没にしたやつ (Pixiv Fanbox)
Published:
2020-02-29 17:34:07
Imported:
2026-10
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差し込んだ日差しが余計に眩しく感じるのは、多分日差しではなくて僕の身体に原因があるのだと思う。晴れた冬の日を行き交う人間に紛れるように街を歩いた。
少し痩せた自覚はあったが、出会い頭に笑い混じりに指摘されたその言葉は、喫茶店のBGMに紛れるように身体を抉った。
抉られたその身体の一部は、そこら中に散乱してしまうのだがきっと自分にしか見えない類のものなのだろうと、まだ鼓動するように蠢き続けるその肉塊が、ゆっくりと茶褐色に変色してゆく様、その生々しさに込み上げてきた吐き気を誤魔化すように紅茶を啜る。
数年ぶりに会った先輩は、子供が生まれたせいか以前よりも顔つきがどこか大人びていた。実際他人事ではあるのだが僕は他人事のように、最近の調子はどうだとか、会社に新しく入った新人がどうだとか、仕事の調子がどうだとか、たわいもない話を聞き流しながら、先輩の表情や顔つきの変化をぼんやりと眺めていた。
冬だというのに、肌がよく焼けていると何気なく思った。
「雪焼けだよ」
「え?」
先輩の言葉で現実に引き戻される。
「いや、日焼けしてるって話」
視線に気づいて答えてくれたのだろうか。知らず知らず不穏な匂いを感じて、僕は胸の中を少しずつ重い何かで満たされていくような錯覚を覚える。
「すみません、ジロジロ見てしまって」
「なに謝ってんだよ」
先輩は笑いながら、「お前から聞いてきたんだろう」と言って、腕をまくって見せた。
以前より鍛えられた腕。僕から聞いたことだという先輩の言葉に、既視感を覚えながらも、その筋肉から目を離すことができずにいた。