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はじめてのおつかい

夕暮れの街路を凜と並んで歩きながら、わたしは必死に足取りを整えていた。

お尻の奥に埋まったピンクのアナルビーズが、歩くたびに粒を転がすようにうごめき、ぬるりとした感触が直腸の壁から感じる。


今は振動は入っていないのに、ただ存在するだけで下腹が熱く疼き、パンティの奥がじんわりと湿り気を帯びてしまう。


「ねぇ、啓」

凜が突然立ち止まって、わたしの顔を覗き込む。

夕陽が凜の唇を艶やかに染めて、息がかかる距離で囁かれる。


「せっかく可愛い格好してるんだから、もう少しだけお買い物しようか?」


「う、うん……」

声は震えて出た。拒否なんてできないから。


凜は満足げに微笑んで、わたしの手をそっと離す。


「でね、今度は啓ひとりで買ってきて欲しいものがあるの」


「え……?」


「私、ここで待ってるから。いい子だから行ってきて?」


小さなメモと1000円札。

メモには凜の可愛い字で

『ドラッグストアで生理用のナプキン買ってきて。羽つきでピンクのパッケージのやつ。多い日用のね。恥ずかしいかもしれないけど、ちゃんと店員さんに聞いて買ってきてね♡』

と書いてある。


生理用ナプキン。

──男が、絶対に買わないもの。


その単語を思い浮かべただけで、頬の奥がじわっと熱くなる。

下腹の奥がきゅっと縮んで、身体が勝手に“意識”してしまうのが分かって、余計に恥ずかしい。


「さすがに……これは……」

喉を押さえるようにして、声を落とす。


「それに……店員さんに聞くなんて……」

必死の訴えだったはずなのに。


凜は、怒るでもなく、困るでもなく。

ただ、やわらかく微笑んだまま、逃がさない目でわたしを見つめてきた。


「あれ?」

小首を傾げる仕草が、妙に可愛いのに、どこか冷たい。


「私に……口答え、するんだ?」

ぞくり、と背中を冷たいものが走る。


「じゃあさ」

凜は声を落とし、優しくでも逃げ道を完全に塞ぐように続けた。

「追加で、“わたしが使いたいんです”って、店員さんに相談してね」


「……っ」

言葉が、喉に引っかかる。


「そ、そんな……」

否定のつもりで漏れた声。


凜はわたしの頬をやさしく撫で、ベンチに座る。


「啓なら大丈夫。行ってらっしゃい」


わたしは一人、夕方のドラッグストアへ、ふらつく足で歩き始めた。

もちろんお尻の中には、いつ動くか分からないアナルビーズが入ったままで……。


◆


ドラッグストアの自動ドアが開いた瞬間、明るすぎる店内の光に、思わず肩がすくむ。


通路には学校帰りの女子高生や、買い物かごを下げた主婦がちらほらいる。

誰もわたしを見ていないはずなのに、視線を集めている気がして、自然と膝が震えだす。


(平気……平気……)


自分に言い聞かせながら、ワンピースの裾をぎゅっと握りしめ、店の奥へ進む。

足音がやけに大きく聞こえて、通路を曲がるたびに胸が締め付けられた。


お尻のビーズが歩くたびに粒を擦り合わせて、奥がじゅんと濡れたような感覚を呼び起こす。


辿り着いた先は、生理用品コーナー。

棚いっぱいに並ぶパッケージが、一斉に視界に飛び込んでくる。


夜用、羽つき、昼用。

淡いピンクや花柄のパッケージが、当たり前のように並んでいて──それが、余計に居心地を悪くさせた。


わたしは棚の前で商品を眺めた。

指先は震え、呼吸も浅い。


選んで取るだけなら、まだいい。

でも、凜の命令はそんなものでは終わらない。


『店員さんに聞いて買う事。自分用として』


その“命令”が、背中に重くのしかかる。

近くを通る店員さんの気配に、思わず息を呑む。


声をかけなきゃいけない……逃げちゃだめ。

凜の顔が浮かんで、わたしは小さく息を吸った。


「あの……すみません……」


「はい、どうかされましたか?」

足を止め、柔らかな笑顔で対応してくれる女性店員さん。

少し年上だろうか。


わたしに逃げ場は、もうない。


「えっと……羽付きで……多い日用のものが、欲しいんですけど……」

そこまで言って、言葉が詰まる。

一瞬の沈黙が、やけに長く感じられて、慌てて付け足した。


「あっ……わ、わたしが使う用、です……」


その瞬間。

店員さんの表情が、ほんの一瞬だけ止まった。


背中に冷たいものが走る。

もしかして、声質で……男だって、バレた……?


視線が泳ぎ、膝がわずかに内側へ寄る。

鼓動がうるさくて、耳の奥が熱い。


けれど店員さんはすぐに表情を戻し、穏やかに頷いた。


「そうなんですね。でしたら、この辺りの商品ですね」


何事もなかったかのように、いくつかの商品を手に取って見せてくれる。


「こちらは夜用のロングタイプで、吸収量が多いです。多い日でも安心ですし、羽付きなのでズレにくいですよ」

「肌に優しい素材なので使いやすいと思います」


指先でパッケージを示す、その仕草が、なぜか下腹の奥をきゅっと刺激する。

視線を落としたまま、わたしは小さく頷いた。


「そ、そうなんですか……」


「ええ。ちなみに今はどちらのメーカーの使われているんですか?」


「え……えっと……」


急にそう聞かれて、頭の中が真っ白になる。

今、使ってるメーカー……?

そんなことを聞かれても良く分からない。


視線が泳いで、棚の前を彷徨った末、

わたしは目についたパッケージを、とっさに指で示してしまった。


「……こ、これ……です……」


店員さんは、指された商品を一度見て、

「あっ」と小さく声を上げた。


「こちらですね。今はタンポンを使われているんですね」


「……え?」


思わず、間の抜けた声が漏れた。


タンポン。

……そういえば、ナプキン以外にも、そんなものがあった気がする。


(……タンポン……)


ナプキンなら、なんとなく形も使い方も想像がつく。

でも、タンポンは……正直、どう使うものなのか、よくわからない。


それでも店員さんは何事も無かったかの様に続ける。


「もし今日はナプキンに変えたい、ということでしたら……こちらと、こちらがおすすめですね」


店員さんはそう言って、棚から二つの商品を取り出した。


ひとつは淡いピンクのパッケージ。

もうひとつは、少し落ち着いた紫色のパッケージだった。


「どちらも吸収量が多いタイプです。肌触りもいいですよ」


(……ピンク……)


凜から渡されたメモが、頭の中に浮かぶ。

そこには、はっきりと「ピンク」と書かれていた。


わたしはピンクのパッケージを選び、小さく息を吸う。


「……こ、これにします」


その瞬間だった。


ぶいぃぃぃんッ!


突然、お尻の奥で激しい振動が爆発した。


「っ……あっ……!」

顔をしかめて、太ももに力を入れる。


ビーズの粒が一つずつ震え、敏感な粘膜を容赦なく刺激してくる。


(くっ……店員さんのすぐ前で……!)


店員さんが心配そうにわたしの顔を覗き込んでくる。


「えっ、大丈夫ですか?どうかされましたか?」


「あ……だ、大丈夫、です……っ」

振動が弱まったり、強くなったり、意地悪く波打つ。


凜が遠くから、わたしの悶える姿を楽しんでいるんだ。


お尻の穴がひくひくと震え、ビーズが直腸の壁を激しく、優しくを擦る。


「もしかして……生理痛ですか?痛み止めもありますけど……」


「い、いえ!本当に……んっ……大丈夫ですから……っ」


今度は強めの振動で、腰がびくんと跳ね、小さな喘ぎが漏れた。

慌てて口を押さえるけど、店員さんが心配そうに見つめる。


「これ、これで……ください……っ。お会計……お願いします」


「あ……承知しました。それではこちらへ」


わたしはなんとか足を動かそうとするけど、振動の波が強くなったり弱くなったりするたび、腰がびくんと跳ねてしまう。


(だめ……歩けない……声、出ちゃう……)

店員さんが少し前を歩いている。


わたしは必死に歯を食いしばり、彼女の後ろをよろよろとついていく。

レジまでの距離はたった数メートルなのに、永遠みたいに長い。

振動が一瞬弱まった隙に、息を吸って足を進めた。


レジで店員さんが商品をスキャンしながら、まだ心配そうに話しかけてくる。


「あまり無理はなさらない方がいいですよ」

バーコードのピッという音に合わせて、振動が一瞬強く脈打つ。

下腹が熱く溶け、膝ががくがく震える。


「……ありがとう、ございます……っ」

(凜……意地悪……全然知らない店員さんの前で……)


袋を受け取る手が震えて、店員さんがそっと手を添えてくれた。

温かい感触に、余計に身体が火照いてしまう。


「お大事にね。何かあったらまた聞いてくださいね」

心配そうに見送られながら、わたしはなんとかお礼を言って、足早に店を出た。


◆


ドラッグストアを出ると、凜はベンチで優雅に待っていた。

わたしが近づくと、立ち上がってにこにこ笑う。


「おかえり、啓。よく買ってこれたね」

お店を出た瞬間、ビーズの振動はぴたりと止まっていた。

余韻で膝がまだ震え、下腹の熱が引かない。

息が荒いまま、わたしは小さく呟く。


「……どこかで見てたよね?わたしが店員さんと話してるところ……」


凜は白々しく首を傾げ、くすりと笑う。


「さぁ……どうかな?」


そっと近づき、わたしの耳元に唇を寄せ、ささやく。


「ただ、悶えてる顔、遠くから見てて本当に気持ちよさそうだったよ。パンティ、濡れちゃったでしょ?」


顔が一気に熱くなる。

パンティの奥で、カウパーが大きなシミを作っているのが自分でもわかる。

恥ずかしさで首を振ることもできず、ただ小さく頷いてしまう。


凜がくすりと笑い、わたしの手をぎゅっと握った。

指が絡まって、温かい体温が伝わってくる。


「それじゃあ、お尻のソレ……抜いてあげるから、おうちに帰ろうか」

振動は止まっても、凜の視線と声だけで身体が熱くなる。

わたしはもう、何も言えずに凜の腕に寄り添った。



【17章へつづく…】

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