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 このページでは「ずるい女」の全内容を常に公開しています。


 このページの公開日から一週間後、pixivにおける同作品は一部分を削って体験版にする予定となっております。


 今回の二次創作の題材は、漫画「彼女、お借りします」に出てくるメインヒロインの水原千鶴です。2023年の夏アニメに出ていますね。アニメ派・コミック派の人は微ネタバレ注意。


 以前書いたベルリュー小説がとびっきり重くてドロドロな話だったので、今回は私の脳を休めるべく、細かいことを考えず自分の性癖全開で書いちゃいました。


 ちなみに執筆するにあたって、この絵をモチーフにしています。


 この絵の格好をした水原が和也に迫ってくる、と考えていただければ幸い。


 それでは、ごゆるりと。








シチュ概要


 大家都合のアパート退去により、次の家が決まるまで水原千鶴の家に住まわせてもらうことになった木ノ下和也。


 水原の家。レンカノの家。想い人の家。好きな異性の生活空間。


 一応、二人きりの同居ではなく、八重森さんという女友達も一緒に住んでいるし、これは一ヶ月の期限付き。ただ、それでもドキドキさせられる事には違いない。


 あわよくば仲の進展、果てには男女交際、なんて妄想が和也は雄として頭にちらつかずにはいられなくて。




 しかし、そうは都合よく問屋が卸さない。


 八重森さんに「ずるい女」とまで言わしめる水原のガードの固さは折り紙付き。


 それに、いつも通りの話ながら、下手なことをして水原に嫌われるリスクを鑑みれば、こちらから手を出すなんて和也としてはもってのほか。




 はっきり言って、目に見えるわかりやすい形での進展は皆無。


 同居期限の1ヶ月まで既に二週間を切っている今でも、和也はチャンスを活かしきれていないもどかしさに悩まされている。


 それどころか最近、水原のアクターズスクール仲間であるイケメン・海君が水原宅に訪問し、水原に告白してくる、なんて不安材料まで出る始末。




 心中穏やかではない和也は焦るも、かといって自分からなにか奇抜なことをする度胸もなく、時間が過ぎるのみ。


 そんな懊悩とした日々の中の、とある金曜日――。






本文






 土砂降りの雨が、轟音を鳴らし続けている。


 台風だそうだ。夜空から間断なく降りまくる水の弾幕が、外で傘をさす人々に襲いかかっている。ビニール傘なんて瞬時に折ってのける暴風が、窓の外を見る俺に語りかけた――「外出はやめとけ」と。


 大学から帰ってきた俺は、木ノ下和也は、その警告に素直に従うことにした。


 うん、もう今日は外に出ないことにしよう。


 筋肉モリモリマッチョマンでもない平凡な大学生の俺が、窓の外に見える雨風の暴虐に挑むのは自殺行為だ。ここまで天気が酷くなる前に帰れたのは結果論で、俺はラッキーだ。外出を急ぐような買い物や用事が無いのも幸いだ。


 家主のいない家でくつろぐのは気が引けるが、この酷い天気では、インドアで過ごすのはやむを得ないだろう。




 水原の家。


 今、その中にいるのは俺一人だ。


 水原はアクターズスクール。八重森さんは、配信者の友人とのオフ会。




 八重森さんについては、流石にこの天気で帰るのは身の危険を感じるから、今日は友人の家で泊まっていくらしい。


 それをなぜ俺が知っているかというと、今まさに、そのことを八重森さんから電話で知らされているからだ。




『というワケで! 今夜は水原さんと二人っきりっスよ! 押し倒すっス、師匠!』


「いや、そんなことするわけないだろ!」




 スマホから聞こえる八重森さんの押せ押せコールを却下する。


 八重森さんが俺と水原の仲を応援してくれるのは素直に嬉しい。レンカノという事情を汲んだ上で恋を応援してくれるのだから、すごくありがたい。


 ありがたい……のだが。その応援の手法がやや強引なのが玉にキズだ。撮影旅行といい、ツイスターゲームといい、彼女には前科がある!




『水原さん、土砂降りの雨で疲れて、体がびしょ濡れで冷えるでしょうから、そこで師匠が男を見せて、抱き合って体で暖めあえば……!』


「しないよ! するにしても、風呂を沸かしておくくらいだよ!」


『あ、それもいいっスね。気遣いできる若旦那みたいで』


「若旦那ぁ!?」




 一瞬、「おかえり。お風呂、沸いているけど入る?」とさらりと勧める自分の姿が俺の脳裏によぎる。誰だこのイケメン。自意識過剰だよ。


 と、いつも通りの、八重森さんとのバカなやり取りがまだ続くと、俺はなんの疑問もなく思っていたのだが。




『なので師匠! 水原さんが帰ってきたら一声! ごはんにする? お風呂にする? それとも――』


「わ・た・し? って、やらせんな! ……八重森さん? もしもし?」




 ザー、とスマホから聞こえる音が意味の通らないノイズに変わる。


 直後、ツーツー、と通話終了の音がなり、電話が切れてしまう。




「雨で電波が悪くなったのか?」




 俺はポツリと推測を漏らし、窓の外に目を向ける。


 うわっ! と驚きが声になる。見れば見るほど酷い大雨だ。


 洪水の前触れかと思うぐらいに多量の水が降り注いでいる。夜で視界が悪く、風も強い。窓がグラグラ音を立てている。


 外出する気が起きないどころか、これは外出に危険が伴う雨だと本能で理解し、俺は頬を引きつらせた。




「というか、この雨だと。水原も帰ってこないんじゃ……」




 電車が運行停止になったり、アクターズスクールの教員が生徒の安全を憂慮して校内待機を許可するのは、あり得ると思う。


 少なくとも、大雨がある程度収まるまで。




 ……ふと、一瞬。


 水原のアクターズスクールの仲間が、海君が。


 あのイケメンが、水原に告白した光景が脳裏によぎった。




「だーっ、なんでこんなときに思い出すんだ!?」




 懊悩して、ゴロゴロ頭を抱えて床を転がって、壁に頭がぶつかる。痛い!


 冷静になれと、俺は必死に自分の理性を働かせた。


 海君が水原を好きなのは、告白した以上はもう疑う余地は無いけれど、だからって、すぐに仲がどうこうなるわけでもあるまい。


 ましてや今は台風だ! 帰り道や身の安全を心配するべき時に、火事場泥棒みたいに仲を進展させるなんて、そんな卑劣なこと海君はやらないはずだ!




 水原が好きという点において、海君は俺にとって不倶戴天の敵だ。


 けど同時に、海君は人格者だ。そこは信じていい……はずだ!!




「はぁ。今日はもう、早めに寝るか……?」




 悩み疲れた俺は、少し早いが寝支度を進めることにする。


 水原に風呂を用意する、という話は却下だ。もはやこの大雨で水原がいつ帰ってくるのかわからない。いざ水原が帰ってきたときに風呂が冷めていたら話にならない。


 せめて置き手紙を用意して、夕飯は俺の分は無しでもいい、と告げる程度にしておこう。ご飯を作る気力なんて無いほど疲れるであろう水原が、俺の一食分ぐらい、気を休められるように。




「一日くらい、晩飯を抜いても、いいよな……」




 お腹に手を当てて腹の具合を確かめながら、俺は自室を後にした。




 * * *




 結局、俺が就寝するまでの間、水原は帰ってこなかった。


 歯磨きやシャワーといった寝支度を終えてから、念のため俺は夜十時近くまで起きていたものの、玄関が開く音は鳴らず。


 一瞬、なにか事故でも起きたのではと俺は不安になって、水原に電話したけれど繋がらず、チャットしても既読はつかず。


 残念ながらこれ以上できることはもう無いと、俺は心配を押し殺して布団の中に入った。




 短い夢を見る。


 深い闇の中から、水原がこっちに向かって走ってくる。




 ――助けて! 和也くん、助けてっ……!!




「水原っ!?」




 飛び起きた。


 呼吸を荒くしながら、心臓が底冷えするような悪寒で全身がわななく。


 服の裏で、汗が滝のように流れた。




 なんだったんだ、今の夢は。予知夢? 虫の知らせ?


 答えのわからない悪寒を心臓に抱きながら、俺は周囲に目を向ける。


 真夜中だ。




 窓から聞こえる雨の音は、一番ひどいときに比べたら多少マシになっているものの、依然として土砂降りのまま。


 就寝中だったから当然だが、照明はついていない。


 闇に目が慣れるまで、俺は、自室の変化に気づくのに数秒かかった。




「――え?」


 自室の、ドアが開いている。




 いや待った、厳密には俺の部屋じゃない。ここはあくまで水原の家だ。俺はあくまで水原の家の一室を間借りしているだけだ。


 だから、今こうして。


 水原千鶴が、寝ている俺の部屋のドアを開けて、室内に入ってきていることなんて、なにも問題ない。


 水原が四つん這いになって、寝ている俺に濡れた躰を迫らせていることなんて、彼女は家主なんだから別に問題なんて――




「――待った待った待った!?」




 湧き上がる淫らな欲望を抑えつけながら、俺は手を伸ばした。


 水原の肩を掴んで、これ以上の接近を阻む。


 ……夢じゃない! 感触がある!


 水原が、現実で、寝ている俺に迫ってきている!




「ただいま、ぁ」


「お、おかえり……? 水原、どうした?」




 ただならぬ水原の様子に慄きながら、間近にある湿っぽい色香に俺は防戦する。


 欲情している場合じゃないのに、げに恐ろしきは、圧倒的な水原の美貌だ。対男性理性破壊兵器!




 潤んだ瞳は吸い込まれるように綺麗で、濡れそぼった唇は甘そうで、雪のように白い柔肌は眺めも肉付きも極上で。服の隙間から谷間が覗く豊満な胸も、柔らかいカーブを描く腰つきと太ももも、俺の理性を罅割れさせてくる。


 ……いや、待った。


 濡れそぼった唇? いくらなんでも濡れ過ぎだ。艶のある長髪も、白い柔肌も、いつも以上に瑞々しい――違和感を抱くほどに。


 嫌な予感に促され、俺は「ごめん」と軽く断りを入れて水原の腕に触れた。


 恐ろしく冷たかった。




「水原、風呂入ってないのか!?」




 声を上げながら、水原の現状に俺は目を剥いた。


 水原は、着替えていなかった。台風でずぶ濡れになったであろう服のままで、俺の部屋に来ていたのだ。


 どおりで水気に溢れてるわけだ、実際に肌が水で濡れているんだから。白を基調とした服が下着ともども透けて、中の体が見えている。


 一番問題なのは、服が透けて柔肌が見えてしまっている事態を、水原がまったく気にしていないことだ。流し目で、しっとりしている。


 扇状的だが、それ以上に危うい。 




「風邪ひくぞ水原! お風呂、入らないと! いや、シャワーでもいいから、とにかく体を温めないと――」




 柔肌から目を背け、水原に自愛を促す。


 こういう風にトラブルが起きた時、昔は俺が駄々をこねる側で、水原が「仕方がないわね」だの「ダメ」だのと世話を焼く側だったのに。


 立場が真逆なことに違和感を抱きながら、ああでも、迫ってくる豊満な胸が、艶のある唇が、潤んだ瞳が、とても色っぽくて――


 って、ちょっと待て――!!




「ふふ、和也くん。生きてた頃のおじいちゃんみたい」


「み、みずは、んっ――!?」




 唇を奪われた。




 * * *




 しっとりした感触に、口を塞がれる。


 首に手を回されてがっちり顔を固定されながら、唇を重ねられながら、目を閉じた美貌に蠱惑される。


 水に濡れた艶めかしい女体が俺にしなだれかかる。冷えた感触と共に、極上の柔らかさが俺の全身に絡みつく。


 豊満な胸がたわむ感触に理性を揺らされ、俺の両手が震える。


 今すぐ抱き返したいと、本能がむせび泣いて――




「んんんっ♡♡♡♡♡ ぷはっ、待った待った!」


「あっ! あー……」




 煩悩を無理やり抑えつけ、俺は力づくで水原から離れる。


 両肩を掴んで女体を引き剥がして、距離をこじ開ける。


 一瞬、俺は水原が名残惜しそうに目を曇らせたように見えて、「そんなわけないだろ自惚れるな」と自分の認識に叱咤した。


 半目で蕩けた水原から感じる色香を、気のせいで片付ける。


 そもそも、こんなことをしている場合ではない!




「水原、いったん落ち着いて。まずは風呂に入って、濡れた体を温めよう。このままじゃ本当に風邪をひくから。な?」


「和也くんの体があったかいから、大丈夫よぉ」


 俺が大丈夫じゃないんだよ~!!




 脳内で喧嘩する理性と煩悩、理性側が劣勢ぎみ。


 水原が目を閉じて、またキスしようと顔を迫らせてくる。


 彼女の暴走を、どう鎮めればいいのかわからない。惚れた弱みで、迫る唇を拒絶することができない。


 困惑するばかりの俺は、ふと、自分の頬に添えられた水原の手が震えていることに気づいた。




 ついに風邪をひき始めている――と、思いかけたが。




「なにか、あったのか?」




 そう俺が尋ねた瞬間、ピタリと水原は止まった。


 息がかかる距離で、唇の接近が止まる。




 やっぱりそうだ、と俺は確信した。


 水原の手の震えは体の冷えではなく、いやそれもあるだろうけど、それ以上に精神的なものが理由だと。




 なんらかのショッキングな事態が、水原の身に起きた。


 まぁ、いくら気の迷いとはいえども、水原が俺に抱きついてきたのには驚いたが。




「……抱きしめて」


「え?」


「体が冷たいまま、話したくない」




 鼓膜を揺らす玉音の声音に、俺は躊躇を覚えながらも従った。


 水原の背中に腕を回して、抱きしめる。


 抱き心地はとても柔らかくて、心地よくて――それでいて、危なっかしいほどに彼女の体は冷たかった。




「やっぱり。……あなたとなら、抱き合うのも、キスするのも、嫌じゃない」


「え?」


「ほだされてたんだ……いつの間にか」




 しみじみと紡がれる水原の声。


 その発言に潜む真意を詮索することは、俺にはできなかった。


 そんな度胸ないし、なにより。




 このあとに続いた水原の話に、俺は胸が凍るような衝撃を受けたから。






「キス……されそうに、なったの」






 * * *






 一部始終を話し始めるとき、水原は声『だけ』はいつもの落ち着いた完璧美少女のものに戻っていた。


 声『だけ』と強調したのは、俺は水原の表情を見ていないからだ。


 話す間、水原は抱き合ったまま、顔を俺の肩に乗せていた。頑なまでに、表情を見せようとしなかった。






「キスシーンの練習をするって流れになって、私も海君も断りきれなくて……本当にギリギリだった」






 アクターズスクールで過ごす時間。


 台風の中、帰れない人たちのためにスクール側は一時的な雨宿りの場として校内での待機を許可したらしい。


 その中で起きたトラブル。






「数ある名作映画の中には濡れ場やラブシーンがあるものも当然ある。そしてそれらは、物語を盛り上げる上で欠かすことはできない」






 脳裏に浮かぶ、周囲に言いくるめられ、悪い流れに乗せられる水原の姿。


 以前、合コンに水原が参加させられたときのことを思い出す。あのときだって、初飲酒で水原はその場の勢いでイッキさせられて。






「女優業でキスシーンを求められることなんて珍しくない。割り切るのも仕事のうちだって、理解してた……つもりだった」




 言葉尻で、水原の声が震えた。




「覚悟、できてた、つもりだった」




 水原の、抱きしめてくる力が強まる。




「まっとうな貞操観念なんて、女優になると決めた時点で、レンカノをしている時点で、捨てた、つもりだった」






 冷静を装う水原に、伝わってくる悔しさと辛さに、俺は言葉が出ない。


 表情がこわばっているのを自覚する。


 腕の中にある彼女の体が、いつになく弱々しいものに感じる。


 外から雨の音が響く中、俺は喉が渇く錯覚を味わった。






「ただ、想像以上にきつかった……ううん、違う」




 弱気を恥じるように、水原は訂正した。




「私が未熟だった。覚悟が足りていなかった。……それだけの話よ」






 最後は普段通りの、冷然とした声で経緯の話は締めくくられる。


 いつものように、『理想の彼女』を演じるような自然さで。






 沈黙が始まる。


 軽率に言葉を出せない。


 水原と抱き合った状態のまま、俺は動けない。




 腕の中にある彼女の体の心地よさとか、たわむ双丘の豊満さとか、濡れて冷えた体への心配とか――全部どこかに失せた。


 なにを言えばいいかわからない。


 好きじゃない人とキスすることの苦痛、それが避けられない壁として立ちはだかる女優としての水原の苦悩。


 気持ちはわかる、なんて軽率に言えない。




「その……なんて、言えばいいのか……」


 俺は、生返事を返すことしかできなかった。




 じわじわと、焦りがつのる。


 言いようのない気まずさに急かされて、なんとなく俺は水原の頭を撫でた。


 猫かっ! と俺は内心でセルフツッコミしたが、ナデナデは意外に効いたようで、水原は頭を預けてくる。多少は心の癒やしになっているようで安心した。




 つくづく思う。いつもこうだと。


女優業のことで悩む水原に、門戸外の俺は助けになれない。




 役者の世界は、俺にとって未知の領域。現場にいる水原や海君に比べて、俺は知識も実感も圧倒的に足りない。


 例外的に、クラファンで映画を作ったことに関しては、水原の助けになれたと自負できる。けれどあれは瑠夏ちゃんや八重森さん、墨ちゃんといった支えがあって成せたことだ。


 俺一人だけでは、水原の力になることはできない。


 水原の助けになるには、俺一人の手は弱すぎて。






 しみじみと無力感に俺が浸っていた、そんなときだった。

 

 ――突如、ヌッと。


 水原が、顔を上げたのは。




「するわよ」




 美貌から、妙な圧を発しながら水原は言う。


 猫みたいに瞳を細め、俺を見据える。


 ……なんか怖い! なんでだ!?




「するって、なにを」


「えっちなこと」




 水原の目が据わっている!!




「えっちって、いつ、どこで……?」


「もちろん、今! すぐ! ここで!!」






 * * *






 俺が思うに、水原の百ある長所の一つは、開き直ったときの思い切りの良さにある。


 え? 残り九十九? 本題じゃないから省略!




 思えば旅館で水原と一緒になったときも、撮影旅行のときも、突発的に二人きりの事態になって、だけど水原は冷静だった。


 なってしまったものは仕方がない、それよりせっかくの旅行は楽しまなきゃ損だと、事態を受け止め、困惑を後に引かせなかったのだ。




 いい意味で開き直れるというか、サッパリしているというか。


 落胆や混乱を、長続きさせない。


 この思い切りの良さも、突然のトラブルに動揺しない安定感として、水原の強さに直結しているのだと思う。




 なので。


 今こうして、濡れた上着を派手に宙に放り捨てて、下着姿になって俺に迫る水原も、いい意味で開き直っていると言え――




「――るわけないだろう!? 待て待て待て~!!」




 両肩を手で掴みながら、俺は迫ってくる水原に静止を促す。


 目の前の肉感的な女体の存在感に理性がゴリゴリ削られる!


 揺れる豊満な胸、瑞々しい唇、肉の詰まった太もも。水原の魅力の一つ一つが、こぼれるような色香を発しながら俺に迫ってくる。


 呑まれる! 抱きしめたくなる! 理性を捨てて、溺れてしまいたくなる!




「私のこと……嫌?♡♡♡♡♡」


 その聞き方は、ちょっとズルいだろ~!!




 小首をかしげて、濡れた瞳で、殺し文句で雄の欲望を煽ってくる水原に、必死で俺は抗った。




「待てって水原! お前、ヤケになってるだろ! 明らかに今のお前はテンションがおかしい!」


「そりゃそうよ。今の私は傷心中なのよ? だったら彼氏のあなたには、やるべきことがあるんじゃないの? ふふっ♡」


「なんでちょっと楽しそうなんだよぅ! 第一、水原はレン――」




 途中で言葉を遮られる。


 レンタル彼女、と言い切る前に、唇を重ねられる。




「んんんんん~~~~~~~~っ♡♡♡♡♡」


「んむううーーーーーーっ!!?♡♡♡♡♡」




息を塞ぐ蕩けそうな感触が、俺の思考をピンク色に染めた。


 一億点のかわいさの美貌が俺の視界を制圧する。


 同時に水原は腕を俺の背中に巻き付けてきて、その官能的な躰で無遠慮に俺にしなだれかかってきた。


 柔らかい! のしかかってくる水原の女体が、心地いい!


 宙を泳ぐ俺の手が痙攣する。抱き返したい衝動がモロに出る!




「ぷはっ」




 水原が唇を離した。


 その時には、俺は顔を真っ赤にして、両腕を水原の腰に回していて、あと少しで抱き返す所だった。触れるか触れないかの距離をギリギリ保っている。




 信じられない体験をしてしまった余韻で、目がぐるぐる回る。


 顔が熱くて。唇も熱くて。頭がクラクラして、思考が真っ白で――






「どうして、抱き返してくれないの?」


 か細い声で尋ねられた瞬間、ぞっと湧いた危機感から俺は我に返った。






「もしかして……本気で、嫌がってた?」


「それはない! それだけは絶対にない! すごく嬉しい!」


「っ……あ、ありがと」






 頬を染めて顔をそむけた水原を見て、ホッと俺は胸をなでおろす。


 よかった、誤解を防げて。水原の体が俺にとって魅力的じゃないなんて、ましてや俺が水原を嫌がるだなんて、死んでもそんな誤解されたくない。


 もちろん水原の人間性が彼女の中で最も魅力的なのは言うまでもない。が、それはそれとして、水原の躰が色っぽいのも確かだ。


 実際、こうして水原を間近にして、俺が理性を保つのにどれだけ苦労していることか。


 だが、それはそれとして、やっぱり勢い任せに淫らなことをするのは問題だ。






「俺が怖いのは……投げやりというか、捨て鉢というか。とにかく、そういう形で、そういうことをヤッたら、水原が後で後悔するんじゃないかって」






 湧き上がる欲求を抑えこみながら、俺は水原に後戻りを促す。


 手を回せばすぐにでも抱きしめられる近さに水原の熱があって、それでも欲望に身を委ねないのは、ひとえに後が怖いから。


 臆病と言われればそれまでだけど、それでも俺からは踏み出せない。


 俺が並べたそんな御託に対して、水原は、




「しないわよ。あなたが相手なら」


 あっけらかんとした様子で、後悔の可能性を一蹴した。




「だって、あなたが私を心の底から大切にしてくれる人だってことは、もうわかりきっているもの。そこは信頼してる」




 淡々とした口ぶりで、しれっと、水原は俺への信頼を断言する。


 彼女のあまりの泰然とした様子に、俺は言葉を失った。


 水原の心の芯に俺の存在があることが嬉しくて、俺が思わずジーンと感じ入ってしまっていると。






「けど……今は、そういうのはいらない」






 突如、目元に影を宿した水原に、「えっ」と俺は虚を突かれた。






「いい人ぶらないでよ。私が良いって、許可してるんだから」




 そっと、首に水原の腕が回される。


 彼女の唇が、悩ましげに艶めく。


 男を狂わせる誘引力に、頭がクラクラする。






「今の私は、そういうことをしたい気分なの。されたい気分なのよ」






 言葉を区切り、水原は唇を窄めた。


 物欲しそうに目を閉じて、なにかを待つ水原の美貌。その色香を前にして、俺は自分の鼓動が早まっていくのがわかった。




 脳裏に、かつて八重森さんに言われた「女にも性欲はある」という言葉がよぎる。




 水原の背に回しておきながら触れずにいた腕で、ついに俺は水原に触れてしまう。


 そっと抱く。


 指の腹に、柔肌がしっとりと吸い付く。




 理性の働きが弱まっている。


 お膳立てされすぎた。


 なにより俺の下半身も、俺自身も――限界だった。






「「――――ん♡」」






 唇同士が、そっと重なる。




 静かな着地。キスと同時に、お互いに肉体を抱きしめあって、密着をゆっくりと深めていく。


 水原の体は柔らかくて、大きな胸がたわんで、いい匂いで、幸福感がすごくて……だけど、危ういほどに冷たかった。


 結局、勢いに負けて水原と抱き合ってしまったが、今からでも水原は風呂に入って体を温めたほうが――と俺が思いかけると。






「ぷは♡ ……ちょっと。まだ私のこと気遣っているんじゃないでしょうね?」






 キス直後、ジト目の水原に心中を看破され、「いっ!?」と俺は肩を跳ねて驚倒した。




 やっぱり今の水原、エロいけど、同時になんか怖い!


 彼女の周囲にゴゴゴと漂う圧が、俺にそう思わせた。






 * * *






「ケダモノになってもいいのに。というか、むしろなりなさいよ」


 誘惑の言葉とともに、極上の女体が俺にしなだれかかってくる。




 俺の下腹部に乗っかって柔らかさを伝えてくる小ぶりな臀部、胸板に密着しながらしきりに形を変える豊かな胸。しなやかな腕を俺の首の後ろに回しながら、水原は目を細めて俺を注視する――隙あらば、またキスを狙うかのように。


 ここで水原の誘惑に乗り、その女体を思うがままに扱えば、天上の至福が待っているのは疑いようが無いが――それを俺は耐える。




「~~~ッ……!!」




 ああ、今すぐ押し倒したい! 揉みしだきたい! 腰を振りたい!


 けど、我慢だ。欲望から枷を外していく力配分を誤れば、やり過ぎてしまう可能性がどうしても否めない。


 水原は女優だ。スキャンダルの元になる痕跡でも残ったら大変だ。




 おっかなびっくり、水原を優しい力で抱き返す。


 ヤルにしても、精々ドライオーガズムまで。


 最低限の理性と礼節をちゃんと保って――




「いっそのこと、下着も脱いだ方がいいかしら」


「ッ!? さすがにそれはダメぇ!!」


「ん? そう?」




 水原の思惑を却下して、やり過ぎの誘惑を予防する。


 不審そうに首を傾げる水原の傍らで、俺は昔との立場の違いに困惑した。


 今の水原は、自重のブレーキが壊れている。出会って間もない頃の、俺が水原に甘えて水原が世話を焼く、という力関係が逆転している。


 こっちは、ただ抱き合っているだけでも、いっぱいいっぱいだというのに。




「ッ……」




 とにかく俺は、水原を丁重に扱うことを最優先とした。


 抱き合う彼女の体の、まだ冷えている部分を温める。


 水原に触れる腕や手の位置を、彼女の体のまだ冷えている部分に移して、水原の体温を回復するよう試行錯誤する。


 そんな俺の挙動を目にした水原は、怪訝そうにしていた瞳を、ふと見張った。






「あっ! さてはあなた、抱き合うだけで満足する気ね!?」


 ギクリ! と俺は体は硬直する。


 いや、本音を言うと抱き合う以上のことはしたいけど!


 ヤケを起こしている今の水原とするのは躊躇われるというか。






「やっぱり! なかなか自分からズボン脱がないな~って思ってたら、そういうことだったのね」


「いや、違って。これは、その」

 

「このヘタレ! バカズヤ!」


「バカズヤぁ!?」






 ぽかぽかと可愛く肩を叩く水原が出してきたその罵倒に、素っ頓狂な反応を俺は返してしまう。


 なんだろう。こういう台風のような暴走少女っぷりは、本来なら瑠夏ちゃんのポジションじゃ――




「あー!! 今、他の女のこと考えたでしょう!」


「いっ!?」


「瑠夏ちゃんね!? 瑠夏ちゃんね~~~ッ!?」




 ズバリ内心を見透かされた俺はモロに動揺を露見させてしまった。


 そんな俺の挙動が、ただでさえおかしなことになっている水原のテンションをさらに燃え上がらせる。ギンッ、と彼女の柳眉が吊り上がる!




「もう、あったまきた! こうなったら、私の方がケダモノになってやるわ!」




 そう言い出すと水原は掛け布団をめくって、俺のズボンに手をかけて――




「って、ちょっと待ったぁ!」


「嫌よ、もう待たない! 観念して、お縄に付きなさい!」


 悪代官か俺は!




 いや、この場合、襲われているのは俺だから、悪代官役は水原で、俺は「よいではないか」「あーれー」の芸者ポジってところか。


 などと、俺が現実逃避じみた配役を考えているうちに、ドスンバタンと音を立てながら、水原は俺のズボンを下着ごと下げてしまった。




 薄闇の中で露わになる、硬く隆起した俺の肉棒。


 その真上で水原が美脚を開き、股下に肉棒をくぐらせる。


 後ろを向いて、寝ている俺に背中を預けて。さながら掛け布団のように俺の上に乗った水原は――そのまま、ぴったりと太ももを閉じた。






 ぐにゅうっ♡♡♡♡♡


「はうあぁっ!!?♡♡♡♡♡」


「ああもう、最初からこうしていればよかったっ……!」






 ムードもへったくれもないけど……この体勢は、やばい!




 水原の太ももに肉棒が挟み込まれている! 彼女の脚線美の、最も柔らかくて甘い部分に、俺の下半身が捕まってしまった。




 下着の真下、窮屈に閉じきった水原の腿の間で、俺の肉棒が生々しく脈打っている。ほんの僅かな身じろぎだけで、弾力のある柔らかさと白肌の吸い付きがペニスに絡みついて、頭がおかしくなりそうだ。


 それに飽き足らず、太ももの刺激に動転して宙を泳ぐ俺の両腕を、水原は掴むと、なんと自身の胸元に導いた。


 下着の裏に両手を入れさせられ、彼女の生乳を揉まされる。手の平に豊満な揉みしだきの弾力が伝わってきて、劣情を煽る!






「これっ……♡♡♡♡♡ すっご……♡♡♡♡♡」


 両手と肉棒に感じる濃密な幸福感に俺は悶えた。


 水原の濃密な甘い香り、巨乳の揉み心地、太ももへの射精欲。


 もう辛抱たまらないと、いよいよ俺が自分からも胸を揉み、腰を振り始める――寸前で。






「ねぇ……私の体、好き?」


「へ?」






 考えてみれば、今まで俺が聞かれたことのない質問を水原はした。


 みずから女体を誇示したり、艶めかしさで誘惑したりする言葉を、普段の水原は口にしない。そういうことを露骨にする性格じゃない。


 瑠夏ちゃんあたりは、水原に対抗意識を燃やして、豊満な胸とか脚線美とか、体型によるアピールを俺にしたことはある。比して水原は、普段着とか自然体のメイクとかの良識の範疇で、さりげなく色香を魅せるタイプだ。


 だから――






「心が好きかとか、性格が好きとか、それは今は置いといて……私の体『も』好きかって、そう聞いてるのよ」




 腕の中にある艶めかしい肢体の感想を、本人である水原が尋ねてきて。


 それが意外で、俺は虚を突かれて思考が鈍った。




「気遣いとかいらないから、正直に答えて。……どうなの?」




 ちょっぴり意固地な玉音の囁きに、鼓膜をついばまれる。


 偽証を禁じられる錯覚に絡め取られた俺は、つい、




「あ、ああ。俺は水原の体も好きだ」


 と、バカ正直にオウム返ししてしまった。




 言ってしまってから、俺は自分の浅慮に気づく。


 慎重に言葉を選ぶべきだった。えらく気分の高揚している水原を腕に抱きながらの、素直すぎる好意の発露は、




「――ふふ♡♡♡♡♡」


 水原の淫らな嗜虐心への、起爆剤となる。






 ――すりすり♡


「はうっ!?♡♡♡♡♡」


 包み込んでいる肉が、もぞもぞ蠢く感覚。


 肉棒を包んだままの太ももに、もじもじと上下によじられた。




 ――ぱん、ぱん、ぱんっ♡♡♡


「ちょ、待っ♡♡♡♡♡」


 水原が上下に腰を振る。


 極上の肉付きの太ももが、肉棒全体を圧迫しながら擦り上げる。


 緩やかな上下動を助走として――






 ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅ~~っ!!♡♡♡♡♡


「う、うああああああああぁぁぁっ!!?♡♡♡♡♡」


 ――水原は淫らに激しく、肉棒を太ももで激しくこね回してきた!




 頭の中が「気持ちいい」一色に染め上げられる!


 柔らかい柔肌に矢継ぎ早に肉棒を攪拌される天国状態。俺が腰を浮かせるときめ細かい白肌が肉棒に吸い付いて、腰が下がると内股と太ももの弾力が肉棒を優しく圧し潰す。


 水原の太もも責めは凄まじく、俺はいてもたってもいられなくなり、ブラの裏で掴みっぱなしになっている生乳を揉み始めてしまう!






 もみゅもみゅもみゅもみゅもみゅもみゅっ♡♡♡♡♡


 ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅっ♡♡♡♡♡


「ご、ごめん、水原っ♡♡♡♡♡ もう、我慢できな♡♡♡♡♡」


「具体的にっ、私の体のどこが好きなのっ?」


 こんなときに一体なにを聞くんだ水原は!!?






 下腹部に叩きつけられる臀部の肉感、揉みしだく両手に伝わるボリューム感、閉じきった太ももの狭間をペニスで往復する多幸感。


 荒ぶる淫らな音がすごいことになっている。よりにもよってこのタイミングで、水原は俺の獣欲を深掘りする質問をした挙げ句、






「はやく答えないと、やめちゃうわよっ?♡♡♡♡♡」


「っっっっっ!!?」


 あまりに酷い脅迫。


 選択肢は無い。俺は水原に溺れながら、性欲の内容を開示した。






「み、水原の、目が好きだっ♡♡♡♡♡」


「んっ♡♡♡♡♡ どうしてっ?♡♡♡♡♡」


 もみゅもみゅもみゅもみゅもみゅもみゅっ♡♡♡♡♡


 ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅっ♡♡♡♡♡


「まなざしが綺麗で、まっすぐでっ! ふとした時に見つめられるだけでドキッとして――あ、出ちゃう♡♡♡♡♡ 出ちゃうっ!♡♡♡♡♡」






 長持ちする筈がなかった。


 両手で覆いきれないほどの双丘にしがみつきながら、水原の太ももにペニスを激しく捏ね回されて。


 俺はビクンと痙攣し、腰を上げて、水原にがっちり抱きつきながら――






 もみゅもみゅもみゅ、もぎゅ~っ♡♡♡♡♡♡♡


 ばちゅばちゅばちゅ、ばっちゅんっ♡♡♡♡♡♡♡


 むぎゅ~~~~~~~~~~~っ♡♡♡♡♡♡♡


「でるうぅぅぅっ♡♡♡♡♡♡♡」




 ごぼびゅっ!!!


 ぶびゅっ!! びゅーっ!! がくがくっ!!


 どびゅうううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!!!!


「「~~~~~~~~~~~っ!!♡♡♡♡♡♡♡」」






 天上の至福に思考を持っていかれる。


 水原の腿内に白くて暖かい体液を解き放ってしまう。


 丸みを帯びた双丘に俺の指が一本残らず食い込んで、乳房の揉み心地を記憶する。豊満で、メロンみたいだ。




 水原で、イッてしまった。


 想い人に、性欲をぶつけてしまった。


 彼女から誘惑されたとはいえ、正気とは言い難い状態の水原の、その躰の艶めかしさに屈してしまった。




 満たされる恍惚感と同時に、湧き上がる背徳感。


 目を回しながら、俺は悩む。これ、後からどう収拾をつければ――






 ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅっ♡♡♡♡♡


「――!? ちょっ、水原!?♡♡♡♡♡」


「他には?♡♡♡♡♡ 私の体の、他にどこが好きっ?♡♡♡♡♡」






 悩む時間? そんなものは無い。


 宙を舞い踊る長い黒髪、艶めかしく肉棒をシェイクする太もも。


 なんと水原は、射精したばかりの俺の肉棒を腿内で扱いてきた挙げ句、俺の性欲の深掘りを続行するという暴挙に出た。


 鼻腔を舐める女の熱に、淫らに乱れる水原の乗られ心地に、性衝動は再燃を余儀なくされる。


 乳揉みし、俺からも腰を振ってしまう!






 もみゅもみゅもみゅもみゅもみゅもみゅっ♡♡♡♡♡


 ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅっ♡♡♡♡♡


「きもちい♡♡♡♡♡ きもちいい~!!♡♡♡♡♡」


「あぁんっ♡♡♡♡♡ っ、ねえ早く答えて! でないと、やめちゃうわよっ♡♡♡♡♡」


「水原の髪が好きっ!♡♡♡♡♡ いい匂いで、ふわっと風になびいてっ♡♡♡♡♡ レンカノの初デートの時も、綺麗だなって――あ、またっ♡♡♡♡♡」






 水原の腿内で、愚息が歓喜に跳ね上がる。


 男の誰もが彼氏に嫉妬するS級美女を抱きまくらにして、下着の裏に手を入れて巨乳を揉みながら、腿内射精――二度目。






 もみゅもみゅもみゅもみゅもみゅもみゅっ♡♡♡♡♡♡♡


 ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅっ♡♡♡♡♡♡♡


「もう、だめええぇぇぇっ♡♡♡♡♡♡♡」


 ぐぼびゅっ!!! びゅぶっ!!

 

 どびゅうううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!!!!






 交差する窮屈な太ももの中で、肉棒が激しく脈打つ。


 腰をピンと跳ね上げ、水原の臀部を股間で持ち上げる。


 二度の射精に伴い、ペニスは体液によってぬめりを伴い、必然的に挟み込む水原の太ももにもヌメヌメが移っていた。




(き……も……ぢ……い……♡♡♡♡♡♡♡)




 思考が蕩ける中、はっきりと知覚できたのは、大きな生乳を揉む両手の心地よさと、水原の体温と、肉棒に包む太ももの天国だけ。






 ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅっ♡♡♡♡♡


「――!? うああぁぁぁぁっ!?♡♡♡♡♡」


「さあ、他には?♡♡♡♡♡ 私の体の、他にどこが好きっ?♡♡♡♡♡」


 まだ聞いてくるの!?






 続行される腰振りで、腿内でまた肉棒が溺れ狂う。


官能に溺れて機能不全をきたいしている俺の思考は、ここでようやく、今の水原の心境を推測するに至った。


 たぶん水原は、初めての淫らな行為にドハマリしている!

 

 揉まれた胸に痕が残るかもとか、臭いが染み付くかもとか、そんな懸念はおそらく今の水原の頭に無い。




 そして、そんな水原の暴走に歯止めをかける手段は――無い!!


 俺では今の水原を止められない。惚れた弱みというやつだ。


 水原は俺の想い人で、そんな彼女が淫らな行為に熱中する相手が俺だという事実は、あまりにも最高すぎるから……!






「水原の、背中が好きっ♡♡♡♡♡ 普段は大人びていて、だけどふと寂しそうに震えるときがあって、守りたくなって♡♡♡♡♡ ……なに言ってんだ俺!?」


 もみゅもみゅもみゅもみゅもみゅもみゅっ♡♡♡♡♡


 ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅっ♡♡♡♡♡


「ひゃうあああっ♡♡♡♡♡」


「んふふ、なんだか楽しくなってきた♡♡♡♡♡ 三回目っ!♡♡♡♡♡」


 どびゅうううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!!!!




「水原の、細い腰が好きっ♡♡♡♡♡ 学生服デートのプリクラで抱き合ったとき、腕の中にすっぽり収まって心地よくてっ♡♡♡♡♡」


 もみゅもみゅもみゅもみゅもみゅもみゅっ♡♡♡♡♡


 ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅっ♡♡♡♡♡


「また、でりゅっ♡♡♡♡♡」


 どびゅうううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!!!!


「……なかなかデリケートゾーンを言ってこないわね」






 腰の次は鎖骨、その次は首筋、その次は声、さらに次は指先。


 絶頂のたびに俺は水原の体のどこが好きかを自白させられる。靴下から脱ぐ野球拳よろしく、性的な部分を言うのだけは避ける。


 艶めかしく臀部を叩きつけられる毎に思考が白く明滅する。たわわに実った胸を揉みながら腿内射精を繰り返す。




 快楽天国を突っ走りながら、語彙力のネタを燃やしていく。


 おっぱいだのお尻だの太ももだのいった、エロい部分を言うのだけは避ける。




 だけど、俺の語彙力は無尽蔵では当然なく。


 やがて必然的に来る――ネタ切れの時。






「はぁ、はぁ♡♡♡♡♡ 他には、私の体の、どこが好きっ?♡♡♡♡♡」


「ほ、他には……ええ、と……」


「言いなさいよっ♡♡♡♡♡ 例えば、ずーっとあなたが鷲掴みにして揉みしだいているのは、私の体の、どこの部分っ!?♡♡♡♡♡」


「あうっ♡♡♡♡♡」






 だいぶ意識に靄がかかってきた。


 俺の上に仰臥する水原も息を切らしている。


 艶めかしく肉の音を鳴らしながら上下していた水原の臀部が、その勢いを落としている気がする。彼女も疲れているのだろう。




 それでも、彼女の肉体の抱き心地、汗ばむ柔肌の匂い、肉棒を挟む太ももの圧迫が緩むことはなく。


 もはや癖になったかのごとく、両手は水原の豊満なメロンを揉み続けて、その至福に俺は脳を焼かれるばかりで。




 だけど、粘る。


 好きな人にみっともない所を見せたくないという、欠片ほどに残った矜持が、俺を土俵際で踏みとどまらせる。




 間違っても、水原のおっぱいが好きだなんて。


 たとえ水原自身が望もうが、俺の口から言うだなんて――






「そろそろ、いい加減言わないと、もう二度とシテあげないわよ?♡♡♡♡♡」


「っっっっ!!??」


ダメだもう今すぐ言うしかない!!






 矜持は、あっさり瓦解した。


 さんざん快楽を教えてから、もう二度と味わえないかもなんて匂わせるなんて、それはあんまりだろ水原~!






「水原の、おっぱいっ♡♡♡♡♡ おっぱいが好きっ♡♡♡♡♡ 大きくてっ、目のやり場に困って♡♡♡♡♡ こうして揉んでいると、もう手放せる気がしな、あ、ああああああああっ♡♡♡♡♡」


 もみゅもみゅもみゅもみゅもみゅもみゅ!!!♡♡♡♡♡♡♡


 ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅ!!!♡♡♡♡♡♡♡


「はげしいっ♡♡♡♡♡ 水原、はげ、ひっ♡♡♡♡♡」


「やっと言ってくれた♡♡♡♡♡ ふふ……イッていいよ♡♡♡♡♡」


 どびゅうううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!!!!






 みっちり閉じた腿内で達する。衝動的に水原の豊満な胸を鷲掴みにする。


 柔らかく股間を磨き潰され、天上の至福に目眩を催す。




 とうとう俺は水原の胸が好きだと自白してしまった。直後、まるでラストスパートのように、水原の腰つきが艶めかしくなった。


 より激しく、より淫らに。腰がひねって、くねって、上下して。


 肉棒が激しく扱かれ、柔肌に吸い付かれ、捏ね回され。




 腿に挟まれた肉棒が耐えられるはずもなし。精を搾り取られたのは当然の帰結だった。


 俺の上で踊る水原は、まるで天女を思わせるほどに艶めかしく、そして綺麗だった。 






 ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅ!!!♡♡♡♡♡♡♡


「っ!!?♡♡♡♡♡ 水原っ♡♡♡♡♡ まだ、イってる♡♡♡♡♡ イッてる途中だってば♡♡♡♡♡」


「まだ、あるでしょ♡♡♡♡♡ おっぱいだけじゃないでしょ!♡♡♡♡♡」


 ひえええ~~~~~!!






 どうやら水原は、俺から精のみならず心の中身までもとことん搾り取る気のようだ。その気合の入りようが腰つきに現れている。


 やっぱり、おっぱいが好き、と明言したのはマズかった。燃料を投下したのと同義だ。水原の淫らな炎が、マキシマムまで燃え盛る。




 ああ、でも。


 そんな水原の色香にあてられて、まだ俺は彼女の豊かな胸を背後から揉んでいる。もはや手の中にたわわな弾力が無いと安心できない。


 寝ている所にあお向けに乗られる、女体抱きまくらの中毒になった。


 太ももに犯されながら巨乳を揉みこむ甘露に、慣れ親しんでしまう。






「水原の、お尻が好きっ♡♡♡♡♡ 小ぶりで、引き締まっていてっ♡♡♡♡♡ 股間にお尻を押し付けられると、柔らかい圧迫がすごくてっ♡♡♡♡♡」


 もみゅもみゅもみゅもみゅもみゅ♡♡♡♡♡♡♡


 ぐりぐりぐりぐりぐり♡♡♡♡♡♡♡


「ああああっ!?♡♡♡♡♡」


「わっ、本当♡♡♡♡♡ すごく悦んでる♡♡♡♡♡」


 どびゅうううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!!!!






 豊かな胸に掴まりながら、肉棒を臀部にぐりぐり圧迫されて射精。


 太ももコキから奇をてらった尻コキにイカされた。






「水原の、太ももが好きっ♡♡♡♡♡ 脚線美が綺麗で、目に眩しくて♡♡♡♡♡ なのに肌触りはムチムチしてっ、やわっこくて、こんなの反則っ……♡♡♡♡♡」


 もみゅもみゅもみゅもみゅもみゅもみゅ!!!♡♡♡♡♡♡♡


 ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅ!!!♡♡♡♡♡♡♡


「きもちいいぃぃぃっ……!!♡♡♡♡♡」


「また来るわねっ♡♡♡♡♡ きてっ♡♡♡♡♡」


 どびゅうううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!!!!






 引き続き胸を揉みしだきつつ、太ももに挟み直されて腿内射精。


 もう射精しすぎて、腿内がドロドロで。肉棒を挟む水原の太ももと、俺の肉棒の、境目がどこにあるのやら。


 頭の中がめちゃくちゃだ。






「ふぅ、満足……あんっ!?♡♡♡♡♡」


「水原の、唇が好きっ♡♡♡♡♡ ただでさえ水原は美人でっ♡♡♡♡♡ 顔を突き合わせるたびに、キスしたいって欲求がもたげて……またイクッ♡♡♡♡♡」


「え、ちょっとちょっと!?」


 もみゅもみゅもみゅもみゅもみゅもみゅ!!!♡♡♡♡♡♡♡


 ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅ!!!♡♡♡♡♡♡♡


「でるうぅぅぅ~~っ♡♡♡♡♡♡♡」


「っ……!♡♡♡♡♡♡♡」


 どびゅうううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!!!!






 さ、さすがに、もう限界。疲れた。


 豊満な乳房に食い込んでいた俺の手の指が弛緩して、ばいんと弾力に押し返される。


 目が回りすぎて、視界の焦点が合わない。水原を抱きまくらにした状態のまま、脱力して動かなくなる。




 気持ちよかった。気持ちよかった、けれども。


 これ以上はもう、動く元気が……






 ……あれ?






 最後のあたり、水原の方からは責めていなかったような。




 俺だけが腰を振って、胸を揉んで、貪るように水原の肢体にがっついて――




「っ、お、俺はなんてことを……!」


 背筋が凍る。


 自分の顔から血の気が引いていくのがわかった。




 勢いあまって、水原の躰に、一方的に自分の欲望をぶつけてしまった。水原は途中でやめようとしていたというのに。


 やらかした失態の重みに震える。俺は掴みっぱなしにしている水原の乳房を手放そうとするが、その寸前で、




「ねぇ」


「はいっ!?」


 突如、水原が振り向いた。




 彼女は仰向けからうつ伏せに、対して下にいる俺はあお向けで。つまり今の水原は、なかば俺を押し倒しているような姿勢になる。


 顔を近づけて、美貌を近づけながら水原が言った言葉は、






「お疲れさまのキス、していい?」


「……へっ?」






 てっきり怒られるとばかり俺は思っていたのに。


 労るような優しいまなざしが、疲れた心体に染み入る。唇が好き、と最後に俺が絞り出したのを推し量るような甘い蜜。


 その気遣いが嬉しい。惚れた女の整った顔立ちに、濡れた瞳に、キスの許可を聞かれて、拒めるはずもない。






「よ、よろしくお願いします……?」


「ふふ、なんで敬語なのよ」


 くすりと微笑を挟んでから、顔同士の距離を水原は詰めた。


 ちゅ、と唇が覆いかぶさる。




 もう、キス以上のことを散々やってしまったせいか、最初のキスほどの衝撃は俺の心に来ない。


 だけど代わりに、互いに肌を重ね合いながら口付けする温かさと密着感で、深い愛おしさと安心感が押し寄せてきて。






 ぎゅ~~~~~~~っ……♡♡♡♡♡

 

「「んんんん……♡♡♡♡♡」」






 至福の恍惚が、意識に桃色のモヤをかける。


 抱き合う体温が、唇の感触が、体感時間をゆったりと遅くする。




 次に目を覚ました時、正気に戻った水原がどんな顔をするのか。そのとき俺は彼女に、どうお詫びすればいいのか。


 この上なく幸せな心地よさの中、立ちはだかる問題になにも答えを用意できないまま、俺の意識は薄れていく。




 ――私に溺れてくれて、ありがと。




 薄目で見た水原の瞳が、そんなことを言ったような。


 そんな都合のいい解釈を最後に、俺は意識が途絶えて、寝落ちした。






 * * *






 体液の匂いがしない。


 昨夜、お互いに愛液やら精液やら汗やらを室内に散らせすぎて、鼻が慣れたせいだ。


 布団でいまだ目を閉じてすやすや寝ている和也を横目に、水原千鶴は一足先にその身を起こしていた。窓から早朝の薄明かりに肌を照らされる男の寝顔に、長い黒髪を垂らしながら、女はぽつりと一言。




「とんでもないこと、しちゃった……」




 独白が始まる。




「……」


「不思議。後ろめたさとか、余韻の後味の悪さとかはあるのに……後悔だけは、ぜんぜん無い」


「スキャンダルになる危険を冒してでも、恋愛に走る女優の気持ちが、今なら少しだけわかる気がする」


「……」


「……」


「……ねえ」 


「告白の返事もしていないズルい女に、それはまだ早いって、あなたは言うかもしれないけど」


「多分……私、あなたが相手なら、処女すら捧げても構わなかったのよ?」


「……」


「……」


「…………」




 すやすや眠る和也の頬を水原は指でつんつん。


 もたげる欲求に身を委ねて、水原は意識のない和也に唇を重ねようとして、途中でやめた。さすがに自重するべきだと。




「着替えよっと」




 立ち上がり、部屋を出る。


 朝支度のために去った水原が、このとき顔を満足気にほころばせていたことを、寝ている和也はもちろん知る由もない。


◆END

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