美少女仮面vs怪人毒花 (Pixiv Fanbox)
Content
『街で新型の怪人が暴れている! 美少女仮面、急行せよ!』
司令によって現場に駆けつけた美少女仮面サヤカは、初めて見る異形の存在に相対した。
それは巨大な植物のようだった。固いアスファルトを割って地面から生えている葉と根の群れ──その中心に人影のようなものが見える。
「来たわねぇ、美少女仮面」
頭に巨大な花を咲かせた怪人が居た。
彼女──サヤカの所属するヒーロー機関は正体不明の怪人にコードネームを付与した。毒々しい模様の花びらに因んで、その名は怪人・毒花──は巨大な根やツルを操り、罪のない一般人を絡め取り弄んでいる。
「た、助けてぇー!!」
「今行くわ」
サヤカは手から無数の糸を出して編み上げていく。
柔らかい糸も凝縮することで硬質の武器と化す。瞬く間にイメージした通りの長剣を作り上げたサヤカは次々に毒花の操る植物を切り刻んでいった。
「さぁ、早く逃げて」
解放された一般人を逃がしている間にもツルがサヤカを襲ってくるが、切れ味抜群の剣を一振りするだけで容易く両断される。
「あなたの攻撃なんて私には効かないわ。すぐに本体を叩き斬ってあげる」
「あら怖い。でもこれならどうかしら──」
サヤカが糸を束ねるように、毒花はツルや根を大量に出現させ怒涛の攻撃に出る。危うく腕や足を絡め取られそうになったが、間髪入れずに剣でバサバサと切り捨てていった。
無限に続くかと思われた攻撃もやがて勢いが収まっていく。
「ハァ、ハァ……もう、観念しなさい……っ」
変身スーツに身を包んでいる間は身体能力が何倍にも向上する美少女仮面だが、動きっぱなしの状態が続くと流石に呼吸が乱れてくる。
息が上がっているだけ……のはずだが、何かがおかしい。
体の違和感に気づいたのも束の間、サヤカの脚からフッと力が抜けていく。
とっさに地面に剣を突き刺して杖代わりにすることで倒れずに済んだが、この隙を毒花が見逃すはずもなく。
「しまっ」
ツルは次々とサヤカの体に絡みついていき、雁字搦めに身動きを封じていった。
「ぐぅ……ッ!?」
キツく締め付けられる痛みだけではない、ある感覚がサヤカの神経を走り抜けていく。
「あっはっはっは! バカだねぇ美少女仮面。アタシの仕掛けた罠にも気づかないで」
されるがままのサヤカは体を折りたたむように縛られ、地面に伏せることとなった。
体に力が入らない……いや、力を入れようとすると痺れに似た感覚が筋肉を弛緩させてしまう。自慢の武器である糸も、こうも集中力を欠いては生成することができなかった。
「アンタが来る前から辺りにはアタシ特製の花粉を舞わせていたのさ。匂いも分からないほどの低濃度でも、激しく動いている内に大量に吸ってしまったようだねぇ」
「か……花粉、なんかで……なんでこんな……」
「ただの花粉じゃないよ。即効性の媚薬にもなる優れものなのさ」
「びや、く……?」
ただの麻痺とは明かに異なる症状が現れていた。ツルの締め付けに抗おうとすると頭から足のつま先まで突き抜けるような激しい感覚に襲われてしまう。
それだけではない。下腹部の辺りがジンジンと疼き、サヤカの心とは相反する切ない衝動が正気を奪っていくようだった。
「変身ヒーローって言ってもまだいじらしい女の子だねぇ。あっという間にアタシの花粉の虜になっちまった」
「く……ぅ……」
毒花の言葉を否定するには状況が悪く、もはや呻くことしかできない。
いや、本当に否定したかったのかさえ分からない。この怪しい感覚を求めているかのような物の言い方に納得してしまう自分もいる──と感じてしまったのだ。
「ほら、そんなに欲しけりゃもっとくれてやるよ」
ツルで体をひっくり返され、縛られたまま仰向けの状態にされる。どうしても逃れられない格好のサヤカに、毒花の花が覆い被さった。
「~~~~~~~~~ッッ!!」
吸った息に混ざる高濃度の花粉が、先ほどまでとは比べ物にならないほどの甘美な感覚をサヤカに突きつける。
「しかしドクターの読みは当たったねぇ。あんたの無敵の変身スーツも、気管を襲う攻撃には全くの無抵抗だったわけさ」
ドクターとは人間をさらい、改造して怪人にしてしまう恐ろしい闇医者のことだ。悪の組織の一員であることと、サヤカを怪人にする改造手術をやりたがっていることだけは判明している。
『──ザザ──聞こえるか美少女仮面! もうすぐ応援が駆けつける! それまで耐えてくれ!』
変身ブローチの通信装置が司令官の声を届けてくれる。
「あら、ジャミング装置の電池切れかしら。バッテリーの交換をサボったのが不味かったかしらねぇ」
もうすぐ助けが来る。惨めな敗北を喫した姿を機関の隊員に見られることに屈辱的な感情が湧いたものの、その思いさえも媚薬が起こす電撃的な快楽の波に流されていった。
「美少女仮面をさらってこいと言われてたけど、今回は諦めるわぁ。改めてアンタの弱点もハッキリしたことだし……じゃ、またねぇ」
毒花は地中に潜っていった。後に残ったのはアスファルトに空いた大穴と、その傍らでひっくり返ったカエルのようなポーズで固められている美少女仮面の無様な姿だけだった。
間も無く機関の隊員によるの救出が行われ、サヤカは医師の診断を受けた。
命に別状は無いとのことだが、この花粉に有効な薬は何も無いという。体への影響は未知数で完治できるかさえ分からない。まずは代謝によって花粉が抜けることを期待し、様子を見る以外に取れる手段が無いのだ。
病院のベッドで天井を眺めながら、耐えがたい快楽の刺激に耐えるサヤカ。少しでも体を動かすと喘ぐような情けない声を出してしまうため、指の先すら1ミリも動かさないように気をつけなければならなかった。
(私が本物の美少女仮面になって初めての敗北……屈辱よ。こんなマヌケな負け方するなんて……っ!)
快楽に溺れてしまわないため、心の中で何度も今回の反省を繰り返す。
そうだ、次からは糸でガスマスクのようなものを作って装着しよう。自在に操れる美少女仮面の糸でなら花粉も通さないフィルターくらい作れるはずだ。
次は負けないと誓いながら、サヤカは眠れない夜を過ごしていくのであった。