牛丼屋と砂時計の話 (7,000字くらい) (Pixiv Fanbox)
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茹だるような暑さの日。
夏休みもあっというまに半分は潰れてしまっていた。
一日中、部屋の中でダラダラと時間を無為に費やす日が数日続き、そんな現状に危機感を覚えながら、安井は寮の自室を出る。特に行くあてもなく、どうしたものかとぶらついていたところ、ばったり先輩の畑山と出くわした。
畑山とは同じ寮生で、入学当初からの仲だった。おおらかな性格で一緒にいても気をつかうことがあまりないので、下手すると同期と一緒にいるよりも楽なときがあるほどだ。
安井は、人並みに運動はするものの自称オタクでそこまで人付き合いを好む方ではない。一方、畑山は、体育会系と呼んでも差し支えない人間で、ラグビー部に所属しており、図体はかなりデカい。身長は180センチを超える巨漢で、直接尋ねたことはなかったが、恐らく体重は三桁の大台に乗っている。
特に共通点が多いわけではない二人だったが、不思議と馬が合った。
「昼飯でもいくか」
時計を見ると、時間はちょうど昼飯時だった。思い出したように腹の虫が鳴り始める。安井が頷くと、二人は夏の暑さに辟易しながら歩き始める。二人の足は自然と牛丼チェーン店へと向いた。
畑山と外食をすると大抵の場合、牛丼屋に行き着く。畑山は大食漢で、少なく見積もっても一食に二人前は食べなければ、ガス欠になって活動に支障をきたしてしまう燃費なのだ。だから、質より量、といっては言葉が悪いが、満足できる量を比較的安価で食べることができる牛丼屋が選ばれがちなのである。
「大盛っすか?」
「いや、特盛だな」
食券を購入し、カウンター席に座る。店内は、混み合っていたが冷房の効いていて生き返るような気がした。しかし、それでも畑山には足りなかったらしく、しきりにシャツの裾を掴んで、パタパタと仰いでいた。仰ぐたびに、わずかに香水とそれに混じった汗の匂いがふわりと鼻をくすぐる。牛丼を待つ間、お冷やを飲み干すころには、やっと落ち着いたようで、おとなしくスマートフォンを弄り始めていた。
ふとジーンズの尻側のポケットに何か固いものが入っていることに気づく。ポケットを指で探ると、安井はその正体に思い当たる。
それは砂時計だった。
もちろん普通の砂時計ではない。これは、未来のシークレットツールのひとつで少し風変わりな機能がある特別な砂時計だった。先日、購入してどこかで試そうとポケットに突っ込んだまま、安井はすっかりと忘れてしまっていたのだ。
隣に座っている畑山の姿を見ながら、これは砂時計を試す良い機会なのではないかと安井は気づいた。畑山は、実験台にぴったりだ。これは面白いことになりそうだとほくそ笑みながら、ポケットから取り出した砂時計をカウンターの上に置く。
「なんだそれ?」
自分が実験台にされようとしていることも露知らず、畑山は特に警戒する様子もなくそう尋ねた。
「これは」
と、安井が口を開いた瞬間に、カウンターに熱々の牛丼が二つ並ぶ。
先に空腹を満たすことにしよう。ガツガツと飯と牛肉を口の中に掻き込んだ。黙々と丼の中身が胃に収まっていく。
不意に、畑山が「うっ」と呻いた。飯を喉に詰まらせたのだ。だが、不幸なことにガブガブお冷やを飲んだせいでコップの中には水が残っておらず、さらにピッチャーの中身も空。その様子に気付いたのか、畑山の隣の席の男が、さっと別のピッチャーを差し出した。慌ててピッチャーから汲んだ水を飲み干して、畑山を事なきを得たようだった。畑山は男に礼を言うと、再び牛丼と格闘を始めた。
畑山の隣の席の男は、三十代半ばくらいの年齢で、作業服を着ていた。他の席にも似たような格好のものが並んでいる。この近くの現場で働いているのだろうと安井は思った。
牛丼を食べ終えて、人心地ついてから安井は砂時計をカウンターから摘んで、改めて畑山に見せた。
「この砂時計は、未来のハードマイクロ社が販売しているマインドコントロール機能のついた砂時計なんですよ」
「何言ってるんだお前?」
畑山は怪訝そうな顔で眉をひそめる。
「マインドコントロールといっても、別に洗脳して思想を植え付けるとかそういうものではなくて、まあ、実際に使ってみた方が分かりやすいですね」
そういって、安井は砂時計を逆さまにして、カウンターに置いた。
「普通の砂時計と違って、ひっくり返すだけでは砂が落ちないんですよ。横についてるボタンを押し込んで見てください」
「俺が押すの?」
畑山がボタンをカチリと押し込む。すると、砂がサラサラと落ち始めた。
「これで砂時計の効果が有効になった状態です」
「おー」
おもちゃか何かだと思っているのか、畑山は砂時計の中の砂を眺めている。
「それで肝心の効果なんですけど、砂時計には効果範囲があって、だいたいこの店くらいの広さですね。効果範囲の中では、砂時計の所有者――つまりは俺に対して寛容になるように効果範囲の人間の脳に影響を及ぼすっスね。例えば、先輩、シャツ脱いで貰えますか?」
「シャツを脱げってここでか?」
牛丼屋の店内は混み合っている。こんな公共の場所で上半身を晒すほど、畑山は非常識ではない。飲酒でもしていれば別かもしれないが。
「流石の先輩も真っ昼間からこんな場所で流石に服は脱がないっすよね」
「当たり前だろうが」
「でも、俺からの『お願い』って頼んでも無理ですか?」
「そんなの――」
畑山は白いシャツの裾を掴んで一気に引き上げ、脱ぎ去る。汗ばんだ肌、筋肉質な胸板が晒される。人のいる店内で半裸になった姿は目立ち、周囲の人間から見れば異様に映るだろう。
「無理なわけないだろ」
畑山の言葉に、安井は満足げに頷いた。
「こういうことっすね。俺がお願いするとどんな無理なことも快く引き受けてくれるってわけです。ちなみに、こうやって面と向かって説明しても、先輩にはまったく理解できないと思いますが、それも砂時計の機能のひとつです。セーフティってやつです。当然ながら、効果範囲の周囲の人全員に影響を及ぼすので、先輩が俺からのどんな無茶なお願いを引き受けたとしてもそれを咎められることはないので安心してください。安全ってことですね」
「よく分からんが、安全なら良いんじゃないか?」
「ええ、ですから折角なので全裸になってください。お願いします」
畑山は頷くと、カウンター席から立ち上がる。そして、特に抵抗なくボクサーブリーフもろとも履いていたハーフパンツを脱ぎ去り、全裸を晒す。
「手は後ろに組んでください。チンポがよく見えるように背筋を伸ばして。お願いします」
言われた通りに畑山は、休めの体制で胸を張った。
流石ラガーマンというべきか。筋ばってゴツゴツした腕の筋肉から繋がるボリュームのある胸板。高カロリーな食生活からは考えられないほど健康的に腹筋は割れていた。脚周りもしっかりと肉がついている。このシルエットなら下着モデルのバイトでもできそうなくらいだ。
舐めるような安井の視線は、畑山の股間に向けられる。黒く深々と茂る陰毛は、彼が成人した男性である証だ。その中心にずっしりと鎮座するペニス。それに目を向けた安井は首をかしげた。
「あれ、先輩。前からチンポの皮被ってましたっけ? 風呂で見た時は剥けていたような気がするんですが」
「……普段は見栄剥きしてんだよ」
「ああ、そうだったんですね。じゃあ、俺が剥いてあげますね」
安井は遠慮なく畑山のペニスを摘むと、根本に皮を引き伸ばしていった。
「お、おい」
畑山は狼狽えるが、手は後ろに組むようにというお願いをきいている最中なので、容易に抵抗することはできない。
ずるんと湿気を帯びた亀頭が顔を見せると、周囲に蒸れた性器の汗の匂いが広がる。他人に触られた刺激からか、畑山のペニスは半勃ちの状態になった。何故かこれには羞恥を感じるようで、畑山は赤面していた。
「ま、まだ見せてないとダメなのか?」
「ああ、恥ずかしかったですよね。すみません。もう隠していいですよ」
そう言われるなり、畑山は両手で股間を覆った。亀頭隠して尻隠さず。全裸を晒すのも十分恥ずかしがるべきことなのだが、はっきり『お願い』を受けて晒した身体に関しては、砂時計の影響で気が回らないらしい。
「折角、チンポ握ってるんだから、そのまま扱いてオナニーしてもらえますか? よく見えるように。あ、お願いします」
昼飯時の牛丼屋の店内。
その中心で、全裸の畑山は一心不乱にペニスを扱いていた。時折切なげに吐息を漏らしながら、右手の人差し指と親指で作った輪で太いペニスを擦って刺激する。左手は乳首を摘み、指先でじっくりと捏ねるように刺激する。全身から吹き出た汗が身体を伝って、床に垂れる。
硬く勃起したペニスからじっとりと我慢汁が分泌され始めると、それを指に擦りつけ、まるで水を得た魚のようにペニスを扱く腕の動きのスピードが上がる。擦るたびに身体から発散される体臭が、汗の匂いが店内に拡散される。もとより炎天下の日差しを受けて逃げ込んでくる客ばかりなのだから、少しばかり種類の違う汗の匂いが混じろうと問題はないだろう。
「も、もう出そうだ……ッ」
眉間に皺を寄せ、ペニスを刺激する手を休めることなく、畑山は射精を宣言した。
「先輩の一番気持ちいいタイミングで射精していいですよ。だけど精液は、ちゃんと全部コップの中に入るように射精してください」
「ふ、ふざけんなッ! なんでコップに射精しなきゃならねえんだよッ!」
「『お願い』します」
「うッ」
「『お願い』します」
「わ、分かったよッ、畜生、こうすりゃいいんだろッ!」
言うなり、畑山は近くにあった空のコップを乱暴に掴み取った。そこにペニスをあてがい、腰を振り始める。そして歯を食いしばりながら、身体を小刻みに震わせたかと思うと、びゅうびゅうと尿道から白い精液を迸らせた。ぐいぐいと腰を前に突き出すたびに、精液がペニスから発射されてコップの中を暴れ回る。
搾りたてのチンポカルピスの完成だ。
射精を終えた畑山は、力尽きたように床に座り込んだ。肩で息をしながら、額にかいた汗を手で拭っている。
「お疲れ様です、先輩」
声をかけて、安井は畑山を労った。
砂時計を見ると、まだ砂は半分ほど残っている。
「もう妙な頼み事はこれっきりにしてくれ……」
「だけど、まだ砂時計の効果切れてないんすよね。だから、もう少しの間、僕の実験台になってもらってもいいですか?」
「……マジで言ってんのか」
すっかり疲れ果てた畑山は、勘弁してくれと言わんばかりに項垂れていた。
「無理を言っているのは分かってるんですが、この通りです。『お願い』します」
「……仕方ねえな。わかったよ。こうなったらとことん付き合ってやる」
畑山は汗だくの顔を力なく上げた。
*
畑山は膝をついて、カウンターに座っている作業服の男の股ぐらと向かい合っている。男のズボンとパンツは既にくるぶしまで下ろされており、当然ながらペニスは完全に勃起した状態だった。
午前中の労働でかいた汗で蒸れた男の下半身の匂いは強烈で、鼻先にペニスがつきつけられるだけで畑山は思わずえづいた。しかし、その匂いに慣れるまでペニスに鼻を這わせて嗅ぎ続けてもらえますか? という安井の要求によって、それはすぐに解決した。
「それじゃあ、先輩はチンポを気持ちよくさせる道具になってください。オジサンは、先輩のことをオナホールだと思って使って、最高に気持ちよく口内射精してください。二人ともお願いします」
畑山と作業服の男は、どちらも若干の抵抗を見せた。
しかしながら、最終的には頷くことになる。
仕方ないな。今回だけだぞ。そこまで言うなら。特別に。
結局はそんな風に受け入れてしまうほかないのだ。
うえっ、とも、おえっ、ともつかない呻き声を畑山はあげた。勃起したペニスで咽喉を思い切り抉られたのだから、それも当然か。汗で塩辛く味付けされているであろうペニスを口いっぱいに頬張り、その味に舌鼓を打っているに違いない。
作業服の男に後頭部を掴まれ、前後に揺さぶられるたびに、じゅぼじゅぼと下品な音を立てる。しっかり喉仏が上下しているところを見るに、律儀に舐めとったペニスのエキスごと、唾液を飲み下しているようだ。
畑山だけがペニスを味わうというのも不公平なので、作業服の男には先ほど畑山が射精した精液がたっぷりと詰まっているコップを差し出す。味わって飲んでくださいという安井の言葉に従って、作業服の男はコップを傾けると、どろりとした濃厚なチンポカルピスを、ちびちびと舐め取り、まるで酒でも飲むように舌で転がして味わった。
大の男がペニスをしゃぶる姿というのは、なかなかに暑苦しく見えるものである。特に畑山は図体が大きいから、特にむさくるしく見えるのかもしれない。しかしながら、肉と脂で満ちた牛丼屋という名前の空間には、汗まみれの広い裸の背中は不思議とよく映える。絶対に普段はありえない光景だと言うのに、妙にしっくりとくるようなそんな感じがした。
そうしている間にも熱々の牛丼が店内の至る所に届けられている。ハフハフと飯を掻き込む客たち。ハフハフとペニスをしゃぶる畑山。ペニスをしゃぶらせる作業着の男。食欲を満たすか性欲を満たすかの違いなだけで、手軽に欲求を満たすことができているという点では似たようなものだと、安井は思った。
安井はふと魔が差して、指先で畑山の尻穴をなぞった。
畑山は思わず声を漏らしたようだったが、抵抗することはなかった。肛門を指で擦られてもなお、ひたすら作業服の男のペニスに奉仕を続けている。滑らかな感触の肛門は未だ誰にも犯されたことがないようで固く閉ざされている。しかしながら、これだけ身体が大きいのだから、大腸も太いはずだ。その太い大腸から普段、極太の便をひりだしているのだから、きっと畑山はペニスも楽に受け止められるはずである。それはいわば神から与えられたギフトである。それを使わずに一生を過ごすと言うのは、勿体無いことだ。残念ながら今日はローションのひとつも持ち合わせていなかった。だが、畑山は安井と同じ寮生なのだから、いつでも機会はあるのだ。この砂時計を使ってお願いすれば、畑山は喜んでこの大きな尻を使ってペニスを受け入れてくれるはずである。ペニスを一度も受け入れたことのないこのラグビー部員の肛門は、一体どんな味がするのだろう。
そんなことを考えている間に、二人のオーラルセックスもクライマックスが近づいているようだった。
「うぐっ」
おもむろに作業服の男が畑山の口内に腰を打ち付ける。限界まで股間に畑山の顔が引き寄せられ、作業服の男の陰毛の中に畑山の顔全体が埋められる形になる。作業服の男の陰嚢はすっかり上がっており、その荒い鼻息のリズムに合わせて、精液が勢いよく発射される。重い陰嚢の中でぎゅっと凝縮された濃い肉体労働者のドロドロで脂っこい精液は、会ったばかりの見知らぬラグビー部員に一滴残らず搾り取られた。尿道の中に残った精液も漏らさぬようにとちゅうちゅうと吸われ、射精したばかりの敏感なペニスの強すぎる刺激に男は身を仰け反らせる。
精液を吸い尽くした畑山は、体液まみれの顔を安井に向ける。そして、大きく口を開き、唾液混じりの精液を見せて、自分の口内で臭い精液がたっぷりと射精されたことをアピールした。
「今度こそ、本当にお疲れ様でした」
安井は労いの言葉を畑山にかける。そして、開かれたままの畑山の口内に指を入れて掻き回す。そして、精液の付着した指を舐めとる。そしてくちゃくちゃとガムを噛むように口の中を鳴らしながら、カウンター席を立ち上がった。
「最後に、恋人たちがするような熱いキスをしながら、二人で精液を分け合って楽しんでください。じっくりと味わってください。お願いします」
畑山と作業服の男は立ち上がると、そっとお互いの腰に手を回し、抱き合いながら唇を重ねた。熱い吐息。くちゅくちゅと舌を絡め合う音。お互いの喉仏がゆっくりと上下する。そう時間をかけることなく、口内の精液は二人の胃のなかに収まることだろう。
安井は、カウンターの上の砂時計をポケットの中に押し込むと、再び炎天下の日差しの中に身を晒す。暑い。とはいえ夏も残りわずかなのだから、この暑さも惜しむべきなのかもしれない。
不意に満腹からくる眠気を感じて、安井は伸びをした。
午後からは何をしようか。市街に出かけるのもいいかもしれない。
その時、カチリとポケットの中の砂時計が音を立てたことに安井は気づいた。
それは砂時計の砂が、全て落ちたことを知らせる合図だ。さすがに飽きたからと言ってあのまま放り出して店を出てしまうというのは乱暴だっただろうか。まあ、どうにでもなるだろう。
ケセラセラ。
安井は呟きながら、雑踏の中に溶けるように消えた。