魔王遊戯 提案 (Pixiv Fanbox)
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翌日――。
魔力を喪失させる枷をつけられ、地下牢に繋がれたアイゼンは無力だった。
魔力を失えばただの少年に過ぎず、鋼鉄よりも形で格子を破壊することなど不可能だったからだ。
「くそっ!」
あの魔王! 絶対に許さないぞ!
この憎悪が呪いになるなら、間違いなく魔王を呪える。
マルタは大丈夫なのか?
どうか神よ。マルタをお守り下さい。
丸1日呪詛を吐いて、壁を殴っていたアイゼンだが、ギィ、と地下の扉が開く音がして外へと視線を向けた。
カツ、カツ、カツとヒール音を響かせて姿を見せたのはレヴィアだった。
アイゼンはレヴィアを見た瞬間、格子へと飛び付くと、握りつぶさんばかりに掴み怒鳴りちらす。
「マルタ! マルタはどうした!」
「そんな吠えなくても聞こえているし、彼女は無事よ? ほら……」
そんなアイゼンの反応すら楽しむ様に、レヴィアは手にしていた鎖を引っ張る。
ペタ、ペタ、ペタ。
ジャリ、ジャリ、ジャリ。
素足で床を歩く音と鎖の鳴る音が近づき、レヴィアの後から姿を見せたマルタにアイゼンは安堵ではなく、困惑してしまう。
「……マルタ? なのか?」
「………………」
アイゼンの前に現れたマルタは一糸纏わぬ裸であり、首には犬が嵌める様な首輪をつけられている。
なによりも、四つん這いで入ってきたマルタの表情は絶望の色はなく、むしろ、発情したように潤んだ瞳で女の色香さえも感じられるのだ。
なんで?
あんな酷い姿にされているのに、マルタには抵抗する素振りすらない。
これではアイゼンが困惑するのも当然だった。
まるでマルタは喜んで家畜のような姿をしている様なのだから――。
「間違いなく本人よ? もっとも、もう聖女じゃないけどね♪ほら、勇者に自己紹介しなさい♪」
アイゼンの動揺にまるます笑みを吊り上げるレヴィアは鎖を乱暴に引っ張り、マルタを牢屋の前まで歩かせた。
グッ!と鎖が引かれれば首が絞まり、苦しいはずなのに、それすらも嬉しそうに歩くマルタに激しい違和感を感じる。
でも、見た目は間違いなくマルタだ。
他の魔物の擬態なのか?
でも、マルタの鎖骨にある痣は聖痕に間違いない。
……偽物でもないのか?
訝しむアイゼンを余所に四つん這いでレヴィアの足元へと歩いたマルタは、正座すると流れるように頭を床につけた。
「私は魔王レヴィア様の奴隷となり、ペットとなりましたマルタと申します」
!?
マルタの言葉にアイゼンは頭を殴られたかの様な衝撃を受け、愕然とした。
聖女だったマルタが、昨日あれだけ魔王を憎んでいたマルタが、あろうことか魔王に土下座したのだ。
しかも、自ら奴隷宣言までして――。
たった1日の間に、一体何があったんだ!?
「かつての仲間のこ~んな情けない姿はどうかしら? 笑えるでしょ~♪ アハハハハ! こんなのが聖女だなんて笑わせてくれるわね🖤 人間って滑稽だわ♪」
ガッ!
レヴィアは真っ黒いパンプスで土下座するマルタの頭を踏みつけて笑いながら詰っていた。
金色の髪が土や埃で汚れているのに、マルタは嬉しそうに身体を震わせていた。
「マルタ! マルタ! どうしたんだよ! 目を覚ませよ!」
「無駄よ? この娘ったら、私の魅了が効きすぎてもう私にメロメロなのよね」
「お前! マルタを元に戻せ!」
「フフフフ、生意気な態度ね。この女がそんな大事なら、もう少し勉強した方がいいわよ? でも……そんなにこの雌犬が大事なら、私とゲームをしましょうか?」
タバコを踏み消す様に、グリグリ踏みにじるレヴィアは目を細めてニィと嗤う。
そこには人間ならざる悪魔を思わせる悪意を感じさせた。
「ゲーム……だと?」
「そうよ? この女は昨日魔力喪失状態――つまりは魔力抵抗なしで私の魅了を受けて壊れちゃったのよね~。でも、魔力が回復すれば、もしかしたら、状態異常も解けるかもしれないわ。ま、私が魅了を上書きしなければ……ね」
「ゲームに勝てばマルタに魅了をかけるのを止めるのか?」
「ま、そうね。次のゲームが始まるまではやめてあげるわ。正気に戻るかわ……わからないけどね?」
レヴィアは無造作に四つん這いのままのマルタの背中に腰をおろした。
「立ってるの疲れたから座るわね? 椅子」
「んぁぁぁ……レヴィア様」
椅子扱いされているのに、マルタは感じているような甘い声を出していた。
もはや、半堕ちどころか完堕ちだが、元に戻せると希望を持ちたい。
かけられたのは昨日だし、回復すればきっとマルタなら……。
「わかった。受けよう。だが、約束を守る保証はあるのか?」
「当然よ。ゲームは公平じゃなきゃつまらないでしょ? そこは契約魔法を使うって言うのはどうかしら?」
「いいだろう。やってやるわ」
「フフフ、ゲーム成立ね🖤」
嗜虐的に笑うレヴィアに対し、アイゼンは挑むように睨み付けるのだった。
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