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ここ数日、奇妙な現象に悩まされていた。 朝起きると、時折自分の体が布団の中に横たわったまま、宙に浮いている気配を感じるのだ。最初は寝ぼけているのかと思った。だが、数日続いたその現象は、どうやら単なる寝惚けでは説明がつかないものだと気づいた。 ある日の午後、一人部屋で試してみた。目

ここ数日、奇妙な現象に悩まされていた。

朝起きると、時折自分の体が布団の中に横たわったまま、宙に浮いている気配を感じるのだ。最初は寝ぼけているのかと思った。だが、数日続いたその現象は、どうやら単なる寝惚けでは説明がつかないものだと気づいた。

ある日の午後、一人部屋で試してみた。目を閉じ、意識を一点に集中する。呼吸を整え、身体の感覚から少しずつ離れていく。

すると、いつもの現象が起きた。

じわりと、ゆっくりと、自分という存在が肉体から乖離していく感覚。目を開けると、そこには確かに、自分の体が机にうつ伏せになったまま動かずにいる。そして今の"俺"は、その傍らに立っている。驚くが、恐怖はあまり感じなかった。子どもが初めて自転車に乗れた時のような、不思議と高揚感の方が強かった。

が、すぐに制御不能になり、あっという間に元の体に戻された。一度限りの変な夢のつもりでいたが、その日の夜もまた同じことが起こる。今度はもう少し長く、魂と呼ぶべきか分からないその存在状態を維持できた。手を伸ばしても物体に触れることはできず、ただ見て回るしかない。誰かに話しかけても、声は伝わらない。

大学の講義で居眠りしながら考えた。

(これって、もしや憑依とかできるんじゃないか?)

小説や漫画で見るような、人間の体に入り込む能力?考えただけで背筋がゾクゾクした。

キャンパスを歩きながら、ふと頭に浮かんだのは、サークルの後輩・西住佳奈だった。彼女とは最近知り合ったばかりで、まだ軽い会話を交わす程度の関係だが、清楚で礼儀正しい態度の裏に、どこか茶目っ気のある性格が垣間見える。彼女ならば、もし失敗しても、何となく笑い話にできるような気がした。

「ふぅ……」

昼休みのキャンパス。桜の木蔭で一人昼食を取っていると、視線の隅に水色のカーディガンが揺れるのが見えた。振り返ると、佳奈が小さな弁当箱を抱えて歩いてくる。

こっちを見つけて軽く手を振ってくれた。

「先輩、お疲れ様です。一人ですか?」

意気揚々と近づいてくる後輩の鼻に、まだ一粒だけ米粒がついている。それを指さすと、はっとした表情で慌てて拭き取った。普段はクールな優等生なのに、こういうおっちょこちょいな一面があるからおかしい。

「そうですか。それじゃあ、また部室で〜!」

教科書を片手に颯爽と去っていく彼女の後姿を見送りながら考える。あんな風な、普通の女の子の体に入り込むなんて、やっぱり無茶かもしれない。

それとも、あるいは……。

(重要なのは、どうやってやるかだ)

帰りの電車の中で、ぼんやりと窓越しに風景を眺めつつ、いくつかの可能性を思索する。

夜、布団に入っても眠れない。この不思議な能力を他人にも試したい、という衝動が少しずつ大きくなっていく。窓の外、満月が雲間から顔を出す。欲望のままに行動に移せと。俺を肯定しているように見えた。

授業が終わった後の文学部棟。夕暮れの光が長い廊下に差し込み、人影もまばらだった。

図書館に戻るつもりで階段を降りようとすると、偶然にも佳奈が上の階から降りてくるのが見えた。いつもの水色のカーディガンにピンクのスカート、小さなリュックを背負っている。後輩がこちらに気づき、素早く軽く会釈する。

「あ、先輩。お疲れ様です」

一瞬だけ視線が合って、すぐに俯き加減になる癖がある。普段は清楚な印象だが、俯いた時だけ見える後ろ髪の束が、何故か妙に気になっていた。廊下の窓から差し込む夕日が、その茶髪をほんのりオレンジ色に染めている。

「今帰り?」

「はい…あの、先輩もお帰りですか?」

立ち話が始まる。先週の課題の話、来月のサークル合宿の話。何気ない会話の最中、俺は密かに集中力を高めていた。今なら誰もいない。この環境こそ、実験にうってつけではないか。椅子や壁に寄りかかったりする佳奈の行動パターンを観察しながら、時機を伺う。

「先輩、今日はなんか様子が…あ、熱でもあるんですか?」

突然彼女が心配そうな目を向けてきた。どうやらこちらの様子がおかしいと気付かれたらしい。咄嗟に

「いや、ちょっと眠くて」

と作り笑いを返す。佳奈は「そうですか…」と微妙に首を傾げたまま、再びリュックの紐を弄び始める。この瞬間だ。意識を一点に集中させ、全身の感覚を研ぎ澄ます。魂と呼ばれる何かが肉体から剥がれていく感覚が、じわりと広がる。

佳奈の肩にそっと触れた。もちろん物理的には触れていないはずだが、特別な感覚が指先を伝う。彼女の体が微かに震える。体が冷たくなっていくのが分かるようだった。

彼女の足ががくんと震え、両手がぴたりと止まった。

「……っ」

微かに聞こえたのは、佳奈の小さな呻き声か。

瞳が一瞬見開かれ、黒目が左右に小刻みに揺れる。まるで体内で何かが激しく蠢いているかのようだった。でも廊下は相変わらず静かで、それを気づく者は誰もいない。

「……先……輩……?」

明らかにいつもと違う、か細い声。だが佳奈には抵抗する力があるようだった。彼女の右手が震えながらも、自らの胸元にゆっくりと上がっていく。

俺は焦った。完全な支配ができると思っていたのに、彼女の中の何かが抵抗している。それでも次第に彼女の動きは鈍くなり、視線は虚ろになっていく。瞼がゆっくりと閉じ、再び開かれた時、そこには輝きを失ったモノクロームの瞳があった。

「うひぁ、っ」

ようやく憑依が成功した瞬間、衝撃が走った。

違和感というにはあまりに鮮烈な感覚。柔らかな感触、ふくよかな胸の重み、スカートの裾が太ももに触れる感覚。全てが異様にリアルで、最初は吐き気すら覚えた。

「……っ…は…ひ……」

佳奈の唇から漏れたのは、こんな風に言葉を発した記憶のない声ばかりだ。確かに今、俺の中には佳奈の意識はない。でも何故か、こぼれ落ちそうなこの感覚は、紛れもなく"彼女のもの"だった。

俺は佳奈の身体と向き合って、同時に俺自身を「別な視点」から見つめていた。

「これって……」

「これって……」

鏡に映ったように対称的に立っている奇妙な構図。右手を上げると、佳奈の左手が遅れてついてくる。だが妙なことに、その動きは徐々にスムーズになっていく。まるで古い機械の油が少しずつ回り始めるかのようだ。

「もしかして、同時に喋ってる……のか?」

「もしかして、同時に喋ってる……のか?」

全く同じ言葉が、エコーのように響く。2つの身体が同時に動く。

それに気付いた瞬間。最初に襲ったのは、胸の重さだった。今までなかった張りのあるふくらみが、重力に引かれる感触。思わず手で支えると、柔らかく温かい弾力が指に伝わる。あまりの刺激に背筋がゾクゾクし、腰がくにゃりと折れそうになる。

「わ……っ」

自分の声ではない高くてか細い声に、さらに驚く。声帯の震え方が違う。息を吸い込むと、肺の容量の小ささからか、すぐに息苦しさを感じた。スカートの裾が風に揺れ、太ももに触れる感触はなんとも言えない違和感。髪の毛が肩にかかるのも慣れない。

これは……佳奈の感覚、なのか。

「「片方だけ、動かすことはできるかな?」」

一歩、前に出てみる。ヒールのないローファーで歩く感覚は軽やかだが、腰のくねり方が自然と大きくなる。意識してまっすぐ歩こうとしても、どうしても女性らしいステップになってしまう。おそるおそる自分の体に触れると、細くしなやかな指先が首筋を撫でる。肌触りが滑らかで、つい夢中で触り続けてしまう。

「「す、すごい……これが佳奈の体……」」

今まで客観的に見ていた後輩の身体が、今や自分のものだ。興奮と罪悪感が入り混じる。好奇心に駆られ、リュックからスマホを取り出す。画面に映った佳奈の顔は、いつもと違う虚ろな表情だが、まばたきをするとちゃんと動く。頬をつねってみると、思ったより痛い。涙がにじむほどだった。

ちょうど近くに階段があった。試しに階段を降りる練習をする。片手でスカートの裾を抑えるのが自然と身についていることに驚く。一段降りるごとに胸が優しく揺れる感触が気になって仕方がない。鏡の前で首を傾げると、鏡の中の佳奈も同じ動作をする。唇を軽く噛む仕草まで、完璧にコピーされている。

「……ふふっ」

なぜかふと笑みがこぼれた。この感覚、何だか心地良い。まるでずっとここに属していたような、そんな錯覚に陥る。思考が佳奈の身体に同化していくような、甘く危険な感覚。徐々に「俺」という意識が薄れていくのを感じながらも、その誘惑に身を任せそうになる。

廊下に立ちながら、じっと目を閉じてみる。

自分の体から――佳奈の体にただただ意識を集中させた。

風が髪を撫でる感覚。胸元の衣服が肌に触れる柔らかな圧迫感。スカートの下から伝わるひんやりとした空気。全てが新鮮で、どこか官能的ですらある。

俺はゆっくりと手のひらを広げ、指を一本ずつ動かしてみる。佳奈の指は細くて繊細で、爪は小さく整えられていた。手の甲の血管が薄く浮かんでいるのが見える。こんな手で何かを触れる度、今まで知らなかった刺激が神経を駆け巡る。

「……これ、本当に俺なのか?」

鏡に映る自分――佳奈の姿を見つめる。唇を軽く噓むと、鏡の中の彼女も同じ仕草をする。首をかしげたり、目を細めたり、表情を変えてみたり。すべてが完璧に連動している。少しずつ意識が佳奈の体に染み込んでいくような、奇妙な充足感。まるで長年使い続けた体のように、違和感が薄れていく。

ふと、腰をくねらせてみる。自然とヒップが揺れ、重心の取り方が以前とはまるで違う。歩き方を試すと、無意識に背筋が伸び、腰の動きが強調される。女性としての動きが、いつの間にか「当たり前」になりつつある。

最後に胸に触ってみる。当たり前のようにある。男にはない柔らかい膨らみ。

「……っ、これは……まずいぞ……」

胸が高鳴る。いや、違う。これは佳奈の心臓の鼓動だ。それなのに、なぜか自分自身の興奮と重なっている。肌が火照り、息遣いが自然と浅くなる。スカートの下で太ももが触れ合うたびに、びくんと神経が反応する。男の時とは違う感覚だ。もっと柔らかく、もっと敏感だ。

リュックに手を伸ばし、中の小物を確認してみる。佳奈の財布、スマホ、化粧ポーチ。まるで秘密を覗き見るような後ろめたさと、興奮がこみ上げる。ポーチを開けてみると、小さなリップクリームが入っている。つい、手に取ってみる。蓋を開け、ほんの少し指に乗せ、唇につけてみた。

「……んっ」

ひんやりとした感触に、思わず声が漏れる。唇同士が触れ合う刺激が、普段の何倍も鮮烈に感じる。これが佳奈の唾液で潤った唇の感覚か。無意識に舌で舐めると、ふわっと甘い香りが広がった。

「……あ、やばい」

あまりに没入しすぎている。少し冷静にならないと、このまま佳奈になりきってしまう気がする。いや、もうなりかけているのかもしれない。自分が「俺」であることに、少しずつ引っかかりを感じ始めている。

だが――

「……でも、この感覚、気持ちいいな」

もう一度鏡を覗きこむ。映っているのは紛れもない「西住佳奈」だ。それでいて、中身は俺だ。この矛盾した感覚が、なぜか心地良い。

――完全に彼女になってしまえそうな、危うい誘惑が頭をよぎった。

…いや、でも……

廊下にはまだ誰もいない。盲目のように視線を落とすと、自分の腰のライン、ピンクのスカートの襞、そしてその下に隠された領域へと自然と意識が向かう。

(佳奈の……下着……)

冷や汗が首筋を伝う。好奇心と背徳感が入り混じり、指先が震える。少しだけ……見たくて仕方がない。鏡に映る自分――佳奈の困惑した表情を確認してから、スカートの裾を軽くめくる。

「……水色の……レース……」

吐息が喉から零れそうになる。下着は思ったよりも繊細で、柔らかな生地に透けるような水色のレース。自分のものじゃない、佳奈のパンティだというのに、なぜか思考が混濁する。ふわりと指が触れるだけで、布の下からすでに熱を帯びているような、生々しい感覚が伝わってきた。

「……ん……あ……」

声が勝手に漏れる。これは佳奈の声なのに……自分の感覚だ。つい、さらに深く指先を探り込んでしまう。それまで男の体でしか知らなかった感覚とまったく違う、奥行きのある熱。もっと、もっと触りたくなる。指が勝手に動き、スカートの裾を押し上げる。レースに包まれた腿の内側がピクッと震えて、血の気が一気に体を駆け上がる。

「……っ……!」

くぅっと下腹部が熱くなる。これが……女の体の反応か。自分が、自分で自分をこんな風にいじっている……ああっ、ダメなのに……。

ぎゅっと太ももに力が入った。佳奈の体の、こんな感触を俺が初めて知ってる。だれよりも――彼女自身よりも、俺のほうが今、佳奈のすべてを感じてるんだ……。そんな独占欲みたいなものまでが、股間に沁みてくる。

確かめるように、もう一度レースの奥へ――……

「…………!!」

(いかん……誰か来る……!!)

急に我に返り、そっとスカートを元に戻す。顔が火照り、鼓動が耳元で激しく鳴っている。

このまま廊下にいたらヤバい……こっち(元の自分の体)も放置してるし、他の場所に移動しないと。佳奈の体を、もっと……じっくり味わうためには……

「……っと……急ごう……」

か細い声で呟くと、もはや佳奈の口調で思考している自分に、またぞろ背筋がゾクッとする。

――連れて行かないと。

― 佳奈を連れて、だ。

そう思っただけで、脳髄の奥まで痺れるような酩酊感に包まれた。

(……やっぱり、女の体になったら、まず……これを……試したいよな……)

古い講義室。カーテンの隙間から差し込む夕焼けの光が、長机の角を鈍く照らしている。人気のない教室で、俺――佳奈の体は、机の角にぴったりと小股を押し付けていた。ピンクのスカートは腰までたくし上げられ、水色のレースのパンティがむき出しだ。

「……んっ……あ……」

机の角が、布越しにまんこをグリグリと押し上げる。男の時のオナニーとは、あまりに違う感触に膝が震えた。角の堅い感触が、柔らかい割れ目に食い込んでいく。太ももの内側がぴくぴくと痙攣し、腰が勝手に前後に動き始める。

思わず机に手をつく。佳奈の細い指先が、木目の上で必死に広がる。ああ……これが、女の感覚か……。ちくびがカチコチに膨らみ、ブラジャーに擦れるだけでびりびりと快感が走る。スカートの中では、机の角がレースをずらし、じかにあのシワの多い部分を押しつぶしていく。

「……ひゃ……んっ……後輩の、女のおまんこ、いいっ♡」

声が漏れる。漏れすぎる。佳奈の声なのに、いまは俺のものだ。こんなに喘いで……。机の角が淫らにぬらぬらと音を立てている。触ってみると、パンティの中はもうびっしょり。腰が滑って、角の硬い部分が自らのクリトリスに触れた瞬間――

「――っ!?」

腰ががくんと跳ねる。あまりの快感に目が白黒した。男の時の感覚とは、まったく違う……! 脳みそがとろけそうな、じんわり広がる余韻。チンポの快感なんて、これに比べたら単なる「気持ちいい」程度だ。

もっと……もっと知りたくて、俺は腰の動きを速める。机の角がぴったりとクリトリスにフィットして、ぐりぐりと回すたびに体中が痺れる。佳奈の体はこんなにも……敏感なのか? 何度イッても、次々に波がやってくる。

「……あ、あん……だめ、また……っ」

ふとももがじんわり熱を帯び、子宮の奥がぐずぐずと疼く。本当に気持ちいい……。女の体って……こんなに……。

佳奈は今まで、こんな快感を知らないだろう。俺だけが知ってる。指でパンティをよけ、直接机の角をまんこに擦り付けると――

「ひゃあっ!?」

とろけるような快楽が爆発した。腰が震え、足首がぷるぷると震える。

「あっ、イク……女の身体でイッちゃう……!♡♡」

机にがしりとつかまり、強制的にもっとも気持ちいい角度に押し当てる。これだ……これが女のイキ方か……!

「……んぐっ……は、ぁ……っ♡」

涎が垂れそうになるほどの絶頂。瞳孔が拡がり、佳奈の顔がとろんとする。まだ……まだイケる。もっともっと堕ちていきたい。これが……本当の快楽なんだ。男の体では絶対に味わえない、奥までずぶずぶと犯されるような悦楽。

目の前に俺の本物の体が座っている。うつろな目をした自分の姿を見ながら、佳奈の体で絶頂を迎える……なんて、背徳的で……。

それがまた、快感を加速させる。

(佳奈……俺、お前の体……好きすぎる……)

そう思った瞬間、またしても腰が跳ねる。次から次へと波が来て、まんこがじゅぷじゅぷと机を濡らしていく。だらしなく垂れた愛液が、机から滴り落ちる。

ふと鏡のような窓に映った佳奈の顔は、もうとろんとして、唇を半開きにした悦楽の形相だった。俺のものになった、佳奈の体……。

「っ……あ、ああ……んっ……」

何度イッたかわからない。ただ、女の体の快感は、まだまだ底が見えない……。

数日後――。

あの日、佳奈の体で味わったあの快感が、頭から離れない。机の角に擦りつけた時のあの震えるような感覚、あのびしょびしょに濡れた熱……。一度だけで満足できるわけがない。

キャンパスを歩きながら、目は自然とあの茶髪のボブを探している。午後の授業が終わった時間帯、学生たちがぞろぞろと校舎から出てくる中、ふと目に留まったのは、水色のカーディガンを羽織ったあの後輩だった。佳奈は一人で中庭に向かうところらしい。人気のないベンチに座り、スマホをいじり始めた。

(ちょうどいい……)

背後からゆっくり静かに近づく。風が頬を撫でると同時に、意識を集中させる。魂の引き剥がし――前より確実に、素早くできる。

(行くぞ……!)

佳奈の背中に、掌を触れる――いや、触れたつもりになる。

「……ッ!?」

彼女の肩が僅かに震える。瞬間、佳奈の体が硬直し、スマホがひょろりと膝から滑り落ちた。小さな「あ……」という息が漏れたかと思うと、彼女の瞳が一瞬見開かれる。黒目が左右に焦しく動き、抵抗しようとする意識が伝わってくる。

(いける……!)

痙攣する佳奈の指先が、ベンチの端をぎゅっと掴む。唇がかすかに震えている。しかし、もう遅い――俺の意識はもう佳奈の中へ入り込んでいた。前回よりも確実に、深く。彼女のまぶたが重そうに閉じ、再び開いたときには、瞳はもう、光を失っていた。

(……乗っ取った)

ポロリと、佳奈のスマホが地面に落ちる。だが、彼女――いや、俺はもうそれを気にしない。ゆっくり立ち上がり、スカートの裾を軽く払う。佳奈の体はもう、俺のモノだ。

「……乗っ取り完了っ♡」

声を出してみる。佳奈の声……でも、中身は俺だ。この調子で、またあの快楽を……。

研究棟の薄暗い廊下。平日の夕暮れ時ということもあって、人の気配はほとんどない。俺の本来の身体は壁にもたれかかった状態で、目の前には佳奈の身体が、軽くカーテンダンスのような仕草をしながら立っている。

集中力を高め、意識を二つに分ける。半分は本来の肉体に、もう半分は佳奈に。

「はい、佳奈モードで……行くぞ」

俺自身の口が動き、同時に佳奈の唇が可愛くふくらむ。二つの声が少しずれて重なる。

「先輩~♡」

佳奈の方の身体が、わざとらしく腕を猫のようなくねり上げ、少し首を傾げる。練習してきた、彼女の癖を完コピした仕草だ。髪の毛を指でくるりと巻きつけ、腰をわずかに振ると、ピンクのスカートがふわりと舞う。

「今日も佳奈、先輩に会いに来たよ~♡」

声の調子を高めに、甘ったるく演じる。自分の本物の身体に近づいては、はにかみながら袖を引っ張る。完全に俺の中の"佳奈イメージ"で動かしているだけなのに、なんとも言えない羞恥と快感。

「ほら、返事しなきゃダメでしょ、先輩~?」

今度は俺の本物の身体を動かし、照れたように顔を背ける演技。二つの身体で、小さな芝居をしているような感覚。

佳奈の身体を操り、無理やり自分の方に抱きつかせる。胸の柔らかな感触が、男の身体に伝わってくる。同時に、女の身体としてのそれも感じられるという、奇妙な二重感覚。

「もう、先輩ったら、佳奈とデートするの恥ずかしいの~?」

わざと大きな声で言ってみる。あたかも本当に彼女がそう言っているかのように。無人の廊下に響く佳奈の甘えた声。誰かに聞かれたらと思うと、またしても背徳感が心地よい。

ふと、佳奈の手を取ってみる。細くて柔らかい指。それを自分の手と比較する。同じ『俺』が操っているのに、ここまで違うものか。

「やっぱり……女の子の体って……いいなあ」

両方の口から、同期するように呟く。そんなことができるようになったのだ。

研究棟の薄暗い廊下で、二つの身体は密接に絡み合っていた。俺の本来の肉体は壁にもたれ、佳奈の身体はその前に跪いている。半分ずつの意識で、両方を操る――これがどんなに異常な行為か、頭ではわかっていても、もう止められない。

「……やってみるか」

俺の本来の口がそう呟くと、跪いた佳奈の顔が上向く。瞳には光がないが、唇はゆっくりと開いていく。これも全て俺の意識だ。他人の体を使って、自分にこんなことをさせるなんて――

(いけそうだ……)

佳奈の細い指が、ズボンのベルトを外す。男の感覚としては、ただ見ているだけ。だが佳奈の体としての感覚は、全く別物だ。目の前に広がる自分の股間、ズボン越しの膨らみを見下ろす佳奈の視界。鼓動が早まる。

「んっ……」

軽い吐息が漏れる。佳奈の声、佳奈の唇で、俺は自らの膨らみに息をかける。熱い。女の体だからか、吐息の感触まで繊細に感じられる。

(これが……佳奈の口か)

舌が、布越しに舐める。女としての感覚では、男物の生地のざらつき、そしてその下にある何か――自分自身の形が恐ろしく生々しい。

(ああ、気持ちいい……)

両方の感覚が混ざり合う。男としての快楽と、女として"咥えている"という背徳感。本来の肉体がゾクッと震えると、佳奈の手も同時に動き、ジッパーを下ろす。

「……ぁ」

むせ返りそうな熱気。佳奈の視界が一瞬ぼやける。男としての感覚では、佳奈のあの小さな口が目前にある――だが女としての感覚はもっと鮮烈で、鼻腔に届く匂い、眼前の肉塊の存在感に、喉の奥が自然と濡れていくのがわかる。

(入れてやるからな)

二つの意識で同じ快楽を追求する。佳奈の手がゆっくりとパンツを下ろし、舌が這い出す――

「ぐっ……!」

男の感覚では、女の口の熱さが压倒的だ。だが同時に佳奈の感覚としても、舌に伝わる脈打つ感触、のどに押し込まれる異物感が、痛みと快楽の境目を行き来する。

「んぅ……っ!」

佳奈の喉が収縮する。奥まで入りすぎて、涙が浮かぶ。だが――これは全て俺の意識。自分で自分の喉を犯しているような、狂った一体感。

(もっと……もっと深く)

腰を押し上げる。佳奈の頭がぐいと引っ張られ、首の線が引き伸ばされる。完全に"自分"を受け入れている佳奈の顔を見下ろす――いつもはクールなあの後輩が、今は俺の欲望の受け皿だ。ディープスロートで喉が変形する感触を、両方の体で味わう。

「はぁ……佳奈」

喘ぐ本来の声と、むせ返る佳奈の聲が絡み合う。唾液が溢れ、佳奈の顎を伝う。その感触すら、女の感覚として灼熱に感じられる。

(ああ……こいつ、完全に俺のオモチャだ……)

指が佳奈の髪を掴み、リズムを取る。舌の動き、喉の絞まり――全てが完璧に連動している。なぜなら、どちらも"俺"だから。あの生意気な後輩の身体が、しゃぶるたびにびくんと震えるのを、内側から感じられる。

意識が混濁する。女の感覚と男の感覚が溶け合い、どちらが本当の"自分"かわからなくなりそうだ。佳奈の涙、自分の吐息、ぐちゅぐちゅという音――

そして、どちらの身体も止まらなくなった。

佳奈の体を壁に押しつけ、ピンクのスカートをたくし上げた。パンティはもう濡れ透けて、窓から差し込む夕焼けに微かに光っていた。慣れていなかった前回とは違い、今回は両方の体をコントロールできている。完全に佳奈の中へと浸透している。彼女のすべてが俺のものだ。

「あ……んっ……」

背中越しにゾクゾクする吐息が漏れる。佳奈の意志はもうない。声も、震える唇も、全て俺が操っている。それでも――女としての視点で、目の前に広がる光景を見ると、背徳感が快感に変わる。

(……ヤバいぞ、これ)

腰を押しつけた瞬間、熱い。柔らかすぎて、ズブリと入りそうで怖い。これが全然、男の体とは違う感覚だ。ふくらみのあるヒップに手をかけ、ぐっと体重をかけると――

「――ッひぁっ♡」

裂けるような感触が、佳奈の下半身を貫く。ブチッ、と繊維が千切れる音がして、体内に熱い痺れが走った。女としての意識が一瞬、悲鳴を上げる。痛い――でも、それがすぐに信じられない快感に変わる。肉壁が無理やり押し広げられ、膣の皺が擦り切れるような微熱。

「あ、あんっ……破れちゃった……♡」

自分の声が聞こえる。佳奈の声だ。女になっている俺は、頬を紅潮させ、目の前の壁に爪を立てながら腰を震わせる。

「先輩、入ってる……んぅっ、佳奈のなか、ぐちゃぐちゃ……♡」

壁に押しつけられたままの姿勢で、最初は浅くこする。破れた処女膜の痛みは、まだ体内に残っているけれど、その奥には妙な"期待感"みたいなものが蠢いている。

(……もっと、動きたい)

「佳奈、自分で腰振ってみろ」

「は、い……っ♡」

自分の命令に従って、佳奈の腰が勝手に動きだす。女としての感覚を保ちながら、股間を押しつけられ、肉棒の膨らみに膣が吸い付く感触が……たまらない。

「っ……あ、あんっ! 処女だったのに、先輩に、奥まで……つかれてる……♡」

声は高く、甘く、そして明らかに悦んでいる。佳奈の体温は上がり、胸元に汗がじわりと浮かんでくる。

「こんなに……入れてもらっちゃって……佳奈、男と女の感覚両方感じて、おかしくなっちゃう……♡」

完全に"壊れた"感覚が、脳を麻痺させる。自分の本体とのセックスなんて、異常すぎる。それでも、佳奈の女としての官能が、思考をドロドロに溶かしていく。

「んあっ……! また、奥で跳ねてる……♡」

ピストンの速度が増す。佳奈の膣は締まり、びっしょりと濡れた肉が男の形に媚びる。壁に掌を打ちつけ、体を揺らしながら喘ぐ。快楽に溺れる声を、俺自身が女の口で吐き出す。

「先輩……佳奈、犯されるの大好き……♡」

「くぅっ……!!」

意識が吹き飛びそうだ。だめ……もうダメ……っ。膣の奥に熱い衝撃が走り、腰が勝手にヒクついて、ぐしょぐしょの愛液が滴り落ちた。

ああ……俺は、男なのに。こんなに堕ちた叫び方をしてしまう。

でも気持ちいいんだ。どうしようもない……♡

――そして、遂に堪えたくなった瞬間。

「あ゛っ……! いく……佳奈の中で、絶対いっちゃう……っ♡ いくぅぅぅぅっ!!♡♡♡♡♡」

膣が甘く痙攣し、男の体も女の体も、同時に絶頂へと引きずり込まれた。

空き教室のドアを静かに閉め、鍵をかける。カメラを三脚にセットし、リモコンを手にする。今日は佳奈の体の「限界」を試す日だ。

「……よし、これで準備OK」

俺自身の肉体はキャンパスの反対側、図書館にいる。感覚を研ぎ澄ませると、300メートル離れた場所にある、全裸の佳奈の体がくっきりと視界に入ってくる。

裸の佳奈はカメラの前に四つんばいになる。白い肌がダストライトの光を受けて淡く輝く。

[ん……これで、大丈夫かな?]

佳奈の口から出るのは、俺の意識の声だ。この距離でも、ちゃんと操れるんだ。

カメラの録画ボタンを押し、リモコンで操作する。佳奈のおっぱいがふわりと揺れる。

[い、いつもお世話になってます、先輩……あ、佳奈です♡]

恥じらうような笑顔。手で胸を隠す仕草―しかしすぐに[……って、いま隠しちゃダメだよね]と自ら手を離す。

[はだか……撮っちゃってます……♡]

鏡を覗き込み、佳奈の体をチェック。ピンクの乳首は少し硬くなっており、下半身は既に湿っている。 佳奈の細い指が乳房をつかみ、肉を押し上げる。

[見てください、先輩……佳奈のおっぱい……こんな風に、尖ってます。先輩のせいで……♡]

今度は腰を高く突き出す。[あ、こんなポーズも……いかがですか?] 腿の内側が赤く染まり、可愛らしい、処女ではなくなったおまんこの割れ目がゆっくり開いていく。

胸、腰、そして最も恥ずかしい部位など、あらゆる角度で体を晒しながら、メッセージを記録していく。 佳奈の声で「先輩が見てる」って言いながら、俺自身が興奮してるんだ。

いつものように文学部棟の階段を上がっていると、ふと視界の端で水色のカーディガンが揺れた。一瞬で血の気が引く。佳奈だ。しかも明らかにこっちに歩いてくる――用事があるらしい。

「あ、先輩!ちょうど良かったです」

優等生モードの佳奈だが、何だか表情が柔らかい。いつもより頬が緩んで、目尻が下がっているように見える。こんな柔和な表情で近づいてきたのは初めてだ。

(まずい……バレたか?)

咽の奥がカラカラに渇く。頭の中で最悪のシナリオが駆け巡る――警察沙汰、大学からの追放、世間の白眼視。だが、佳奈の表情には怒りや疑惑のかけらもない。

俺は冷や汗をかきながらも平静を装う。「どうした?」

「あの……私、最近ずっと先輩のことが気になってて」

佳奈が頬を少し赤らめ、指先でカーディガンの袖をくるくると回す。この仕草はいつもの癖だが、今日は何故か胸が苦しくなるほど可愛く見えた。

(え?まさか……)

手の平にじっとりと汗が滲む。心中で覚悟を決めながら、自然な反応を演じる。

「急に何を言い出して……俺とあんまり話したことないだろ?」

「そうかもしれませんが……」

佳奈は一歩近づくと、ぽつりと呟く。その吐息は甘く、不思議な説得力があった。

「何だかよく分からないんですけど……私、先輩と一緒にいると安心するんです」

廊下の窓から差し込む午後の光が、佳奈の顔を暖かく照らす。瞳の奥で、まるで長年連れ添った恋人のような親密な感情がゆらめいているのが分かった。

「それから……なんていうか、強く引き寄せられるものがあって」

佳奈は更に一歩近づき、俺の胸のあたりを見上げる。後輩が先輩に喰らいつくようなこの目つきは、確かにあの時――壁に押しつけながら快楽に耽っていた時と同じだ。憑依させていた時の記憶はないはずなのに。

「先輩のこと、もっと知りたいんです。私……先輩になら、全部見せてもいいと思ってるんですが……」

ああ、これは……。

女の、恋の、宣言だ。

佳奈の言葉が次第に熱を帯びていく。彼女の指が私の袖を掴み、力がこもる。

「私、先輩に……もっと近づきたいんです……」

その表情には、無邪氣な恋心だけでは説明できない陰影が浮かんでいた。違和感が胸に刺さる。奥歯で下唇を噛み、息を詰めて聞く。

「……どういう意味だ?」

佳奈は一瞬迷ったように目を伏せるが、すぐに潤んだ瞳を上げた。

「恋人にしてください♡」

「…………」

「先輩。私、全部分かってるんですよ。ちゃんと覚えてます」

静かな声だったが、鼓動が一気に速くなる。

「先輩が私の体を……操ってたこと。触ったり、見たり、えっちなことまで……」

耳元で血が騒ぐ。冷汗が背中を伝う。バレていたのか? 覚えていたのか? だが佳奈の表情は怒りではなく、むしろ熱っぽく輝いている。

「最初は夢だと思ったんです。気持ちいい夢が何度も続くから、おかしいなって。でも……あれ、現実だったんですね?」

彼女の指が、少し震えながらスカートの裾に触れる。

「私、怖くなんかないんです。むしろ……」

ゆっくりと、水色のレースのパンティが見えるまで布をたくし上げる。教室の窓から差し込む光に、透けた生地の奥がくっきりと浮かび上がった。

「……また、あの感じが嬉しくて。先輩に操られて、何も考えずに気持ちよくなるあの時間が、たまらなく好きで……」

息遣いが荒くなる佳奈の唇から、こぼれるような声が続く。

「ねえ、お願いです。もう一回……私を、先輩の人形にして。」

足首を絡めるようにして立つ彼女の腿は、興奮で淡く紅潮していた。指先がパンティのレースを撫で、布の下の感触を確かめるように押し込む。

「先輩が私の中で暴れたこと、処女を奪ったのも、私を勝手にイかせたことも……全部。でも、だからこそ……」

佳奈が前のめりになり、吐息をかけてくる。

「私、こうなってるんですよ。先輩にどこまで弄ばれても、抵抗できない体に……」

それはもう「後輩」の顔ではなかった。明らかに歪んだ欲望に染まった、淫らな女の顔だ。憑依の影響か、それとも……。

「だめだ。あれはただの――」

「ただの?」

佳奈が笑った。その瞳の奥には、あの日鏡に映った悦楽に溺れる自分がいた。

「先輩だって、楽しかったでしょ? 私の体でイくの」

記憶が蘇る。佳奈の中に入り込み、熱に浮かされるように貪り合ったあの感触。心臓が高鳴り、目眩がする。佳奈がさらに近づき、耳元で囁く。

「ねえ、早く……私のそういう部分、また見たいでしょ? 触りたいでしょ?」

喉が乾く。指先が震える。理性が砕け散る音が聞こえそうだ。

「……教室に、行こう」

佳奈の目がきらりと光る。

「先輩、大好き♡」

かつてない熱量で、誘惑が押し寄せる――

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