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瑠香ちゃんの会社ルール

朝の光がカーテンの隙間から差し込む。

今日はいつもより早く目が覚めた。

身体を起こすと同時に、ガチャリと寝室のドアが開いた。


「あれっ? 瑠香ちゃん、おはよう。今日は一人で起きれたんだ。えらいね!今日からまたお仕事だね」


(仕事……会社員として……でも、もう俺はただの会社員じゃない……)


胸の奥がざわつく。

年末から正月にかけて、毎日瑠香として過ごした日々が脳裏をよぎる。

愛は俺の顔を覗き込み、にこりと微笑む。


「もちろん、会社では藤岡康介として頑張ってね。でも、私が決めたルールを守ってもらうからね」


彼女の指が、パジャマの上から俺の胸を軽く撫でる。


「まず、当然だけど……ブラとパンツは毎日着用で出勤。外しちゃダメだよ?

女の子なんだから、ノーブラで外に出るなんてありえないよね」


心臓がどくんと鳴る。


「……う、うん……」


声が自然とか細くなる。

愛は満足げに頷きながら続ける。


「トイレは男子トイレでいいけど、小便器は使わず、必ず個室に入ってすること。ナプキンが入った小さめのポーチを持って行くのも忘れずにね。意味なく持っていくだけだけど……それが瑠香ちゃんのルールだから」


「ナプキン……なんでそんな……」


理由を聞こうとした俺の声を、愛が優しく遮る。


「瑠香ちゃんは女の子だからね」


それ以上は、言葉が出てこなかった。


「椅子に座る時は、常に脚を揃えること。スカートじゃないけど、気持ちはいつも女の子らしくね」


愛の声は優しいのに、有無を言わせない響きを帯びている。

俺はただ、こくりと頷くしかなかった。


◆


出勤準備を終え、鏡の前に立つ。

スーツの下に、薄いピンクのレースブラとパンツ。

ブラのストラップが肩に食い込み、パンツのレースが股間に優しく擦れる。


(これを一日中……会社で……)


「瑠香ちゃん、気を付けて行ってらっしゃい。くれぐれも約束を守ってね!」


俺は何とか作り笑いをして、家の外に出た。

通勤電車の中、座席に腰を下ろす瞬間、脚を揃えることを強く意識する。

周囲のサラリーマンたちの中で、俺だけが特別なものを身につけている。


オフィスに到着し、デスクに着く。

同僚たちが新年の挨拶を交わす中、俺は自然に脚を揃えて座った。


(いつも通り……普通に振る舞わないと)


隣の女子社員の吉川さんが何気なく話しかけてくる。


「藤岡さん、今年もよろしくお願いします」


「……う、うん。こちらこそ」


声が少し上擦ってしまう。


「藤岡さんは年末年始は何して過ごしたんですか?」


「あぁ……嫁と二人で、家にいる事が多かったかな……」


「どこに行っても混んでますもんね。家で何してたんですか?」


もちろん言えるわけがない。

女の子として過ごすことを強要され、女子力を上げるために散々指導を受けていたなんて……。


「あっ……VODでドラマとか見てたかな……」


「お正月休みなんて、そんなものですよね~」


会話をしていると、ふとトイレに行きたくなった。

ルールを思い出し、カバンからナプキンが入った小さめのポーチを取り出す。


男子トイレに向かう足取りが、重い。



個室のドアを閉め、鍵をかける。


ズボンを下ろすと、ピンクのレースパンツが露わになる。

ナプキンの入ったポーチを横に置き、用を足す。

個室の狭い空間で、自分の下着姿を強く意識する。


(会社の中で……こんな格好で……)


羞恥がじわじわと全身を包み、頰が熱くなる。

用を終え、ポーチを手に取る。


(男子トイレでナプキンが入ったポーチの忘れ物があったら……それこそ大問題になりそう……)


想像しただけで、背筋が冷たくなった。


◆


午後になり、デスクでパソコン作業をしていると、愛からメッセージが届いた。


『瑠香ちゃん、ちゃんとルール守ってる? 脚は揃えてる? ナプキン持ってトイレには行ってる?』


返信を打つ指が小さく震える。


『……うん、守ってるよ……』


すぐに返信が来た。


『瑠香ちゃんの周りの人たちも疑問に思ってるかもね。

“なんでトイレに行くときにポーチ持って行くんだろう”とか

“なんかブラ紐みたいのがある”とか……』


羞恥を煽られ、スマホを持つ手に汗がにじむ。


(もし、周りの社員が気付いていたら……俺が女の子の下着を着けて、ナプキンが入ったポーチを持ってトイレに行ってるなんて……)


想像しただけで、耳まで熱くなる。

胸の奥がざわつき、息が浅くなった。


——退社時間になり、オフィスを後にする。

電車の中でも再び脚を揃え、ブラとパンツの存在を強く意識する。


レースの布地が肌に擦れるたび、今日一日のルールが思い出されて体が熱くなる。

家に近づくにつれ、愛の待つ部屋を思い浮かべる。


玄関のドアを開けると、愛が優しい笑顔で出迎えてくれた。


「おかえり、瑠香ちゃん」


彼女は俺のスーツの襟に手をかけ、耳元で甘く囁く。


「今日はちゃんとルール守れた?あとで詳しく聞かせてね。とりあえずお風呂入っておいで。瑠香ちゃんが喜びそうなこと、思いついちゃったんだよね~」


彼女の瞳が、優しく、しかし深く俺を捉える。


(喜びそうなこと……?)


胸の奥がざわつく。

甘い恐怖と、わずかな抑えきれない期待が混じり合って、吐息が少しだけ乱れた。



【第5章につづく……】

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