隣人所有契約 ―常識改変の極小おもちゃ―① (Pixiv Fanbox)
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高槻蓮が目を覚ましたとき、まず感じたのは、布団の感触がやけに遠かったことだった。
シーツの布目が掌いっぱいに広がるほど大きく感じる。
体が重く、動かしにくい。
いや、重いのではない。
世界の方が、大きすぎるのだ。
カーテンの隙間から差し込む朝の光が異常なほど強い。
窓枠の高さが天井近くまで伸びているように見える。
蓮はゆっくりと体を起こした。
頭がくらくらする。
視線の高さがいつもとまるで違う。
ベッドの縁が自分の腰のあたりにしかない。
足を床につけようとして踏み外しそうになった。
床までの距離が二メートル近くあるように感じる。
「……なんだ、これ」。
声が出た。
自分の声が妙に小さく響く。
部屋の中を見回す。
机、椅子、クローゼット。
すべてが自分が子供の頃に見上げていた遊園地の乗り物のように巨大化している。
いや、正確には、自分が小さくなっているのだ。
鏡を探した。
洗面所への距離が遠い。
歩くたびにカーペットの毛が足首を包み込む。
普段は気にも留めない繊維が今は柔らかい森のようだ。
洗面所のドアノブに手を伸ばす。
届かない。
ジャンプしても指先がやっと触れるかどうか。
蓮は壁に手をついて何とかドアを押し開けた。
鏡に映った自分を見て息を飲んだ。
身長はおそらく十五センチ前後。
顔の輪郭は自分のままだが、全体が縮小されている。
服は体に合わずだぶだぶに余っている。
シャツの裾が床に引きずられ、ズボンはすぐにずり落ちそうだ。
廊下に出た。
隣の部屋のドアがほんの少し開いている。
白峰凪の部屋だ。
同じ階に住む、ほとんど顔を合わせたことのない隣人。
黒髪を無造作にまとめ、いつも無表情で、エレベーターで会ってもほとんど挨拶もしない。
在宅で翻訳の仕事をしていると管理人から聞いたことがある。
蓮は助けを求めるしかなかった。
このままではドアすら開けられない。
隣の部屋の隙間から光が漏れている。
蓮はよじ登るようにして隙間をくぐり抜けた。
部屋の中は薄暗かった。
カーテンが半分しか開けられておらず、デスクライトだけが点いている。
白峰凪はノートパソコンの前に座っていた。
黒いパーカーを羽織り、髪を後ろでひとつに結んでいる。
画面を見つめる目はどこか虚ろで、感情の起伏がほとんど感じられない。
蓮がカーペットの上で立ち上がると、凪がゆっくりと顔を上げた。
視線が床の上の小さな自分に落ちた。
彼女は一瞬瞬きをした。
それからごく自然な調子で口を開いた。
「……あ。
そうか。
今日から、こうなるんだっけ」。
驚きも、恐怖も、好奇心すらも感じられない。
ただ事実を確認するような声だった。
凪は椅子から立ち上がり、蓮の前にしゃがみ込んだ。
その動作だけで蓮の視界は彼女の太ももとパーカーの裾に覆われた。
膝の高さが自分の身長を軽く超えている。
「縮小した男は、女の専有玩具。
……新しい常識、そうなってるよね」。
凪は淡々と呟いた。
指先を伸ばし、蓮の体をつまむように摘んだ。
指の腹の感触が熱く、柔らかく、圧倒的に大きい。
蓮は体を硬直させた。
「待って……! 何が起きてるんだ、これ……!」。
「説明しても無駄だと思う。
もう、世界がそう決まっちゃったから」。
凪は蓮を掌に乗せた。
掌の温度が全身を包む。
皮膚の紋様が巨大な谷のように見える。
彼女の指がそっと蓮の背中を撫でた。
その感触だけで蓮の体が小さく震えた。
「名前は?」。
「高槻……蓮」。
「白峰凪。
隣の部屋。
今日から、あなたは私の玩具ね」。
凪は立ち上がり、デスクの上に蓮を置いた。
キーボードの脇にちょこんと座らされた形になる。
彼女は再び椅子に座り、画面に視線を戻した。
まるで日常の延長のように。
「動かないで。
邪魔になるから」。
蓮は必死に声を上げた。
「こんなのおかしいだろ! 元に戻してくれ……!」。
凪は画面から目を離さず、低く答えた。
「戻せないよ。
常識が変わったんだから。
あなたはもう、人じゃない。
私の所有物」。
彼女の指が再び伸びてきた。
蓮の体をそっと摘み上げる。
今度はパーカーの胸元に押し込まれた。
柔らかな乳房の谷間に体が沈む。
布地の感触と温かい肌の匂いが一気に押し寄せた。
甘い洗剤の香りと彼女自身の体臭が混じっている。
息が詰まるほど近い。
「とりあえず、ここに入れておく。
作業の邪魔にならないように」。
凪の声が布の向こうから聞こえる。
淡々としていて、どこか投げやりだ。
蓮は乳房の間で身をよじった。
柔らかい肉が四方から圧迫してくる。
動くたびに肌と肌が擦れ、ぬるりとした感触が広がる。
彼女の心臓の鼓動が遠くでゆっくりと響いていた。
作業が続く間、蓮はそこでじっとしていた。
時折凪が身を乗り出すと乳房が揺れ、蓮の体が奥へ押しやられる。
息をするだけで彼女の体温が染み込んでくる。
屈辱と恐怖と、奇妙な安心感が複雑に絡み合っていた。
昼近くになって凪はようやく立ち上がった。
パーカーを脱ぎ、白いTシャツ姿になる。
胸元から蓮を取り出した。
指先で丁寧に摘み、掌に乗せる。
「お腹空いたでしょ。
一応、餌はあげないと」。
凪はキッチンに向かい、冷蔵庫を開けた。
小さな皿に何かのペーストを盛る。
蓮を机の上に下ろし、その前に皿を置いた。
「食べて。
拒否したら、捨てるだけだけど」。
蓮は皿を見つめた。
量は自分の体に見合っているが、中身がわからない。
凪はすでに席に戻り、また作業を始めている。
蓮が食べようが食べるまいが、彼女にとってはどうでもいいことらしい。
蓮は仕方なく口をつけた。
味は甘くて薄い。
栄養補助食品のようなものだ。
食べ終わると凪が再び近づいてきた。
「背中、出して」。
「は……?」。
「契約。
書類なんて面倒だから、直接刻む」。
凪の指先が蓮の背中に触れた。
熱い。
何かが皮膚に染み込んでいくような感触。
痛みというより焼けるような熱さだ。
蓮が悲鳴を上げると凪は淡々と言った。
「淫紋。
『白峰凪の専有玩具』って内容。
これで、あなたは公式に私のもの。
サイズも、私の気分で変動する」。
刻印が終わると蓮の体がさらに縮んだ。
今度は八センチほどになる。
掌の上でより小さく見える。
凪は満足したように小さく息を吐いた。
「これでいい。
床に転がしておいてもいいし、引き出しに入れてもいい。
とりあえず、今日は机の上で様子を見る」。
彼女は蓮をキーボードの脇に戻し、再び画面に向き合った。
蓮は小さくなった体で彼女の横顔を見上げた。
無表情で淡々としていて、それでいて絶対的な支配を感じさせる。
新しい常識の下で、自分はもう人ではない。
白峰凪という女の所有物だ。
午後になると凪は立ち上がり、服を脱ぎ始めた。
Tシャツを頭から抜き、ブラジャーを外す。
白い肌が露わになる。
乳房が重力に従ってゆるやかに揺れた。
蓮は思わず目を逸らしたが、視線はすぐに戻ってしまう。
彼女の体は自分にとってあまりにも巨大で、あまりにも近い。
「お風呂。
一緒に入る」。
凪はそう言って蓮を摘み上げた。
浴室に連れて行かれ、湯船の縁に座らされた。
湯気が立ち込め、視界が白く霞む。
凪が湯船に入ると水位が上がり、蓮の足元まで波が押し寄せた。
彼女の脚が湯の中で長く伸びている。
太ももが壁のようにそびえる。
「洗ってあげる。
汚れがついてると、気持ち悪いから」。
凪の指が蓮の体を撫でた。
石鹸の泡が小さな体を覆う。
指の腹で胸や腹を丁寧に洗われる。
力が入れば簡単に押し潰されそうな圧力だ。
蓮は体を強張らせた。
彼女の指が股間に触れた瞬間、思わず声が漏れた。
「あっ……」。
「敏感。
まあ、小さいとそうなるよね」。
凪は淡々と続けた。
指先で蓮の性器を軽く摘まむ。
泡と湯の感触が混じり、ぬるりとした刺激が走る。
蓮の体が小さく跳ねた。
「感じるんだ。
便利」。
彼女はそれ以上深く触れることはせず、単に洗い流した。
湯から上がるとタオルで蓮を包み、自分の体も拭いた。
裸のまま部屋に戻り、ベッドに座る。