都会のアンドロイドと大きなぬいぐるみ (Pixiv Fanbox)
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「じゃあねー、また明日ー」
そう言ってわたしは、幼なじみ兼友達の2人に手を振る。
「ああ、また明日」
「じゃあねー琴音」
2人も同様に手を振り返して、家に帰るために歩いていった。
少しその後ろ姿を見てから、南と書かれた表札がついている自宅へと鍵を開けて入る。今日も学校疲れたな。
「ただいま」
その言葉に返事をする者はいなかったが、いつもの事だと気にすることもなく、靴を脱いで自室に荷物を置いたら、手を洗うために洗面台へと向かった。
洗面鏡に映るのは、若干茶色気味の髪を短いポニーテールにした幼い顔のわたしである。もう中学2年生だというのに身長は140cmと低く、もはやここまで来たらこれ以上伸びないのではと不安になる。
自分でいってて恥ずかしいが、顔も幼く見えることで、低身長と相まってクラスでは小動物扱いでかわいがられている。
かわいく見られるのはいいことだが、少しは身長伸びないかなと、はぁっと息を吐いて、学校で汗をかいたので先にお風呂に入った。
「ただいまー」
「あ、ママおかえり」
お風呂から上がって部屋着に着替えた所で、母が帰ってきた。
「これからご飯作るけど、何か食べたいものある?」
食べたいものかーと悩んでから、目を向ける。
「麻婆豆腐がいいな」
「豆腐あったかな...うん、ある。じゃあ、できるまで宿題しちゃいなさい」
「はーい」
そう言われたので、2階にある自室へと階段を上った。
今日出たのは英語の課題のみだったが、あまり得意ではなかったために苦戦しながら回答を埋めていく。
ある程度終わったところで 1階から、ご飯できたよー!降りておいで!という声が聞こえたので、リビングへと足を運んだ。
リビングにはすでに父が座っていて、勉強をしている間に帰ってきていたようだった。
「パパおかえり」
「ただいま琴音」
挨拶をかわしてから冷蔵庫に向かうと、コップにお茶を注ぎ自分の席に座る。そのタイミングでテーブルの真ん中に、麻婆豆腐が入ったフライパンが置かれた。
わたしの家ではお皿にいちいち盛るのは面倒だと、たくさん作った料理はフライパンのまま真ん中において、各自食べる分をお皿によそうスタイルだ。
「いただきまーす」
「消費期限近かったから、今日麻婆豆腐で正解」
「そうだったんだ。あ、いただきます」
市販の麻婆豆腐の素は、いつも通りのおいしさを舌に伝えてくれる。だからといっておかわりはしなかったが。
体重を気にしなければ食べていただろうが、わたしは女子なもんで気になるのだ。
夜ご飯を食べた後は残りの課題を終わらせて、最近ハマっている漫画を読んだ。”寂しきキミ”というなんとも言えないタイトルだが、主人公の生い立ちやクラスメイトとの恋愛模様が楽しい作品だ。
その後は、明日も学校があるので早めに寝ることにした。
翌朝目が覚めると、顔を洗って髪を整えてリビングへと入った。すでに両親は起きていて、父は仕事へ行く準備途中、母は朝食をテーブルにのせているところだった。
「おはよー」
「おはよう」
「おはよう、朝食できてるよ。早く食べて着替えなね」
家族みんな朝はパン派なのだが、それぞれ食べたいパンは違う。わたしの朝食は、小さいクロワッサンと目玉焼きとサラダだ。朝食が食べ終わったら食器を片付けて、制服に着替えて家を出た。
玄関を出て家の前で待っていると、幼なじみの2人が歩いてきた。みんなで集まって登校するのは、小学生の頃からである。
「詩葉、大智、おはよー」
「琴音おはよー」
「おはよう」
挨拶をかわして、そのまま学校へと足を向けた。
昨日のお笑い番組がおもしろくて等のいつもの会話をしながら歩いていると学校についた。
1時限目は数学で、教師は若いアンドロイドの亜優先生だった。その手には指輪がされていて結婚していると分かる。また結婚しているので、人間としての名前を公的に認められている方だ。
ちなみにアンドロイドとは、幾人かの人に協力してもらい、採取したDNAをかけあわせて人工的な人間を作り、頭にチップを取り付けて、主人の命令をチップに送信するために受信機をつけて、最後に太ももに緑色に発光する製造番号を入れる。そうして生まれるのがアンドロイドである。
亜優先生は美人で優しくて、男子にも女子にも人気がある。1部女子には嫉妬されているが。
「はーい、授業始めるよー。128ページ開いてね」
優しい声とともに始まった数学は、あっという間に終わった。やばい途中寝てた気がする。
その後も2時限目3時限目と授業は続き、昼休みに入った。
「今日は何かなー」
お昼時になるとご機嫌になる詩葉と、今日も一緒に弁当を食べる。普段はここに共通の友達が2人入るのだが、どちらも風邪で欠席だった。同じタイミングで友達が2人もかかるなんてすごいなと素直に思う。
ご飯を食べていると、明日の遊ぶ時間について聞かれる。
明日は土曜日で、詩葉と大智と一緒にわたしの家で遊ぶ約束をしていた。たまにこうして、3人の内誰かの家で遊ぶことがあるのだ。
「明日両親出かけていないから、朝からでもいいよ」
「あ、そうなんだ。んー、じゃあ10時くらいに行くね。あたしから大智に言っておくよ」
「りょーかい」
前やったゲームまたやりたいなー、次は絶対勝つと意気込む詩葉に、大智強いからねーと返しながらご飯を食べていると、昼休みの時間は進んでいった。
放課後になり部活に入っていないのでそのまま帰宅すると、詩葉からやっぱり9時に行ってもいいかなと携帯電話にメッセージが入ったので、大丈夫だよと返信した。
2人とも運動系の部活に入っているので、この時間は部活動中だと思うのだが、こっそり抜け出して連絡をしてきたのだろうか。先輩に怒られてないといいな。
そうこうしているうちに母が帰宅したので、急いでお風呂に入って自室で課題を始めた。明日遊ぶのだから、早めに終わらせておいた方が後々楽になるはず。
そして夜ご飯が出来たタイミングで下に降りてご飯を食べて、早々と就寝した。
次の日、休みなので遅めに起きてリビングに行くと、父と母は出かける準備を済ませていて、後は出発するだけの状態だった。
「一昨日から言ってあったけど、おばあちゃんの家に行ってくるから、何かあったら連絡してね」
「それじゃあ、行ってくるな」
そう言うと両親は出かけて行った。
元々はわたしも連れていく予定だったらしいが、友達と遊ぶ約束が先にあったため、そちらを優先することにした。
そういえば来るの9時に変更になったんだったと、ふと壁掛け時計を見ると8時30分になっていて、慌てて着替えて朝食を食べた。普段の休みならこの時間に起きても良かったが、今日に限っては遅く起きすぎたようだ。
もうそろそろ来るだろうかと待っていると、インターホンが鳴った。
「来たよー。あーけーてー」
インターホン越しに聞こえる声に、はいはいと答えて玄関の鍵を明けに向かう。
ガチャっと音を立てて開いた扉の先には、詩葉しかいなかった。
「おはよー」
「おはよー。あれ?大智は?」
そう疑問を口にすると、詩葉は苦笑いを浮かべる。
「あー、なんか用事があるらしくて、10時じゃないと来れないらしいよ」
「ふーん、わかった。とりあえず2人で遊ぼっか」
なら10時でもよかったなーとまだ少し眠い目をパチパチさせながら思ったが、まあいいかと中に入れた。
「大智来る前に、先にゲーム練習しといていい?」
ジュースとお菓子を持ってリビングに行くと、やる気に満ちた表情をしてそう言われる。やられっぱなしは嫌なのだろう。もしかしてそのために1人だけ早く来たのだろうか。
「いーよ。いつも負けっぱなしだもんね」
からかうように笑うと、頬をふくらませて少し怒る態度を見せた。
「琴音だってそうでしょ?負けっぱなしは嫌なのっ」
そうだねとなだめつつ、あたしも手伝うと着いてきた詩葉とゲームを取りに自室へと向かう。
中に入ると、何度も家に遊びに来ているだけあってゲームが置いてある場所がわかるので、わたしよりも早くその収納棚に行きゲームを取りだし始めた。1人では1回に全てを持ち運べないので、わたしはコントローラーを持ってリビングへと持っていく。ゲーム機本体は、先に取り出した詩葉が持っていたので。
リビングに降りてゲーム機を設置していると、ニヤッと笑いながら話しかけられる。
「今日ちょっと大智を驚かせてみたくない?」
いきなりどうしたと思っていると、続けて口を開く。
「だっていつも優しいのはいいんだけど、イタズラしても反応薄いんだもん。そういう時は反応して欲しいじゃん。ね?協力してくれるでしょ?」
「いやまあ確かに、お化け屋敷とかでもなんにも反応しないで平然と歩いてるくらいだもんね」
でしょー?と肯定を得られたと思った詩葉は、じゃあごめんねと言って、わたしの首に何かを押し当てた。次の瞬間にはバチバチバチという音がして、視界が暗くなっていくのが分かった。
「...んぅ....あれ..?...どうして床に....」
目が覚めるとリビングに横になって寝ていたようだ。
そういえばなんか、音が鳴ったと思ったら目の前が暗くなったようなと思い出しながら、とりあえず立つことにしたのだが、思うように立ち上がれず、その行為によって自分の体が縛られているのがわかった。
リビングに置いてある全身鏡を見ると、どうやら縄で服の上から縛られているようだった。
両腕は後ろにまわされ手首同士で縛られた上に、胴と一緒に3箇所縛られ一纏めにされている。しかも足は正座にされて何重にも縄が巻かれているせいで、その姿勢を変えることが出来ない。どおりで動くことが出来ないわけだ。
「ど、どうしてこんなことに...」
と戸惑っていると、近くから詩葉の声が聞こえた。
「あ、やっと目が覚めたー?ごめんね?でも琴音が悪いんだからしょうがないよね?」
何を言っているのだろうかと、なぜこんなことをしたのかと困惑の表情をしていると、詩葉は顔を怒らせる。
「何?しらばっくれるつもり?あたしが大智好きなこと知ってるくせに裏切ったじゃん!協力してくれるって言ってたのに!」
「ねえ!やめてっ!何するつもりなのっ?何の話してるのっ?わたし別に裏切ってないよ!」
そう声をあげると、嘘をつくなと脇腹を蹴られた。
「うぐっ...!」
「いい気味。この間大智と2人で楽しそうにデートしてた罰だよ」
その言葉を聞いて直近の出来事で思い出せるのは、大智と一緒に買い物に行ったことだけだ。しかもそれは詩葉の誕生日が近かったからプレゼントを買いに行っただけである。
それは誤解だよ違うよと反論しようとして口を開くと、話す前にまた脇腹を蹴られた。
「その反抗的な目、やっぱりそうなんだ。じゃあ仕方ないね」
痛がるわたしを無視して、詩葉は自分が履いているショーツと靴下を脱いで、ガムテープと一緒に持つとこちらに近寄ってくる。
痛みで出た涙で潤む目を向けると、横に寝せられているわたしに近寄ってきたためにスカートの中を不可抗力で覗くかたちとなり、詩葉の股間が見えてしまった。こんなわけも分からず縛られた状態でも、さすがにまずいと目をそらす。
「変態め」
その短い言葉で顔が赤くなるのを感じながら、違うと反論するために口を開く。
「ち、ちがっ...もごっ....んーっ!?」
だがその言葉を最後まで言い切る前に、開きかけた口に何かを詰められ話せなくなった。
「友達の恋路を邪魔する変態には、これがお似合いだね」
ふふふと嘲笑うその顔を見て背筋が凍った。急いで口に入っているものを吐き出そうとしたが、咎める口調で、だめでしょー?と言いながら、ガムテープで後頭部からぐるりと何周もさせながら口を塞がれた。
口に入っているそれは臭く、酷い苦味としょっぱさ、そして少しの甘い味がする。
「おえっぅぅ...えうっ....」
一刻も早く口から吐き出したいのに吐き出せずにえずいていると、詩葉は笑みを浮かべていた。
「あたしのショーツと靴下がそんなに喜んでもらえるなんて嬉しいよ。洗濯しないで昨日と同じもの履いてきたし、夏でこんなに暑いしねー。汚れと汗が増し増しで変態にはちょうどよかったか」
酷い言われようで涙を流していると、そんなことお構いなしに動けないわたしを引きずってリビングの一角へと行く。
そこにはわたしが大事にしている、デフォルメされた巨大なペンギンのぬいぐるみが背中を裂かれ、綿を半分くらい抜かれた状態で倒れていた。
このぬいぐるみは、小学4年生の時に詩葉がわたしの誕生日プレゼントにくれたものだ。水族館にある売店のクジで引き当てた、特賞景品の思い出あるぬいぐるみ。
「うふー!うふー!」
何でこんなことをと責めたが、何を言っているのか分からないといった表情をしている。
そのまま気にすることもなく、プルプルする腕でわたしを抱えるとぬいぐるみの中に入れた。
投げ入れるようにぬいぐるみの中に落とされたが、トスッとなっただけで、中の綿に衝撃は吸収された。
痛くなくてよかったと思っていると、両耳に何かをつけられる。今度は何だと思っていると、その耳につけられたものから声が聞こえてきた。
『ああ、聞こえる?...うん、良さそうだね。これなら閉じ込められても外の声が聞こえるもんね。あたし優しー』
ケタケタと笑う声が続いた。
『じゃあこれで、外の世界とはさようならね』
その言葉を最後に詩葉の声は聞こえなくなり、背中が暖かくなるのを感じた。おそらく取り出した綿を詰め直しているものと思われる。
わたしが中に入った分 元より中身が増えるので、ぎゅうぎゅうと押し込まれながら詰められた。元々このペンギンのぬいぐるみは、抱きついてもふわふわといった感じではなく、綿が最大に詰められていて、パンっと張ってるしっかりしたタイプのものなのだ。
必死に動いて出ようとしたが、自由のきかない体に、どんどん圧縮して詰められる綿の前に動けず、ただ黙って終わるのを待つしかなかった。
ろくな抵抗もできずにただ怖くて震えていると、いつの間にか横になっていたぬいぐるみは立てられており、中にいるわたしも同様に立っている状態になっていた。
『背中も縫い合わせて完璧だし、中に人がいるなんて思えないよねー。あ、これも着せとかなきゃ』
そう言うと何かを着せる音が聞こえた。おそらくこのペンギンのぬいぐるみが元々着ていた、青のしっかりした柔らかさのない生地でできた水色のワンピースだと思われる。
普通の人はゴワゴワして着れない ぬいぐるみ用に作られたもので、メスのペンギンモチーフだということで付属で着いてきた服だ。
その服を着せられたことによって、より一層身動きができなくなり拘束がきつくて苦しい。
そんなことは気にもとめず、フンフンと機嫌良さそうな鼻歌が聞こえる。
『もうそろそろで大智来るし、早く練習しとこっと』
そう呟くと歩いていく足音が聞こえ、ゲームをする音がかすかに聞こえてきた。
このままやられっぱなしでなるものかと、頑張って体を揺らしてみたりしたがビクともせず、全くもって脱出することは出来なかった。
何とかならないかとしばらく頑張っていると、インターホンが鳴った。その音とともに玄関へとかける詩葉の足音が響き、しばらくするとリビングに入ってくる大智と詩葉の声が聞こえてくる。
『そうかー、じゃあしばらく待っとくか』
『だね。待ってる間ゲームしよ!絶対負けないからね!』
『ふん、かかってこい!』
この会話から、詩葉はわたしが何かの用事で出かけていることにして、戻ってくるまでゲームをして待とうという提案をしていることに気づいた。
わたしはここにいるよ!助けて!と、全力で動いたり喚いたが、大智は気づいてくれなかった。
それもそのはず。傍から見たこの巨大なぬいぐるみは、全く動いてすらいなかったのだから。縄の拘束と身動き出来ないほどの綿、さらにはぎちっとしたワンピースで固定されてしまい、少しの振動すらも許してはくれなかったのである。
また 助けを求める声は、口の中の詩葉の汚いショーツと靴下が詰め込まれており、さらにそれはヨダレを吸収した分少し面積を増し、口内に張り付いてくぐもった声しか出せない。
その僅かに漏れ出るくぐもった声も綿に吸収されてしまい、外に漏れることがないのであった。
外に全く通じてないとは気が付かずに奮闘していると、大智がこちらへ近寄ってきたのが分かった。
『あれ?このぬいぐるみここになかったよな?』
『あー、いつもは琴音の部屋にあるからね。あっそうだ、このぬいぐるみ大きくて邪魔だから処分したいって、昨日学校で言ってたよ』
『それで捨てるために、ここ置いてるのか』
『ちょっと連絡してみるからまってね....あ、琴音から返信があったよ。これゴミ捨て場に捨ててきて欲しいって』
そのやり取りに顔は青ざめ、ガクガクと体が小さく震える。
(す、捨てる!?なんで!なんで?!詩葉なんでそんなことするの?!)
わたしはそんな会話も返信もしてないので、詩葉が1人で演じているのだろう。
困惑するわたしを他所に話は続いていく。
『しょうがないなー。琴音の頼みだしやっとくか。後でなんか奢ってもらおうぜ』
『そうだね。まあ一応、やらせてごめんねとはメッセージきてるから、やらせる罪悪感はあるっぽい?』
『だな。1人じゃ持てないから、詩葉も反対側持ってくれ』
『はーい』
返事とともに何かガサガサと音がしたかと思うと、持ち上げられて運ばれる。玄関を出ると共に風が吹いているのかバサバサと音がなり、わたしが入っているぬいぐるみがゴミ袋に入れられて運ばれているのに気がついた。
(助けて!助けてよっ!誰かーっ!誰でもいいから気づいてっ!)
どれだけ中にわたしがいると暴れても気づく者おらず、そうこうしているうちに地区のゴミ捨て場の扉が開く音が聞こえ、ドサッと投げ捨てられた。他に置いてあるゴミが入った袋がクッションになったのか、痛みはなかった。
それから扉が閉まる音がして、2人の声が遠ざかっていく。
このままだと大変だ!ゴミとして燃やされる!と焦って動いてみたが結果は変わらず、誰にも気づかれずにただ体力を消耗しただけだった。
動き疲れて少し休んでいると、扉が開く音が聞こえた。もしかして改心して戻ってきてくれたのかと思ったが、次に聞こえた声によって違うと分かった。
『よいしょっと。ふぅー、2袋は重かった。あれ?ぬいぐるみ?まだ使えそうなのに』
『あー、汚れ酷いからじゃない?こことかもほつれてるし。いやーしかし、本当に重かったね。でも片付いてよかった』
『まったくもう、愛莉ねぇが溜め込むからでしょ?先週、朝仕事行く時に捨ててればたまらなかったのに』
『分かってるってごめんごめん。じゃあ終わったし早く帰ろう雪。遥が待ってるよ』
『うんそうだね。今日たこ焼きパーティーだし。早く帰らないと、生地出汁1人で作らされたって拗ねるだろうからね』
『帰ったらビールとたこ焼きー!』
『朝から飲むの?ほどほどにしてよ?』
やってきたのは若い女性達のようだった。
わたしをというかぬいぐるみを気にかけてくれたが、それ以上は特に何もなく、出ていこうとする足音が聞こえてくる。
この機会を逃すまいと必死に叫んで体を動かしたが、女性達が気づくことはなく、扉の閉まる音が響いた。
(はぁはぁ....な、なんで..気づいて..くれないの?)
長時間閉じ込められていることと、さらにそこに激しく動いたことがプラスされ、汗がたくさん流れて体はベタベタになり、着ている衣類がベッタリと肌に張り付いてきて気持ちが悪い。
(...も、もう....)
呼吸が追いつかず意識が朦朧として、目の前が真っ暗になった。
ひんやりとした感覚があって目が覚めると、いつの間にかゴミ捨て場から移動して、自室のベッドに横になっていた。ぬいぐるみからも出されているし、縛られていた縄もなくなっている。
ひんやりと冷たさを感じるひたいに手を持っていくと、冷えピタが貼られているようだった。
どうしてベッドに?あれ?さっきのは夢だったの?と起き上がり周りを見渡すが、いつものわたしの部屋で変わったところはない。やはり夢だったのかと考えていると、部屋のドアが開いた。
「あ、やっと起きた。ごめんなさい酷いことして」
入ってきた詩葉は少しほっとした表情を見せたあと、すごく申し訳なさそうな顔をして何度も謝ってきた。
その言葉にあれは現実のことだったと頭の理解が追いつくと、怒りの感情がわきでてきて、死ぬところだったと感情のままに怒り続けた。その間詩葉は反論など一切せず、ただ黙って頭を下げ続けたのである。
その姿勢を見て怒りも落ち着き、強めのビンタを1回することで和解した。
その後どうしてわたしの話をちゃんと聞かなかったのかという質問に対し、琴音はあたしに嘘をついて邪魔しようとしてると思い込んでいたと話し始めた。
ぬいぐるみを捨てて家に戻ってきたあと、大智にわたしと2人で出かけたことがなかったかということを聞いたそうなのだが、大智は隠すことなくあっさりと、詩葉の誕生日プレゼントを買うために行ったと話したそうだ。
自分でも分からないが、大智の言葉はすぐに信じられたそうで、プレゼントが写った証拠の写真もあり、わたしへの疑惑ははれたそうだ。普通は本人に隠すべきことだが、今回は大智のその発言で助かった。
少しはわたしの言い分も聞いても良かっただろうに、恋は盲目とはよく言ったものだと思った。
大智にはもう帰ってもらったそうで、結局遊べなくなったと伝えたんだそうだ。
「本当にごめんなさい。あのぬいぐるみもうボロボロだから、今度新しいの買うからもらってね」
そう言うと改めて謝罪して帰って行った。
あれから2ヶ月後の土曜日。今日もわたしの家に3人で集まって、ゲームを楽しんでいる。
「いえーい!勝ったー!」
「おい、そのアイテムずるくね?」
「詩葉に負けたー!」
あの事件の後1週間くらいは気まずい状況が続いたが、今はもう前と同じ関係に戻った。
しかしただ戻っただけではない。進展したこともあるのだ。
元より幼なじみなので気兼ねなくなんでも話せる中だったが、詩葉とはさらに仲が良くなり、小学5年生からなくなっていたお互いの家に泊まるというイベントが再開された。主にわたしの家に押しかけるように泊まりに来ることが多くなった。
そして関係が変わったことが1つある。それは、1ヶ月前から詩葉と大智が付き合いだしたということだ。詩葉から告白したらしいが、大智も好意を持っていたらしく無事に交際が始まった。
付き合うことになったという報告を聞いて、わたしのこと疑わなくても普通に付き合えてたじゃんかと少し思ったことは内緒だ。
「今度はこのゲームしよ!」
「はいはい、いいよ。そのゲームでも負けないけどな」
楽しそうな2人を見ながらお茶をコップに注いで戻ると、詩葉と目が合い、自分の顔が赤くなるのが分かった。そんなわたしを見て詩葉はニヤリと笑う。
赤くなった顔が上げられずにそのままこくりと頷くと、詩葉は何事も無かったかのように大智と楽しそうにゲームを開始した。
あれからわたしは、詩葉から厳しく接せられる、扱われる行為に興奮するようになってしまっていた。いわゆる縄などを使った奴隷プレイにだ。
詩葉がわたしの家に泊まる日は、決まってご主人様をしてくれる。さっき目を見て笑ったのは、今日もしっかり調教してあげるからね奴隷ちゃん。という意味だったのだ。
顔の赤みがなくなるまで休んだら、2人とゲームをするためにそちらへと足を運んだ。
大智が帰るまであと1時間。
時計の針が進む事にドクンドクンと心臓の鳴る音が大きくなり、興奮していくのだった。
ーー[完]ーー