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翌日、なんと商店会会長が直々に営業所を訪ねて来た。

わざわざ名駅で買ったという限定版”ぴよりん”を手土産に持って来てまでのことだった。


亜希子は応接室に1時間ぐらい拉致され、所長と商店会長からさんざん出演を口説かれたのだが、嫌なものは嫌なので、頑として首を縦に振らなかった。

なんだか途中から、怪しいセミナーに参加して「如何わしい健康食品」や「ラジウム水素水」を買わされてるような気分になってきた亜希子は、らちが明かないのでとうとう「出演料50万円頂けるなら考えます」と、身も蓋も無いことまで口にしてしまった。自分でも「嫌な女だな」と、思ったが、彼らがあまりにもしつこいので仕方が無いのだ。


「いや~流石に50万は・・5万じゃダメ?」

意気消沈しながら営業所を後にする商店会長を見送ったあと、なんとなく気まずい雰囲気の営業所で辛うじて気を取り直した亜希子は、頂いたぴよりんで所長にお茶を入れ、2人で食べようとしたのだが、虚ろな目をした北浜はぴよりんを彼女に見せながら、

「ぴよぴよぴよ、ぼく、ぴよりん。アキちゃんのサンバダンサー姿見たかったよう」

などと未練たらたらなひとり芝居を始めるのだ。


・・・うざ、ぴよりんはそんな煩悩にまみれたようなこと言わない。

「至急」

ということで、北浜がイベント実行委員会の本部に呼び出され、慌ただしく飛び出していった、と思ったら、戻ってくるなり亜希子に声をかけた。

「鈴木君、ちょっと運営本部事務所まで・・」

亜希子は嫌な予感がした、普段は馴れ馴れしく「アキちゃん」と呼ぶ北浜が、苗字に君付けで呼ぶときは、大概ろくなことは無いのだ。


「実は例のサンバカーニバルの件なんだけど、頼んでおいたはずのフィリピン人ダンサーが集団食中毒で殆ど駄目らしい、いや、それでも何人かは来るみたいなんだけど、人数がまるで足りない。で、こないだの話を蒸し返すようで悪いんだけど、是非、鈴木君にダンサーの代役を頼みたいんだ。どうだろう?なんとか引き受けてもらえないだろうか?」

「ええっ!?その話なら先日お断りしたばかりじゃないですか!なんで私なんです、そんなこと急に言われても困ります!振り付けだって全然頭に入ってないんですよ?」

「鈴木君、今回の件は全く予想外のネガティブサプライズで、我々としても藁にもすがる思いなんだよ、それにイベントの性格上、女の子だったら誰でもってワケにはいかないからね、鈴木君だったら是非、って商店会からの推薦もあるし、なあに踊りのことだったら大丈夫、何人か来ているフィリピン人ダンサーを見ながら上手いこと合わせてもらえばいいから。細かいことはこの際言いっこなしだよ!」

「そんな、衣装合せだってして無いのに!お客さんだってすっごいいっぱい集まって来てますよ!?」


すると、そばで見ていた商店会会長が口を挟んだ。

「え~と鈴木さん、先だっては突然営業所にお願いに上がってたいへん申し訳なかった、私からもあらためて何とか出演をお願い出来ないでしょうか?今年のイベントは見てのとおり近年稀に見るくらいの大盛況です、せっかく集まってくれたお客さんを、ここでがっかりさせる訳にはいかない、いや、仮にもし今回のイベントが失敗するようなことがあれば、新幹線「こだま」しか止まらないこの三河安嬢駅に「こだま」すら止まらなくなり、商店街そのものが存亡の危機に!・・」


亜希子は無茶ぁ言うなあこの人も、と思ったが、ここで北浜が追い討ちをかけるように、

「鈴木君、頼む!私ら決して、亜希子君のでかいオッパイがブルンブルン揺れるのを見たいとか、やらしい意味で言ってるわけじゃないんだ!スタッフとして運営を任されている以上、なんとかうちの会社として出来ることは全て協力してあげたい、ここは鈴木君のカラ・・もといチカラが是非とも必要なんだよ!ほら、このとおりっ!」

北浜、ここでなんと部下の亜希子に向かって土下座。

商店会会長も土下座。

ライダーダブルキックならぬリーマンダブル土下座だ!大の大人2人にここまでされては亜希子ももう、折れざるを得なかった。

「わ、分かりました、私でお役に立てるんでしたら、何とかがんばってダンサーやってみます・・」


亜希子は強く推されたとは言え、安易に引き受けてしまったことを、すぐにひどく後悔する事になる。

まさか用意された衣装があんなに過激なものだったとは・・・。


「そうか!引き受けてくれるか!」

「みんな助かった!名古屋化の鈴木さん、引き受けてくれるそうですっ!!」

「うおおおおおおおおおおおお!!」

「救いの女神だ!!」

「もうあまり時間が無い、早速更衣室で着替えてもらって準備のほうを!」


亜希子は半ば強引に、出演者控え室兼更衣室に連れて行かれた。

部屋に入ると、他に誰もおらず、どうやらフィリピン人ダンサーとやらはすでに準備を済ませ、会場に向かっているらしい。

やっぱり断ろうと、更衣室のドアを開けた亜希子は、そこで異様な光景を見た。

一瞬、頭の中で昔、堺雅人がやってた某銀行ドラマのメインテーマが聞こえたような気がした。

亜希子がそこで見たのは、イベント実行委員会総勢10数名のオッサン連中が部屋の前で全員土下座している姿だった。

「あ、詰んだ・・」

やはり中年は1枚も2枚も上手だ、断ってくるのを予測して、予め廊下で待ち伏せしていたのだ。もう、とてもじゃないが今更断れるなんて雰囲気ではない、そうはっきり悟った亜希子は更衣室のドアを黙って閉めた。

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※中沢君は身長180近くあって、実はまあまあイケメンです。

さてさて第二回です、詰め込んでるので結構なボリュームかと思いますが、すっかり漫画慣れした皆さんがいまさら長文テキストを読んでくれるのかおじさんとても心配です。次回から限定公開突入



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Comments

どーる

テキストの内容も懐かしくてとても良いですねぇ。 生きがい

g6triglav

お~きに~、生きがいとまで言われたら作画も気合入れんとなあ