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 時刻は十時を指している。


「本当に大丈夫かしら」

「これ以上、続くなら被害届を出すと釘を刺しておいた。心配することはないよ」


 妻の肩を抱き、武志は言った。


 夫婦の住む部屋は、向かいのマンションとベランダが面している。向かいには安川という四十歳ほどの男が住んでいた。彼は頻繁に武志らの部屋を覗いており、加奈子は気味悪がった。

 そこで今朝、覗きを止めるようにと武志は安川を直接、注意したのだ。


「警察官のあなたがいてくれると本当に心強いわ」

「遠慮は無用。非番の間、本官は君のためだけに働く警察官ですから」


 武志がおどけて言うと加奈子はバカねと笑った。

 仲睦まじい新婚夫婦は日常を取り戻していた。


 しかし、秒針は回る。

 時刻が十一時を指した瞬間、『常識」は変わった。


「しまった」


 加奈子との外出の支度を終えた武志は額を叩いた。


「すまん、加奈子。今日は非番じゃない。家庭教師の日だ」

「大変! いいから急いで」

「本当にごめんな」


 愛しているよと加奈子に唇を重ね、武志は部屋を飛び出した。

 そして向かいのマンション、安川の部屋の呼び鈴を鳴らす。


「先ほどは失礼しました。本日もよろしくお願いします」


 武志を招き入れると玄関に立たせたまま安川は無遠慮にその身体をベタベタと触れて回った。

 『副業』である警察官として鍛えた武志の身体は逞しく、『本業』である保健体育専門の家庭教師として教材に最適だ。


「さっきはすごい剣幕で驚いたよ」


 チノパンのジッパーを下ろし、ペニスを取り出す。

 肉厚な男性器もまた性教育の教材に最適だ。


「安川様に注意するとは、私は大変に非常識でした」


 慣れた手つきで扱くと、新婚の肉棒はみるみるうちに勃起した。


「今後は私の部屋を好きなだけ覗いてくださいッ!」


 半ば叫ぶように言いながら、武志は精液を撒き散らした。

 膝をついた武志は肩で息をしながら言った。


「これが射精です」


 今日も家庭教師は授業を始めた。

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