盗撮の話 (4,500字くらい) (Pixiv Fanbox)
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グラウンド横。体育館に併設された体育教官室。生徒指導を担当する体育教師が屯していることもあって、生徒は漠然とした恐怖を感じて、普段は近づくことすら憚られる。その体育教官室に、一人の生徒と体育教師が向かい合って座っていた。
「なぜこんな馬鹿なことをしたんだ」
怒声というわけではない。語気が強いわけでもない。
ただ、体育教師である高倉直樹の発する低音が、ピリピリと空気を震わせる。長年生徒指導を担当してきたからか高倉の発する言葉は、文字通り重かった。その言葉に怒りが込められていたなら尚更だ。その声を聞くだけで大抵の生徒は恐慌に陥る。
デスクを挟んで高倉の正面に座っている安村も、高倉に目を合わそうとせず、僅かに身体を震わせている。額には汗をかき、耳まで赤く染まっていた。
高倉は、ため息をついた。
こんな気の弱そうな生徒が何故、と考える。もしかすると、いじめか何か事情があるのかもしれない。追い詰めても逆効果だろう。
「なあ、安村」
びくりと身体を震わせた安村は、呼びかけに応えるように少し視線を上げた。
「別に俺は怒ってるわけじゃないんだ。どういう事情があったのか。どういう気持ちで部室にビデオを仕掛けたのか。それを聞かせてほしいだけなんだよ」
高倉は、デスクに置かれたビデオカメラに視線を移す。
これを発見したのは偶然だった。顧問をしているラグビー部の部室にある備品を、高倉が一人探していたときのことだった。ロッカーの上に積まれた段ボールの中に隠されたビデオカメラを見つけたのだ。ビデオカメラを再生すると、そこにはそのビデオカメラを仕掛けた当人、安村の姿がはっきりと映り込んでいたのだ。
盗撮。
安村は、なぜそんなことをしたのだろう。
多感な年頃である。仕掛けた部室が女子更衣室などであればまだ分かる。なぜよりにもよってラグビー部なのだろう。その理由に見当がつかず、どう切り崩していくべきか高倉は攻めあぐねていた。
「随分、立派なカメラじゃないか。自分の金で買ったのか?」
カメラはハンディカムで、比較的小型ではあったが決して盗撮に向いているようには見えなかった。親のカメラを使って衝動的に仕掛けたのだろうか。
「まさか誰かに指示されてやったとか、そういう話じゃないだろうな」
そうなると話が変わってくる。安村の態度を見るに、こんな大それたことをしでかすようなタイプには見えなかった。いじめという線も十分に考えられる。
そんなことを考えていたとき、不意に安村が口を開いた。
「高倉先生は」
体育教官室に入ってから、安村がまともに声を発したのは初めてだった。
「なんだ?」
「高倉先生は、僕の話を信じてくれますか?」
ゆっくりと顔を上げた安村の瞳を覗き込んだ瞬間に、高倉は気が遠くなるような感覚に陥り、見当識を失った。目を離すことができない。瞬きも忘れたまま、高倉は頷く。
「……ああ、もちろんだ」
その答えを聞くなり、安村は手を鳴らした。パァンと乾いた音が響く。同時に我に返った高倉は軽く頭を振った。頭の中に靄がかかったようだった。
「僕はカメラを仕掛けた犯人じゃありませんよ」
そう言うなり、安村は立ち上がって高倉の背後に立った。そして、肩に手を置く。馴れ馴れしく身体に触れられたことに対して、高倉は少し不快感を覚える。しかし、せっかく安村が話す気になっているのだからと、いちいち目くじらを立てる必要はないと思い直した。
「安村がそう言うなら、犯人は安村じゃないんだな」
安村の話を信じるのならば、そう判断するのが当然だ。
では、犯人は誰なのか。
「もう一度、ビデオを再生してみれば、犯人が誰か分かるかもしれません」
安村の言葉を聞くと、高倉は誘われるようにハンディカムを操作し、ビデオを再生した。
画面が揺れる。設置したカメラの位置を調整しているのだろう。カメラを動かしていた人間、すなわち安村の姿が画面いっぱいに表示される。カメラに映った安村は、無表情のまましばらくカメラを見つめたあと、ラグビー部の部室を出て行った。
ノイズが走る。
続いて、画面に表示されたのはラグビー部の部員たちだった。
ビデオはどうやら何か動くものがあるときだけカメラがアクティブになるような仕組みを使って撮影されているようだ。
部員たちは、ガヤガヤと騒がしく笑い合いながら服を脱いでいった。撮影されているとも知らずに無防備に裸体を晒している。
「ラグビー部ってだけあって、みんな筋肉質な身体つきをしてますね」
「ああ、奴らは結構トレーニングしてるからな」
「顧問である高倉先生から見ても、ラグビー部員たちは筋肉質に見えますか?」
「そうだな。大会に出るような奴らは特に逞しくなってきたな」
「筋肉質になるためにラグビー部員たちは一生懸命、トレーニングに励んでいるわけですから、顧問としても部員たちが筋肉質になることは好ましいことですよね」
「まあな」
「高倉先生の指示でトレーニングして、ラグビー部員たちは筋肉質になったわけですから、彼らが筋肉質になったのは先生のおかげですね」
「いや、それは……」
安村は、強弱をつけながら高倉の肩を揉んでいる。そのマッサージのおかげだろうか。高倉はじんわりと身体が温まってくるのを感じた。
「ラグビー部員たちが筋肉質になったのは、先生のおかげですよ」
「そうだな。安村がそう言うなら」
「ラグビー部員たちが筋肉質になったのは、先生がトレーニングをしろと命令したおかげですよね?」
「ああ、俺が命令したおかげであいつらは筋肉質になったんだ」
「筋肉質なラグビー部員たちに対して自由に命令できる顧問という立場は、楽しいですよね?」
「もちろんだ」
そう答えながら、高倉は奇妙な感覚に陥っていた。
ビデオに映っている逞しい体格の部員たち。部員たちは、全員、顧問という立場の自分の命令に従う。高倉は、彼らを支配していると言える。走れと言えば、汗をかきながら必死に走る。理不尽な怒りをぶつけたとしても、すみませんでしたと謝る。彼らにとって、顧問である自分は神に等しいのだ。そう思いながら、ビデオを見ていると、画面に映る彼らがとても矮小な存在に思えてくる。
「しっかり管理してやらないと」
その言葉を口にしたのが高倉だったのか、それとも安村だったのかは分からなかった。
「でも、どうして高倉先生は、ラグビー部員たちを筋肉質にしたんですか?」
一瞬、質問の意図が分からなかった。高倉がその質問に返答するための答えを考えるよりも先に、安村が言葉を続ける。
「先生は、筋肉質な男性の身体が好きですよね」
そう言いながら安村は、高倉の胸元からシャツの中へと手を滑り込ませた。そして分厚い胸板を弄りながら、探りあてた乳首を摘む。乳首を摘まれると同時に、高倉は思わず吐息を漏らしていた。
「高倉先生自体がこんなに筋肉質なんだから、嫌いなわけないですよね」
「ああ」
乳首を弄られているということは頭の中で理解できているのだが、それを払い除けようだとか抵抗しようだとかそういう気持ちは少しも感じなかった。乳首に触れられることは不快でなかった。むしろ気持ちがよかった。
気づけば高倉は唇の端から唾液を垂らしていた。
「筋肉質な男の身体が大好きな高倉先生は、どうしてラグビー部員たちに対して、筋肉質になるように命令したんですか?」
「それは、俺が筋肉質な男が大好きだからだ。筋肉質な男が大好きだから、部員たちも俺好みの身体になるようにしたんだ」
答えながら、高倉はビデオに映る部員たちの裸体に目を奪われていた。練習を終えて、ユニフォームを脱ぎ、汗を拭っている。
「高倉先生の大好きな男の筋肉が映ったビデオです。これを見たら、もうチンポを扱かずにはいられませんよね」
「ああ」
高倉は自らの股間に手を伸ばしていた。ジッパーを下ろして、ペニスを窮屈な下着の中から解放してやる。ぶるんと飛び出したペニスの先からは、既に我慢汁がじっとりと滲み始めていた。蒸せ返るような男の性器の匂いが溢れて、体育教官室を満たしていった。高倉はその匂いに鼻をひくつかせながら、指先で我慢汁をすくうと人差し指と親指を使ってズリズリとペニスを扱き始める。
「先生は、筋肉質な男の汗の匂いも大好きですね」
「ああ、俺は筋肉質な男の汗の匂いが大好きだ」
汗をかいた部員たちが密集する練習後の部室だ。
一体どんな匂いがするのだろう。
カメラには、念入りに腋にスポーツタオルで擦り付けている部員の姿が映し出されている。
「そうだ、高倉先生。これをどうぞ」
安村は学生鞄の中から、ジップロックに密封されたタオルを取り出した。ジップロックの封を開けると、青臭い特有の汗の匂いがふわりと溢れ出す。手渡されたスポーツタオルはじんわりと湿っている。高倉は迷うことなくタオルを顔に押し付け、深呼吸を繰り返した。そして、そのタオルが、ちょうど画面に映っているラグビー部員が腋に擦り付けているタオルと同一のものであるということに気づいた瞬間、猛烈な快感が背筋を駆け上る。
勢いよく飛び出した精液は、白い直線となって迸り、デスクの上のカメラにこびりついた。射精したあとも肩で息をしながら高倉はペニスを扱き続けた。背骨が折れるのではないかというほど身体を反り返らせ、白目を剥いてガクガク痙攣したかと思うと、再び射精する。いったい身体のどこにそんなに溜め込んでいたのかと思うような量の精液をたっぷりと吐き出す。すると、高倉は糸が切れた人形のように力をなくしてしまった。
そんな高倉の耳元に、安村は近づくとそっと何かを囁いた。
パァンと乾いた音が響く。
同時に我に返った高倉は軽く頭を振った。
頭の中にかかっていた靄はすっかり晴れていた。
こんな肝心な時に何をぼんやりしていたのだろう。高倉は乾いた唇を舐めた。幸い、デスクを挟んで向かい側に座っている安村は、相変わらずオドオドした態度でこちらの様子を伺っている。
「なぜこんな馬鹿なことをしたんだ」
高倉は立ち上がると、安村の肩を叩いた。
「と、先生は本気でそう反省しているんだ。だから、俺がラグビー部の部室にビデオカメラを仕掛けて、盗撮していたことは秘密にしていてくれるか?」
安村は身を固くしたまま動かない。高倉は、男性らしい武骨な手をそっと安村の手の上に重ねた。
「もし、黙っていてくれるなら、先生はどんなことでもお前の命令を聞いてやる。どうだ?」
そう問いかけると、安村は小さく頷いた。そして、耳を澄ませていなければ聞こえないようなか細い声で、初めての命令を高倉に下した。
膝をつき、手をつき、土埃で汚れた体育教官室の床に額を擦り付ける。
土下座だ。
情けなく土下座する姿を見せてほしいと、安村は言ったのだ。
生徒から恐れられるべき体育教師であり、ラグビー部顧問でもあるはずの自分が、生徒一人の言いなりになって支配されるという事実。身をもって、それを実感する。
しかし、その屈辱的なはずの事実は理由もなく高倉を興奮させていた。既にペニスは鎌首をもたげ始めている。何かがおかしい。そう気づくよりも先に、高倉の頭は踏みつけられた。
一気に血流がペニスに流れ込む。
高倉のペニスが完全に勃起するまで、そう時間はかからないだろう。