化ける鬼(3):鬼の伝承 (Pixiv Fanbox)
Published:
2023-11-30 05:35:53
Imported:
2026-06
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一週間に一度は捕らぬ狸の皮算用にも過ぎました。
気分の波があるって、なんだかもんにょりしますね。
――――――――――
桜井ひなこと友達になって、一週間が経っていた。
学校が同じであるから会おうと思えば会える環境は大層にありがたく、気付けばひなこと過ごす時間が多くなっていた。
「ねぇ桜井さん、何読んでるの?」
「え…、図書室で借りた本ですけど…」
この一週間で分かった事は少ないが、それでも確実に理解した事がある。
ひなこは読書が趣味であり、休みの日には図書館に行き、学校の日も遅くまで図書室に籠っている。だからあの時、遅くに帰宅していたのだろう。
「…白銀さんも、読んでみます?」
「いいのかな。私あんまり読まないんだけど…」
「大丈夫ですよ。本は色んな世界に連れていってくれますから、きっと興味のあるものに出会えます」
そうひなこは言ってくれているが、俺としてはマンガとやらの方がありがたかった。
活字だけでなく、絵まで描いてあるのだ。文章に触れる機会のない身であった俺からすれば、そちらの方がとてもありがたい。悠里が持っていたものを読む形でマンガの存在を知ったのだが…。
しかしなんだな。悠里の蔵書は特定の傾向に寄っている気がする。女の目線で話が進み、男と出会って様々な事件が起き、その上で結ばれているような作品ばかりだ。
俺としてはもっとこう…、血沸き肉躍るような作品の方が好みなのだが。
まぁいい。俺は書物の知識など無いに等しいから、ひなこの薦めてくれる書物を読んでみよう。本好きの彼女が言うのだ、恐らく問題は無いだろう。
「じゃあ、これを借りてみるね」
「はい。ぜひ感想を聞かせてくださいね」
ひなこは自分の薦めた作品を俺が借りて、嬉しそうにしている。その笑顔を見て、俺は正直、男として欲情している所だ。
犯したい。ひなこの体を組み敷いて、男としてひなこをモノにしたい。
だが友人として隣にいる以上そんな事はできず、俺はこの情欲を抱え込むしかない。
俺は今日もひなこと一緒に帰り、彼女を家にまで送っていった。
「ありがとう、白銀さん」
「どういたしまして。それじゃ、またね、桜井さん」
手を振ってひなことわかれる。ひなこは家の中に入るが、俺は扉が閉まり、その姿が見えなくなるまで手を振った後、一息吐く。
「ふぅ…」
やはり、ひなこはかわいい。
今の俺より10cmほど小さい…、俺本来の鬼としての姿なら頭ひとつ半程は違うだろう小柄な体。
そのくせ俺と同じくらいに服の中で存在を主張している胸や尻。
近くに寄って分かる匂いと、寄り添って触れた事でわかる柔らかさ。
どことなく“ふにゃっ”とした笑顔を見せてくるあの表情。
それ等を見る度に、俺の男としての部分が鎌首をもたげてくるのだ。できる事であるならば、今すぐ押し倒して犯したい。そう思えるくらいに、俺はひなこに視線が向くようになっていた。
だが、それはできない。
今の俺は「白銀悠里」という、桜井ひなこの友人だ。彼女は俺が鬼であることを知る由もないし、ましてや本当は男である事なんてわかる訳がない。
だから今は、友人関係であればいい。それに、悠里の性格を考えても、そんな事をするとは思えないと考えたのだ。
ひなこがかわいいから押し倒し、犯し、俺のものにしたい。その気持ちは確かにある。だがそれをしてしまえば「白銀悠里」としての立場が揺らぐ可能性がある。
「今までと違う」ということを周囲に知らせてしまいかねない。それは避けたい。
いやはや、他人に成りすますという制限がここまでとはと思いながらも、俺はこの情欲を持て余すしかないのだ。
帰宅し、自室で服を脱ぐ。
鏡に映るのは女としての肉体を持つ俺自身。その顔を見ながら、改めて思う。
「今の俺は女だ。その俺がひなこを抱きたいと言ったら…」
どうなるかは、わからない。だが恐らく引かれてしまう可能性が高いだろう事は、なんとなく感じている。
ひなこが同性である悠里を好きになってくれるかは分からないし、しかもまだ出会って友達になり、一週間だ。
それでも、と考えると、股座が熱くなり始めてくる。悠里に変化した俺の体が、興奮で熱くなり始めてきたのだ。
「あぁ、興奮しているのか、俺は…」
ショーツを脱ぐと、とろりと愛液が糸を引いた。悠里としての割れ目に指をそっと這わせると、小さく声が漏れる。
「ん、ぁ…っ」
男としての自慰よりも気持ちいいと感じる、女としての感覚。精神が高揚すると、俺は決まって、こうして自分を慰めていた。
一週間前にひなこを連れていこうとした男達を襲った時もそうだ。
悠里として潜伏し始めてから、久しぶりに揮った鬼の力に、俺の興奮は収まらず、終わった後、こうするように女として自慰を行った。
そうやって発散しておかなければ、いつか暴走してしまいそうで怖かったからだ。
そして今も、欲望を抑えきれないでいる。
「んっ…、はぁ、あ…っ」
愛液に濡れてぬめりを増した指が、膣内に潜り込んでいく。
にゅるりと指が入ってしまうと、膣壁が物欲しそうにひくひくと動いて、俺の指を奥へ奥へと潜り込ませていくのが、敏感になった指と膣とで、いやでも理解していく。
「あ…っ! ああぁぁ…!!」
ぐちゅりと音を立てて中指が入り込み、根元まで入ってしまうと同時に、頭が真っ白になる程の快感に襲われる。
あぁ、俺の膣内に、男として存在しない器官に、俺の指が入っている。それは間違いない気持ちよさを齎してくれているという事を、理解するたびに体が悦んでいる。
そこからは指が止まる事はなかった。手を引き、突き入れて、1人で自らを慰める行為の始まりだった。
「あっ、あぁっ! 悠里の、俺の"ほと"が…っ、おまんこがっ、悦んでるっ! 指を入れられて、気持ちよさそうにしてるぅっ!」
ぷちゅり、ぷちゅりと水音を鳴らし、俺の指をふやかさんとばかりに愛液が漏れてくる。
「どうしようっ! 俺っ、悠里なのに、女なのにっ、ひなことまぐわいたいっ! 女同士の身体を重ねて、交尾したいっ!」
自らの欲求を言葉にしながら、俺は止まらぬ自らの手で快楽を貪っていく。次第に、股間に存在している陰核…、クリトリスが大きくなり始め、男の時は比べ物にならない小さな大きさで、存在を主張し始めた。
触れば気持ちいい。それを既に知っていた俺は、親指でクリトリスを潰すように撫でていく。
「んんんんん…っ!!」
脳天を走るのは稲妻のような快楽。元々男の魔羅と同じものだというクリトリスは、それよりも激しい快感を俺に与えてくれる。
俺の変化術なら、ここを元の魔羅に戻すことも可能だが、俺の知る限り、魔羅をしごくよりクリトリスを撫でる方が気持ちいい。それだけは確かだった。
「あふぅ…っ!! んあぁっ! おまめいじめたら…っ、すぐイく…っ、イっちゃうぅぅ…っ!!」
絶頂が近いのがわかる。腰が大きく跳ね上がる。その反動で更に深く指が入り込み、また新たな刺激となって襲ってくる。
あぁ、もう限界だ。俺は"ほと"とクリトリスを指で激しく責め立てながら、腰を浮かせて最後の絶頂を迎えようとする。
その瞬間、パチン、と。頭の中で何かが弾けた気がした。それがなんなのかはわからないが、ただひとつ言えるのは――
(これは、マズい)
そう思った瞬間、思考は白く塗りつぶされていき、何も考えられなくなるほどの快感に全身を支配されたのだった。
「イ…っ、っく、ぅ、んおぉぉぉぉぉおおっっ!!!」
激しい絶頂の波に身を揺らし、女の快感に身を委ねる。ひくひくと体が痙攣し、腰が浮き上がり、背中は大きく仰け反って、足の指がピンと伸びるくらいに力が入ってしまう。
身体の制御が効かずに、緊張から脱力へと次第に変わっていく。全身の筋肉が弛緩し、そのままベッドに倒れ込んだ。
「あ…っ、あは…っ」
それでもなお、余韻が残り、びくびくと体が震える度に、口から喘ぎ声が漏れ出てしまった。
ただ、それでも感じたのは、満足感と同時に物足りなさ。
致したい相手がいるというのに、自慰をする事しかできないもの悲しさであった。
「あ、は、ぁ…、ひな、こ…っ」
想う相手の名を呟き、自分の指で慰めたばかりの秘所に触れる。そこは未だ熱く濡れそぼっていて、更なる快楽を求めているようだった。
この火照った体を慰めてくれる相手が欲しい。一緒に快楽の高みに昇ってくれる相手が欲しい。そう思いながらも、それは叶わない願いだと理解しているからこそ、虚しい気持ちになってしまうのだ。
「はぁ…っ」
それでも、手だけは止められなかった。今だ熱が残る悠里(俺)の体は、男の時のように一度射精をして終われるような体をしていなかった。
何度でもイけてしまうからこそ、止め処なくなってしまうが、それでも俺は、満足するまで何度も自らを慰めてしまうのだ。
* * *
そんな想いを抱えながら、また一週間が経った。
俺はひなこと友人関係を築き、共に帰宅する日々を送っている。
「そういえば白銀さん、こんなお話を知ってますか?」
「なぁに、桜井さん」
ふと、帰宅途中でひなこがこちらに向けて話を持ち掛けてくる。俺はその話を聞こうという体勢になり、ひなこから出て来る次の言葉を待った。
「この街の近くにあるお山には、鬼が住んでるという伝説があるんですって」
「…あぁ、そのお話ね。うん、知ってるけど…」
そのお山とは、俺が住んでいた所で、本当の悠里が死んだ場所でもある。
伝説の段階で俺の親父やその父、つまり爺のやったことが伝わってきたのだろうが、それ自体は「悠里」も知っている。
けれど、読書家のひなこの事だ。それだけで終わる筈が無いだろうと考える。
「郷土資料か何かで読んだりしたの?」
「はい。資料館で読んだ本に書かれてあったんですけど、それによると『鬼は人の姿を借りて里に下りてくる事がある』という記述がありました」
「へぇ…」
つまり、俺の祖先は今の俺と同じことをして、露見していたことがあるのだろう。そんな事をしていた事自体初耳だ。
「…それで、その鬼は人里に降りて、何をしてたの?」
「実は、そこが分からなかったんです。気になって本も全部読んだんですけど、具体的な『何』をしていたのかはさっぱりで…」
「ふぅん。…もしかしたらお嫁さん探しかもしれないね」
「それ、面白そうですね。鬼は鬼だから人里に降りれば騒ぎになる、だから人の姿を借りて、お嫁さんを探しに来た…。ちょっとロマンありますね」
そしていつも通りに“ふにゃっ”と笑うひなこは、楽しそうにしている。
俺はその顔を見て、「俺がその鬼だ。祖先と同じことをしているのだ」と言いたくなりそうになってしまった。
だがそれはできない。言ってしまえば必ず悠里の存在を追及されてしまうからだ。
「…………」
同時に、俺は「言ってしまいたい」「ひなこに知ってほしい」という考えが出て止まらなかった。
だから、言ってしまったのだ。
「そういえば、少し前に山に行った時、少し気になるものを見つけたの」
「前にって…、白銀さんが事故にあった時でしたっけ」
「うん、記憶は戻ったけど、迷ってた時に印象深いものを見つけちゃって。もしかしたらそれが、お山の鬼に関するものなのかもしれないよ」
「そうですか…。……白銀さんっ」
ひなこは、まっすぐ俺の方を見て言ってくる。
「今度のお休み、お山に連れていってもらっていいですか? もし覚えてたら、それのあった場所に行ってみたいんです」
そう言って、俺の手を握ってきた。その表情はとても嬉しそうで、何か見つけられるかもしれない、という期待に満ちているように見える。
「うん、わかったよ。それじゃあ次の休みの時にね。お山に行くから、長袖の動きやすい服と、しっかりした靴が必要だけど…」
「用意しますっ。…楽しみだなぁ」
そう言いながらひなこは喜んでくれている。…いっそのこと、本当にひなこを「嫁」として引き入れてしまうのもありと思う位に、彼女は可愛かった。
* * *
そうして次の休みの日。俺達は容易を整えて山に登っていた。
俺としてはちょっとぶりの帰省になるのだが、今からここに帰るのは気が滅入る程に、何も無い場所だ。むしろ何かがあり過ぎる人間社会の方が、今は楽しいと思えてしまう。
そして少しずつひなこを案内して、山の奥深く、人が分け入らない所に案内すると、俺のねぐらにしていた洞穴があった。
「…ここだよ、桜井さん。迷ってた時に見つけたものって」
「すごい…、洞穴のはずなのに、乱暴だけど組み上げられた木で戸が立てられてる…。確かに印象的ですね、これ」
俺が住んでいた場所は、何も変わっていなかった。誰かが入った気配も無ければ、動物が潜んでいる気配もない。
つまりここには、何もいないという事だ。
「…桜井さん、入ってみる?」
「えっ、で、でも、大丈夫なんですか? もし本当に鬼がいたら…」
「大丈夫。そんな気配はしないから。ね?」
まぁ、住んでいた俺が今ここにいるんだから、誰かがいる訳ではなし。ひなこが知る由もないが、俺が入っていいと言うんだから入っていいのだ。
「あ、白銀さん…っ」
俺は止めようとするひなこを尻目に、ねぐらのなかに帰ってきた。立てかけた戸を外し、洞窟の中に、奥へ奥へと入っていく。
そこには野性味に溢れた住処がそのまま残されていて、誰かに荒らされた形跡もなかった。
(ここまで入ってくる存在がいる訳でなし。当然か)
と思いながら、木をくりぬいて作った椀を手に取り、見てみる。鬼としての手で使った腕では、悠里の手と比べればとても大きい。そもそも大量に食っていたしな…。
そんな事を考えていると、懐中電灯で洞窟を照らしながら、ひなこがおずおずと入ってきた。
「…あれ?」
しかしすぐに違和感に気付いたようで、辺りを見渡し始める。それはそうだろう、だってここは俺が暮らしていた頃のままなのだから。
けれどひなこが気付いたのはそこではなかった。
「…白銀さん、懐中電灯は?」
洞窟は奥まった所にあり、そこまで日の光は届いてこない。普通の人間であれば懐中電灯が、明かりが必要になるだろう。
ひなこが見たのは、懐中電灯も無しにその中を平然と動いている俺の姿。
「……」
あぁ、しまったな。そういえば人間は夜目が効かないんだった。
いくら「白銀悠里」に変化している俺とはいえ、夜目は効くし普通に洞窟の中は見える。暗いと気が滅入るから、明かりは用意していたがそれも点けていない。
ではここにある状況はと問われると、「明かりも無いのにこの場所を知ったように動く白銀悠里」だ。
…ひなこから見れば、異常な状況だろう。
「…………」
俺は黙ってしまった。下手な事をいえば露見するだろう。どんなことを理由にしても、ひなこは気付くだろう。
「…白銀さん?」
「えぇと、その…」
俺は言葉を詰まらせてしまう。どう誤魔化すべきかが分からず、頭が混乱してしまう。
そんな俺を見て、ひなこは俺に近付いて手を取った。
「大丈夫でしたか?」
「え…?」
「灯りもなく真っ暗な洞窟の中を歩くなんて危険です! 怪我はしてませんかっ?
「う、うん…」
「よかったぁ…。何も無くてよかったです…」
安心したような顔をするひなこを見て、俺も安堵した。どうやら誤魔化しきれたらしい。
それからしばらく、俺とひなこは、俺のねぐらの中を探検していた。俺にとっては少しばかり、懐かしい場所ではあった。
そして一通り探索が終わった所で、俺達は休憩を取る事にしたのだった。
洞窟の外に出て、一息つくと、ひなこは興奮冷めやらぬといった様子で俺に向けて話しかけている。
「すごいです、やっぱりここには誰かが住んでるみたいです!」
「そうだね。寝床みたいなものもあったし…、食器らしきものもあるから、多分、誰かが住んでいるんだろうね」
俺もひなこの言葉に合わせて、適当に相槌を打つ。
「本当に鬼が住んでいるんですかね…。もしそうなら、大発見ですよ…!」
「どうかな。本当は既に発見されてて、ひた隠しにされてるだけかもよ」
「それはそれで…、とても、ロマンがありますね……っ」
「ロマンか…」
ロマン。憧憬。それは確かに、俺が人間社会に感じたものと同じものを、ひなこは俺(鬼)に対して感じているのだろう。
「じゃあ、桜井さん」
だから俺は、
「もし私が…」
何を考えていたのだろうか、
「ここに住んでいた鬼だとしたら…」
訊いてしまった。
「どうする?」