いつでも戻れると思うと(5・完) (Pixiv Fanbox)
Published:
2024-02-01 13:52:05
Imported:
2026-06
Content
* * *
「羽留奈は今日も可愛いね」
「ありがと」
彼からの誉め言葉を、わたしは素直に受け取った。
「聖仁はかっこいいよ」
「ありがとう」
わたしからの誉め言葉を、彼も素直に受け取る。そこは昔のわたしとは違うところ。
お互い裸になっているわたしたちは、一戦終えてベッドの上で気だるくも心地よくじゃれ合っていた。
「もうすぐ一年になるんだね」
カレンダーに目を留めて、ふとわたしは口にした。
これから一週間ほどで始まるゴールデンウイーク。去年のあの時、わたしたちは今とは逆の立場であれこれやっていて、そしてこうなった。
「……もしかして、戻りたい?」
「ううん。ただ不思議なだけ。ほんの一年前、わたしたちは入れ替わってなくて、わたしは男の聖仁として生きていくことを全然疑ってなかったのに、今はこうして羽留奈として毎日幸せにしているんだもの」
「そうだね。僕も去年の今日はまだ女の子の羽留奈で……自分が男になることとか、こんな可愛い彼女と楽しくやっていくとか、思いもしなかった」
去年の七月のあの日。異性の身体でトイレを経験したり、お風呂に入ったり、セックスしたりしたあの日から、わたしたちは元に戻っていない。そしてたぶん、これからも戻らないだろう。
あの日から、わたしは羽留奈として羽留奈の家で暮らし、彼は聖仁として聖仁の家で暮らしている。
生活まで入れ替えたら、あれこれ不便を感じて戻りたくなるかもと思っていた。けれどわたしたちはそうならなかった。
異性の身体を心地よく感じたように、わたしたちは異性である他人の人生をむしろ快適と思ってしまったのだった。
羽留奈が時に煩わしく感じていた、羽留奈のママからの料理や掃除や洗濯や裁縫についてのレクチャーを、わたしは楽しく教わった。わたしが聖仁だった時に親から受けていた「男なんだからいい大学へ進んでいい会社に入れ」というプレッシャーを、羽留奈はうまく受け止めて成長しつつある。
わたしは、生理の痛みやつらさを受け入れた。羽留奈からさんざん脅されていたからか、むしろ「この程度?」と想像より下回っていたそれに拍子抜けしてしまった。彼は彼で、生理から解放されたのがうれしいようで、おちんちんに振り回される日々もヒゲだのすね毛だのムダ毛だらけの生活も気にならない模様。
それぞれの友人についても、今のわたしたちの方が『前のわたしたち』よりうまくやっているみたい。
わたしたちは薄情なのかもしれないと悩んだこともある。元の家族や元の友人よりも、今の人間関係の方がいいと思ってしまうなんてと。
でもそれも、身体と同じだと今は気持ちに整理をつけている。わたしには羽留奈の環境の方が、彼には聖仁の環境の方が、それぞれに適していた。ただそれだけなんだと。
「でも、最初から戻れなかったら、わたしたちこれほどすんなり今を受け入れられていたかな」
「……どうにかして元に戻ろうという方向へ向かったかもね」
「わたしもそんな気がする」
戻ろうと思えばすぐ戻れる。その気楽さが、わたしたちを異性の身体に少しずつ馴染ませた。その果てに二ヶ月目の生活交換という選択があり、そのままの人生交換に至ったんだと思う。
でも最初に選択肢が与えられていなかったら?
元に戻ることばかり考えて、新しい身体や生活を強いられたものとばかり感じてしまい、様々なことに反発していたんじゃないだろうか。
そんなことにならなくてよかったと、改めて思う。
わたしは彼の股間に顔を埋めた。彼が軽く叫ぶ。
「あっ……」
さっき射精したばかりのおちんちんは、まだ力なく縮こまっていて、先端には精液の残りがついている。全体を口に含めば苦くて生暖かくて変に柔らかくて、味覚などで言えば好んでくわえたいものではない。
でも、これを弄ってあげると彼が気持ちよくなってくれる。わたし自身がその気持ちよさを今でも覚えているのだから間違いない(羽留奈はあんまりしてくれなかったけど……)。
わたしの口の中で、彼のおちんちんがムクムクと大きくなっていく。わたしが彼に力を与えているみたいで、うれしい。
フェラチオに抵抗がなくなったのはいつからだったろう。さすがに最初のうちはなかなかできなかったはずだけど……。
「今度はこっちの番だよ」
わたしの口からおちんちんを抜いて、わたしを仰向けにすると、彼はわたしのおっぱいをしゃぶり始めた。
わたしとおちんちんとは違って彼は、本格的に入れ替わってからたちまちおっぱいの虜になった。今もわたしのおっぱいに吸いついている顔は赤ん坊のように幼くて、母性本能を刺激される。
……あれ? でも。
「こっちの番って何? わたしがおちんちんをくわえるのは、あなたがおっぱいにむしゃぶりつくのとは意味が違うんだけど」
「へえ? いつも僕のペニスをアイスキャンディーでも味わうみたいにおいしそうにしゃぶっているのに?」
顔を上げた彼に楽しげに言われると、こちらの気持ちも揺らぐ。
「わたし、そんな顔してる?」
「うん」
「で、でも……わたしは違うもん。あなたに気持ちよくなってほしいからで、自分が好きだからじゃ……」
「けど」
言いながら、彼は素早くゴムをかぶせると、わたしのアソコに硬くなったおちんちんを宛がった。
「僕が気持ちよくなって硬くなったら、こうされる君も気持ちよくなる。そして君はこれが好き。だから結局は自分のためじゃない?」
「あ、あれ……?」
そんな風に言われると、よくわかんなくなってきちゃった。
「混乱させちゃったかな、ごめんね」
彼が、わたしに入ってくる。
「僕は君が好きで、君も僕が好き。そこが一致してるなら、僕たちはこれからもずっと幸せにやっていけるものね」
「うん」
些細な言い争いを終えて、わたしたちはまた愛し合う。
女の子でよかったと、今日もわたしは幸せな気持ちになれた。彼は彼で気持ちよさそうで、男の子の快感をしっかり満喫しているようだった。
「お腹空いてない?」
「けっこうぺこぺこ」
「じゃ、ご飯作るね」
きちんと服を着てからその上にエプロンをつけて、わたしは料理を始めた。
裸エプロンはもうしない。