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人里離れた古い墓地。

彼女はギルドで受けた依頼を達成するため、夜更けに訪れていた。

「……いた」

墓地にたどり着いた彼女の前には、一人の女性がいた。

身なりは彼女と同じ冒険者のようだが、その体は薄暗い闇の中で不気味な光を発し、足元は煙のように霧散し、人の形を成していなかった。

「……あなたが、"亡剣のアリシア"?」

彼女は、女性に尋ねた。

するとアリシアと呼ばれたその女性は、振り返ると赤く光る瞳で彼女を捉えた。

「あら? こんな時間のこんな場所に、随分可愛らしいお客さんね。ええ、私がアリシアよ」

アリシアは微笑みながら答える。

その不敵な笑みに警戒心を抱きながらも、彼女は会話を続けた。

「はじめまして。私の名はライラ。ギルドの依頼を受けてここに来た冒険者よ」

「へぇ、あなたが。"ハーフウルフ"の冒険者さんは初めて見たけど、すごい魔法力ね」

アリシアは、彼女もといライラに対してなめるような視線を向けてくる。

ライラはその視線に若干の不快感を抱いた。

「あなた、ここの墓地を根城に、この近くを通る人たちにいたずらをしているのよね? それを止めてほしいの」

ライラがギルドから受けた依頼は、ずばりアリシアとの交渉だった。

アリシアはここ最近、今のような夜も更けた時間帯に、墓地の近くを通りがかる人々の前に現れては、彼らを脅かせる行動をとっていた。

それを怖がった人々がギルドに相談し、交渉役としてライラが選ばれたのが今回の経緯である。

「あなたが、かつて素晴らしい冒険者だったのは聞いている。……幽霊となった今でも、この周辺のモンスターを狩って近くの村に被害が及ばないようにしているのも、ね。だからギルドも、できれば平和的に解決したいと思ってる。あなたがもう他の人たちにちょっかいをかけないと約束するなら、私たちは何もしないわ」

ライラは真剣なまなざしでアリシアを見つめる。

しかしそんなライラの想いなどいざ知らず、アリシアはやれやれとため息をついて答えた。

「それを伝えるために、わざわざここまで? 随分とおめでたいのね、あなたもギルドも」

アリシアの反抗的な態度に、ライラは少しムッとした。

だが、次に彼女の口から出てきた言葉は意外だった。

「けど、いいわ。その話、承諾しましょう」

予想外のアリシアの反応に、ライラは驚きを隠せなかった。

今さっきの鼻につく言葉から、彼女が交渉に応じてくれるとは思わなかったからだ。

「本当にいいの?」

「ええ。私はもう他の人を驚かせるようなことはしないわ。その代わり……」

アリシアは微笑みながら、一泊おいて言葉を続けた。


「あなたの体、ちょうだい?」


「!?」

アリシアから出た言葉に、ライラが驚いたのも束の間。

次の瞬間、彼女は体全体が下に落ちる感覚を覚えた。

「……! 何!?」

ライラは咄嗟に自分の足元を見ると、さっきまで固かったはず地面が、急に泥のようになり彼女の足を沈めていた。

しかもただ泥状になったのではなく、何者かが沈んだ足をつかんでいるようだった。

奇妙な感覚にライラが混乱していると、足元からその正体が現れた。

「こいつら、アンデッド!?」

ライラの足元に現れたのは、数体のアンデッドだった。

アンデッドは泥の中から現れると、彼女を逃がさないように、腕や尻尾をつかみ始める。

そしてライラの体は、さらに沈み始めた。

「ごめんなさいライラ」

アンデッドたちに抵抗しているライラに、背後からアリシアが謝罪する。

その顔には、とても謝罪をしている人間とは思えないような笑みが浮かんでいた。

「アリシア……、どうして……?」

「私はね、このまま幽霊でいたくないの。だからずっと、生き返る方法を探してた。そしてようやく見つけたの、私が生き返る方法をね」

「生き返る方法?」

「そう。でもそのためには、新しい肉体が必要なの。それも魔法力が十分にあるやつが。だから私は、この墓地の近くにいる人間たちにちょっかいをかけていた。そして今日ようやく、それを見つけた」

優しい声色で語り掛けるアリシアの言葉に、ライラは血の気が引いた。

「まさか、私を……?」

「ええ。あなたを一目見て分かった。あなたの体は、私が生き返るのに十分すぎる魔法力がある。もう、他のやつらを目にかける必要はない。あなたの肉体を私がもらうわ。これはそのための儀式よ。沈んだらちょっと苦しくなるけど、それも長くはないわ。だから安心してね」

アリシアは自身の恐怖の計画をなんの悪気もなく笑顔で語り、その様子にライラは恐怖した。

その間にも足元のアンデッドたちは、彼女を泥の中へと沈めようとしてくる。

果たしてライラは、このままアリシアの肉体となってしまうのか……?


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というわけで、今月の最後の支援者向け投稿は、「幽霊×底なし沼」でした。

ちょうどハロウィンの時期なので、お化けを題材にしたいと思い描いてみました。

ただ底なし沼に沈むだけでなく、何者かによって沈むのを強制されているのもいいですよね。(ゲス顔)


さて、ストーリーの中で明かしましたが、オリキャラちゃんの名前は「ライラ」です。

また彼女についての設定画的なものも公開しますが、今後も是非活躍を応援していただければと思います。


では、また来月お会いしましょう。

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