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これは試練だ。

そう、幾多の戦場を駆け抜けてきた私にとって、これほど困難な戦いはないかもしれない。

1月の張り詰めた冷気の中、衛宮邸の道場は静寂に包まれているはずだった。しかし、今の私の耳に届くのは、荒い息遣いと、私の伴侶であるユミの情けない悲鳴だけだ。

「ふぇっ!? あ、足が……またぁっ!」

バランスを崩し、パステルピンクのスポーツウェアに包まれた体が大きく泳ぐ。私は反射的に踏み込み、床に叩きつけられそうになる彼女の身体を抱き留めた。

「……ユミ、重心が浮いています。それでは敵の攻撃以前に、己の足で躓くだけです」

私の腕の中、自分より10cmも背の高い彼女が、すがりつくように私の肩に手を回している。

柔らかい。あまりにも。

鍛え上げられた騎士の筋肉とは違う、脂肪と熱を含んだ女性特有の感触。それが、薄いスポーツウェア越しに私の神経を逆撫でする。

「うぅ……ごめん、アルトリア。私、やっぱり鈍臭いよね……」

上目遣いに私を見つめる、潤んだ瞳。

これは鍛錬だ。彼女が「正月太りを解消したい」と望んだからこそ、私は剣を置き、指導者としてここに立っている。邪念を抱くなど、指導者にあるまじきこと。

──そうだ、これは試練なのだ。

私は努めて冷静に振る舞い、彼女の身体を立たせた。

しかし、試練の難易度は刻一刻と上がっていく。

「はぁ、はぁ……。それにしても、暑いなぁ」

一度休憩しようか、と私が提案しようとした矢先だった。ユミは無防備にも、ウェアのジッパーに手をかけ、それを胸の半ばまで一気に引き下げたのだ。

「っ……!?」

「んー、涼しい……。ねえアルトリア、少し休憩しない? もう汗びっしょりで……」

彼女は胸元をパタパタと手で扇ぎ始めた。

その動作に合わせて、豊かな胸の谷間が露わになり、揺れる。白い肌には玉のような汗が浮かび、首筋から鎖骨、そして胸の奥へと滑り落ちていく。

その軌跡を目で追ってしまった己を、私は叱咤した。見るな。見てはならない。

だが、視覚以上に私を追い詰めたのは「匂い」だった。

運動によって体温が上がり、揮発した彼女の匂い。甘やかなユミ自身の香りに、汗の湿り気が混じり合う。それはどんな媚薬よりも強烈に、私の奥底に眠る「竜」の本能を刺激した。

(……無防備すぎる。あまりにも)

彼女は気づいていないのか?

今、目の前にいるのが「高潔な騎士王」ではなく、空腹を抱えた獣になりかけていることに。

「アルトリア? 顔、赤いよ? もしかして部屋、暑すぎた?」

心配そうに、彼女が顔を近づけてくる。

私の頬に、彼女の熱い吐息がかかる。

その距離、わずか数センチ。

プツリ、と。

私の中で張り詰めていた何かが、決定的な音を立てて切れた。

「……暑い、ですか。ええ、そうですね」

「ふぇ?」

「ですがユミ、貴女は一つ勘違いをしている」

私は彼女の手首を掴んだ。先ほどまで支えていた手つきとは違う、逃がさないための強さで。

「あ、アルトリア……?」

「私が熱いのは、室温のせいではありません。……貴女のせいです、愛しき伴侶」

次の瞬間、私は彼女の足を払い、容赦なく床へと組み伏せていた。

ドサリ、という音と共に、ユミの背中が床につく。164cmの彼女の肢体を、私は上から完全に制圧していた。

「きゃっ!? な、なに!? これ何の技!?」

「『教育』です。己がいかに危機感を持たずに、捕食者の前で肌を晒していたか……その身に刻み込むための」

見下ろす彼女の顔が、驚きから羞恥へ、そして恐怖と期待が入り混じった色へと染まっていく。その表情の変化が、私の嗜虐心をどうしようもなく煽る。

「あ……ま、待って、アルトリア。私、汗かいてて……」

「構いません。むしろ、その匂いが私を狂わせたのですから」

私は彼女の首筋に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。濃厚な雌の香り。舌先で首筋の汗をひと舐めすると、ユミの身体がビクリと跳ねた。

「ひゃうっ!?」

「……甘い。貴女はどこまでも甘いですね、ユミ」

理性のタガが外れた私は、もう止まれなかった。

引き下げられていたジッパーに指をかけ、さらに下へと引き裂くように開く。露わになった白い乳房が、冬の空気と私の視線に晒され、恥ずかしげに尖っているのが見て取れた。

「あ、見ちゃ……いやぁ……っ」

「隠さないでください。貴女の全ては私のものです。この柔らかな肉も、心も、声も」

「……っ、アルトリアぁ……」

私の名を目を潤ませて呼ぶ、その声。

ああ、もう駄目だ。試練など、今の私にはどうでもいい。

目の前の愛おしい伴侶を、ただ貪り尽くしたい。

「覚悟してください、ユミ。……今日の鍛錬は、ここからが本番です」

私は彼女の唇を塞ぎ、その抗議の声を甘い喘ぎへと変えるべく、深く、深く舌を絡ませた。

道場に満ちるのは、もはや冷気ではない。

二人の熱だけが、いつまでも渦巻いていた。

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