マゾカトラズ12 (Pixiv Fanbox)
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「それでは今から古川さんと阿比留さんの牡奴隷に私たち三人の足の臭いを嗅がせ、何番目が飼い主の臭いかを当てさせます」
中央に穴の空いた箱を被せられたケイと瑠美の牡奴隷は床に固定され、テストの時を迎えていた。
「もし外すようなら厳罰に処しますので、奴隷は覚悟しておくように」
玲子の何気ない言葉に床に寝転ぶ牡奴隷二匹は戦慄をするが、二匹にはどうすることもできない。
このテストを無事乗り切ることに全神経を集中すべく、目と口を閉じ、鼻の感覚だけを研ぎ澄ます。
「それでは、はじめますよ」
カタン、と誰かが椅子に座る音がして、無造作に箱の中に足が突っ込まれた。
パンストに包まれ、蒸れた爪先が鼻に触れた瞬間、ケイは慌てて呼吸した。
ほんの一秒でも臭いを得る時間を無駄にしまいと――。
だが、
「んぶっ!?」
ケイはあまりの臭さに噎せそうになるのをすんでの所で堪えた。
臭い!
一日の履いた皆美の足とは明らかに違う刺激臭。
まだ半日も立っていないのに、この足の女性の臭気は明らかに皆美の臭いを越えている。
(皆美とは違う。納豆の臭いを何十倍にもしたような臭い――)
ほんの数回嗅いだだけで頭が痛くなり気分が悪くなってきた。
そんな苦しみを見透かすように、さらなる臭いを嗅がす様に足指を開い、閉じ、臭いをさらに送り込んできた。
これは不味い。
正直、長時間嗅いでいたら頭がおかしくなりそうだ。
少なくとも皆美の足の臭いでは間違いなくない。
ケイは確信すると鼻呼吸をやめて、口呼吸にしていた。
それでも発酵した臭いが口から流れ込むようで肺が侵されるような気分はあったが……。
数分ほどして、箱から足が抜き出された。
あぁ、やっと解放された。
顔を圧迫していた重みが消え、湿りながらも、まだましな臭いの空気が流れ込んでくる。
だが、ケイが安堵する時間はなかった。
ギシィ……。
すぐに椅子が軋む音が下かと思うと、再び足の裏に視界が押し潰されたからだ。
今度の臭いは……。
(ずいぶん、薄い? いや、さっきのが濃いせい鼻が変になった?)
ケイは焦った。
もし、このまま臭いがかぎ分けられないままだと、次の女性の臭いもわからないのではないか?
そんなことになれば正解率が下がる。
万が一に外しでもしたら、皆美からどんな罰が下さられるのか考えたくもなかった。
スー! スー! スー!
慌てたケイは全力で鼻呼吸をした。
パンストの生地が鼻息で揺れることも気にせず、思い切り吸い込む。
その懸命さを感じ取ってくれたのか、それとも嘲笑っているのか、足の持ち主は爪先をケイの鼻先に強く押しあててくる。
本来なら屈辱だが、今は有り難かった。
スー、スー、スー!!
ほんの少しでも臭いをかぎ分けようと全神経を注ぎ――。
(これも……違う。なんか酸っぱい? ……酢昆布に近い……様な)
なんとか臭いをかぎ分けられたが、この女性も皆美ではないはずだ。
昨日嗅いだ臭いとは全然違うし、さっき嗅いだ皆美の足の臭いはもっと強烈だった。
うん……これも違う。
なんとか嗅覚が戻ったと思って安堵するケイの視界を覆っていた足が消え、最後の女性の足が再び視界を覆うのだった。
(恐らく前者二人が違うので、この足が皆美のはずだけど……)
ジト……。
三人の足の裏から放たれた熱気と湿度で箱の中は嫌な湿り気を帯び、それぞれ違った足臭で常人なら一嗅ぎで顔を背ける様な悪臭が充満しつつあった。
そんな劣悪な環境の中でケイは必死に鼻を鳴らし、臭いの持ち主が誰か考えていた。
例に漏れず、この女性の足の臭いも蒸れている。
スー、スー!!
「!?」
一嗅ぎめはウッとなったが、それを堪え二嗅ぎした瞬間、ケイは驚いて目を見開いた。
スー、スー、スー!!
強く鼻を鳴らし臭いをより嗅ぐがさらに違和感が強まった。
(な、なんで? 臭いが違う??)
鼻腔を通して感じ取れたのは、皆美のカビ臭い雑巾臭ではなく、発酵したチーズの様なねっとりとした足の臭いだった。
スー、スー、スー!!
嗅ぎ直しても臭いが変わるはずがないのに、なんで??
三者三様に臭いが違うのはわかる。
でも、なんで皆美の臭いがないんだ?
そんな数分で臭いが変わるわけないのに――。
混乱するケイだったが、その答えがわかるはずもなく足が箱から引き抜かれ、楽しげな玲子の声が耳に響くのだった。
「フフフ、試験終了よ!」
箱が顔から外された瞬間、冷たく新鮮な空気が流れ込み、心地よい解放感が顔を包んだ。
臭くない空気を嗅いだのはとても久しぶりにも感じられる。
「「ぷはっ!」」
「あら、そんな苦しかったのかしら? それじゃ、飼い主の臭いは何番目かそれぞれ言いなさい?」
腕組をし、仁王立ちする玲子とそれに並んで見下ろす皆美と瑠美。
その姿は絶対的な支配者であり、傲慢な女神であり、残忍なサディストだった。
外したらどうなるか――。
ブルッ、と恐怖が身体を駆け抜ける。
何より皆美の足の臭いがわからなかったのだ。
どうしたら……。
「ほら、お前――お前の飼い主の臭いは何番目だった?」
迷うケイの横で瑠美の牡奴隷に玲子が訊ねた。
考える時間が伸びて安堵したケイに対し、牡奴隷は即答した。
「二番目です!」
「へぇ……ずいぶん早い解答ね。で、お前は?」
玲子に睨まれ、ケイは身がすくんだ。
困った。
正直、答えはわからない。
三人とも違うのだ。
直前で臭いが変わることなんかないだろう。
となると――。
「どうしたの? 早く答えなさい」
玲子のニマニマした笑いが、とても意地悪な悪女の笑みに見えた。
その悪意が逆に答えが正しいのではないかと思わせる。
「答えは……全員違います」
ケイは手を握りしめながら答えを告げた。
「ふぅん……」
コツコツ、とヒールを鳴らす玲子の足音がやけに大きく響き、答えが合ってるのか時間がやけに長く感じる。
「フフフ、正解と外れ🖤」
バッチィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
炸裂したのは鋭く乾いた鞭の音と苦悶の絶叫だった。
だが、それはケイの声ではなかった。
鞭で打たれたのはケイの隣にいた瑠美の牡奴隷だ。
「あはは! お前、まだ私の臭いが覚えられてなかったんだー。…………まじ、使えねぇわ」
バチィィィン!
ビシィィィ!
バチィン!!
「ひぎぃ! ぎゃぁぁぁ! お許し下さいぃぃぃ!」
「は? 許すわけないでしょ、クズ。お前はお仕置きだよ! お前が嗅いだのは古川さんと間藤さんと通りすがりの職員――のよ!」
不機嫌な顔の瑠美は無慈悲に鞭を床で転がる牡奴隷へと何度も振り下ろす。
その度に身体に赤い線が刻まれ、血が滲んでいく。
「ぎぃゃゃゃゃゃ!」
バチィン、バッチッ、バチィィィン!!
瑠美は手加減なく鞭を振るい牡奴隷を滅多打ちにした。
当てれてよかった……。
心底おののくケイの頭上で皆美の声が響いた。
「あ~あ、ケイったら当てちゃったんだ。私の臭いを覚えてくれてたのは嬉しいけど、外れたのは残念ね 」
ツツツ……。
「ひぃ!!」
背中を撫でた冷たく細い感触に悲鳴を漏らした。
見上げれば、皆美の手にも鞭が握られていた。
外れれば、あれで滅多打ちにするつもりだったのか……。
「フフフ、外したらお仕置きしたのに。次回までこれはお預けね」
次回も何も二度と打たないでほしい。
心の底からそう思うが、きっとその願いは叶わないのだろう。
そんなケイの儚い願いは間違いなく叶わない。
なんせ瑠美が牡奴隷を滅多打ちにしている姿を眺める皆美の瞳は爛々と輝いているのだから。
「じゃ、正解したケイには御褒美をあげる🖤」
「ご、御褒美……ですか?」
「そうよ? 優秀な牡奴隷候補の精子は
搾乳して有効に使うのよ?」
ケイの呟きに玲子が嗜虐的に答えた。
…………搾乳って?
おぞましい単語に身を震わすケイだが、彼にこの先の運命を拒む権利は当然ないのだった。
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