「いいもの」の代償 After Story (Pixiv Fanbox)
Content
※このお話は、pixivに投稿した【いいものの代償】のAfter Storyとなっております。
完全に続きとなっておりますので、先に、本編を一読して頂けると幸いです。
読んで頂いたという前提で説明等はカットしてあります。
・・・
(また、これを着る時が来るとはね…)
私は再び、あの苦しさや恐怖を味わった、魔獣ティナの着ぐるみに覆われていた。
あの恐ろしい撮影により完成した映画の試写会で舞台挨拶があるのだ。
そして、その挨拶に魔獣ティナが呼ばれたのだった。
あんな恐ろしい思いをしたのに、何故、私が再びこの魔獣に身を包んでいるか…。
監督に懇願され、役者としての魂に火を付けられた事。
そして、なにより、この魔獣のスーツは、私の体から型取りをしたものなので、私しか着れないのだった。
実際に完成した映像に映っているのは私自身。
そして、こうして舞台挨拶という大舞台に披露されるのだから、私としても、中身が私でありたいという思いもあった。
なので、私はそのオファーを受け、今、ここに魔獣ティナとしてここにいるのだった。
それにしても、今回は魔獣ティナのスーツのみで、その上に衣類はつけていない。
全身をラバーのスーツに包まれているとはいえ、自らの体で型を取って造られたスーツなのだから、ある意味では、裸を晒しているのと変わりはないのだった。
(う…は…はずかしい…)
ステージ袖で、出演者の役者や監督たちと待機している。
「魔獣ティナちゃん、よろしくね!」
私にそう声をかけて来たのは、生身のティナ役の女優【美墨(みすみ)さん】。
「よろしくお願いします」
私はマスクの中から少し篭った声で返答をした。
「こうして、並んでみると、ほんと背格好も体型もそっくりだね」
主演の高杉さんが私たちを見ていう。
「って事は…ティナを裸にすると…こんな感じか…」
そう言って他の出演者が、生身の美墨さんと私を見比べる。
「恥ずかしいから、やめて下さい!!」
美墨さんが、その出演者に突っ込みを入れた。
(…っていうか…私は…じっくり見比べられなくても…ほぼ裸みたいなものなんだけどね…)
本当に恥ずかしいのはこっちだ。
顔は出していないが、体のほうは、裸体と認識されているのだから。
しかし、そんな事も言っていられない。
役者として心を割り切り、頭の中で自らに鞭を入れた。
(よし…決心!恥ずかしくない!恥ずかしくない!恥ずかしくない!)
「それじゃ時間ですので、監督、出演者の皆さんは舞台上にお願いします」
(よし!!!頑張ろう!!)
そして、私は魔獣ティナとして、最後の仕事をするためにステージに向って行ったのだった。
舞台挨拶は9:00の回と12:00の回の二回。
その9:00の回が今始まろうとしている。
「今回の映画の監督、そして出演者の皆さんで~す!!」
司会の声と共にステージに上がる。
すると、劇場には、満員のお客が詰めかけていた。
ステージ上に出演者と並び、客席の方に視線を向けた。
(うわ…いっぱい人がいる…)
その大勢の人の視線を感じる。
実際には、役者のほうに向けられているのだろうが、一緒にその視線を受けている感覚になる。
(や…やっぱり…は…恥ずかしい…よぉ…)
カメラのフラッシュが光り、写真を撮られている事も感じる。
つい、体をモジモジとしそうになるが、その瞬間に、自らが半魔獣化した状態だという事を思い出す。
(は…恥ずかしい…けど…今…私は…魔獣ティナなんだから…)
そう思い、やや魔獣感のある立ち方の演技をした。
「まず、皆さまを順にご紹介したいと思います。監督の…」
監督から順に、主演の高杉さん、そして他の俳優も紹介されていった。
「そして、一番向こうの方…えっと呼び名は【魔獣ティナ】さん…でよろしかったでしょうか??」
司会が私にそう問いかけをしたが、私は敢えて、それには反応せず、少し暴走を抑えているような演技をした。
すると、それを見た監督が答えた。
「ええ、魔獣ティナで結構です。ティナはティナなんですが、通常時のティナと区分しなければならないので。それに、半分魔獣化しているので、人間の言葉が通じるかどうかは、なんとも言えない所です」
さすがは監督、フォローがうまい。
「そうなんですね。それでは監督から順にコメントを頂いて行きましょう」
そして、監督から順番に司会の質問が入り、それに答えて行った。
皆のインタビューが繰り返される中、私はただひたすらステージ上で待つしかないのだった。
自らの裸を晒した状態で…。
そして、私の隣に立つ美墨さんのインタビューが終了した。
「そして、最後に魔獣ティナさんですが、本当にティナ役の美墨さんと背格好が似ていますね」
すると、ティナ役の美墨が答えた。
「ええ、私と身長、体重、スリーサイズもほぼ同じなんです。だから吹き替えも自然でした」
「スリーサイズまで…。そ…それじゃあ、魔獣ティナのほうはこの状態ですから、美墨さんが裸を晒しているような状態なんじゃ…?」
「そうなんですよ!なんか、私の裸が見られている見たいで、物凄く恥ずかしいです…」
(いやいや…実際に晒しているのはこっちなんだから…恥ずかしいのは…私…)
「監督、今回の作品は相変わらずの真実味と、このクリーチャーの造形にも力をいれたようで」
「ええ、この魔獣ティナを始めとする特殊メイクや魔獣の造形にもこだわりました」
「それでは、監督のこだわりを皆さまにしっかりと見て頂きましょう。魔獣ティナさん、ステージ中央の台にお乗りください」
(ステージ中央の台??)
ステージ中央に目を向けると確かに、かなり低いが台らしきものがあった。
(あれか…)
人間の言葉が理解していない演技をしてもいいが、それでは進行として進まなくなってしまう。
私は魔獣の演技を続けたまま、その中央の台へと乗った。
「さあ、これが今回の特殊メイクです。ご覧ください」
【ブゥゥゥゥン…】
(え!??う…動いた!!)
すると、私の乗った台がゆっくりと回転を始めたのである。
そして、私は立ったまま、体を360°回転させされる。
つまり、胸の先から、お尻まで、全ての方向をお客に晒す形となったのだ。
(うぅぅぅ…は…恥ずかしい…全部…全部…見られてる…)
ゆっくりと回転する台。
お尻側を晒している時は、お尻に視線が集中しているのを感じてしまう。
お尻の割れ目なんか、完全に晒している状態だ。
舐め回されるように、お客の視線に晒される。
なかなか回転が止まらない。
何周回されるのだろうか…。
(うぅ…まだ…まだ…終わらないの…恥ずかしいよぉ…)
実際にはほんの少しの時間なのだろうが、私には恐ろしく長く感じられた。
そして程なくして、その回転が止まった。
「どうでしょうか?今回の作品の造形。素晴らしいですね!魔獣ティナさんお戻りください」
(うぅ…ようやく終わった…)
そして私は、再び所定の立ち位置へと戻って行った。
ステージ上で裸を晒している状態には変わりないが、先程の回転させられ見世物にされている状態よりかはましだ。
そして、まとめ的なインタビューが終わった。
「それではこの後の上映、皆さま、お楽しみください!!監督、出演者の皆さま!ありがとうございました~~~!!」
そして、ようやく私はステージの上から降りる事が出来たのだった。
(ふぅ~~~終わった……)
恥ずかしさもかなりのものだったが、やはり舞台挨拶などという大舞台を経験できた事にも喜びを感じる。
そして、やはり緊張はしていたようで、ステージ袖に入り、ホッとしたところで、少し体の力が緩んだ。
「皆さん、お疲れ様でした!楽屋のほうに戻って頂き、ゆっくりしてください!」
スタッフの方がそう言って、皆を誘導して行った。
私も、皆さんのような凄い存在ではないが、着替えの事もあり、一つの楽屋が用意されている。
そして、私も楽屋に戻り、楽屋の椅子に腰かけた。
「ふぅぅぅぅぅ…」
大きなため息をつく。
(恥ずかしかったけど…やっぱり…貴重な経験だな…)
そんな事を思いながら、先程の舞台挨拶を思い出していた。
すると、突然部屋の扉からノックが聞こえて来た。
【トントン】
「魔獣ティナさん、入ってもよろしいですか??」
どうやらスタッフの方のようだ。
「あっ!大丈夫です…んっ!?ちょ…ちょっと待って下さい!!」
そのまま扉の方に向かおうとしたが、自らがまだ先程のままだという事に気が付いた。
ステージ上ではしょうがないが、バックヤードにいるなら、出来る限りは体を隠したい。
私は急いで、ベンチコートのようなロングコートを羽織り、体を隠して扉へと向かって行った。
【ガチャ】
扉を開けるとそこにはスタッフの方が立っていた。
「お疲れ様です、何かありましたか?」
「あっ特に問題とかではなく、監督から差し入れを頂きまして、持ってきました」
そう言って、スタッフの方が有名コーヒー店のカフェオレを差し出した。
「すいません、ありがとうございます!!」
私はその差し入れを素直に受け取った。
すると、差し入れを渡したスタッフが、少しはにかんだような表情を浮かべた。
「な…何か問題でもありました??」
私は、自らが何か無礼な事でもしたかと心配になり、スタッフの方に問い掛けた。
「え…いや…その…なんというか…。見た目は魔獣のような風貌なのに、声が可愛らしい女性の声ってのに、ギャップを感じてしまって…。やっぱり中身は普通の女の子なんだな…と思っちゃったんです…」
「え!?」
私はつい、カフェオレを持っていない手で口を覆ってしまった。
「すいません、変な事言って。ゆっくり休憩してください」
「は…はい…」
【ガチャ】
そう言って、スタッフの方は部屋を後にして行った。
(そっか…あまり意識してなかったけど…この姿になってから、あまり声を出してないから…)
確かにスタッフの方たちと会話をする事など無いので、私の声を聞いた事がない人は多いだろう。
なので、私が声を発することに違和感を感じてしまうのだ。
それにしても、中身は普通の女の子と認識された事の方が重要だ。
魔獣ティナとして見られていた方がまだいい。
普通の女の子として認識されると、曝け出している体が、一層、私の体という認識が強まるのだ。
(ふぅぅ…なんか…恥ずかしい…な…それ…)
とにかく、再び椅子に腰かけ、頂いたカフェオレを口にする。
(うん…おいしい…)
さすが有名店のものだけあって、なかなかにおいしいカフェオレである。
ラバースーツに身を包んで、汗だくになっていたため、せっかくの高級カフェオレではあるが、あっという間に飲み干してしまった。
「うぅっ…うん…」
椅子に座り上半身で伸びをしながら、休憩する。
(二回目は12:00からか…まだかなり時間があるな…)
特にやる事もないので、携帯でも見ていようかなと思い携帯を取り出したが、指先までラバースーツに包まれた私の指では、携帯が操作出来なかった。
しかたなく、ただボーっとしながら時間を過ごす他ない。
(ふぅ…二回目も、あの回転台みたいのに乗らないといけないのかな…)
(でも…この映画の事だから、また違う演出があるかもしれない…)
(まあ…なんにしても…恥ずかしいのには変わりないか…)
(ん…!?…あれ…ちょっと…眠く…)
そんな事を考えていると、突然、眠気に襲われた。
(んぅ…物凄く…眠い…)
訪れたと思ったら、急激に増幅する眠気。
座っていた椅子で姿勢が保てないくらいの眠気になってきた。
(…だめだ…少し…寝よう…まだ…時間…ある…し…)
そして、私はそのままゆっくりと椅子から床へと崩れ落ち、ひと眠りする事にした。
・・・
(ん…??…あっ…そうだ…寝ちゃった…)
先程の急激な眠気から目が覚める。
どれくらい寝たかも分からないが、ずいぶん深い眠りについていたようだ。
(時間…いま何時だろ…準備しなくちゃ…)
そして、時計を確認しようとした所で、おかしな点に気が付いた。
(あれ??なんで…何も見えないの…??)
頭は完全に起きている。
そして、瞼も開き、目を開けているというのに、視界が全くない。
(え!?ど…どういう事…!?んっ!?あれっ!?えっ!?)
その視界の謎に疑問を抱き、体を起き上がらせようとしたら、更におかしな事に気が付く。
(え!?体が…動かない…!?)
寝転がった状態から体を起こそうとしたが、体の側面に張り付いた腕が、全く動かない。
(う…うそ…これ…)
体の側面に真っ直ぐに固定された腕。
そして、この真っ暗な視界。
口を閉ざされ、鼻からしか出来ない呼吸。
そう…私は知っている。
この感覚…一度体験している感覚。
(ま…まさか…銀の布に巻かれている…の??)
そう、あの映画の撮影で施された処置。
着ぐるみのスーツの上から、銀色のテープでミイラのようにグルグル巻きにされた時と全く同じ状況。
そして、この映画というところを考えると、間違いなく、私はその状態なのだ。
「ううぅぅぅ!!!」
(誰か!!!)
声を出して叫ぼうとしたが、やはり、顎が固定されていて言葉を発することは出来ない。
(ど…どういう事…!?なんで…私…また巻かれているの!?)
状況が理解できず、頭の中が混乱を来す。
【ガチャ】
すると部屋の扉が開く音がした。
「そろそろ本番ですので、スタンバイお願いします」
スタッフの方の声が聞こえる。
(ちょ…ちょっと…本番っていっても…私…こんな状態じゃ…準備が…)
必死に体をうねらせてみるが、やはり一本の棒のように巻かれた手足では、何もする事が出来ない。
(やばい…なんとかしないと…遅れちゃう…)
なんで、こんな状況になったかは分からないが、とにかく状況を打破して、本番に間に合わせなければならない。
そして、焦っていた次の瞬間だった。
(んっ!!!????)
体が誰かに抱え上げられたのだった。
全く見えない視界。
突然の事に、驚きが隠せない。
(え!?何!?やめて!!!)
そして、抱え上げられた事に驚いていると、その手は直ぐに離れ、次に伝わってきたのは全身を上部に引っ張り上げられるような感覚だった。
(んうぅぅ…何…これ…体が引っ張られてる…)
何か体全体が上方に引っ張られているような感覚。
そして、自らの足が床から離れている事に気が付いた。
(引っ張られてるっていうか…これ…吊り上げられてる…!?)
床につかない足…つまり私は今、宙に浮いている。
そして全身を上方に引っ張られているのは、上から吊られているからなのだ。
「移動しま~す」
スタッフの声が聞こえたかと思うと、横揺れが始まった。
(この揺れ…私…吊られたまま…運ばれてるの…??)
拘束された体、そして、宙に吊り上げられた状態。
どんな抵抗をした所で、何も出来ないのが落ちだ。
そして、先程のスタッフの言葉からするに、私はこの状態で、私の楽屋から外に出されたという事。
つまり、もう既にスタッフや出演者の人目に付く場所。
呻き声を出すわけにもいかない。
私はとにかく、されるがまま運ばれていくしかないのだった。
なぜこうなったかは分からないが、この映画の撮影の事を考えれば、何をされてもおかしくないと思ってしまう。
すると、暫くして揺れが収まった。
(着いたの??ステージ袖って事??)
何も見えない私は、物音や声で判断するしかない。
すると、主演の高杉さんの声が聞こえて来た。
「あれ??これ??ダミーの方じゃなくて、本物の方だよね??」
「そう、魔獣ティナちゃんが中に入ってるよ。撮影の時と同じようにね」
高杉さんの問いに監督が答える。
「関係者から、魔獣ティナの銀布に包まれた時の演技が好評で、それがどんな風だったか見たいというオファーが多くて。それで、舞台挨拶に登場してもらう事にしたんだ」
「へぇ…そうなんですか…」
「あっ…強いて言うなら…撮影の時は緊急でテープを用意したから、今回は、表面もより柔らかく、かなり布に近いテープを使用している所が違いかな??」
(…き…聞いてないし…また…グルグル巻きにされるなんて…)
つまり、要約すると、私は今度はこのグルグル巻きにされたミイラの状態で、ステージ上に晒されるという訳だ。
(体勢はきついけど…恥ずかしさは…こっちのほうがないかも…)
こんな唐突な仕打ちをされているのにも関わらず、ポジティブな感想が出てきてしまうのは、私がこの監督に対しての、免疫が出来始めているからだろう。
「さ…そろそろ時間だ」
そうして、12:00の回の舞台挨拶が始まった。
9:00の回の時と同じく、皆にインタビューがされていった。
そして、私はその間も、ただ銀色のミイラのまま吊るされているだけだった。
実際に、何も出来ないのだから、そこでじっとしているしかない。
「さて監督。これが噂の魔獣ティナの銀布包みですか??」
「はい」
「先程から動きませんが、本当に中に魔獣ティナが入ってるんですか??」
「本当ですよ。魔獣ティナ、動いてみてあげてください」
(う…動いて!?)
突然の振りに驚いたが、とにかく私が出来る最大限の動きで、なんとか体をくねらせて見た。
(よい…しょっ…)
ミイラ状態で吊られているのでは、動くといっても、本当に体を微妙にくねらせる事しか出来ない。
「おおおぉぉぉ…」
しかし、その私の動きに客席から驚きの声が上がる。
「本当に魔獣ティナが演じているのですね。撮影の時もダミーの小道具を使わず、この状態で撮影したと伺いましたが?」
「ええ、ダミーだと真実味が失せますから。実際に生で演技をしてもらえて、かなりの【いいもの】が撮れたと思っています」
「映画を見られた方からも、魔獣ティナの銀布に包まれた時のシーンの迫力が凄かったと声があがっています」
なんだか、凄く自分が褒められているようで、少し照れてしまう。
しかしながら、あれは演技ではなく、本当のリアクションだったのだが…。
なんにせよ、あれだけ酷い目に会ったのだが、その結果、映画を見てくれる人の心に刺さるシーンを作れたという事で、なんだか満足した気持ちになる。
(まあ…苦しかったけど…結果…よかったかも…)
こんな…ステージ上でミイラ状態で吊るされていながら、そんな感想を持ってしまう。
「それではこの後は上映となります!!監督、出演者の皆さま!ありがとうございました~~~!!」
(ふぅ…なんか…頑張ってよかった…)
未だ拘束されたままではあるが、頑張った甲斐があったと思えて来た。
しかし、次の瞬間、司会の人がとんでもない一言を発した。
「この後、こちらの魔獣ティナの銀布包みは、当館イベント開場の小道具展示コーナーに展示されますので、是非、皆さまもご覧になって行ってください!」
(え!?展示!?)
今、司会の人が言った内容。
魔獣ティナの銀布包みを小道具展示コーナーに展示すると言った。
つまり、私は今から、その展示コーナーに、小道具として展示されるという事なのだ。
「それでは皆様、お楽しみ下さい!!」
(ちょ…ちょっと待って!?このまま…展示されるの…??)
すると、また横揺れが始まった。
どうやら私は移動させられ始めたらしい。
(うそっ…そんな…また…私…道具扱いされて…)
先程の楽屋からの移動よりも長い移動が続く。
(うぅっ…いやぁぁぁぁ…出してぇぇぇ!!ここから出してぇぇぇぇ!!)
心の中で、この銀の布から出して欲しいと懇願する。
役者としての魂だろうか…必死に出して欲しいと懇願するも、声は出ない。
吊られた状態で、体をウネウネと動かし、その思いを表現する。
しかし、それで伝わるものは何もないのだった。
ひどい仕打ちに頑張ってよかったと思ったのも束の間、私は再び、このような仕打ちを受ける事になったのだ。
暫くして、揺れが止まった。
(つ…着いた…の?)
恐らく、展示コーナーに着いたのだろう。
すると、足先に床の感触が伝わってきた。
未だ上方に吊られている感覚はあるので、どうやら、私は地面に足を付け、立てる所まで降ろされたが、倒れない様に上方から吊られているようだった。
すると程なくして、人の声が聞こえ始めた。
今、舞台挨拶を見た人達は上映中、つまり、一回目に見た人か、他の誰かがそこにいるという事になる。
とにかく何も見えない私には、状況を把握することも出来ないし、拘束され、何もする事が出来ない。
(な…なんか…怖い…よぉ…)
何も見ることが出来ない、抵抗することも出来ない状況で放置される事へ、恐怖感が湧いてくる。
周りに集まる人達の会話が聞こえて来た。
「へぇ…これが撮影の時の本物って事か…。隣のが使われなかったダミーってやつでしょ?」
「ダミーも割りによく出来てるけど、やっぱり本物のほうがリアリティーあるよな」
その会話から読み取るに、私の隣には、使用されなかった偽物の魔獣ティナの銀布包みが展示されているようだ。
(うぅ…私…凄い見られてる…)
視界ゼロではあるが、雰囲気と会話から、お客の視線を感じる。
すると次の瞬間であった。
(ひゃぅっ!!!)
突然の事に驚き、体がビクンと反応してしまった。
視界ゼロの中、突然、腕を触られる感触があったのだ。
「うわっ!動いた!!これ、ホントに中に人が入ってるんだ…」
「すげぇ~~まじかよ~~」
(うぅ…さ…触られた…びっくりした…)
唐突な事に驚き、心臓の鼓動が早くなる。
「ってか…触って大丈夫なのかよ??」
「いいでしょ、だって、そこら中に【撮影小道具には触れて結構です、撮影の技術を肌で感じて下さい】って書いてあるし」
「そっか…これも【小道具】だしな…いっか」
「でしょでしょ」
(ちょ…ちょっと待って…触れて結構…って…私にもって…事なの…)
その二人の会話に驚愕する。
(待ってよ…いや…触らないで…。私は役者なの…小道具じゃない…私は人間なのぉぉ!!!)
しかし、心の中でそう叫んだとしても、グルグル巻きにされて拘束された私には、何も出来ないし、その叫びは誰にも届かないのだった。
すると、そこを封切に、多くの人が私の体を触り始めた。
「へぇ~…やっぱり、偽物と違って質感がいいね」
(んあっ!!いやっ!!やめて!触らないでぇぇ!!)
「さすが動きもリアルさがあるよね」
(やめて!触らないで!!お願いだからぁぁ!!)
体を触られ、反射的に体をくねらせてしまう。
そうして、体を動かせば、そこで見ている客を更に喜ばせる。
そして、余計に注目を引くことになるのだ。
しかし、視界の無い中で触られる感覚。
その感覚には、体が否応なしに反応してしまう。
ラバースーツに覆われているとはいえ、感触はダイレクトに伝わってくる。
そして、今回、私を巻いたテープは柔らかい素材のため、私を覆う薄い布程度のもので、あってないようなものだ。
感覚としては、全身タイツの上から触られているのと、さほど変わりは無い。
(うぅ…やめて…触らないでぇぇ…)
結局のところ、私は小道具としてお客を喜ばさせているのだった。
そして、そのお客の手が、ついに一線を超えて来た。
(きゃぁっ!!!)
そのお客の手に、体が今までになく大きく反応してしまった。
今まで手や足を触っていただけのお客の手が、ついに、私の胸を捉えてきたのだった。
「やわらかっ!!」
「あっ…お前、そこは触ったらまずいんじゃね??」
「え??なんで??【小道具】なんだからいいでしょ」
「そ…そっか…小道具だから関係ないか」
「お前も触ってみろよ」
「おう」
(あぅんっ!!んあぁぁっ!!)
そして、そのお客の手が私の胸を揉みしだき始めた。
(あんっ!!いやぁぁっ!!!やめてぇぇ!!んぅっ!!さわ…触らない…でぇぇぇぇ!!)
「うわっ…柔らかっ!!」
小道具に触っていいと開場に明記してある以上、この手を止める権利を持っている人は誰もいない。
私は、何の抵抗も出来ずに、揉まれるしかないのだった。
するとその手は更に増え、そのままお尻も触られ始めた。
(んあんっ!!!うぅぅぅ!!いやっ!!お尻…いやぁ!!やめてぇぇぇ!!)
視覚を遮断される事で、その与えられる刺激が倍増して感じられる。
ましてや、お尻は私の弱点。
その刺激に耐えられず、体を大きくうねらせる。
しかし、私がどれだけ体をうねらせようと、その手は胸とお尻を捉え続け、揉み続けるのだった。
(んあぁぁぁ!!やだぁぁぁ!!!あぅぅっ!!お尻!!ムリィィィィィ!!)
そして、その後もお客が代わるがわるやってきては、私の体中を触り倒していった。
「すうぅぅぅ…ふぅぅぅぅ…すうぅぅぅ…ふうぅぅぅ…」
散々、胸とお尻を責められ続け、体を暴れ回させられる。
結果、もちろんの如く、私の呼吸は乱れる。
しかし、私が出来る呼吸は、唯一開けられた鼻の部分のみ。
必死に大きく呼吸をしなければ、空気が全然足りないのだった。
(はぁ…はぁ…はぁ…これ…いつまで…続くの…)
そう言われれば、展示されるという事は司会の人の言葉から理解したが、終わりの表現は聞いていなかった。
12:00の会の挨拶が終わったあとからなのだから、最悪、このまま午後の間、夜まで展示される可能性もある。
しかし、何も見えない私にとって時間を知る事は出来ない。
今が何時かすら分からないのだ。
だから、【いつまで】続くのかなど、考えたところでどうしようもない。
この銀布の拘束から出してもらうまで、続くというだけなのだ。
するとお客の一人が言った。
「あっ…凄いぜ、鼻のあたり!すげぇ、空気が出てる!!」
どうやらその客が私の鼻付近に手を当て、私の呼吸を感じたらしい。
(はぁ…はぁ…あ…当たり前でしょ…生きてるんだから…呼吸するわよ…)
乱れた呼吸。
言い換えれば、激しい鼻息なのだ。
普通に考えれば、女子としては、その鼻息を感じられるのは恥ずかしい事だ。
しかし、今の私にとって、そんな恥ずかしさなどどうでもいい事。
呼吸しなければ死んでしまうのだから。
そして、その呼吸はその鼻からしか出来ないのだから。
「すげぇ!すげぇ!これ鼻息だろ!物凄い鼻息!!」
私の鼻息に、面白半分に盛り上がるお客。
(はぁ…はぁ…い…言わないでよ…しょうがない…でしょ…。はぁ…はぁ…こっちは苦しいんだから…)
そんな茶化しからも逃げる事も出来ない。
私はそう言われながらも、必死に呼吸するしかないのだ。
するとその瞬間だった。
(んんっ!!えっ!!い…息が!!!)
必死に呼吸をしていた鼻の部分が、お客により塞がれたのだった。
(ちょ…ちょっと!!息が!息が出来ない!!!)
頭を後ろから抑えられる手の感触。
そして私の鼻付近を抑える手の感触が伝わってくる。
面白がっお客が私の頭を抑え込むように、呼吸口を塞いだのだ。
(息が!!息が!!)
私は出来る限り、体を捩らせ、息が出来ない事を猛アピールする。
するとそれを見ていたお客が笑い声をあげながら言った。
「うわっ!!めちゃ動き始めたぜ!!」
「凄い動くじゃん」
(息がっ!!息がっ!!苦しい苦しい苦しい!!やめてぇぇぇぇ!!!)
あまりの苦しさに、私は恐ろしい程に体をくねらせる。
その動きが、また更にお客の注目を引く。
「オモシロいな、この動き」
(いやぁぁぁぁ!!!苦しい!!苦しい!!息をさせてぇェェェェ!!)
どんなに動こうとも、一本の棒のように拘束され、上部から吊られた状態の私に、その手から逃れる術はない。
唐突に塞がれた呼吸口。
限界を迎えるのも、すぐの事であった。
(むりぃっ!!もうむりぃっ!!死んじゃう!!死んじゃうぅぅぅぅ!!)
苦しさに頭の中が発狂し始める。
のたうち回る体。
しかし、一向にその手を離してはくれない。
(むりっ!むりっ!むりっ!むりぃぃぃぃぃっ!!!離して!離してぇぇぇぇぇ!!!)
窒息死という言葉が頭をよぎり、パニックに陥る。
あまりの苦しさに、何も考えられなくなり始めた。
一本の棒の様になった私の体が、今までにない大きさの動きをする。
(ホントにっ!!ホントにっ!!死ぬ!死ぬ!死んじゃうぅぅ!!やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!)
頭の中が真っ白になり始めた、その瞬間であった。
(!?)
私の頭を掴んでいた手が外れた。
「すうぅぅぅぅぅっ!!ふぅぅぅっ!!すぅぅぅっ!!ふぅぅぅぅっ!!」
(息が!!!息が出来る!!!空気!空気!空気!空気!!)
唯一開けられた鼻の穴から、必死に空気を取り込む。
(空気!空気!空気!空気!!!!!!)
なんとか、空気を取り入れる事が出来、最悪の事態は避けられた。
(はぁ…はぁ…はぁ…うぅぅ…死んじゃうかと…思った…よぉ…)
窒息死してしまうのではないかという恐怖で、目から涙が零れ落ちる。
しかし、撮影の時同様、私の頭はラバーマスクを被せられ、その上から更に銀布のテープで巻かれている。
その涙は人知れず、着ぐるみの中で流れているだけ。
そして、なんとか乗り切ったと思っていた所だった。
「よし、もう一回行ってみようぜ!!」
(えっ!?もう一回!?いやぁっ!!やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!)
すると、そのお客の言葉通り、私の呼吸口は再びお客の手により塞がれた。
(いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!死んじゃうっ!!!死んじゃうよぉぉぉぉぉ!!)
私はまた、窒息死してしまうという恐怖に包まれながら、呼吸が出来ない苦しさを与えられたのだった。
暫くして、その客は、私のもとから去って行った。
(ひぐっ…ひ…ひどい…ぐすっ…酷いよぉ…ひぐっ…苦しかった…怖かったよぉ…)
その後、呼吸を止めるなどと言う酷い仕打ちをする客は現れなかったが、代わるがわるお客に体を触られ続けた。
(んあぁっ!!いやぁぁ!!触らないでぇぇ!!)
(お…お尻ぃぃぃ!!お尻はダメェェェェ!!)
(んあっ!!そこは…そこは…いやぁぁぁぁ!!)
(あんっ!!うぅっ!!んあぁぁぁぁぁ!!)
私を触っていく手は、次第に様々な所へと広がって行き、ついには、私の陰部を触っていく人まで現れ始めた。
ラバースーツに包まれ、銀布のテープに巻かれているため、絶対領域は少し奥になる。
そのため、がっつりと陰部に触れられる事は無いが、上から触れれば、刺激は受けるのだ。
胸やお尻を触られ、火照らされた体には、そのくらいの刺激でも影響は出るのだった。
そして、そんな中、招かざる事に気が付いてしまった。
(え…あ…うそ…やばい…。お…おしっこ…したくなっちゃった…)
魔獣ティナの着ぐるみを着たのは朝、それからかなりの時間が経っている。
よくよく考えれば、今までよく尿意をもよおさなかったというくらいだ。
他の事に気が取られていて、忘れていたのだろう。
そして、その忘れていた尿意は、気が付いてしまうと、一気に増してくる。
(うぅ…やばい…一気にきた…。も…漏れそう…)
私は拘束された体の下半身をモジモジとくねらす。
全身を完全に包まれたラバースーツを着用している。
つまり、このまま放尿した所で、外に漏れだす心配はない。
しかし、問題はそこではない。
私の周りには今、何人ものお客…つまり他人がいるはず。
そして、そのお客たちは私を見ているのだ。
つまりこの状態で放尿するというのは、大勢の他人の前で放尿するに他ならない。
そんな羞恥的な行為が出来ようか…。
私はなんとかして、この尿意を我慢するしかないのだ。
(うぅ…忘れないと…忘れないと…とにかく…おしっこの事を忘れるしかない…)
必死に、尿意の事を忘れようと、他の事を考えようとする。
しかし、そんな簡単に、その事象を忘れる事など出来ない。
(な…何か…別の事を…)
そう考えている瞬間だった。
(あぅっ!!)
そんな思考を遮るように、胸が揉まれ始めた。
(んうぅぅぅっ!!だめぇぇぇぇ!!刺激しないでぇぇぇぇぇ!!)
刺激を受け、我慢をしている力が少し緩んでしまう。
必死に刺激しないよう心で叫ぶが、そんな事は、外のお客にとって関係の無い事だ。
この【小道具】の中の女の子が、おしっこを漏らしそうになっているなど、誰も考えもつかないだろう。
そして、その刺激はお尻にも向けられる。
(あぅぅぅぅ!!!だめぇぇぇ!!出ちゃう!!出ちゃうからぁぁぁぁぁ!!!)
必死におしっこを我慢する私。
しかし、与えられる刺激は容赦なく続いていった。
【小道具】である私に、容赦するものなどいないのだ。
確かに、私は顔すら知られていない役者…。
この映画でも、一切、顔を出さない裏方…。
魔獣ティナの着ぐるみに包まれた、魔獣ティナの中身でしかない。
そして、小道具のように銀布に包まれた状態。
しかも、小道具コーナーに展示された【道具】なのかもしれない…。
それでも…私は人間…。
着ぐるみにより、覆い隠されているが、普通の女の子なのだ。
小道具のように展示されているとはいえ、何をされてもいいという訳ではない。
全身を拘束され、呼吸を制御され、体中を触られる。
なんとも、非人道的仕打ち。
しかも、それから逃れる事は、全く出来ないのである。
何故こうなった…?
私が魔獣ティナの役を引き受けたから…?
私の体で作ったスーツだから、私しか着られないから…?
この舞台挨拶は断る事が出来た…。
しかし、私は引き受けた。
撮影の時の事を考えれば、このような事が起こる事も想像出来たはず…。
しかし、私は引き受けた。
何故…?
それは、私自身、自らが演じた役にプライドがあったから…。
この魔獣ティナは私だったから…。
私以外に、魔獣ティナをやらせたくなかったから…。
だとすれば、この状況に陥ったのも、自らの意志によるもの…。
そして、私を襲う刺激はマックスへと達して行った。
(んあぁぁぁぁぁぁ!!!いやぁぁぁぁぁぁ!!!むりぃぃぃぃ!!もうっ!!出ちゃうぅっ!!出ちゃぅっ!!出ちゃゥゥゥゥ!!!)
極限まで達した我慢、しかし、私の体に与えられる刺激が、私のダムを崩壊させた。
【ジョロジョロジョロ…】
(いいいいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!)
私の股に温かい液体が流れ出て行った。
(んあぁぁぁぁぁぁぁぁ…)
未だ、私の体は触れている。
胸を揉まれ、お尻を触られ、陰部をなぞられる。
その最中、私は、その人たちの目の前で、おしっこをしてしまったのだ。
(あぁ…おしっこ…おしっこ…し…しちゃ…った…ぁ……)
何かが頭の中で崩壊していった気がした。
体を触られる事への嫌悪感。
触られ与えられる快感。
それを上回る、背徳感と恥辱が私を包み込み、更に私を壊していった。
(ぁ…ぁぁ…ぃ…ぃや…ぁ…ぁ…ぁ…………)
私は力なく、上部に吊られたまま項垂れた。
そこに展示されているのは、魔獣ティナの包まれた【小道具】。
誰も、その中で、中身の女の子がおしっこをしているなど気が付きはしない。
展示が始まった時と同じ様相で、その日の終わりまで、そこに展示されているのだった。
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