8.マネキンになるお仕事【梱包箱詰め編】 (Pixiv Fanbox)
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本物のマネキン人形と一緒に並べられた私の横では、次々に大きなビニール袋を全身に被せられたマネキン人形たちが梱包されていく。
大きなビニール袋が外れないように足首と膝、腰、胸、そして首にガムテープでビニール袋がしっかりと固定された後、白い緩衝材の入った木箱へと入れられ、さらに上から緩衝材をぎっしりと詰められる。
緩衝材が漏れ出さないように木箱に蓋をして、木箱の蓋を電動ドリルで10箇所ほどネジ留めし、その上から取り扱い注意とでも書かれているのだろう英語表記の幅の広いビニールテープが木箱に巻きつけられていた。
こうして木箱の中に梱包されたマネキン人形たちはコンテナの中に立てて並べる形で積み込まれていくのだった。
これから、私もあのマネキン人形たちと同じ様に梱包されるのだと思うと怖くなってきた。
ビニール袋を被せられ、体中にガムテープが巻かれると呼吸できないのではと怖くなってきた。
私はマネキン人形を演じているだけの人間なのだ、本物のマネキン人形とは違う。
ビニール袋を被せられ首周りにガムテープを巻かれたら苦しくて仕方ないだろう。
そして、それが終わればそのまま木箱の中の隙間ない緩衝材に埋もれる。
さらに見えなくなるまで緩衝材を掛けられて木箱の蓋がされてしまう。
ここでも呼吸はもちろんだが窮屈に圧迫されてしまうのではないかと心配になってきた。
そんな木箱に蓋をされて真っ暗な中、木箱が簡単には開かないように電動ドリルを使ってのネジ留め。
音を聞いているだけでも怖くなってくる。
そして、どんなに苦しくてもキツくても、マネキン人形にされた今の私には助けの声を上げることも、木箱を叩くこともできない。
そしてトドメの英語の文字の書かれたビニールテープを巻きつけられるのだ。
不安しかない。
撮影が始まって、すぐに刑事役の人が私の入った木箱を見つけてくれるのだろうか?
そのあたりはきっと印をつけて見つけてくれると信じるしか仕方がなかった。
全ての準備が整ってから撮影が始まるまでおよそ20〜30分は木箱に詰められたままになることを覚悟しなければならないだろう。
そんな中、私の番が回ってきた。
私を梱包箱詰めするスタッフは先ほどまでのマネキン人形と同じ調子で私の梱包を始めた。
大きなビニール袋を被せるとガムテープを巻きつけていく。
徐々にガムテープを巻き付けるのが顔の方へと迫ってくる。
必然、呼吸は速くなりビニール袋は私の呼気で曇り始めた。
少し呼吸は苦しくなったがなんとか呼吸はできた。
そんな私の体が横にされて事前に緩衝材の敷き詰められた木箱の中へ。
柔らかい感触を背中側に感じながら、仰向けになる。
“まるで、棺桶みたい”
そう思っていると、私の上に白い緩衝材が掛けられていく。
足下からどんどん体、そして顔へと迫ってくる。
呼気で曇ったビニール袋の上にも緩衝材が掛けられて、薄らと見えていた視界が完全に白一色となった。
そして木箱に蓋がされる。
私の白一色だった視界は闇に包まれた。
全身の圧迫感が増し、呼吸も苦しくなる。
そんな私にダメ押しするように、電動ドリルの音が聞こえてきた。
『キュルキュルキュルキュル、ギュ、ガッガッ!』
木箱の蓋と木箱がしっかりと固定される音が繰り返されるたびに私の体は圧迫され、呼吸が苦しくなってくる。
“怖い、怖いよ!助けて!お願い!”
私がいくらそう思っても口にできないし、体を動かしての意思表示もできない。
私にできることといえば、恐怖と圧迫に耐えながら生きるための酸素を貪るしか他にできることはなかった。
思っていた以上の恐怖に気がおかしくなりそうになりながらも私は耐えた。
木箱の外ではビニールテープが巻きつけられた後、木箱が持ち上がりコンテナに積み込まれているようだった。
『ギィー!ガチャガチャ、ガタン』
重たい金属音が周りから聞こえてきた。
おそらくだが、私の積み込みが終わったのでコンテナが閉じられたのだろう。
“そこまでしなくても!”
私はそう思いながらも撮影が早く始まることを願うより他なかった。
つづく