【特別編】メンズメイク体験から始まった、僕の女装堕ち ー君を可愛くする魔法:3ー (Pixiv Fanbox)
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次の日
甘くて、パウダリーな“女の世界”の香り。
遠くで、一組のカップルの足取りが止まるのが見えた。
視線が合った瞬間、昨日の“あの子”だと分かる。
啓斗くん――名前を思い出すだけで、口角が上がる。
「……あ、あの人だよ、昨日の美容部員さん……」
小さな声が聞こえる。
隣の女の子が、嬉しそうに笑う。
彼は、昨日、私がしてあげたような“女の子メイク”をしている。
そして……服装まで……。
たった一日でここまで堕ちるなんて……。
彼女さんも“こっち側”か……それに、彼自身も元々……。
私の口角も自然と上がってしまう。
足が自然と動いて、二人の前まで駆け寄っていた。
「昨日のお客様!ありがとうございました!」
声をかけた瞬間、彼の身体がぴくりと跳ねる。
その反応が、正直、可愛いと思ってしまう。
「隣にいるのが彼女さんですね。昨日お誕生日だったんですよね? お誕生日おめでとうございます」
私の言葉に、ぱっと目を輝かせる。
「わぁ!ありがとうございます!こちらこそ、啓斗を可愛くして頂いてありがとうございます」
“可愛く”。
その言葉を、彼女が迷いなく使うのが面白い。
彼は何も言えず、視線を泳がせている。
「いえいえ、こちらこそ。昨日は女性向けのメイク体験を行っていたんですけど――『男の僕でも可愛くなれますか?』って聞かれて……。私も初めてだったので、びっくりしちゃいました」
私は少し困ったように笑いながら、丁寧に“物語”を整える。
あえて語尾をやわらかくして、“彼が自分から踏み出した”形だけを残す。
それだけで十分だった。
彼女の前で、“自分から女の世界に手を伸ばした男の子”として立たされる。
「えっ!?ちょっと……そんなこと言ってない……」
彼の焦って否定する表情がたまらない。
私は視線を逸らさず、その反応をじっと見てしまう。
「え~?そうだった?」
彼女さんが口元を押さえて、わざとらしく首を傾げる。
「啓斗、自分から女の子になりたかったんじゃん。正直に言えばいいのに」
彼は一瞬、言葉を失ったように、口を開いたまま固まる。
「ち、違うって……!」
否定の声が、途中で弱くなる。
さらに顔が赤くなっていくのを、照明の下ではっきり確認できる。
私はただ微笑んだまま、その様子を眺める。
この子も、私がきっかけで女の子に堕ちていっちゃうんだなぁ。
特に彼女さんとの相性もいいみたいだしね。
そこで私は、さらに追い打ちをかける。
「今日の格好もすごく似合ってますよ。フリルもいっぱいで、とっても可愛いです!素敵な彼氏さんですね」
「い、いや……あ、ありがとうございます……」
彼女さんが楽しそうに口を挟む。
「あっ、彼氏じゃないんですよ。昨日から彼女になったんです」
一瞬、彼の呼吸が止まるのが分かる。
私は思わず、声を立てて笑ってしまった。
「まぁ、そうだったんですね。失礼しました。素敵な彼女さんですね」
冗談めいた口調のまま、あくまで自然に。
でもその言葉は、確実に彼の中に沈んでいく。
照明の下で、彼の耳まで赤くなるのがはっきり見えた。
◆
その後、彼女さんとは自然な流れで連絡先を交換した。
この子と私は、相性ぴったりだと思う。
私は試供品をいくつかまとめて、紙袋を渡した。
それと一緒に、小さな包みをひとつ、彼女さんの手のひらにそっと重ねる。
「それも良かったら使って下さい。彼の食事に混ぜてあげるといいですよ」
彼女さんはきょとんとした顔で私を見る。
私は声をぐっと落とし、周囲のざわめきに紛れるくらいの距離で、唇だけを動かす。
「女性ホルモン……」
その単語だけで、彼女さんのまつ毛がわずかに揺れた。
私は続けて、あくまで“軽い提案”みたいに、微笑みを添える。
「彼、もっと可愛くなりますよ……今より、ずっと」
彼には聞こえないように、こっそりと……。
彼女さんはすぐには返事をしない。
一拍、二拍。
その沈黙の間に、彼女さんの中で何かが組み替えられていくのを感じる。
そして、くすっと小さく笑った。
否定でも、拒絶でもない。
受け入れとも言い切らない、でも――前向きな音。
――ふふ、やっぱり。
この子なら、ちゃんと“彼”を“彼女”に生まれ変わらせてあげられる。
時間をかけて、優しく、逃げ道を塞ぎながら。
私はその未来を思い浮かべながら、
何も知らない、変わりゆく彼の背中と、楽しそうに寄り添う彼女さんの横顔を、最後まで見送った。
※次回からは別のキャラの物語を投稿します
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