時の間の怪異 (Pixiv Fanbox)
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ピーポーピーポー......
「患者は10代女性、重度肥満による呼吸困難による意識混濁、発作を起こす寸前です!至急受け入れを......」
とあるアパートから運び出された巨大な肉の塊
担架からはみ出す贅肉がぶよぶよと揺れ動く
「ぐぉっ......ぶごっ!わ、わだじ......ちがう......ぶほっ!......デブじゃ......な......い......」
消えゆく意識の中、少女の訴えはサイレンの音にかき消えたのであった
私は飯田未来(いいだみらい)
フリーでジャーナリストをしている
私は今、不可解な出来事の真相を追っていた
先日、とある少女が亡くなった
死因は重度肥満による多臓器不全だった
それだけならなんら不思議は無い
しかし、少女の両親が娘の遺体を見て驚愕したという
私は少女の両親に取材を取り付け、話を聞いた
しかしその話は普通ならあり得ないものだった
両親は私に痩せた少女の写真を見せてきてこう言った
「これは一昨日の写真だ」と......
私は耳を疑った
病院の情報だと亡くなった少女の体重は500kgを超えており、たった2日で増えるような体重では無い
しかし、写真の少女は輪郭こそ違うが目鼻立ちは確かに本人だ
少女は大学進学を機に一人暮らしをするために引っ越しをし、もう少しで大学生になるはずだった
つまり僅か2日で数百kgも太り、入学式を迎える前に少女は亡くなったことになる
しかも司法解剖の結果、少女の胃袋ははち切れそうな程パンパンに膨らんでおり、切開すると大量の食べ物が溢れ出てきたという
しかし不思議な事に彼女の口や食道には一切食べ物の痕跡が見受けられなかったという
これはかなり奇怪な事件だ
私は少女の暮らしたアパートに向かうことにした
恐らく答えはそこにあると私の勘が告げている
私はアパートに到着する
古いがリノベーションもされており、学生の一人暮らしには十分だろう
大家さんから預かった鍵で部屋に入る
そこは小綺麗なワンルームの部屋
僅か2日しか暮らしていない部屋のため目立った汚れもない
体重500kgの人間が過ごしていたとは思えない
しかしある一点だけ異様な光景が目に入った
それはどこにでもある普通のベッド
しかしそのベッドの脚は全て折れ曲がり、潰れていた
物凄く重い物が乗っていたせいだとすぐ分かった
きっと少女が乗ったせいだろう
しかしこの部屋は違和感しかない
このベッドにしかない太った少女の痕跡
クローゼットやタンスを開けるとそこには標準サイズの洋服や下着しか無い
冷蔵庫を開けるとこれと言って太りそうな食べ物は入っておらず、むしろ健康的な食生活だった事が伺える
「一体どうして......?」
再び潰れたベッドに視線を向けるとゾクゾクと妙な悪寒を覚える
私は気味が悪くなり、部屋の写真を数枚撮って部屋をあとにしたのだった
その日の夜
私は自分のアパートに帰ると資料をまとめ、早めにベッドに入る
明日からどのように事件を追うか、そんな事を考えながら私は眠りに落ちる
しかしその日の夜は妙に寝苦しい
圧迫感というか、身体の中で何かが膨らむような感覚
その感覚にうなされながら私は朝を迎えた
「うぅ......なんか身体だる......」
私は朝目を覚ますと妙な倦怠感を覚えた
身体を起こすとお腹が苦しい
「な、何......?」
掛け布団を退かすとそこには信じられない光景があった
「えっ!?な、何!?このお腹!?」
そこにはぽっこりと膨らんだお腹があった
触ると胃がパンパンに膨らんでいるのが分かる
「ど、どうなってるの!?」
私はベッドから降りようとする
しかしそれは叶わなかった
「な、何これ......見えない壁......?」
ベッドから降りようとすると見えない壁に阻まれ降りることが出来ない
「だ、誰かに助けを......携帯は机か......」
唯一の連絡手段は壁の外にあり、途方に暮れる
「にしてもこのお腹......うぅ......気持ち悪い......」
私は異様な満腹感に苛まれながら再び身体を横にすると眠りについた
目を覚ますと満腹感は相変わらずだ
外を見るとまだ明るい
「結構寝た気がするけど......今何時?」
私は時計を見ると驚愕した
「えっ!?じ、時間が全然経ってない......!?」
時計の針は眠る前から変わっていなかった
厳密には秒針が数秒進んでいたが些細な変化過ぎて私には分からなかった
「な、何が起きてるの......?」
私は底知れない恐怖に苛まれるのであった
あれからどれくらい経っただろうか
何日、何十日、もしかしたら何年?
「ふぅ......ぶふぅ......げぷぅ!」
あの日からずっとお腹がいっぱいだった私の身体は日に日に変化していった
身体にどんどん贅肉が付いていった
全身がむちむちしだし、お腹、胸、手足、お尻がゆっくり確実に重く膨らんでいく
胃の中をどうにか吐き出そうとしたが全く吐く事は出来ず、少し消化してはまたパンパンになってしまう
しかも胃が大きくなっているのか膨らみ方が日に日に大きくなっていった
そして時計でやっと2日ほど経った頃
「ぐぶぉぉ......ぶほぉぉ......」
私は横になったまま動けなくなっていた
着ていたパジャマはとっくに着られなくなり全裸で過ごし、全身がぶよぶよの大量の贅肉に包まれていた
「ふぐっ!?うぶぉぉぉぉ......」
またお腹が膨らんでいく
ぶよぶよなお腹がパンパンに張り詰めていく
「おぶっ!?ぐげええぇぇぇぇぇぇぇっぷっ!!」
盛大にゲップをすると胃の中の食べ物の匂いや味が出てくる
私の身体はもはやベッドを覆い尽くす程の巨体となっている
ギシギシ......ビキッ!
「んぉ?」
最近ずっと軋んでいたベッドが嫌な音を立てる
ビキッ!ビキッ!
バギィ!バキバキィ!
「うぶぉぉぉぉぉ!?」
ベッドが私の体重に耐えられず潰れてしまい、私はベッドの外に放り出されてしまう
「ぶはぁっ!?おぶぅっ!ぜぇっぜぇっ......あ、あれ......?」
私は数年ぶりにベッドから降りられていることに気付く
「ぶほぉっ!?で、出られだぁ!?ぶぐぅっ!?」
しかし私は急に胸に強烈な痛みが走り、パニックになる
「がはっ!?ぶぎぃっ!?ぶがぁぁぁ!?」
私はテーブルにある携帯を手に取り、太い指で119番に掛ける
「はい119です、消防ですか?救急ですか?」
「ぶはぁっ!だ、だずげでぇ!いだいぃ!ぐ、ぐるじぃ!」
私はそのまま意識を手放した
ピーポーピーポー......
「患者は20代女性、重度肥満による心筋梗塞、意識はありません!至急受け入れを......」
担架から盛大にはみ出した贅肉の塊が救急車に乗せられる
しかし処置の甲斐無く、患者は死亡した
司法解剖の結果巨大な胃袋の中にはパンパンに食べ物が詰まっており、口や食道に食べ物の形跡は一切無かった
最近このような遺体が増えている
何百kgもある極度の肥満体、食べ物の詰まった胃袋、若い女性、そして関係者はみんな口を揃えて「数日前まで痩せていた」と証言する
医者も警察もこの状況を見ても何も分からず、また今日も巨大な贅肉の塊が運び込まれるのである......
完