Home Creators Posts Import Register Favorites Logout

Content

うちの学校では、学習用として一人一台タブレットが配布されている。

だが、学校側が何を思ったのか大金を投じたらしく、うちの学校専用の厳重なシステムが構築されていた。


学業に関係のない機能は一切排除。

一般的なWebサイトの閲覧は遮断され、当然ゲームアプリなどを入れることなんて不可能だ。

なぜか「数独」のアプリだけはデフォルトでインストールされていたけれど。

カメラ機能も付いてはいるが、撮影時には「カシャッ!」と教室中に響き渡るような大音が鳴る。

こっそり隠し撮りすることすら許さない、まさに鉄壁の防御仕様だった。


最初は抜け道を探そうと試行錯誤していた生徒たちも、今ではすっかり諦めて素直に勉強ツールとして使っている。


――そんな中、一人の女子生徒がその鉄壁の仕様に「穴」を発見してしまった。

ーーー


「ねえ、みんな。ちょっと良いかな。」


昼休み、いつもの女子グループで雑談をしていた時のことだ。

詩織がタブレットを手に、どこか神妙な面持ちで話しかけてきた。


「AIと一緒にこのタブレットの仕様を色々調べてたの。そしたらさ……すごい大発見しちゃって。」


もったいぶるように言葉を区切る詩織に、みんなが顔を寄せる。


「大発見って?何を見つけたのよ。」


「うん。これ、自作のプログラムなら、自由にアプリを入れることが出来るみたいなの。」


ガタッ、と誰かが椅子を鳴らして立ち上がった。


「え、それ本当!?」


「すご、大発見じゃない!」


女子たちの驚く声が飛ぶ。

詩織に詳しく話を聞いてみると、AIの分析によってシステム上の小さな脆弱性を見つけ出したらしい。


「それでさ、ちょっと試してみたいことがあるから、みんなタブレットを出してIDの画面を表示してみて。」


詩織に促され、みんなが自分のタブレットを机の上に並べ、設定画面のIDを表示した。

詩織が手元の端末で手際よく操作を進めていく。


直後、ポコンと可愛らしい通知音が響き、私のタブレットの画面に新しいアイコンがぽつんと現れた。


「わ……本当に何か出てきた。」


現れたのは何の変哲もないメモ帳アプリのアイコンだったが、それは間違いなく外部からデータを送り込めたという証拠だった。

タブレットの固有IDさえ分かれば、Wi-Fi経由で自作アプリでもファイルでも送信できてしまうらしい。


「でもさ、これを使って何をするの?自作のアプリなんて、そう簡単に作れないでしょ?」


私が疑問を口にすると、詩織は待っていましたと言わんばかりの得意げな笑みを浮かべた。


「ふふん。実はね、これに気づいたの二ヶ月くらい前なのよ。それからずっと、AIと一緒に『あるアプリ』を開発してたんだよね。」


そして詩織は、声を潜めるようにして私たちを手招いた。

円陣を組むように互いの顔が急接近する中、詩織はそっと、いたずらっぽく囁いた。


「——みんな、おちんちん見たくない?」

ーーー


この話は、瞬く間にクラスの女子全員に共有された。

それからのしばらくの期間、私たちは詩織のアプリ開発のサポートと、ターゲットとなる男子たちのタブレットIDの回収に密かに協力した。


そしてついに、試行錯誤の末に一つのアプリが完成したのだった。


「今みんなの端末に送ったよ。確認してみて。」


詩織の言葉に、私たちは一斉に自分のタブレット画面を覗き込んだ。

だが、画面には何のアイコンも届いていなかった。


「あれ?私のところには何も来てないよ?」


「私のも来てない。失敗?」


口々に疑問を口にする私たちに対し、詩織は動じる様子もなく、手元のアナログな腕時計に視線を落としていた。


「もうちょっと待って。……はい、今確認してみて。」


言われた通りに画面を再点灯させると、ポコンと可愛らしい音と共に、見慣れないアプリのアイコンが画面上に現れた。


「ふふ、これ時限式にしてあるんだ。クラス全員の端末に一斉に配信されたら、さすがに怪しまれちゃうでしょ?」


「あぁ、なるほど……!」


確かに、男子たちが一斉に「なんだこれ?」となれば、怪しいアプリが届いたと先生に報告されてしまうかもしれない。

配信時間をズラすのは理にかなっていた。


「じゃあさ、由佳。とりあえずそのアプリ開いてみて。」


「え、私が試すの?……わかったよ。」


私は恐る恐るアプリのアイコンをタップした。

画面が切り替わり、そこには『プライバシー保護型男性健診』という仰々しいタイトルが表示された。


中を見てみると、一見すると学校でよくある普通の健康状況を記入するアンケートのようなデザインだった。

だが、下の方へスクロールしていくと『生殖器の健康検査』という特定の項目が存在した。

そこをタップすると、もっともらしい利用規約のような文章がずらりと表示された。


・今回はランダムで選出された対象者であること。

・個人のプライバシーは厳重に保護されること。

・学校内および外部への他言は固く禁ずること。


大まかに、そんな内容がもっともらしく書かれていた。

そして画面を進めると、カメラ機能が起動し、なんと陰茎の撮影指示が具体的出されたのだ。


【包茎の方は被せたまま定規を当て、平常時の正面、左右、裏側から撮影してください。】

【皮が剥けている方、または剥ける方は、剥いた状態で同様に撮影してください。】

【さらに、可能であれば勃起状態でも同様の撮影を行ってください。】


ページをめくると、今度は問診が始まった。


・現在の陰茎のサイズ

・包茎の状態(仮性・真性など)

・精通はいつ頃か

・陰部に関するお悩みを詳しくご記入ください


特に『陰部のお悩み』に関する項目では、「プライバシーは徹底的に尊重されます」と、しつこいくらいに強調されていた。


「じゃあさ、由佳。適当な写真で全部の項目埋めてみてよ。」


詩織の指示を受け、私たちはちょっとしたおふざけの撮影会を始めた。

もちろん恥ずかしい写真などではなく、私たちの変顔や自撮り写真だ。


すべての項目を埋め、最後に「入力内容に間違いはありませんか?」という確認画面で『はい』を押すと——『ご協力感謝します。くれぐれも今回の検査は内密に願います』というメッセージが表示され、アプリは自動的に閉じられた。


そして次の瞬間、タブレットのホーム画面からアプリのアイコンが綺麗さっぱり消え去った。


「あれ!?消えちゃったよ!?」


私が驚いて声を上げると、詩織は満足気な笑みを浮かべた。


「それでいいの。証拠は残さないように自動削除される仕組みだから。でもね、まだ裏ではプログラムが動いてるよ。バックグラウンドでWi-Fiに接続してデータをサーバーに送り切ったら、本当に何事もなかったかのように消滅するんだから。」


詩織は、思っていた以上に恐ろしいアプリを作り上げていた。

仕組みがシンプルだからこそ、効果抜群な気がする。

学校指定の「自分でアプリを追加できないはずのタブレット」に届くからこそ、公式の健診だと信じ込んでしまう信ぴょう性が極めて高い。


多分だけど、何も知らず私に送り込まれていたら、私の恥ずかしい情報を送ってしまっていたかもしれない。

思春期なら、誰しもアソコに関する悩みの一つや二つはあるはずだ。

詩織が男の子ではなく女の子で良かったと、心底ホッとした。

そして同時に、ターゲットにされる男子たちへ「御愁傷様……」と心の中で密かにお祈りを捧げておいた。


テスト送信の画像データが詩織のサーバーに届いていることを確認し、私たちは実験の成功を確信した。


「それでさ、今日このアプリを全員に撒こうと思うんだよね。明日から連休だし、今日は男子も全員出席してるしさ。」


アプリは、今日の夜8時に男子全員の端末で順次起動するようにセットされた。

放課後、送信を終えた後に何人かの男子のタブレットをさりげなく覗き込ませてもらったが、当然ながらまだアプリの姿はない。それが成功への第一段階だった。


「今日の8時に配信される予定だからさ……みんな、うちに泊まりに来ない?明日から連休だし、せっかくだからみんなで鑑賞会しようよ!」


詩織の提案に乗り、結局私を含めた5人の女子が詩織の家に泊まることになった。


「正直に言うとね……私一人じゃ、クラスの男の子全員のおちんちんのデータを受け止めきれないと思ったのよ。みんな、一緒にいてくれてありがとね。」


安堵したようにホッとした表情を浮かべる詩織。

私も逆の立場なら、きっと同じように誰かを頼っただろう。


ともあれ、何かが起きる今日の夜が、楽しみで仕方がなかった。

ーーー


詩織の家は、想像していた以上の大邸宅だった。

すでにお兄さんは家を出て一人暮らしをしているらしく、今はご両親と詩織の三人暮らしだという。

まさに絵に描いたようなお嬢様育ちだ。

そんな生粋のお嬢様が、男子のおちんちんデータを収集するアプリを作ったなんて、何だかおかしな話である。


詩織のお母さんも、とても上品で綺麗な人だった。

二人の子供を産んだとは思えないほど若々しい。

そういえば授業参観の時も、詩織のお母さんは比較的地味な格好をしていたのに、周りの派手派手なお母様方よりも輝いて見えてたな。


そんなお母さんの美味しい手料理をご馳走になり、食後は詩織の部屋でみんなで賑やかに過ごした。

私を含めてちょうど六人だったので、二人ずつ順番にお風呂へ入ることになったのだが……詩織は顔だけでなく、体も美しかった。


「なんでこんなに綺麗な詩織が、あんなアプリ作ったりするの?」


思わずお風呂場で尋ねると、詩織は「思春期なんて、みんなそんなものでしょ?」と笑っていた。

いくら育ちの良いお嬢様でも、中身は自分たちと同じ年相応の女の子なんだなと思うと、なんだか詩織のことが一層愛おしく思えてきた。

もちろんそっちの気はないよ。


そうこうして遊んでいるうちに、時計の針はそろそろ夜の8時を指そうとしていた。


「なんか……ドキドキしてきたね。」


仕掛けを打ったばかりで、すぐに反応が返ってくるとは思っていないけれど、どうしても落ち着かない。

仕組んだプログラムはちゃんと起動してくれるのだろうか。

そして男子たちは、疑わずに画面を開いてくれるのだろうか。


その時、部屋に置いてあった私たちのスマホが一斉に「ピコン!」と音を立てた。


慌てて画面を確認すると、『至急、タブレットの画面をご確認ください』というポップアップ通知が届いていた。


「ふふ、上手くいったみたい。スマホに通知を飛ばせば、見逃すこともないでしょ?」


言われてタブレットの画面を点灯させると、さっきまで無かったはずのあのアプリのアイコンが、しっかりとホーム画面に鎮座していた。

やっぱりこのアプリ、そして詩織が恐ろしい……。


「AIのおかげだよー」と本人は謙遜していたけれど、AIを指示通りに使いこなしてここまでのシステムを構築するだけでも相当な知識が必要なはずだ。

私は心の中で「詩織とはこれからも仲良くしていこう」と強く誓った。


……しかし、それから30分ほど経っても、サーバーにデータが送られてくる気配は一向になかった。


「おかしいなー。みんな怪しんで開いてくれてないのかなぁ。」


「男子がそんなに賢いとは思えないんだけどね。」


「わ、ひどいこと言ってる。」


そんな冗談を言い合いながら、このまま何事もなく女子会パジャマパーティーとして終わるのもアリかなと思い始めた、まさにその時だった。


詩織のスマホから、小さく「ピコン」と通知音が鳴った。


「……!?来たっ!?」


詩織の顔色がガラリと変わった。

さっきまでのおっとりした和気靄々とした空気は一瞬で消え去り、部屋に緊張感が走る。


「誰!?誰から来たの!?」


「ちょっと待って、スマホの画面じゃ小さいから、タブレットをテレビに繋ぐね!」


詩織は学校用とは別のマイタブレットを引っ張り出すと、部屋にある巨大な液晶テレビに手際よく接続した。


「……っていうか、今更だけどこのテレビめちゃくちゃ大きくない?」


「あ、うん。ゲーム用に買ってもらったんだ。60インチだよ。」


お金持ちはすごいなーと感心してしまった。


テレビにタブレットの画面がミラーリングされ、鮮明な映像が映し出された。

そこに表示されていたのは、男子に送りつけた健診アプリとは全く別の、管理者専用のデータベースアプリだった。


画面の上部には、大きくこうタイトルが躍っていた。


『おちんちん図鑑』


「詩織……これって……」


「……うるさいな!私だって、もうちょっとマシな名前をつけられないか悩んだんだからね!」


熟考した結果が『おちんちん図鑑』なのか。

普段は完璧なお嬢様の詩織が見せた予想外のネーミングセンスに、なんだか少し親近感が湧いて嬉しくなってしまった。


私たちがニヤニヤと生温かい視線を送っていると、詩織はほっぺたをぷくっと膨らませて抗議した。


「ちょっと!いいから見るの!?見ないの!?鑑賞会を始めるかどうかは、全部私次第なんだからね!?」


私たちは一斉に詩織へ頭を下げた。

何はともあれ、身近な男子たちの「おちんちん」を見てみたいという思春期特有の好奇心には、どうしても勝てそうになかった。

ーーー


機嫌を直した詩織が、手元のタブレットを滑らかに操作する。

そして、記念すべき一人目の顔写真が、60インチの大画面テレビに大きく映し出された。


そこに映っていたのは、真面目が服を着て歩いているようなクラス委員の吉岡くんの顔だった。


「え、顔写真も連動してるの!?」


確か、私たちが試した時には自分の顔を撮影する項目なんてなかったはずだ。


「ふふふ。このアプリを起動した瞬間、インカメラで自動撮影される仕組みにしてあるのよ。ちなみに、その時はシャッター音も一切鳴らないようにサイレント仕様にしてあるわ。」


……本当に恐ろしい女だ。

ということは、私たちがテストでアプリを起動した時も、しっかりと顔写真を撮られていたことになる。

もしかしたら知らぬ間に、妙な表情の写真をデータベースに保存されているのかもしれない。

私と周りの女子たちは、引きつった顔で思わず顔を見合わせた。


「どうしたの?ほら、吉岡くんの恥ずかしいところ見るよ?」


詩織は悪びれる様子もなく、不思議そうに首をかしげている。

もしかするとこのお嬢様は、無自覚にかなり危険な領域へ足を突っ込んでいるのかもしれない。

とりあえず私たちは、自分たちの身に起きた恐ろしい事実から目を背けるように、再びテレビ画面へと意識を集中させた。


詩織が吉岡くんの顔写真をタップすると、画面が次のページへと遷移する。

そこには、彼の身長や体重、血液型といった基本的な健康情報が整然と並んでいた。


「吉岡くん、根が真面目だからちゃんと正確なデータを入力してるね。」


「だから最初に送ってきたんだろうね。」


「裏で私たちにおちんちんを見られるとは夢にも思わずにね……」


「でもさ、まだおちんちんの写真までちゃんと送ってきてるとは限らないよ?怪しんで適当なダミー画像をアップして、お茶を濁してる可能性もあるんじゃない?」


そう、次の項目で本物のおちんちん写真が表示されれば私たちの完全な勝利だ。

けれど、もし全く関係ない画像が貼られていたとしたら一転して大ピンチになる。

「学校のタブレットに怪しいアプリが届いた」と先生や警察に報告されてしまうリスクがあるからだ。


「じゃあ……タップするよ?」


静まり返った部屋の中に、誰かがゴクリと唾を飲み込む音がはっきりと響いた。

みんな緊張で息を呑んでいるのだろう。

かくいう私の胸の奥でも、心臓がうるさいくらいにバクバクと鐘を鳴らしていた。


詩織の細い指先が、タブレットの画面に触れる。


そして——次の画面がテレビいっぱいに呼び出された。


「きゃあっ!?」


「やだ!本物!?」


「見ちゃった、見ちゃった……!」


部屋中に女子たちの黄色い悲鳴と歓声が飛び交った。

60インチの圧倒的な大画面に、きっちり定規が添えられた吉岡くんのおちんちんが、これ以上ないほど鮮明に映し出されていた。


それは間違いなく、私たちの完全勝利が確定した瞬間だった。

ーーー


最初こそ恥ずかしそうに顔を赤くし、手で目を覆っていたみんなだったが、次第に隙間から指を広げ、ついには堂々と画面に向き合い始めた。

そして、画面の中の「未知の物体」をじっくりと観察し始めたのだった。


「なんか……思ったより子供っぽいかも。」


「ねえ、横の定規見てみてよ。4センチしかないよ?」


「えっとね、ネットで平均調べてみたんだけど、平常時は7センチから8センチくらいだって。半分しかないよ。」


吉岡くんのおちんちんが決して恐ろしいものではないと理解した瞬間、女子たちの遠慮は完全に吹き飛んだ。


「吉岡くんってば、普段はあんな真面目な顔してるのに、制服の下にはこんな子供みたいなのぶら下げてたんだね。」


「でもさ、こんなに小さくても『ぶら下がってる』って言っていいのかな?」


「周りに毛が生えてるから、余計に小さく見えちゃうのかも」


「あ、でもたまたまがキュッとしてて、ちょっと可愛いかも。」


「美紀ってば、結構エッチね。」


「なっ……私だけじゃないでしょ!?」


きゃあきゃあと会話を弾ませながら、詩織が次の画像へと進めた。

今度は横から撮影された写真だ。


「なんか、ぴょこんって生えてるね。」


「やっぱり小さすぎるから、下に垂れ下がらないんじゃない?」


「吉岡くん、根が真面目だから角度を変えてしっかり写るように努力してくれてるの、ありがたいね。」


「裏で私たちに品評会を開かれてるなんて、夢にも思わずにね……」


想像していたよりも遥かに可愛らしいサイズ感に、私たちはすっかり安堵していた。

おちんちんを格好の肴にして、女子会のトークはどこまでも盛り上がっていく。


「さてさて、吉岡くんは包茎みたいだけど、剥けるのかな?」


「どうでしょうね。こんなお子様ちんちんなんだから、まだまだ剥けない可能性も十分にありますよ。」


「じゃあ私は『頑張って無理やり剥いた』に一票!」


「私も!男子って包茎に強いコンプレックスがありそうだし、意地でも剥いて撮影したんじゃない?」


「……えっ、大丈夫かな?無理に剥いて怪我とかしてないかな……『無理に剥かないでください』って注意書きに入れておけば良かったかも。」


詩織が急に少し不安そうな表情を浮かべた。

だが、今更心配したところで既に賽は投げられているのだ。


詩織は意を決して、そっとタブレットをタップした。


そこに映し出されたのは——。


「わっ……すごいピンク色。」


「へぇー、おちんちんの中身ってこうなってるんだ。」


「そういえば私たちまだ本物を見たことなかったんだよね。年頃の女の子が6人も集まっていながら。」


「やめてよ……なんか胸が痛くなってきた……」


勝手に見ている罪悪感を少しだけ覚えつつも、全員の視線は画面に釘付けだった。

そして、私はある違和感に気がついた。


「ねえ、ちょっと待って。さっきの写真はおちんちんだけで写ってたのに、これ……自分の指で皮をつまんで引っ張ってない?」


「あ、本当だ。もしかして手で押さえてないと、勝手に戻っちゃうのかな?」


「先っぽも小さすぎるから、皮が引っかからないんじゃない?」


「うわぁ……まさかこんな恥ずかしい秘密まで暴かれちゃうなんてね……」


勝手に盗み見ているくせに、全員で哀れみの視線を送ってしまう。

今の私たちは、自分たちが思っている以上に傲慢で残酷なのかもしれない。


「横から見ても、やっぱりミニサイズだね。」


「本当、まさに『おちんちん』って感じ」


「こんなに大きいテレビに映してるのに、小さく見えちゃうのって地味に凄くない?」


口々に好き勝手な言いたい放題を繰り広げる。


「さて……お次の写真は、いよいよ『勃起状態』のはずだけど……みんな、見る?」


詩織の問いかけに、ここまで来て引き返せる者など誰もいなかった。

みんなが無言で、こくりと力強く頷く。


それを見届けた詩織が、ゆっくりとタブレットの画面をタップした。

ーーー


画面いっぱいに広がる鮮烈な肌色に、再び女子たちの悲鳴が響き渡った。


「「きゃーっ!?」」


そこには、天に向かってピンと直立した吉岡くんのおちんちんが、60インチの大画面いっぱいに映し出されていた。


「なにこれ……!?こんな形になるの!?」


「うわ……なんか、えぐい……」


「っていうか、これおちんちんのどの角度から撮ってるの!?」


あまりの変貌ぶりに一瞬パニックになりかけたが、次第に落ち着きを取り戻した女子たちが画面を分析し始める。


「これ……裏側から撮ってるのかな?」


「向こう側に毛が見えるし、手前に睾丸が写ってるから、下からのアングルっぽいね。」


「でも見て、おっきくなってるのに皮を被ったままだよ?」


「ほんとだ。勃起したら勝手に皮って剥けるんだと思ってた……」


初めて目にする『勃起』という未知の現象に、全員が引きつつも興味津々で画面を覗き込む。


「添えられてる定規を見てみると……8センチか。すごいね、平常時の倍になってるよ。」


「ネットで調べたら、勃起時の平均って13センチくらいらしいよ?やっぱり吉岡くん、おっきくなっても全体的には小さめなんだね。」


「小さめとは言っても、さっきと比べたらすごい迫力あるよ……びっくりしちゃった。」


それぞれが素直な感想を口にする中、詩織が画面に手をかけた。


「さて……次は『おっきくなった状態で皮を剥いた写真』だよ。みんな、心の準備はいい?」


そう言いながら、詩織が次のページをタップする。


パッと画面が切り替わり、そこに映し出された光景に——部屋が一瞬で静まり返った。


「うわぁ……」


「なんか……先っぽがパンパンに膨らんでない?」


「ピンク色で、妙にツヤツヤしてる……」


「ごめん……私、ちょっとこれグロく感じちゃうかも……」


剥き出しになった赤紫色の亀頭の生々しさに、さっきまでのノリノリだった雰囲気が嘘のように、みんな少し引いてしまっていた。


「ま、まぁ……実際はこんな巨大なテレビで超ドアップにして見るわけじゃないからね……」


そう弁明する詩織自身も、顔を真っ赤に染めて若干放心状態になっている。

いくらお兄ちゃんがいるとはいえ、こんな至近距離で勃起した亀頭のドアップなんて見たことがあるはずもない。


大画面の前で、6人の女子全員が「はぁ〜……」と重たい溜め息を漏らしていた。

ーーー


「これで写真は終わりだけど、最後の問診項目も見ちゃおうか。」


詩織がタブレットをタップして画面を進めていく。


・陰茎のサイズ:【4cm】

・包茎の状態:【仮性包茎】


「しっかり正直に書いてくれて、ありがたい話だね。」


「まあ、写真を見たら一目瞭然の情報だけどね。」


「ううん、自分でわざわざ入力させることに意味があるんだよ。きっと入力しながら恥ずかしくてたまらなかっただろうね。」


詩織がくすりと笑う。

その整った横顔を見て、このお嬢様は根っからのS気質なのだろうなと確信した。


「次は『お悩みの記入欄』だけど……真面目な吉岡くんはどんな悩みを書いてるのかな?」


「そんなの、短小包茎に決まってるでしょ?」


「うわ、容赦なさすぎ……」


そして、テレビ画面に吉岡くんの切実な悩みが大きく映し出された。


『クラスの男子と比べてもサイズが明らかに小さいです。皮も手で剥くことはできますが、手を離すとすぐ元に戻って被ってしまいます。それがコンプレックスで、気になっている女の子にも告白できません。』


「……」


画面を見つめる全員の間に、静寂が流れた。

思っていた以上に切実で等身大の悩みに、勝手に盗み見ているこちらの胸の奥に、今更ながら確かな罪悪感が芽生えてしまう。


「吉岡くん、好きな子いるんだ……」


「誰なのかは流石に書いてないね。」


「っていうか、女子からしたらおちんちんの大きさなんてそこまで気にしないのにね。」


「男子も男子で、いろいろ大変なんだね……」


部屋の中に、どこか同情と哀愁の混じった空気が漂い始める。

詩織が最後にもう一度画面をタップすると、一番最初に自動撮影された吉岡くんの素顔が映し出された。

そしてそのすぐ下には、平常時の小さなおちんちんの写真が綺麗にレイアウトされている。


「詩織……やっぱり結構悪趣味だよ。」


「でもさ、さっきの勃起した時の生々しい写真を見た後だと、このちっちゃい写真はなんだか可愛く見えてくるね。」


「あ、勃起した時の写真も横に並べて表示できるよ?」


「……いや、それは今はやめておこう。」


こうして、かれこれ30分以上をかけた吉岡くん一人分鑑賞会がようやく終了した。

ふと我に返り、私は詩織に問いかけた。


「結局、データが届いたのって吉岡くんだけだった?」


問いかけられた詩織は手元のスマホを確認すると、苦笑いを浮かべながら画面をこちらに向けてきた。


「どうしよう……みんなと喋ってる間に、気づいたらもう10人分くらい届いてる……」


「……男子たち、みんな素直で真面目すぎでしょ。」


「ごめん、一旦ちょっと休憩しよ?なんだかすっごく疲れちゃった……」


全員がその提案に大賛成だった。

結局その夜は吉岡くんのおちんちん鑑賞だけでお腹いっぱいになってしまい、そのまま本物のパジャマパーティーとして更けていった。


——そして翌日。

届いたクラス男子全員分のデータを、みんなでじっくりと確認したのは言うまでもない。


「あ、山田くんのおちんちん、ちょっと長く見えない?」


「いやいや、よく見てよ。この先端のふっくらしているところが亀頭だから、単に皮が長くて余ってるだけだよ。」


「本当だ……すっごく皮が余ってるのかな?」


「よし、皮を剥いた状態の写真を見てみよう……って、あれ?」


「うわ……山田くん、皮が余りすぎて全然剥けてないじゃん!」


「これが噂に聞く『真性包茎』ってやつだね。皮が余ってるだけじゃなくて、先端の出口が狭すぎて亀頭を出せないみたい。」


「学校ではいっつも偉そうにしてるのに、一番情けないおちんちんだったんだね……」


「そうだね。今のところ、全く剥けないの山田くんだけだもん。」


「これから学校で山田くんの顔を見るたびに、この皮がだるだるに余ったおちんちんを思い出して笑っちゃいそう。」


「見て、勃起した写真でもまだあんなに皮が余ってるよ……」


「流石に……ちょっとかわいそうなおちんちんね……」


「……うん、今の私なら、普段偉そうに指示してくる山田くんにも少しだけ優しく接してあげられる気がするよ。」


一晩明けて、男子の「秘密」という未知の存在に対する免疫ができたせいか、女子たちの心の中で何かが完全に割り切れてしまったようだった。


もう画面から目を背けることも、悲鳴を上げることもない。

その分、大画面の前ではどこまでも遠慮のない、残酷で楽しげな品評会が延々と繰り広げられるのだった。

エピローグ


完成した『おちんちん図鑑』は『男子図鑑』と改名され、すぐにクラスの女子全員へと共有された。

言うまでもなく「絶対に男子にはバレないように見ること」と、口が酸っぱくなるほど釘を刺して。


だが、それ以来クラスの女子が男子と会話する際は、片手にスマホを携えるのがすっかり標準のスタイルとなっていた。


アプリは詩織の手によって更なるアップデートを重ね、今やスマホのカメラが男子の顔を認識するだけで、瞬時にその人物のデータが表示される仕組みになっていた。


平常時の小さなおちんちんから、皮を剥いた状態、そしてピンと直立した勃起時の写真まで、指先でスライドして鑑賞しながら本人と何気ない会話を交わす。


表向きには、以前よりも男子と女子の仲が一段と深まったように見えた。

けれどその実態は、目の前の男子が必死に隠しておきたいはずの「最深部の秘密」をリアルタイムで搾取しながら会話を続けているだけに過ぎない。


しかもその秘密は、他ならぬ男子自身が自らの手で差し出してくれたものなのだから、女子側に罪悪感や遠慮など微塵もなかった。


男子たちはといえば、以前より格段に優しく、積極的に話しかけてくるようになった女子たちに対し、すっかり鼻の下を伸ばしている。

見方によっては、クラスの雰囲気も格段に良くなっていると言えた。


……そう考えると、これは一種のWin-Winな関係なのかもしれない。


そんな身勝手な言い訳を胸の中で反芻しながら、女子たちはこの蜜のように甘く背徳的な遊びを止められずにいた。


「詩織ちゃん、由佳ちゃん、上級生の人が用あるみたいだよ?」


クラスの入り口の方を見ると、2年生の中心的な女子が、笑顔で手招きをしていた。


『男子図鑑』は、私たちのクラスだけにとどまらず、さらなる広がりを見せる予感がしていた。


END

後書き

今作は以前書いた『男子図鑑』のリメイクですね。

過去のは完全なアナログ仕様でしたが、今作はデジタルです。

リメイクとは言っても全く別物の話ですけどね。

男子図鑑という設定だけ拝借しています。

改めて、この手の最終的に自分の手で晒してしまうってシチュが好きだなと思いました。

誘導みたいな感じですね。

というか、以前書いたやつずいぶんと簡素ですね。

何で過去の自分はあんなにコンパクトに話が書けたのだろうか……。


しかし、男子図鑑だと笑えるけど、これが女子図鑑になったらあまり笑えない気がしますね。

エロいとは思いますけども。

そういうAVはありそう。

うむ。


Comments

No comments found for this post.