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照りつける夏の太陽と、鬱陶しいほどに白い砂浜。

マスターをパラソルの下に残し私は火照った身体と海水のベタつきを洗い流すため、少し離れたプライベートビーチのシャワーエリアへと足を運んだ。

黒のビキニに染み込んだ海水の重みを感じながら、濡れた銀髪を無造作にかき上げる。

シャワーのポールが見えてきたその時――ふと、背後の熱帯植物の隙間から、じっとりとした視線を感じた。

(……誰か、見てる?)

こんな貸し切り同然のリゾートで覗き? 呆れた度胸ね。

私は腰に手を当て肩越しに鋭い視線を投げ返した。あいにく、茂みの奥の姿までは見えない。けれど、確かな「目」の気配に、私の頬は不本意にも微かに熱を持った。

「……ふん。くだらない」

苛立ちを隠しきれないまま私はシャワーのバルブを捻った。

冷たい水が勢いよく降り注ぎ、肌を打つ。私は顎を上げ、片腕を上げて水流の中で髪を洗う。肩から胸元へと水滴が滑り落ちていく。

けれど視線は一向に消えない。

それどころか、私が無防備に水を浴びる姿を食い入るように見つめている気がする。

(ちょっと……いつまで見てるつもりよ)

平静を装おうとしても濡れた肌にまとわりつく視線のせいで、自分がひどく辱められているような気分になってくる。

半ば呆れたように、そして怒りを込めて横目で睨みつけるが、顔に熱が集まっていくのが自分でも分かった。

「……」

気のせいと思いつつも露わになった胸元に冷たい空気が触れ片腕で胸を庇うように隠し、背を預けた。

(絶対今見たわね……!)

全身が濡れそぼり水滴が腹部を伝い落ちる中、私は茂みの隙間へと怒りに満ちた視線を突き刺す。隠しきれない動揺と羞恥で、唇が小さく震えていた。

シャワーの冷たさとは裏腹に、身体の芯は嫌なほど熱い。

下半身へと流れ落ちる水が太腿を艶やかに濡らしていく。私は堪えきれず、片膝を少し曲げて腰を庇うように体重を移動させた。

怒りと、そしてどこか追い詰められたような情けなさで、視界がじんわりと涙で滲む。

「……いい加減になさいよっ!」

とうとう限界を迎えた私は濡れた髪を振り乱しながらシャワーを止め、半身を振り返って怒鳴り声を上げた。

「コソコソ隠れてないで、出てきなさい! その目玉ごと灰にしてやるわ……!」

足早に茂みへと歩み寄り、乱暴に葉を掻き分ける。そこにいた『不審者』の顔を見た瞬間、手の中に生み出そうとしていた炎が、シュン、と音を立てて消え去った。

「え……」

「あ、ち、違うのジャンヌ! これはその、誤解っていうか……!」

そこにいたのは、顔を真っ赤にしてパニックを起こしている、私の呆れたマスター――立香だった。

「……アンタ、何やってるのよ。いくらなんでも覗き趣味まで拗らせたわけ?同じ女なのに声かければいいじゃない」

「いや、心配だったんだよ!」

「はぁ?」

「だって、一人で遠くのシャワーに行っちゃうから……ここ、特異点だから何があるかわからないし、もし何かあったら今は邪ンヌと二人だけだから迷惑もかけるかなっておもって。だからついてきちゃったの……その、ごめん」

しゅんと肩を落とす立香の言葉に、私はポカンと口を開けたまま固まってしまった。

……この大馬鹿は、そんな理由でわざわざ茂みに隠れて見守っていたというのか。私が、そんなどこぞのひ弱な女みたいなヘマをするわけないじゃない。

怒りの熱とは違うどうしようもなく甘くて恥ずかしい熱が、一気に顔から全身へと広がっていくのが分かった。

「ばっ……馬鹿じゃないの!? 私がそんな間抜けな理由で倒れるわけないでしょ!」

「わかってるけど」

申し訳なさそうにけれど心底安堵したように笑うその顔を見せられては、これ以上怒鳴りつける気も失せてしまう。

私はバツが悪くなり、ズレないように水着の胸元を強く押さえながら、プイと顔を逸らした。

「……もう、鬱陶しいわね。心配するくらいなら、改めて言うけど最初から堂々と隣についてくればよかったじゃない。コソコソ隠れてるから変態だと思われるのよ」

「……うん。次はそうするよ」

「次なんてないわよ! ほら、さっさとパラソルに戻るわよ。……タオル、持ってきたんでしょうね?」

乱暴に言い捨てながら歩き出す。

背後から慌ててついてくる足音を聞きながら、私は誰にも見られないように、小さく、けれど確かに口元を綻ばせた。

fin.

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