます!」
躊躇はなかった。
玲子の命令に一秒もかからず、脊髄反射の如く答えた牡奴隷は四つん這いのまま瑠美の足元――唾が落ちた床へ近づき、そのまま床へ舌を出し……。
ペロッ、ピチャ、ジュル……。
唾を啜り、床を舐め出したのだ。
飼い主の足ならまだ分かる。
それですらケイは躊躇して辛そうな顔をしていたのに、玲子の牡奴隷はまったくの逆だった。
その忠誠心、信仰心は皆美に嫉妬心を抱かせていた。
(ケイもこれくらい私を崇拝してくれたら、凄い気分いいのに……)
勿論、今のケイを虐めるのも楽しいが、自らを心のそこから崇め、奴隷として命すらも捧げられたら飼い主冥利に尽きるだろう。
「ありがとうございます……阿比留瑠美様、古川皆美様」
玲子の牡奴隷は二人の唾を舐めながら感謝の言葉を祈るように呟いていた。
それにしても……よりにもよって年下の初対面の床に吐いた唾を舐めるなんて――。
なんて惨めなのだろう。
「ほら、ちゃんと舐めろよ」
瑠美は唾をヒールで広げながら嘲笑っていた。
吐きかけた唾に通勤中の靴底の汚れが混じり、白い半透明な唾がみるみる灰色に汚れていく。
「きったな。これ舐めれんの? まじで気持ち悪いんだけど」
「あぁ、私の様な生きることすら罪な下等生物に過分なお言葉誠にありがとうございますぅ!」
床の汚れで下を真っ黒にさせても舐める姿は豚や犬など比較にならない卑しさで、哀れさを越えて滑稽ですらあった。
瑠美の唾を舐め終えた牡奴隷は、今度は皆美の足元の唾と顔を近づけると、同じように舌を出して床を舐め始めようとしたが、すでに唾は乾き床に染み込んでしまっていた。
「遅いから乾いちゃったじゃない……。まったく、使えないわね。ぺっ!」
皆美は唾を吐き捨ててから驚いた。
まったく無意識に唾が乾いていたら舐めさせようと思ってしまったのだ。
もはや、自分の唾を舐めさせるのが可愛そうではなく、当たり前に感じていた心情の変化に身体がうずく。
もっと惨めにしてやりたい。
「古川皆美様! 再度おめぐみ、ありがとうございます!」
「ほら、まだよ」
カツ。
皆美もパンプスのヒールで吐いた唾を床に塗るように広げてやった。
瑠美と同じように埃や砂が混じった唾はみるみる汚れていったが、逆に気分がよくなった。
これを舐めさせられると思うと征服感でとても気分がいい。
「いいわよ。舐めろ」
「はいっ!」
自然と命令口調になったが、牡奴隷はそれが当たり前のように受け入れ、皆美の唾をなめあげだす。
ぺちゃ、ぴぢゃ、じゅる。
フフフ、いい様ね。
まさに牡奴隷って姿だわ。
やがて、吐きおとした唾が無くなり、牡奴隷の舌で床が光るほど磨き終わると玲子は首輪を引っ張って教壇へと牡奴隷を連れ戻した。
「さて、あなた達に与えられた牡奴隷もこれくらいの忠誠心をもって貰う予定です。今日はまずは奴隷としての基本中の基本として飼い主の匂いを覚えることからしてもらいます」
玲子はそう言うと三枚の黒い布――目隠しを取り出した。
(臭いを覚えさせるなんて、本当に犬みたいね! あ、でも、もうケイは人間じゃなくて愛玩動物だし問題ないわよね)
しかも、どんな暴力も仕打ちも許される最高の道具でもあるのだ。
皆美は溢れる笑みを隠さずに脚を組み、姿勢を正してケイの背中にさらに体重をかけてやる。
どこの匂いを覚えさせる?
そんなの言われる前から答えは決まっている。
朝から昼までで臭いが最もする場所なんて二つしかない。
そして、最も手軽に嗅がせられるのは――。
「まずは牡奴隷二匹それぞれに十分間足の臭いを嗅がせて下さい。もし覚えられなければ、奴隷に罰を与えます」
その言葉にケイがビクリ、と身を震わせたのが伝わってきた。
(やっぱり熟練の女性職員からの罰は恐いのね。フフフ、間藤さんだってどれだけ奴隷を処分してるからわからないし、せいぜいケイには頑張って貰わないとね♪)
皆美にとっては楽しさしかなく、ケイにとっては苦行でしかない時間が始まるのだった。
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