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満月の光が湯けむりを銀色に染める、秘湯の露天風呂。静寂の中、湯の音だけが響く。

セイバー・オルタは濡れた髪を背に流し、黄金の瞳を細めて湯面を見つめていた。隣でジャンヌ・オルタが腕を組み、苛立たしげに湯を掻き回している。

「……静かすぎるわね」

ジャンヌ・オルタがぼそりと呟く。

「馬鹿か貴様は。風呂に無駄な騒ぎは不要だ」

セイバー・オルタの返事は短い。

肩が触れ合う距離まで寄ったところで、ジャンヌ・オルタがふと口を開いた。

「あーあ……マスターちゃんも誘えばよかったわ」

彼女は欠伸交じりに言い、唇を尖らせて遠くを見る。

「三人だったら、もうちょっと賑やかで楽しかったもの」

セイバー・オルタの黄金の瞳が、瞬時に鋭く細まった。

「……マスターを誘えていたら、お前をそもそも誘ってなどいない」

冷たく、静かに、しかしはっきりと告げる声。湯けむりすら凍りつきそうなほどの無慈悲さだった。

ジャンヌ・オルタは一瞬ぽかんとして、それからくすりと笑った。

「はっ。同じセリフをそのまま返してやるわよ」

彼女は小さく舌を出して、わざとらしく肩をぶつけてきた。

セイバー・オルタは「……ふん」と鼻を鳴らしただけで、再び目を閉じる。だが、湯の中でそっと絡まった指は、もう離れなかった。

月が雲に隠れる。湯けむりの中、二人の吐息だけが白く揺れて消えていく。

満月が再び顔を出したとき、湯船にはもう誰もいなかった。残ったのは、桜の花びらと、ほのかに甘い湯の香りだけ。

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