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<あの変態教師が私を堕とそうとしているのに、婚約者は気づかない #07>

吉野は荒い息を吐きながら、岩田の体の上に崩れ落ちるように伏せていた。全身の力が抜け、指一本動かすことさえできなかったが、つい先ほど全身を駆け巡った激しい快感の余韻は、そう簡単には消えなかった。汗で湿った体、彼の精液と混じり合ってぐちょぐちょになった股間、そして気だるく弛緩した精神まで。すべてが、彼女が後戻りできない一線を越えてしまったことを証明していた。岩田は満足げな溜息をつき、彼女の濡れた背中を掌でポンポンと叩いた。

「くぅ……たまんねぇ女だ。最初は猫かぶってるみたいだったが、一度味を占めたらチンポをトロトロに溶かしちまうな」彼は吉野の耳元でゲラゲラと笑った。吉野は彼の言葉に何の返事もしなかった。いや、できなかったのだ。彼の言う通りだったからだ。嫌悪し憎んでいた男の体の上で、彼女は生まれて初めて味わう極上の快楽に溺れていた。その事実が彼女をさらに惨めな気持ちにさせたが、同時にその惨めさの中で芽生える倒錯的な興奮を否定することもできなかった。

岩田は吉野の体を横に転がすように押しのけ、ベッドから立ち上がった。彼は煙草を一本くわえて火をつけ、ベッドにだらしなく横たわっている吉野を上から下まで舐めるように見回した。汗と精液で汚れた体、激しい情事の痕跡が残る紅潮した肌、そして快感の余韻に浸り呆けた目つきまで。彼はその姿に満足げな笑みを浮かべた。「ほら、もう起きろ。朝から一汗かいたら腹が減った。シャワー浴びて出かける準備しろ。朝飯は外で食うぞ」

彼の命令に、吉野は渋々体を起こした。足に力が入らずふらついたが、彼女は浴室に向かってよろめきながら歩いていった。浴室の鏡に映った自分の姿は無残だった。乱れた髪、滲んだ化粧、そして一晩中彼に責め立てられた痕跡がありありと残る体。だが、最も変わったのは彼女の目つきだった。昨日までは恐怖と羞恥心に満ちていた瞳は、今や快楽に濡れ、とろんと弛緩していた。彼女は自らの変化に戸惑い恐怖を感じたが、同時にその変化を受け入れている自分に気づいた。

シャワーから降り注ぐ熱い湯を浴びながら、吉野は一晩中自分の体を汚した痕跡を洗い流した。だが、体に刻まれた感覚と記憶まで洗い流すことはできなかった。むしろ熱い湯は敏感になった肌を刺激し、昨夜の記憶をより鮮明に蘇らせた。彼女はシャワーを終え、岩田に命じられた通り、彼が買い与えた別の下着を取り出して身につけた。真っ赤なレースのブラジャーとガーターベルト、そして網タイツ。清楚な教師、藤井吉野の姿はもうどこにも見当たらなかった。鏡の中には、派手で淫らなランジェリーを纏った、見知らぬ女が立っているだけだった。

浴室から出てきた吉野を見た岩田は口笛を吹いた。「おぅ、すっかりその気だな。その格好で出るのか? いいぞ、最高だ」彼は吉野に、昨日着ていたタイトスカートとブラウスを再び着るよう指示した。吉野が服を着ると、清楚なオフィスルックの下からちらちらと透けて見える真っ赤なレースと黒い網タイツが奇妙な不調和を成し、さらに猥褻な雰囲気を醸し出した。岩田はその姿に満足げな笑みを浮かべ、彼女の尻を鷲掴みにしてモーテルの部屋を出た。週末の朝、彼らの倒錯的な遊戯は今まさに始まろうとしていた。

モーテルを出た二人の姿は、奇妙な不調和を成していた。岩田は昨夜の情事と深い眠りで満足しきった様子がありありと見え、隣に立つ吉野は、無理やり直した化粧にもかかわらず、一晩中責められた疲労と諦めが色濃く滲んでいた。彼女の足取りはぎこちなく、危なっかしかった。目がくらむような高さのピンヒールのせいでもあったが、清楚なタイトスカートの下で太ももを包んでいる網タイツとガーターベルトの異質な感触が、彼女の全神経を尖らせていた。岩田はそんな彼女の腰を見せつけるように抱き寄せ、通行人の視線などお構いなしだった。

彼らが入ったのは、賑やかなラーメン専門店だった。湯気が立ち込め、騒々しい音で満ちた空間で、二人はひときわ目立っていた。岩田はテーブルの下で吉野の太ももを露骨にまさぐった。彼の指が網タイツの滑らかな感触を楽しみながら上へ、さらに上へと這い上がってきた。吉野はビクリとして足を閉じたが、彼の手は止まることなくガーターベルトの紐を通り過ぎ、彼女の素肌に触れた。朝、彼に蹂躙された秘部が、勝手に濡れそぼり始めた。吉野はレンゲを握る手を震わせながらうつむいた。ぐつぐつと煮えたぎるスープの熱気より、テーブルの下で繰り広げられる密かな弄びが、彼女の顔をさらに赤く火照らせた。

食事を終えた彼らの『デート』は本格的に始まった。週末を迎えた繁華街は人混みで溢れていた。岩田は吉野の肩を強く抱き寄せ、尻を鷲掴みにしたまま通りを闊歩した。彼の手はスカートの上から彼女の尻を揉みしだき、時には割れ目をぐっと押し付けながら、自分の所有物であることを誇示した。周囲の視線が痛いほど感じられた。若く美しい女が、腹の出た中年男に身を任せて引きずられていく姿。軽蔑と好奇心、そして数人の男たちの陰湿な欲望が込められた視線が彼女に注がれた。吉野は今やその視線の中で、羞恥心と共に奇妙な興奮を感じている自分に気づいた。清楚な教師の服の下に隠された淫らなランジェリー、その秘密を知っているのは自分とこの男だけだという、倒錯的な優越感さえ芽生え始めていた。

ショッピングは屈辱の延長戦だった。岩田は吉野をデパートの高級婦人服売り場へと連れて行った。彼は店員の親切な対応も無視し、自ら服を選び始めた。彼の選ぶ服は一貫していた。胸元が深く開いているか、体のラインが露骨に現れるタイトなワンピースばかり。彼は吉野に体にぴったりと張り付く黒のミニワンピースを渡し、試着室に入るよう指示した。吉野がためらうと、彼は「俺が直接見てやらなきゃな、ほら」と言って彼女の背中を押し、試着室の中へ一緒に入り込んだ。

狭い試着室の中、鏡は二人の姿を映し出した。岩田は吉野が着ていたブラウスとスカートを直接脱がせた。清楚な服が脱がされると、その下に隠されていた真っ赤なレースのランジェリーが蛍光灯の光の下で鮮やかに露わになった。岩田は満足げな呻き声を漏らし、鏡に映った吉野の体を鑑賞した。彼は彼女の後ろにぴったりと張り付き、レースのブラから溢れ出た乳房を揉みしだき、ガーターベルトと網タイツへと続く脚のラインを手で撫で下ろした。「くぅ……まるで風俗のエースだな」彼は勃起した自身の股間を吉野の尻に押し付けながら囁いた。

吉野は鏡の中の自分を見た。赤いレースに包まれたまま、老いた男の手に弄ばれ、興奮で上気した顔。その姿があまりにも見知らぬもので、猥褻だった。岩田は彼女に黒いワンピースを着せた。服は彼女の体にぴったりと張り付き、胸と尻の豊満なラインをそのままさらけ出した。短いスカートの下からは、黒い網タイツが際どく見えていた。「いいぞ。これからは、お前はこういう格好で歩くんだ」彼はその格好のまま会計を済ませ、吉野の手にショッピングバッグを持たせた。デパートを出る吉野の足取りは、もはや彼女のものではなかった。

一日中続いたデートは、吉野の精神を少しずつ摩耗させていった。夕方になると岩田は「酒でも飲むか」と言い、彼女を繁華街の真ん中にある薄暗い居酒屋へと連れて行った。屋台のような造りのその店は、仕事帰りの一杯を引っかけに来たサラリーマンたちで賑わっていた。吉野はもうどんな場所でも、人々の視線を意識しないよう努めた。いや、もしかするとその視線を楽しんでいるのかもしれなかった。体に張り付く黒いワンピースと網タイツ。誰が見ても普通の格好ではなかった。彼女は岩田が注ぐ酒を機械的に受け取り、飲み干した。

酒が数杯回ると、岩田の手が再びスカートの下へと入り込んだ。彼はテーブルの下で露骨に彼女の秘部を弄り始めた。ガーターベルトをいじくり回し、網タイツの上から秘部を擦りながら彼女の反応を窺った。吉野は酔いと混じり合った快感に顔を赤く染めた。その時だった。酔っ払った隣のテーブルの若い男がふらつきながら立ち上がり、吉野のテーブルにぶつかって持っていたビールジョッキをこぼしてしまった。冷たいビールが吉野の胸と足の上に降り注いだ。

「あ、すいません! 本当にすいません!」男はしきりに頭を下げて謝った。冷たい液体が胸の谷間を伝い落ち、スカートをぐっしょりと濡らす不快な感覚に、吉野は眉をひそめた。岩田はむしろこの状況が面白いとでも言うように、陰湿な笑みを浮かべた。彼は席から立ち上がり、男の肩を叩いて言った。「はは、いいってことよ、兄ちゃん。若いうちはそんなこともあるさ。でも、俺の女の服がびしょ濡れになっちまって、どうしたもんかな」

その瞬間、岩田は皆に聞こえるような大声で叫んだ。「おいおい、こりゃ大変だ。吉野、お前パンティは濡れてないか? あ? ストッキングまでびしょ濡れだろう。みんな見てるんだから早く拭かないと!」彼の叫び声に、騒がしかった店内が一瞬にして静まり返った。すべての視線が吉野に注がれた。『パンティ』と『ストッキング』という単語が、まるで拡声器を通して響き渡るかのようだった。吉野の顔は真っ青になり、通り越して透明になっていくようだった。ビールをこぼした男はもちろん、周りのすべての人々が驚愕と好奇心の入り混じった目で彼女を見つめていた。

それは計算された屈辱だった。岩田はこの状況を通じて、吉野に『自分の女』という烙印を完璧に押そうとしていた。吉野は今すぐにでも穴があったら入りたい心境だった。全身の血が逆流するような羞恥心に、体がガタガタと震えた。岩田はそんな彼女の肩を抱き寄せ、ニヤニヤと笑った。「ほらほら、みんな見るのはおしまい。俺の女が恥ずかしがってるじゃないか。行くぞ、吉野。家に帰ってきれいに洗わないとな」彼は見せつけるように吉野の尻を一度ポンと叩き、彼女を立たせた。

店を出る間ずっと、人々のひそひそ話と嘲笑が背中に短剣のように突き刺さった。吉野は顔を上げることができなかった。彼女はただ岩田に引かれてタクシーに乗り込んだ。岩田はタクシーの運転手に慣れた様子で吉野の家の住所を告げた。「今日はお前の家で泊まるか。びしょ濡れの子犬ちゃんを、きれいに洗ってやらなきゃな。そうだろ?」彼の声は欲情に満ちていた。吉野は窓の外の夜景をぼんやりと眺めた。自分の日常が、自分の空間が、完全に彼に侵略されていた。もはや逃げ場はなかった。

タクシーが見慣れた路地に入ると、吉野は車窓から自分の安らぎの場所だった小さなマンションをぼんやりと見つめた。かつては一日の疲れを癒す安息所だったが、今やまた別の屈辱が繰り広げられる舞台に過ぎなかった。タクシーが止まると、岩田は財布から紙幣を数枚投げつけるように出し、吉野の腕を乱暴に引っ張って降ろした。夜の空気が、びしょ濡れの彼女の体にぞっとするほど冷たく触れた。

その時だった。マンションの入り口の暗い陰に、見慣れた人影が立っていた。橘ハヤトだった。彼は焦燥した様子で入り口の前を行ったり来たりしていたが、タクシーから降りる二人を見て、強張った表情で近づいてきた。彼の視線は岩田に向かうかと思いきや、すぐにその横に立つ吉野の姿に釘付けになった。彼の瞳孔が微かに揺れた。

ハヤトが知っている藤井吉野はそこにはいなかった。整っていたボブヘアは乱れ、清楚だった顔は濃くテカる化粧で覆われていた。何よりも彼の視線を奪ったのは、彼女の服装だった。体のあらゆる曲線を露骨にさらけ出す黒の超ミニワンピース。短い裾の下から際どく見える黒い網タイツの上端と、その上へと続く素肌の官能的なライン。まるで高級クラブのエースを連想させるその猥褻な姿に、ハヤトは思わず生唾を飲み込んだ。彼の顔をよぎったのは、心配や怒りではなかった。それは明白な、歪んだ興奮の色だった。

「なんだこの野郎? まだここにいたのか?」岩田はハヤトを見つけると、面倒くさそうに唸った。彼は吉野の腰をさらに強く抱き寄せ、自分の所有物であることを誇示した。「お前の婚約者? もう俺の女だ。用が済んだなら失せろ、クズ野郎」侮辱的な言葉がハヤトの顔に突き刺さった。吉野は息を殺した。彼女の最後に残った自尊心、彼女の婚約者がこの状況でどう反応するのか。喧嘩になるか、警察を呼ぶか、何かこの地獄を終わらせてくれる行動を期待した。

だが、ハヤトの反応は彼女の想像を無残にも裏切った。彼は拳を握る代わりに、その場に崩れ落ちるように土下座した。彼の整っていた顔は、哀願と卑屈さで歪んでいた。彼は地面に額を擦り付ける勢いで平伏し、震える声で懇願し始めた。「い、岩田先生……お願いします……私がすべて悪かったです……」

彼の声は切迫していた。「言われたことは何でも……何でもします。犬のように這えと言われれば這いますし、足を舐めろと言われれば舐めます。どうか……どうかお願いします……吉野と……吉野としているところを……見るだけでもさせてください!」彼の哀願は絶叫に近かった。彼は吉野を救おうとしているのではなかった。自分の婚約者が他の男に蹂躙される場面を覗き見るために、自身のすべての尊厳を投げ捨てていた。

その瞬間、吉野の頭の中で何かがプツン、と切れる音がした。彼女は自分の耳を疑った。愛を囁き、共に未来を描いていた男の口から出た言葉だとは到底信じられなかった。彼女は土下座して哀願するハヤトを見下ろした。彼の卑屈な背中と震える肩を見た瞬間、彼女の心の中で最後に残っていた憐憫と愛情の残りカスさえも冷たく冷え切ってしまった。その場所を埋めたのは、ただ虫を見るような嫌悪感と、骨の髄まで凍みるような軽蔑感だけだった。この男は救世主ではなかった。この地獄を共に楽しみたくてたまらない、もう一人の加害者に過ぎなかった。吉野の世界は今や完全に、孤独に取り残された。

岩田は自分の足元にひれ伏して哀願する橘ハヤトを見下ろし、鼻で笑った。その笑い声には軽蔑と共に、状況を完全に支配しているという優越感が満ちていた。彼は吉野の腰をさらに強く抱き寄せ、つま先で橘ハヤトの肩をツンツンと突いた。「クハハ! こりゃあ見ものだな。これが、あの偉そうな体育教師の正体だったとはな? 自分の婚約者が他の男に犯されるのを見たくて、犬みたいに這いつくばるザマとは。まさに傑作だ、傑作」

彼の嘲笑に、ハヤトは頭をさらに深く下げた。彼の背中は羞恥心と切実さで小刻みに震えていた。「先生……どうか……願いします。一生恩は忘れません。私が……私がどれほど吉野が他の男に犯される姿を見たかったか……先生には分からないでしょう……」彼の声は沸き上がる欲望に濡れ、哀願というよりはむしろ懺悔に近かった。彼は自身の最も醜悪で密かな欲望を、吉野を堕落させた張本人の前で余すところなくさらけ出していた。

吉野はその会話を聞きながら、全身の血が冷たく引いていくのを感じた。嫌悪感を超えた何かが彼女の腹の底をねじ切った。ハヤトの卑屈な姿、彼の倒錯的な欲望、そしてこのすべての状況を楽しんでいる岩田の傲慢な態度。この二人の男は、互いに異なるやり方で彼女の魂を踏みにじっていた。彼女の人生は、今や完璧な喜劇であり悲劇の舞台だった。

岩田はしばらくの間、ハヤトの哀願を楽しむように鑑賞した。彼は吉野の耳元に熱い息を吹きかけ、彼女にだけ聞こえるような声で囁いた。「どうだ、吉野。あのクズ野郎、全く笑えるザマだろ? お前の婚約者だ、お前が決めてみろ。あの野郎をこの地獄のような見世物に混ぜてやるか、それともただ犬みたいに吠えさせて追い払うか?」彼の言葉には悪戯心が満ちていた。彼は吉野に選択権を与えるふりをして、彼女がどれほど壊れることができるか試していた。

彼の質問は、吉野に投げかけられたもう一つの残酷な罠だった。どんな選択をしようと、彼女はこの醜悪な演劇の共犯者になるしかなかった。彼女はゆっくりと顔を上げ、自分の足元にひれ伏すハヤトと、自分を見下ろす岩田の顔を交互に見た。彼女の空虚な瞳に、ごく微かな、しかし氷のように冷たい光がよぎった。この地獄で、彼女ができる選択は何だろうか。いや、選択などというものが残ってなどいるのだろうか。彼女の唇が、とてもゆっくりと、重そうに開いた。

吉野の唇は枯れ葉のようにカサカサに乾いていた。彼女はゆっくりと頭を下げ、自分の足元にひれ伏す橘ハヤトのつむじを見下ろした。かつてはその広い背中と逞しい肩に寄りかかり、未来を夢見ていた。だが今、彼の背中は世界で最も卑屈で醜悪な獣のそれのように見えた。彼女の心の中で何かが冷たく砕け散った。希望、愛、憐憫、そして最後に残った人間への信頼までも。

岩田の質問が耳元で渦巻いた。どうするか。この質問は、彼女に選択の自由を与えるものではなかった。どんな答えを出そうと、彼女はこの醜悪な演劇の主演女優となり、自らの堕落を自ら証明しなければならない残酷な罠だった。彼女の脳裏が真っ白になるようだった。だがその空っぽの空間の中で、氷のように冷たく鋭い何かが芽生え始めていた。それは諦めを超えた、一種の狂気を帯びた決断だった。

吉野はゆっくりと顔を上げた。彼女の視線はもう揺らいでいなかった。空っぽだった瞳には、今や底知れぬ闇が宿っていた。彼女は岩田の顔を真っ直ぐに見つめた。そして、とても小さく乾いた声で、しかしはっきりと言った。

「……中に入れてやってください」

彼女の声はあまりにも落ち着いていて、むしろ非現実的に聞こえた。岩田は一瞬意外そうに眉をひそめたが、すぐにその表情は陰湿で満足げな笑みへと変わった。彼は吉野の選択が何を意味するのか、正確に見抜いていた。彼女がすべてを諦め、この堕落の道を自ら歩むと決心したことを。

「プハハ! さすが俺の女だ。最高にイカしてるぜ」岩田は吉野の頬に褒美とばかりに口づけし、足元にひれ伏すハヤトに向かって顎をしゃくった。「聞いたか、クズ野郎? お前の婚約者様が特別にお許しくださったぞ。這って入れ。その代わり、犬みたいに吠えるなよ。息の音も立てるな。ただ死んだように大人しく見物だけするんだ。分かったか?」

ハヤトは顔を上げられないまま、ただ狂ったように頷いた。彼の肩が安堵と興奮で小刻みに震えた。岩田は吉野の腰を抱き寄せ、玄関のドアへと向かった。吉野は機械的に暗証番号を押した。ピピピッ、という音と共にドアが開くと、彼女の最後の安息所だった空間の闇が口を開けた。吉野はその闇の中へ、何の表情もなく足を踏み入れた。そして彼女の後を追い、岩田と、犬のように四つん這いで這い入る橘ハヤトの影が次々と闇の中へ消えていった。ドアが閉まる音が、まるで地獄の門が閉ざされる音のように重く響き渡った。

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