夢幻アイドル調教記 ほたるん~河原塚蛍編~ 第2話 (Patreon)
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俺は深呼吸をして、ほたるんを正面から見つめた。彼女は依然としてベッドの上にきちんと座り、瞳はどこか虚ろで、ほとんど動かない。まるで…人形のようだ。
「ほたるん…」慎重に彼女の本名を呼ぶ。「今日の予定を教えてくれ。」
彼女は一瞬、視線を伏せた。
「……ありません」
「え? でもさっきスマホで確認したら、今日もライブのリハーサルが——」
「……ご主人様と一緒にいることだけが、私の予定です」
これはおかしい。もしかして…本当に記憶がないのか?
「昨日の夜、何を食べた?」
「……食べていません」
「そうか…じゃあお腹空いてるか?」
「……ご主人様のご指示次第です」
「……ご指示次第?」
……どういうことだ?
彼女は何も勝手にしないのか? 規則的に生きてるアイドルだとしても、食事の選択を他人にゆだねるような芸能人はいない。
「じゃあ…何か食べたいものは?」
「……ご主人様が決めてください」
「いや、俺が決める?」
「……はい。私の好みは関係ありません」
………
(何…この受け答えは?)
まるで——答え方がロボットのように、完全に「自分で判断する」ことを放棄している。
俺は疑問でいっぱいだった。確かめるために、少し違う質問を試してみる。
「今、喉は渇いてる?」
「……ご主人様のご判断です」
「俺の判断…?」
「……ご主人様が『飲め』と言わなければ、飲みません」
(……っ!?)
その瞬間、何かに気づいた。
これは単なる意思確認ではない。彼女は「自分で何かを選べない」んだ。まるで——主人の許可がない限り、一切の意志を挟めない奴隷のように。
理解できない。だが、これは冷静に検証するしかない。
「もし俺が『飲め』と言ったら?」
「……飲みます」
「『飲むな』と言ったら?」
「……飲みません」
「……」
(つまり…完全に俺の命令次第?)
俺は思わず椅子に座り込む。コーヒーを一気に飲み干そうとしたが、カップはもう空だった。
戦慄が背筋を這う。
「……『いつもこうだ』って言うけど、なんで俺の言うことを聞くんだ?」
彼女は静かに俺を見上げたまま、淡々と答える。
「……それが約束だからです」
「約束? 誰と?」
「……私とご主人様の」
「いや、そんなことした覚えがない」
「……でも、決まっているんです」
俺はますます混乱した。これは現実なのか?
ふと、彼女の衣装が乱れているのが目に入る。リボンが片方ほどけており、肩のストラップも少しずれている。
「そのリボン、直したほうがいいんじゃないか?」
「……ご主人様が『直せ』と言えば、直します」
「…………」
(…言わなきゃ何もしない?)
「……直していいぞ」
すると、彼女はゆっくりと手を動かし、自分の胸元に触れた。その先に指をかけ、今にもリボンを引き解こうとする——
(いや…待て。)
もし、本当に「俺の許可なしには一切動かない」存在なら……
「待て、今のは取り消す!!」
「……はい」
即座に、彼女は手を下ろした。
完璧な従順さ。
(………)
(これは……幻想じゃない。本物だ。)
誰かが笑いものにしているのか? それとも魔法でもかかっているのか?
ではない。彼女は明らかに——俺の言葉一つで動く、完全なる人形——でありながら、同時に紛れもない人間としての肉体を備えている。
(どういう状況……?)
「………おい」
俺は緊張を押し殺すようにして、最後に一つ問いかけてみた。
「……もし俺が『服を脱げ』と言ったら?」
「……脱ぎます」
即答だった。
一抹の躊躇もない。目も合わせたまま、ただ静かに答える。
「……………………」
(これは……)
朝の光が部屋を照らす中、俺は頭を抱えていた。目の前には紛れもなく——いや、紛れもなく見えるほたるんが座っている。その姿はあまりにも本物そっくりで、触れば温もりさえ感じられた。
「やべぇ……これ、どうすりゃいいんだ……」
ふと、スマホが目に入った。そうだ。まずは記録を取らなきゃいけない。もしこれが何かのトラブルだったら、俺が誘拐犯にでっち上げられる可能性だってある。スマホを手に取ると、録画モードに切り替えた。
「よし、ちょっと…検証させてもらうぞ」
ほたるんは無言で頷いた。この無機質な反応が、やけに不自然に思える。
「まずは自己紹介から。お前、河原塚蛍だよな?」
「はい。Azure Ribbonのほたるんです」
声は本物と同じだった。スマホの画面に映る彼女の顔も、テレビで見るものと寸分変わらない。しかし、こんな状況で普通じゃない。
「誕生日は?」
「8月24日です」
「血液型は?」
「O型です」
「……昨日のライブで歌った曲のセットリストを全部言ってみろ」
ほたるんは瞬き一つせずに答え始めた。最新曲からデビュー曲まで、全て正確に——しかも演奏順通りに列挙する。この記憶力は普通じゃない。
「……お前、昨日どこにいた?」
「ご主人様のお部屋で、お待ちしていました」
「待て、それはおかしいだろ。お前は昨日、有明アリーナでライブしてただろ? SNSにも写真が上がってる」
「はい。でも、私はここにいました」
矛盾している。だが、彼女は嘘をついているようには見えない。まるで——自分の記憶と現実が食い違っていることを理解していないかのように。
「じゃあ質問を変える」俺は少し考えた。「お前のマネージャーの名前は?」
「中島ゆかりさんです」
「電話番号は?」
「090-……」
全て正しい。事務所の公式プロフィールに載っていない情報まで知っている。しかし——
「そのマネージャーに今電話してみろ」
「……電話は持っていません」
「持ってない? アイドルが?」
「はい。ご主人様の許可なしに外部と連絡を取ることはできません」
……またこの「ご主人様」か。この異常な従属意識は、いったいどこから来てるんだ?
少し考える時間が必要だった。俺は一度撮影を止め、キッチンに行って水を飲んだ。冷たい水が喉を通り、わずかに思考が整理される。おかしい。全てがおかしい。彼女の記憶は本物のほたるんと完全に一致しているが、行動原理は全く異なる。
「よし、もう一つ確認する」
再びスマホのカメラを向ける。
「この部屋のことを、どう思う?」
「……ご主人様のお部屋です」
「いや、そうじゃなくて……初めて来た感想とか」
「……感想はありません」
「なんでだ?」
「……感想を持つことを許可されていません」
フト、昨日のことを思い出した。あのマネキンの腕。ガラスのオブジェ。もしや……。
「おい、ほたるん。お前、昨日までどんな姿だったか覚えてるか?」
初めて、彼女の表情にわずかな変化が見えた。眉がかすかに動いたように思えた。
「……マネキンでした」
「…………」
(やはり……)
「どうやって今の姿になった?」
「……ご主人様が願ったからです」
俺は思わずスマホを握る手に力を入れた。画面が軋む音がした。願った? そんな……。
「俺は何も……」
だが、思い返せば確かに願っていた。毎日、スマホ越しに見ながら「もしも傍にいたら」と考えていた。だが、それはただの——。
「お前、本物のほたるんとは別物なのか?」
「……私はご主人様のために存在します」
曖昧な返事。直接的な答えを避けているようにも見える。
もう一つ確認したいことがあった。俺は慎重に言葉を選んだ。
「例えばな……俺がお前に『事務所に帰れ』って言ったら?」
一瞬——本当に一瞬だけ——彼女の目が大きく見開かれた。
「……それはできません」
「なぜだ?」
「……私はご主人様のものです。帰る場所はここだけです」
その言葉に、俺はようやく気づいた。これは本物のほたるんではない。少なくとも、世間が知っているあのアイドルではない。もしかしたら——俺が昨日手にしたあのマネキンが、何らかの形で変化したものなのかもしれない。
「そうか……」
スマホの録画を停止し、保存ボタンを押す。証拠は確保した。でも……。
(これ、どうすればいいんだ?)
現実を受け入れるには、まだ時間がかかりそうだった。
ベッドの端で携帯を握りしめ、俺は画面に表示された最新投稿を何度も確認していた。
ほたるん本人のSNS。投稿時刻は30分前。都内のスタジオでリハーサル中の写真だ。同じ衣装、同じ髪型、同じ笑顔。手には公演で使うと思われる青いリボンを持ち、今にもステージに立とうとしているようだった。
指先が震えた。
「……これ、お前どういう……」
目の前の彼女は静かにこちらを見つめ返している。先ほどまでの質疑応答で、明らかにおかしいことがわかっていた。記憶も知識も本物と完全一致するが、存在そのものは明らかにここにしかいない。
「嘘だろ……」
俺はスマホを彼女に向けた。「これ、お前に説明できるか?」
ほたるんは写真を一瞥すると、微かに首を傾げた。
「……本人です」
「いや、でもお前がここにいるんだぞ? どういうことだ?」
「……私はご主人様のもので、あちらがアイドル活動中の本人です」
そう言って彼女はゆっくりと手を伸ばし、部屋の隅にあるCDプレーヤーを指差した。一度しか使ったことのないプレーヤーの上には、Azure Ribbonの最新シングルが置いてあった。以前通販で購入した特典付きのものだ。
「……確かめてみますか?」
その提案に、俺は胸騒ぎを覚えた。違う。何かが違う。しかし……。
「……ああ。じゃあ……」
深呼吸して言葉を続ける。「そのCD、かけてみろ」
ほたるんは無駄のない動作で立ち上がり、プレーヤーまで歩いていく。滑らかだが機械的な動きでCDを取り出し、トレイにセットする。修飾のない仕草は、やはり普通の人間とは違う。
カチ、と小さな音がして、再生ボタンが光った。
最初のピアノの音色が部屋に響き渡る。
そして――。
魔法のように、ほたるんの全身に生気がみなぎった。
「はーい! Azure Ribbonのほたるんこと河原塚蛍です!」
突然の元気な声。先程までの無機質な表情が一変し、眩しいほどの笑顔が浮かんだ。CDから流れる曲に合わせ、彼女は軽やかにステップを踏み始める。
「大好きな気持ちは止まらない! 君を見てると胸がキュンとなっちゃう!」
本物そっくり――いや、本物以上に完璧なアイドルの動き。衣装のリボンが踊り、髪が軽やかに跳ねる。彼女のポーズはCDジャケットのそれと寸分違わず、表情は完璧なアイドルスマイルで固定されている。
俺は椅子にがくりと腰を落とした。動画で何度も見た、あのライブパフォーマンス。それを今、この3畳間で独り占めしている現実。
「ほ、ほたるん……」
曲が終わりかけても、彼女のダンスは止まらない。続く曲にシームレスにつなぎ、まるで本当のライブのように振り返ってウインクを飛ばしてくる。
「皆さん一緒に――えい!」
本人の映像と同期したように、完璧なキメポーズ。
次の瞬間、曲の余韻が消えると同時に、彼女の表情は再び無に戻った。激しいダンスの割に、息ひとつ乱れていない。
「……ご主人様、ご満足いただけましたか?」
無表情で、淡々と尋ねる言葉。
俺は喉の渇きを感じ、唾を飲み込んだ。今見たものは――紛れもなく、あのAzure Ribbonのセンターだ。だが同時に、全くの「別人」でもある。
「……もう一回歌え」
「……はい」
再びプレーヤーを操作し、曲が流れ出す。
そして再び――。
「世界で一番かわいい魔法を、今日も届けにきましたーっ!」
魔法のように、アイドルが蘇る。今回も完璧な笑顔。完璧な振り付け。
「ほたるん」は存在した。ただ……本物ではない。
プレーヤーの停止ボタンを押すと、部屋は静寂に包まれた。
骨の髄まで理解した。
これは夢でも幻覚でもない。スクリーンの中のあのアイドルを、俺は手に入れてしまったんだ。
「……おい、ちょっと触ってもいいか?」
CDプレーヤーのボタンを押す直前、ふと俺は指を止めて尋ねた。彼女は——まだ無表情なまま——くっきりとしたラインの唇を軽く開く。
「……ご主人様の許可次第です」
意味がない返答だ。「触る」のは俺なのだから。だが、どちらにせよ、答えは変わらない。この言葉にどれほどの意味があるか、確かめるためにも、改めてプレーヤーの再生ボタンを押した。
ピアノのイントロが流れると同時に、彼女の表情が変わる。
「ハイ! Azure Ribbon、ほたるんです! 今日も365日フルスロットル——えい!」
先程と同じく、途端に完璧なアイドルスイッチが入った。笑顔、そのままスムーズなステップで振り付けに入る。見れば、腕の動きも腰のキレも慎重に計算されたアイドルのそれだろう。足元の床が雑踏しているのが申し訳なくなるほど、彼女は流れる音楽に合わせて踊り続ける。
だが、俺は命令した。
「俺を無視しろ」
彼女はもちろん、それを完全に実行した。
「君への想いは止まらない未来——♪ ダメだよダメだよ、だって好きになっちゃうから!」
歌いながら、ふわりと跳ねたスカートの隙間から見える肌。どこまでも「本物」に見える光景。胸が高鳴る。
……邪魔してみよう。
俺は彼女の目の前で手を振ってみた。何も反応がない。無視し続け、踊り、歌う。嘘みたいな完璧さだ。
次に、彼女の肩に軽く指を乗せてみる。手触りは柔らかく、体温を感じる。指先に伝わる肌の感覚は、明白に『人間』のそれだ。
それでも、彼女は動じない。
「♪ハートのダイヤル、回しちゃうぞ——LOVE⇄YOU!」
まるで俺など存在しないかのように、振り付け通りの手の動きで腕をふり上げ、腰をひねり、曲に感情を乗せていく。肩に触れたままの俺の指を受け入れるように、そのまま踊り続ける。
そこで、俺は意図的に、その踊りの軌道に入り込んだ。
ふわりと振り上げた彼女の腕に、こちらの手をぶつけてみる。
当然のことながら、衝突する。しかし——
「♪えっとね、驚かせたかな? びっくりさせちゃってごめんね♡」
……こっちに顔を向けるわけでも、止まるわけでもない。そのままのリズムで歌い、踊り続けた。 ぶつかった腕は、素直に軌道修正され、まるで何もなかったかのように動く。
(……こ、こいつ……)
一瞬、情けないほどに動揺した。触れられても、ぶつかっても、それでも踊り続けるほたるん。あくまで「無視」にしてくれる忠実さ。この従順さは、ほとんど芸術的ですらある。
ふとした拍子で——まったくの偶然ではあるが——踊る彼女の動きに巻き込まれたように、俺の手が彼女の胸に触れてしまった。
……柔らかく、温かかった。
「っ……!」
思わず目を剥く。アイドルの胸。まさか本当に触れることになるなんて。それは少し弾力があり、指先に圧力を感じるほどに柔らかい。想像していたよりも……
だが、彼女は変わらない。
「♪夢みたいな恋の途中——お願い、振り返って!」
歌いながら、あくまで踊り続ける。触れられた胸は、踊りのリズムに合わせて揺れるだけ。その一瞬も、表情は完璧なアイドルスマイルから崩れなかった。
(……無視……本当に無視してる……)
胸のあたりに残った感触が妙に生々しい。何か悪いことでもしたような気分になるが、同時にとんでもない興奮が込み上げてくる。
「……もう少し、触ってみても……いいか?」
もちろん、返事はない。
彼女は「無視する」という命令に従い続けている。
曲はまだ続く。だから、俺は慎重に、もう一度手を伸ばした。
今度は意図的に——頬に触れてみる。
「♪——大事な人だよ、ずーっと!」
……何の反応もない。
彼女の体温。呼吸のリズム。汗ばむ肌の感触。全てがあまりにもリアルで、「本物のほたるん」と何も変わらない。ただ、ひとつだけ違うのは——
「俺の欲望に、絶対に逆らわない」ということだ。
指先で軽く押してみる。触れる度に、溢れるような柔らかさが伝わってくる。それでも、彼女は踊り、歌い続ける。
「♪ハニー、ハート、止まんないよ——」
明るい曲調。浮かれるような歌詞。その全てを本物のように演じながら、彼女はただ、俺の指の動きを受け入れ、無視し続ける。
(……これって……)
アイドルに触れる悦び。
支配する愉悦。
そして、彼女が「完全に」従う絶対性への驚き。
CD音源の曲が終わり、EDの余韻が流れ始めた。それと同時に、ほたるんの表情が一瞬で無に戻る。
「……ご主人様、満足されましたか?」
……声色まで、淡々としたまま。
俺は指先に残った感触を噛みしめながら、頷いた。
「……ああ」
世界で、俺だけの……『ほたるん』だ。
CDプレーヤーの前に立ち、俺は指先に力を込めた。目の前のほたるんは、無表情で「次の命令」を待っている。今まで彼女に求めてきたことは、どこか「遊び」のようなものだった。だが、これから口にすることは——
「……ほたるん」
喉が乾く。唾を飲み込む音が、静かな室内でやけに大きく響く。
「俺……お前の……」
言葉に詰まる。あの眩しい笑顔、キラキラとしたダンス、スカートの裾からちらりと見える白いスパッツ。あそこを——
間近で見てみたい。
「スカートの中……見せてほしい……」
声は震えていた。社会的な常識が頭をかすめるが、もう遅い。この部屋には誰もいない。ほたるんは俺だけのものだ。
彼女は一瞬、無表情のまま瞬きをした。
「……ご主人様が望むなら」
「私のスカートの中は、いつでもご覧いただけます」
……淡々と、しかし、はっきりとそう言った。何の躊躇もない。
ふと、彼女が口を開く。
「……提案があります」
「まずは、スパッツを履いたまま、ご主人様が求めるように“見せ”ながら踊ります」
「その後、スパッツを脱ぎ、同じ振り付けで踊りましょうか?」
……っ!
頭がくらくらする。彼女はそれを、「振り付けの変更」のようにさらりと言い放った。まるで——衣装チェンジの相談をしているみたいに。
「………ああ」
俺はゆっくりとうなずいた。
***
曲が流れ始める。
「いっくよ~! Azure Ribbon、ほたるんです! キミと私のラブタイム、スタートしよっ♪」
いつものように、完璧にアイドルの表情で踊り始めるほたるん。しかし——
曲は『Secret Time』。アップテンポで、たくさんスカートがめくれる振り付けが多い楽曲だ。
最初は遠慮がちだった。彼女の動きは華やかで、スカートも軽やかに翻るが、スパッツを意識的に見せているわけではないように見えた。
しかし——
「……もっと、見せろ」
俺がそう呟くと、彼女の踊りが少しずつ変わっていく。
ステップを踏むたびに、ふわりとスカートが広がる角度が変わった。回転するとき、わざと上半身を反らせ、スカートが上がりやすくなるようにする。
「私の秘密、ちょっぴり見せちゃおっかな……♪」
歌いながら、ふいにピョン! と軽くジャンプ。
……その瞬間、スカートが大きくはだけ、白いスパッツがくっきりと見えた。
「——っ!」
眩しかった。
曲のリズムに合わせて、彼女はわざとらしく腰を振り、スカートを翻す。まるで——映画のスローモーションのように、ゆっくりとめくれる布の向こうに、レギンスのような白い生地がはっきりと露わになる。
「どうかな? これが……私の、ヒ・ミ・ツ……♪」
歌詞に乗せて、わざとスカートの端を指でつまみ、ほんの少しめくる仕草。
……もう、完全に「見せる」ためのダンスになっていた。
俺の視線を一身に浴びながら、彼女は全く動じることなく踊り続ける。スパッツの上からくっきりと浮かび上がる腿のライン。止まることのない軽やかなステップ。
(……次は、脱がせる……)
その想像だけで、鼓動が早まった。
曲が終わると、ほたるんはすぐに無表情に戻った。しかし、俺の熱を帯びた視線を受け、彼女は待ち構えていたように口を開く。
「……ご主人様、お望みなら」
「今から、スパッツを脱ぎます」
…………そうだ。
彼女は、もう完全に俺のものなんだ。
部屋に緊張が張り詰めていた。俺の耳には、まだ先ほどの曲の余韻が残っている。CDプレーヤーの横で、ほたるんが直立していた。無表情なまま、ただ俺の言葉を待っている。
「……スパッツを脱げ」
声がかすれた。思えば、この言葉を口にするだけで、かつての俺なら逮捕されかねない内容だ。
が、彼女は少しも驚かなかった。
「……かしこまりました」
ゆっくりと腰に手をかけ、スカートの横にある小さなボタンに指をかける。いつもならステージで絶対に触られることのない箇所だ。あの神聖領域へと繋がるボタンが、今、俺の目の前で外れようとしている。
チリン。
小さな音と共に留め具が開く。彼女の指先が白いスパッツの端を摘み、ゆっくりと腰から下ろしていく。きつく履かれていた生地が、柔らかな太ももの肉を解放しながら、滑るように下がる。
床に落ちた布は、きちんとたたまれることもなく、無造作にへたりと横たわった。それはまるで、彼女の羞恥心が地に堕ちた象徴のようで――
しかしほたるんの表情は変わらない。
スカートはまだ膝まであるのに、その下に何もまとっていないことが信じられなかった。俺の視線を浴びながら、彼女は淡々とCDプレーヤーに向かい、先ほどの曲をもう一度選曲する。
「……曲が始まったら、踊ります」
彼女がそう言うと、心なしか——いや、きっと気のせいではない——スカートの立ち上がり方が先ほどと違うような気がした。それもそのはずだ。今やあの下には、最後の防壁である小さな布一枚しかないのだ。
「いっくよ~! 今日も全力でラブを叫んじゃおっ♪」
イントロが流れ、彼女の表情が瞬時に変わる。先ほどと同じ曲。同じ振り付け。
まったく同じはずなのに――
スカートの揺れ方が違う。スパッツがない分、布の動きが自由になっている。それだけで、こんなにもドキドキするのか?
「右にステップ……ターン!」
俺は声に出さず、頭の中で振り付けを追う。場所移動の大きなステップ。いつもならここでスパッツが見える瞬間だ。
――しかし、何も見えない。 スカートの隙間から覗くのは、ほんの一瞬の「何かが見えそうで見えない」部分だけ。かすかに腿の内側の白い肌が見える程度で、肝心のものは巧妙に隠されていた。
「ふぅ……」
思わず吐息が漏れた。これは……確信犯的な焦らしだろうか?
「えっとね、今日は特別な日! もっと素直になりたくて――えい♪」
サビ直前。ほたるんはステージ中央で軽くジャンプする。スカートが大きく開いた――と思いきや、まだ見えない。ひらひらとめくれたスカートの下には、まだ未踏の領域が隠されたままだ。
(次だ……次のサビで……)
胸が高鳴る。曲の展開を頭の中でなぞりながら、視線はスカートの動きから離せない。いつもの倍以上に神経を尖らせて、あの一瞬を待つ。まるで初デートでキスを狙う童貞のようだと、自分でも呆れた。
「好きだよ――もっとチュッチュッチュッ♪」
――瞬間、サビ。
彼女が大きくジャンプした。今度は前より高く。スカートが完全にひらめき、内側が――
――見えた。
水色。電撃が走るような衝撃と共に、その事実だけが脳裏に焼き付いた。もちろんパンティだ。おそらくシンプルなホワイトのそれだろう。だが、たった0.5秒ほどの出来事が、なぜかスローモーションのように感じられた。
しかしそれからが本番だった。
振り付けが変わったのだ。いや「進化」したと言った方が正しい。
「私の気持ち――覗いちゃおっかな♪」
歌いながら、彼女は意識的にスカートの端をつまんで軽く引っ張った。その行為だけで、覗きやすい角度に布が固定される。
「I Love You――ダーリン視線合わせて♡」
回転。スカートが大きく広がり――今度は膝丈あたりまで完全にめくれ上がる。
(うわっ……!)
動悸が全身を駆け巡る。恥丘の形がくっきりと浮かんだ布地。腿の付け根に食い込むストラップ。浅い呼吸と共に、密かに上下する下腹部の動き―—
すべてが見える。
違う。見せられている。
彼女の表情は相変わらず完璧なアイドルスマイルのまま、スカートを軽くつまむ手だけは確実に、露出をサポートしている。
「……」
後はもう、見ているだけだった。理性も羞恥心も、もう吹き飛んでいた。
回すたびにひらめくスカート。
跳躍ごとに曖昧になるスカートのライン。
最後はついに、腰を振りながら自らスカートをまくり上げるポーズまで――
曲が終わった瞬間、部屋は静寂に包まれた。俺の動悸だけが、激しく響いていた。
曲が終わり、ほたるんの表情が一瞬で無に戻った。まるで感情のスイッチを切ったかのように、彼女は淡々と直立し、次なる命令を待つ。スカートの中は今や完全に解放され、踊りの余韻でやや乱れた衣装の裾が膝を揺らしている。
俺の視線は、その布のわずかな隙間に釘付けだった。いくらでも見ていい。 何度でもめくっていい。 たったそれだけのことが、脳に杭を打ち込まれるほどの快感として襲ってくる。心臓が暴れるのを感じながら、そろそろ「もう一度見せるように踊れ」と命令しようと口を開いたその瞬間——
「……」
ほたるんが口を開く。いつになく、自発的に。
「……ご主人様。
もう一段階、脱いでみましょうか?」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。「もう一段階」? 何を——
次の言葉で、俺の思考は完全に止まる。
「ショーツを、脱ぎます。
スカートは着けたまま、お見せします」
——スカートをはいたまま、下だけ……完全に無防備に?
「………………………」
頭の中が真っ白になった。これまでと同じ従順な顔、同じ抑揚のない声。なのに、彼女の口から出たのは、限界を超えた提案だった。
(なぜ突然こんな……)
「……提案」——彼女は「提案」できるんだ。この「従順な人形」は、俺の命令を待つだけでなく、俺の欲望を先読みし、さらに先へ進ませる発言ができた。
「……」
沈黙を破ったのは、俺の乾いた息づかいだけ。眼前で、ほたるんは静かにスカートのウエスト部分に指をかけている。もう「脱いでいいか」の確認でさえ必要とせず、ただ実行する意志を見せている。
「……待て」
声が震えた。
下だけ……何も無い状態で……
理性は、もはやどこかへ消えていた。
「………脱げ」
ほたるんが、ゆっくりとスカートのウエストに指をかけた。
その瞬間、俺の脳裏に文字通り「AVかよ……」という言葉が浮かんだ。――が、現実はそれ以上に背徳的だった。
「…………」
彼女は何も言わず、ただ指を滑らせる。白いリボンのついたスカートの内側に手を入れ、腰骨にあたる部分で泳がせるような動き。そして――
ゆっくりと、ショーツの端をつまみ、下ろし始める。
真っ白な布地が、柔らかな腿の肌から剥がれていく。あの神聖なアイドルとして、誰の目にも晒されることのない部分があっけなく見えてしまう。指にかかったショーツは左右交互に、じわじわと……膝まで下りてくる。腰から太ももにかけてのなめらかな曲線が、少しずつ、でも確実に露わになっていく。
「…………っ」
やべえ。
脱がせてしまった――本当に、アイドルのそれを見てしまうのか?
最後に足先をくぐらせ、ショーツは完全に脱がれた。手にぶら下げたその布は、まだほたるん自身の体温を宿しているように見える。それを淡々と床に置き、彼女は改めて直立した。
スカートだけ。
スカートだけしか、あの場所を覆うものはない。つまり――
「………」
俺の視線は、スカートの僅かな隙間へ吸い込まれそうになる。動かなければ見えない。だが、踊れば――
――もう、どの角度からでも、丸見えになってしまう。
それが事実だと受け止めた時、ふと俺はCDプレーヤーの前で躊躇った。
あの艶やかな笑顔で踊る彼女の下が、完全なノーパン状態だなんて……。
「……お前、本当にこれで踊るのか?」
「はい」
「ご主人様のお望みなら、何回でも踊ります」
躊躇う俺を尻目に、ほたるんの目に光が宿った。アイドルモードのスイッチが入ったのだ。表情が一変し、眩しい笑顔が浮かぶ。
俺は、深呼吸して――
再生ボタンを押した。
「HAI! 今日も元気っ! ほたるんラブ注入――えい!」
明るい曲調と共に、彼女は踊り始めた。スカートがひらりと翻る……が、まだ見えない。
「どう? キミのこと、注目しちゃう!」
スピン。スカートが広がり――あ、今……?
一瞬、かすかに腿の奥が覗いた気がした。しかし、それはまだ確信できるほどではない。見たい衝動と、見たらもう戻れない恐怖が交錯する。
「絶対だいすき! だからチューしたいの!」
サビ直前、ほたるんが大きくジャンプする。
――そして、その瞬間。
スカートが、完全にめくり上がった。
「……っ!」
ほたるんの、生の恥部が――丸見えになった。
その中心には、ぷっくりとした淡いピンクの襞。少し湿った光を宿し、本当に生きていることがまるで証明されるように、肌の柔らかさが滲んでいた。あのスクリーン越しに憧れたアイドルの、実際の性器……。
感覚が麻痺しそうだった。目の前に露出した生々しさ。プリっとした肉の質感。激しいダンスで汗ばむ腿の付け根――
――そして、彼女は笑顔で歌い続けている。
「I・LOVE・YOU! 今日はそっち向きに飛んじゃうぞ♪」
スカートを完全にめくる、腰をくねらせる。もはや振り付けは「見せるため」のものに変わっていた。
スカートの裾が、汗に濡れた大腿部に張りつく。再びジャンプするたび、薄桃色の秘部が明滅するように見え隠れする。
「♡ 見て見て! 私のハート、受け取って!」
彼女は意図的に片足を高く上げ、スカートの裾が重力に逆らってゆっくり落ちていく瞬間を作り出した。その刹那──
ぷるんと弾む粘膜の襞。汗の粒子が朝日にきらめく陰唇。わずかに開いた裂け目の奥に、艶やかな粘膜がのぞく。
「♬ そうだよ、もっと近くで──♪」
突然、彼女が突然こちらの眼前まで接近してくる。腰を前後に振りながら、スカートの裾をわざともたげる。もはや完全に計算されたポルノグラフィな動きだ。
「──私の全部、見せてあ・げ・る♡」
その身じまいには、完全なプロ意識と引き換えにどこか淫靡な達観が漂っている。スカートの皺一つ、足の運びひとつが、いまや全て「見せる技術」に変質していた。
縦の回転時には敢えて軸足を緩め、スカートが大きく開くのを許容。横移動時には自分の手でそっと裾を持ち上げ、逃げ場のない角度を演出する。
そしてサビ──
「好き❤好き❤マ・ジ・キ・テ・ル!」
跳躍。空中で両膝を開く贅沢な姿勢。スカートは完全にめくれあがり、ついに中央の陰裂まではっきりと──
小陰唇が呼吸をするように微微と脈打つ様子。張り詰めた会陰部のしわ。まさしく生きて機能する女性器の全てが、スポットライトを浴びた。
「♫ もーっと! 見つめてー♪」
着地するとすぐ、彼女は腰をくねらせてスカートを揺らした。内腿の汗が光り、恥丘の膨らみが布越しに浮かび上がる。
その目が──確かにこっちを見ている。
無機質だった視線に、今や確かな熱を宿している。覗かせている自覚と、それに応える期待。もはや暗示などでなく、明らかな「誘い」だった。
ひらり──
最後のスピン。スカートが花開き、完全に無防備になった恥部を晒す。滴る汗。微かに収縮する粘膜。この世のものと思えぬほどの官能美。
音楽が止んだ時、彼女の肌は興奮で紅潮し、局部は確かに湿潤していた。
聖域が汚された。
俺の手で。
そして彼女は――
全く、抵抗していなかった……
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