美少女仮面vs怪盗少女 (Pixiv Fanbox)
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巷を騒がせる怪盗少女シーフ・キャットから犯行予告が届いた。有数のコレクターが所有する世界に1つの希少な宝石を盗みに来るとのことで、当日は厳重な警備が敷かれることとなった。
警備は警察だけに留まらず、コレクターの要望によって美少女仮面にも依頼されることになったようだ。
「いやぁ~、よくいらっしゃいました。美少女仮面殿! 今回は是非あなたの力を貸していただきたい。キャットの奴には何度となくコレクションを盗まれていましてなぁ」
依頼主のコレクターによれば警察や私設の警備会社で雇った優秀な警備員でさえ怪盗キャットの犯行を防ぐのは困難だということらしい。
美少女仮面は胸を張ってコレクターに答えた。
「お任せください。悪党でも怪人でも私がやっつけてみせます!」
尽きることのない悪との戦いを経た美少女仮面にとって、今さらただの泥棒など取るに足らない相手だと考えていた。
予告にあった時刻が迫る。持ち主以外には解錠不可能なケースに収められた宝石は厳重な警備に取り囲まれている。
そんな中、一人の警備員が話しかけてきた。
「わぁ、本物の美少女仮面さんだ! 私ファンなんですよ~!」
背丈は美少女仮面と同じくらいの小柄な女性だった。集まった面々の中でもかなり若いようだが、ここに居るということは優秀な警備員なのだろう。
ファンと言われて悪い気はしない美少女仮面は笑顔で応じる。
「ありがとう! 握手する? サインも書くよ?」
「本当ですか!? わーい、嬉しいなぁ!」
ペンも色紙も無いためサインすることは叶わなかったが、その分も気持ちを込めて固い握手を交わした。
まさに犯罪が行われようとしている現場において少女達のきゃっきゃとしたやりとりは場違いだったが、張り詰めていた空気がいくらか和んでいくようだった。
そんな雰囲気の中、犯行の時間が訪れる。
さっきまで握手をしていた女性警備員がニヤリと笑った。
「では、約束通り宝石を頂いていきますね」
「え?」
次の瞬間、部屋の明かりが消えて辺りが暗闇に包まれる。
おそらく怪盗キャットの工作によって停電を起こされたのだろう。それくらいのことは想定の範囲内であるため即座に予備電源へと切り替えられるが、明かりが点いた時にはケースから宝石が消えていた。
警備員達がどよめく中、美少女仮面だけは違う所に視線を向けていた。
美少女仮面のマスクには突然の暗闇でも対応できるように暗視機能が内蔵されている。
その目でしかと見た。さっきまで側にいた女性警備員が服を脱ぎ捨て、難なくケースを開けて宝石を盗んでいく様子を──
「宝石は頂戴しました。またね、マヌケな美少女仮面さん♡」
キャットスーツに身を包み、大きなマスクで目元を覆った少女……怪盗キャットが窓辺に立っていた。
窓は開け放たれ、同時に強い風が入り込む。他の警備員もそちらへ視線を向けた時には既にキャットは身を投げていた。
しかし高所であったにも関わらず、本物の猫のように華麗に着地したキャットは夜の街へと消えていく。
美少女仮面もただ手をこまねいて見ているわけではなかった。
先ほどの握手の時、女性警備員を怪しいと感じていた美少女仮面はキャットの手首に糸を取り付けておいたのだ。
蜘蛛の糸よりも細い糸は怪盗キャットにも重さを感じさせなかったようで、気づかれた様子は全くない。
美少女仮面は繋がった糸を増幅させ、怪盗キャットの体を覆うように展開した。
宵闇の中、糸を辿っていくと全身を拘束された怪盗キャットが地面に横たわっていた。
側に落ちていた宝石を拾い上げ、美少女仮面は無様にもがくキャットを足蹴にする。
「捕まえた。これで終わりね? マヌケな怪盗さん♡」
「んんん~~~!!!」
キャットは縄抜け術を心得ているようで何度も拘束から抜けられそうになったが、この糸は全て美少女仮面が感覚を共有している。抜けられそうになった箇所へ随時拘束を強化していくため、脱出は絶対に不可能だった。
やがて警備員が追いつき、キャットにライトの光が照らされる。
今まで幾度となく盗みを繰り返しては逃げ仰せていた怪盗の悪事が終焉を迎える瞬間だった。
(完)