[概要] ホームオフィス(Overtime B) Part 4 (Pixiv Fanbox)
Content
概要
毎度お馴染みOvertime Bルートの続きです。
いつまで続けるねん! と、そろそろ食傷気味かもしれませんが、最後の山場になりますので、もう少し我慢していただけると幸いです。
やっと寝室に入ることができました。
Overtime構想時に考えたあらゆるプロットは最終的に寝室のシーンに収束するので、これでやっと終わりが見えてきたことになります。
話の内容としては、ひたすら身体を味わうお話です。助走段階なので、性描写は若干弱めになっていると思います。
本来はもう少し先まで投稿したかったのですが、力不足でコンパクトに文章量を抑えることができず、分割することにしました。
続きは来月以降に投稿していくので、大変申し訳ないですが、今月はここまでで許してください。
予定では、残り3、4回分くらいで完結予定です。
文章量としては、あと20,000字〜30,000字くらいでしょうか。ひと踏ん張りですね。
1/18 23時ごろに予約投稿してます。
校正するからもうちょっと待ってね。
サンプル
(2,200/9,000字程度)
15.
岩本毅彦は花婿であり、そして花嫁だった。
寝室をほのかに照らすのはベッドサイドに備え付けられた照明。部屋には、甘いバニラのような香りのアロマが焚かれている。中央に置かれたベッドは、オーダーメイドのキングサイズ。そこに敷かれているのは新品のシーツだ。
清潔感のある真っ白なシーツ。
シーツの上で、浅黒く日焼けした肌の全裸の男が四肢を投げ出している。
それは、まさに『肉体』と呼ぶべき身体だった。
厳しいトレーニングを続け、鍛え上げたもののみが得られる分厚い筋肉。その筋肉が形作る山々の連なりは、男という性に生まれたもののみが、天より賜りうる雄強な美しさを体現している。
そして、白いシーツと小麦色の肌。そのコントラストが織りなすのは、官能的な色彩を帯びた絵画であり、そこは舞台であった。
それは、愛する女性と結ばれ、契りを交わすために設えられた舞台。
一人の女性のために捧げられるはずだった一夜の舞台劇。
本来であれば、これからこの舞台で演じられる舞台劇は、男女が愛を確かめ合うための美しく愛に溢れた演目であるはずだった。
しかし、この純白の舞台は既に全てが塗り替えられ、全てが倒錯しきっていた。
その演目の脚本は既に奪われ、全ては書き換えられてしまった後なのだから。
それ故に、その屈強な男がその身を捧げるべき対象は、もはや女性などではない。彼がその身を捧げるべきは、彼と同性である男性だ。男性でなければならない。
その熟した男盛りの肉体を女性に捧げるなど、言語道断である。
そんな簒奪が許されることなどあって良いはずがない。
そう。
この舞台は、もはや舞台ではない。純白の祭壇だった。
祭壇であるとするならば、そこで執り行われるのは、舞台劇ではなく儀式である。
神聖なるその祭壇は、儀式によって、この絵に描いたような強壮な男の肉体が捧げられることを、今か今かと待ち構えている。その儀式とは、男が、男という性そのものを、男のためだけに捧げるための変態極まる男色の儀式だ。
その倒錯的な儀式の幕は、まさに今、上がろうとしている。
扉が開き、安藤が部屋の中に入る。
歩み寄る安藤の気配を感じても、岩本はベッドの上で仰向けのままになったままで、身体を起こそうともしなかった。それどころか、視線すら天井に向けたままで、安藤に向けようともしない。
なぜ、岩本が身体を動かそうとしないのかといえば、『許可があるまでは、みだりに身体を動かしてはならない』という約束事が、彼の逞しい肉体を縛り付けているからだ。
筋肉質な岩本の身体は、ベッドに横たえられていると、まるで等身大の彫像のように見える。しかし、じっくり観察してみれば、その逞しい胸板は、呼吸によってゆっくりと上下していることが分かるはずだ。そして、その肌に触れて、その滑らかさと温もりを感じてみれば、それが血の通った一人の生きた人間なのだということが、よく理解できることだろう。
彫刻のように美しい身体を、惜しげもなく晒した姿のままで、岩本は言った。
「安藤、そろそろ始めてくれ」
何を始めるというのかといえば、もちろんそれは初夜である。
婚姻関係を結んだ男女が初めて迎える営みの夜。
安藤と岩本は男同士であるが、伴侶であることを誓い合った仲である。岩本の陰茎を締め付けるエンゲージリングの輝きが、二人の愛を証明していた。
「なんだか妙に緊張しますね」
服を脱いで、全裸になった安藤はベッドに上がった。
「そう固くなるなよ」
岩本は笑い混じりに言った。
岩本にとって、初夜は二度目のことだった。
一度目は別れた妻と。そして二度目は今夜、安藤と。
しかし、安藤にとって『結婚』は初めてのことなのだ。
「一緒に、気持ち良くなろうな」
岩本は、安藤に優しく声をかけた。
――経験者である以上、俺がしっかりリードしてやらねばならない。
改めてそう思った。
そう思うように、仕向けられていた。
安藤は、この初夜というイベントに対して、強いこだわりを持っていた。
それ故に岩本は、安藤の願望に基づく『思想』を綿密に刷り込まれていた。
都合の悪い記憶を忘却し、都合良く改竄した記憶を植え付け直すのには、多くの時間が必要だ。しかし、この家で、ホームオフィスで二人は、これまで過ごしてきたのだ。丹念に調整を重ねる時間は、十分過ぎるほどにあった。
最高の初夜を迎えるため。そして儀式を成就させるため。そのためなら、安藤は努力を惜しまない。安藤は、少しの妥協も許さずに岩本の脳を調整した。
長い時間をかけて、じっくりと。
もっとも、自らの脳にそんな調整が施されているという自覚は、当人の中にはひと欠片も残されていなかった。
「まるで今の岩本さんは、マッチョなフィギュアみたいですね」
「フィギュア? 人形のことか?」
「そうです。筋肉質で触り心地のいい、男性型の等身大の人形」
安藤は、岩本の滑らかな肌に手のひらを滑らせる。
「僕の理想通りの人形です」
逞しい腕に触れる。
「こんな腕が太くてマッチョな人形が、ずっと欲しかったんです」
感触を確かめるようにその筋肉を揉みほぐしながら、頬を寄せる。
岩本はぐっと腕に力を込めて、筋肉を隆起させてみせた。
「どうだ?」
「ああ。こんな玩具を手に入れるのが、僕の夢だったんです」
「それなら、その夢を叶えたら良いじゃないか。今夜は好きなだけ」
「良いんですか?」
「ああ、もちろん」