巨人消防士襲来(後) (Pixiv Fanbox)
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その動作だけで地面が大きく沈み、巨大な素足が大地を踏みしめた衝撃が基盤を傾ける。傾いたビルは、まるで積み木が崩れるように、音を立てて倒壊していった。瓦礫の山が舞い上がり、粉塵が周囲を白く覆う。
「せっかく消してやったのになー。まあ、このサイズじゃ仕方ないか」
悪びれる様子もなく呟くと、残された瓦礫の上に再び足を乗せ、ぐりぐりと円を描くように踏みしだいた。
コンクリートも鉄骨も、血の混じった肉片も、すべてが足裏の下でぐちゃぐちゃに潰され、地面に深くめり込んでいく。足をどけると、そこにはもう何も残っていなかった。ただ、巨大な足跡の形をした、深い穴だけが口を開けている。
仕事を終えたと言わんばかりに、踵を返して帰ろうとした、その時だった。
自分が通ってきた道筋から、再び黒煙が上がっているのに気づく。
ただ歩いてきただけだ。しかし、それだけで、人間たちにとっては大災害だった。ショートした電源から火の手が上がり、すでにグチャグチャに踏み荒らされた街中では消火体制など整うはずもなく、炎が瞬く間に燃え広がっていた。
「おいおい、こっちもかよ」
苦笑混じりに唇を歪める。
「でもさっき小便出しちゃったしなー……」
こうなっては、奥の手を使うしかない。
これは合法だ。消火活動の一環だ。そう自分に言い聞かせるように、ニヤリと無邪気で、どこか悪い笑みを浮かべた。だらりとぶら下がって落ち着いていた巨砲が、ムクムクと再び首をもたげ始める。
熱を帯び、血管が浮き出た表面がひくひくと脈打ち、先走りの雫が再び先端に滲んだ。
「ただなぁ……さすがに、燃え広がりすぎだな」
先程、マンションを消火したように小便を一発かけて終わり、というレベルではもうない。
街区一帯で炎がくすぶり、風に乗って次々と飛び火している今、いくら大巨人の巨根から放たれる黄金の鉄砲水とはいえ、すべてを消し止めるには荷が重い。
「しょうがないな。うん。しょうがないよな」
納得するように何度か頷くと、太い指で耳のあたりに触れた。通信機を起動させる動作だ。
「……あー、あー、こちら桐島。巨大化申請。10倍。了解」
低い声が、街全体に響き渡る。
申請は即座に通ったらしい。次の瞬間、彼の体が、ゆっくりと、しかし確実に膨張を開始した。
心地よさそうに目を細める彼の足元では、巨大化していく巨体に瓦礫が次々と飲み込まれていく。
加速度的に質量を増していくその体重は、すでに天文学的な数値に達していた。地面は液体のように振るえ、330メートルを超えてさらに膨れ上がる素足が、ずるずると沈み込んでいく。足跡一つが湖のように広がり、残っていたビルの残骸すらも、沈む足に引きずり込まれるように消えていった。
「さて、こんなもんか」
筋肉を解すように、大きく伸びをする。
両腕を天に向かって伸ばしたその姿は、まさに手が空に届くほどの大きさだった。20000メートルを優に超えた巨体に、比肩しうる人工物など存在するはずもない。この国で最も高い山の山頂すら、彼の膝のはるか下方にしか位置しない。間違いなく、今、この世界で最も巨大な存在だった。
「さあて……やるか……!」
未だに燃え盛る街区の真上に、ゆっくりと四つん這いになる。
巨体の一挙手一投足だけで、爆風が巻き起こる。瓦礫と化した街並みが根こそぎ吹き飛ばされ、粉塵が渦を巻いて舞い上がる。その風圧でいくらかの炎は消し飛んだが、まだあちこちに赤くくすぶる火の手が残っていた。
そこに差し向けられたのは、天を衝くほどの大きさを誇る肉棒だった。
全長二千四百メートル。文字通り、山の高さに匹敵する長大な巨根。血管が木の根のように浮き出た表面は、熱を帯びてひくひくと脈打ち、先端からはすでに濃厚な先走りが糸を引いて滴り落ちている。その一滴が地面に落ちた瞬間、燃え盛るビル数棟がまとめて押し潰され、薄黄色がかった粘っこい白濁の水たまりが広がった。
「はぁッ……クっ……っへへ……すぐ、消してやるからなッ……!」
先走り汁と汗でテラテラと煌めく巨根を、力強く扱き始める。片手では到底持て余すサイズだ。太い指で必死に握りしめ、大きなストロークで上下にしごくたびに、ぐちゅ、ぐちゅ、ぬちゃぬちゃと、湿った卑猥な音が街全体に降り注ぐ。先端から飛び散る雫が、残っていた小さな炎を次々と消し飛ばしていく。
まるで神の戯れのような、理解を超えた存在の顕現に、奇跡的に生き残っていた人間たちは、もはや感情の制御を完全に失っていた。
発狂するように泣き叫び、狂ったように笑い、地面に額を擦りつけ、あるいはただ呆然と空を見上げる。自分たちがダニ以下の存在に成り下がったことを、誰もが悟っていた。
だが、そんな彼らの様子など、巨人には知る由もない。
ただ、自分の責務と、抑えきれない興奮の赴くままに、一心不乱に巨根を扱き続けていた。
「あー……マジ……キてるッ……!お前ら……刺激くらいには、なれよなッ……!」
荒く息を吐きながら、巨根から手を離す。
次の瞬間、辺り一帯の瓦礫と、まだくすぶる残骸を、地盤ごと抉り取るように巨大な掌で掬い上げた。そのまま、熱を帯びて脈打つ巨根にぐいと握り込む。塗り込むように、擦り付けるように、上下に扱き始める。瓦礫は指の間で粉々に砕け、コンクリートも鉄骨も、残っていた小さな命も、すべてが潤滑剤のように塗り潰されていく。
矮小な人類が作った建築物など、もはや何の刺激にもならない。
だが――オナニーの道具として、簡単に無数の命を使い潰しているという、圧倒的な優越感。それが何よりも効くスパイスとなって、雄としての興奮をさらに煽っていた。
全身をぶるりと大きく揺らし、亀頭が一瞬、びくんと膨らむ。
「あッ……!イぐッ……!!チビ共……俺の精子で潰れろぉッ!!!!」
びゅぐるるるるるっ!!!!
ぶびゅるるるるるっ!!!!
びゅぐっ!びゅぢゅるっ!!!!
もはや体裁を取り繕うことなどしない。
自分の優秀な雄液で、矮小な人類を蹂躙するというギラついた欲望を、剥き出しのままぶちまけた。
特濃の精液が、天から滝のように叩きつけられる。
本来の目的だった消火など、一発目の放水で容易く達成されていた。それ以降は、ただの白濁の奔流による蹂躙だった。巨大樹を凌ぐほどの太さを誇る白濁液が、勢いよく地面に叩きつけられ、数十キロ先まで飛散する。野球場を優に埋め尽くすどころか、街の半分を覆い尽くすほどの量が、次々と吐き出されていく。
余韻を感じる暇もない。
二度、三度、と続けざまに放たれる射精は、勢いを全く衰えさせなかった。街はどんどん真っ白に塗り潰され、建物の残骸も、道路も、生き残っていたわずかな人影も、すべてが粘稠な白濁の海に沈んでいく。
消火手段として精液を用いることのある巨人消防士は、普段、規則でオナニーの頻度を厳しく制限されている。
ゆえに、このような人間の街での消火の際には、容赦なくぶっ放せる数少ない機会なのだ。若く、優秀な生殖能力を持つ頂点の雄にとって、それは自らの力を――人間たちにも、そして同僚の巨人たちにも――誇示する、絶好の舞台だった。
桐島は、満足げに喉の奥で笑いを漏らしながら、まだ脈打つ巨根をゆっくりと扱き続けていた。
「あー……イったな……」
最終的に八発まで出し尽くした桐島は、脱力感に身を委ねるようにゴロリと地面に寝転がった。
たった一棟のマンションの消火のために派遣されたはずの巨人消防士は、実に数百万人もの命を、踏み潰し、押し流し、精液で塗り潰すという、あらゆる手段で殺し尽くしていた。
そんな惨状が起きようとも、人間たちにできることなど何もない。ただ、泣き寝入りするしかなかった。
しばらく余韻を堪能したあと、桐島はゆっくりと体を起こし、立ち上がる。
任務を終え、帰還しようとした、その時だった。耳元で通信機が鋭く鳴った。
「こちら、本部。そちらの世界だが、政府から正式に巨人消防士に対する抗議文が提出された。そのため、たった今から庇護対象から外れるものとする。“教育”を開始せよ」
教育――。
それは、所謂見せしめだ。巨人に逆らうとどうなるのかを、他の支配下にある世界に知らしめるための、生け贄となるということ。
たった今、この世界の運命は、完全に桐島の手に委ねられた。
「……了解」
ニヤつきを抑えきれない桐島は、怪獣を思わせるような低く重い咆哮を上げた。
次の瞬間、体にかかっていた制限を完全に解放する。筋肉が膨れ上がり、骨格が軋みを上げながらさらに巨大化を開始した。すでに二万メートルを超えていた巨体が、加速度的に膨張していく。地面が彼の体重に耐えきれず、広範囲にわたって陥没し、海が逆流するように割れ目へ流れ込んでいく。
「さーて……絶滅させてやるからな、待ってろよ? チビ共」
その声は、もはや大気を震わせる衝撃波そのものだった。
それから一時間と経たないうちに、一億人を超える人口を擁していたはずの国は、国土ごと完全に消滅した。
山も、川も、都市も、すべてが桐島の手足の下で粉々に砕かれ、飲み込まれ、塗り潰された。宣言通り、その世界は絶滅した。
桐島は、満足げに唇を歪めながら、何も残っていない更地となった大地を見下ろしていた。