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会議室に到着すると、机や椅子は壁際に移動され、代わりにそこにはマットが敷かれていた。

俺と理央ちゃんが休憩できるように冴子さんが配慮してくれたのだろう。

俺と理央ちゃんは着ぐるみから出ると、マットに横たわった。

マネキン人形の様な肌の露出の一切ない姿で。

どちらからともなく抱き合ったのだが、会議室の扉の鍵を掛けていないことに気づいて俺はすぐに閉めにいった。

改めて理央ちゃんと抱き合う。

ショーの時は暑くて大変だけど、休憩時間に理央ちゃんとこうしていられるなら最高だと思った。

お互いを労うように抱き合って少し落ち着くと、簡易的に置かれた小さな冷蔵庫に気がついた。

その冷蔵庫の扉には[自由に飲んでね]と冴子さんの直筆のメモも貼ってあった。

2人で黒光りするノッペラボウのマスクを取って、水分補給をし笑顔になった。

マットの上には寝袋も置かれており、ショーの直後は暑くて堪らないが、時間が経つと体が冷えてくるための配慮だと思った。

ここで昼寝をして過ごしていいということだろう。

水分補給し、少し体の熱が取れた俺は体が冷える前に寝袋に入った。

「お邪魔しまーす!」

寝袋は2つ用意されているのに理央ちゃんは俺の寝袋へと入ってきた。

「もうぉ理央ちゃん、狭いよ!狭いから抱きしめるしかないね」

俺はそう言ってラバースーツの体を理央ちゃんに擦り付けるようにして抱きしめると、理央ちゃんも俺に擦り寄ってきた。

“時間が止まればいいのに!”

俺はそう思いながら理央ちゃんをギュッと抱きしめた。

これから大変なショーがしばらく続くが理央ちゃんと一緒なら乗り越えられそうな気がした。

「理央ちゃん、俺少し眠くなってきた」

「私も… 」

そう言って2人で抱き合った。

数ヶ月後、ピュアフルーツのステージショーは本編のアニメと共に大盛況のうちに惜しまれながら幕を閉じた。

毎週土日、時には祝日も1日2回のショーが行われ、出演する方も大変だが、それ以上に着ぐるみの劣化が激しかった。

終わり近くにはスタッフが都度修理して着るほどになっていた。

そんな着ぐるみのことも考えるとピュアフルーツのショーは終わるしかないのだと思った。

始めこそ大変だったが、俺は理央ちゃんと1つの着ぐるみに入って操演するのを気に入っていた。

それは理央ちゃんもまた同じだった。

プライベートでももちろん一緒に過ごすが、2人で同じキツイ境遇を共有することで2人の関係は深まったのだと思う。

ピュアフルーツのステージショーが終わった翌週に俺と理央ちゃんは冴子さんに呼び出された。

いつも休憩していた会議室へ呼び出された俺と理央ちゃんに早速本題に入る冴子さん。

「2人は大学2年生だよね?」

「はいそうです」

「来年もまだステージショーに出てくれる?」

ピュアフルーツが好評だったので、この春からも継続するのだろうか?

だが、着ぐるみが… 。

そう思っていると、俺以上にピュアフルーツを愛する理央ちゃんが口を開いた。

「ピュアフルーツを継続するんですか?」

理央ちゃんの期待を込めた問いに冴子さんは首を横に振った。

明らかに肩を落とす理央ちゃんに冴子さんが言った。

「ピュアフルーツではないけど、ピュアフラワーって知っているかなぁ?」

理央ちゃんが顔を上げて冴子さんを見て言った。

「今度はピュアフラワーのステージショーをやるんですか?」

前のめりになり冴子さんに食い入るように尋ねる理央ちゃん。

「うん、そうよ」

理央ちゃんに気圧された感じで冴子さんは答えた。

置いてけぼりの俺に冴子さんは説明を始めた。

ピュアフラワーはピュアフルーツの後継作品で、植物の怪人が2体登場し、その怪人2体から植物の怪物を毎回作り出し、3人のピュアフラワーと戦うストーリーだという。

もちろん、ステージショーなので作り出される植物の怪人は毎回同じとなる。

基本的にはストーリーや殺陣もピュアフルーツと似通っているが、そこにはいろいろな大人の事情もあるので汲んで欲しいとのことだった。

俺と理央ちゃんは顔を見合わせて言った。

「「ステージショー引き続き頑張ります‼︎」」

俺と理央ちゃんは冴子さんと握手を交わした。

俺と理央ちゃんの着ぐるみの仕事はまだ、まだ終わらない。

おしまい

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