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初夜

春日みなとは、北陸の静かな町で暮らす十五歳の少女だった。小柄な体躯に大きな瞳、透き通るような肌。制服の半袖セーラーとミニスカートがよく似合い、どこか儚げな雰囲気を漂わせていた。

その日は放課後、ひとりで神社の裏山にある祠に足を踏み入れたときだった。突如、世界が白く光り、風の音が消え、彼女の足元がふわりと浮かび、次の瞬間――雪だった。

目を開けたとき、みなとは吹雪の中にいた。そこは日本ではなかった。岩と木で組まれた小さな家々、煙突から煙があがる雪深い山の村。空は鉛のように重く、言葉も通じない。セーラー服とスカート姿の少女は、あまりに異質だった。

村人たちは、彼女を「魔女」と呼んだ。

みなとは叫んだ。「待って、わたしはただ――!」けれど通じない。恐怖に満ちた瞳で見つめられ、十字を切られ、ついには教会の地下へと連れて行かれた。

そこには、石造りの独房があった。冷たい床、鉄格子、そして壁に固定された鉄の鎖。

「……やめて……!」

少女の細い手首と足首に、無骨な鉄の環がはめられた。ガチャン、ガチャン、と鎖が響く。重い扉が閉まり、外の灯りが消える。闇のなか、彼女は独りになった。

第二夜

雪は絶え間なく降り続いていた。

地下牢の空気は冷たく湿っていた。体温を奪い、じわじわと指先を麻痺させる。みなとの夏のセーラー服は見るからに寒そうだった。スカートの下からは素足がのぞき、白い膝が冷気に震えていた。

「……夢なら覚めて……お願い……」

呟きながら、彼女は鎖の束に身を預けた。手首には擦れた跡、動けば動くほど、鉄が肌に食い込んだ。食事は一日に一度、木皿に乗った硬いパンと、ぬるいスープ。言葉はなく、ただ無言の監視。

時間の感覚は、やがて失われていく。

それでも、彼女はまだ自分を保っていた。両親の顔、友人の声、授業中にこっそり描いた落書き――それらを思い出しては、涙をこらえた。

みなとにはここに来た心あたりがあった。小さい頃から「囚われ」のお姫様に憧れ、なわとびで自分を縛って遊ぶ日もあった。10歳を過ぎてからは、そのような遊びをしながら股間を濡らした…。 はしたない私に神様が罰を与えているのかもしれない… そんな考えがみなとの頭によぎった。

第五夜

牢の外で、神父と村の男たちが話している声が聞こえた。言葉の意味は分からない。だが、その声音――「審問」だと、みなとは直感した。

「火あぶりにされるのかな……」

そんな考えがよぎった。絶望というより、現実味のない感覚だった。こんなに寒い場所で、火の中に投げ込まれる――あまりに不釣り合いな死。

その夜、彼女は祈った。

神でも仏でもない。彼女のなかの、まだ壊れていない「未来」に向けて。

「生きて帰りたい……。お願い、誰か、誰か助けて……!」

涙は凍ることはなかった。ただ静かに頬を伝い、顎から落ちた。

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